登校しぶりのある小学生の教室復帰と 自力登校行動の支援(加藤哲文・中川 日里)についての発表 目次 1、トークンエコノミー法とは? 2、標準的なトークンエコノミー法の手続 き 3、目的 4、対象児 5、場面 6、介入 7、手続き 8、結果 9、考察 1、トークンエコノミー法とは? • トークン(=代理貨幣)を用いて 特定の行動を制御することを目 的とした強化システム 2、標準的なトークンエコノミー法の手続 き ①「トークンの選択」:トークンには主にシールや チェック印、ポイントを用いる。これを一定数集 めると特定の物や活動と交換ができる。 ②「標的行動の選択」:最終的な目的達成に必要な 各々の標的行動を決める。決めた行動は具体 的にカードやノートなどに書く。 ③「支持強化子の設定と交換率の決定」:一定量の トークンと交換できる一字強化子を「バックアッ プ強化子」と言い、交換の対象とする支持強化 子の種類や交換率をカードに書いておき、対象 児と約束や確認をする。(これを行動契約とも言 う) ④「支持強化子とトークンとの交換」:獲得したトー クンの量に応じて、対象児に交換可能な支持強 化子のリストから選択してもらい交換する。 3、目的 • 「自力での登下校」 • 「通常学級での授業やその他 の活動の参加」 4、対象児 小3女子。(8歳)(以下A子とす る)自分の気持ちを上手く表現でき ない子だが、大人の顔色を見て動 いていることもあり、親を困らせた ことはなかった。成績はクラスで中 程度だが3年生から始まった習熟 度別の授業(国語・算数)で友達よ りも下のクラスになったことを気に しており、勉強に苦手意識がでてき た。小学校3年の5月末から登校し ぶり。 5、場面 • 家からの登下校 • 学校での活動 6、介入 • 漸次的接近(successive approximation)法によるプロ グラムを作成し、通常学級での 授業やその他の活動の形成と 合わせて「トークンエコノミー法」 を用いた • 週一回相談室に来室してもらっ た 7、手続き ①「トークンの選択」 ②「標的行動の決定」 ③「指示強化子の設定と交換率の 決定」 ①「トークンの選択」 • A子の希望により、「ポイント(数 字で表示)」をトークンとする ②「標的行動の決定1」 • 第一段階:自力登校行動(目標 地点から学校まで自力で登校 する。) • 第二段階:教室での授業・活動 参加行動(教室での授業や活 動に参加する) • 第三段階:自力登下校行動(自 力で登下校する) ②「標的行動の決定2」 • 各段階における具体的指標行動を 決定する際には相談員が標的行動 の選択肢を提示してそこからA子が 選択した • トークンとしてのポイント数はA子が 決定 • 選択された内容はそれぞれ一日の 学校の時程に従ってA子が自筆でA 4用紙に記入し、一日の標的行動が 一枚にまとめられた • 特別な標的行動ができた場合は 「ボーナスポイント」としてより多くの ポイントが加算されるようにした • 「おたすけマン」プロンプトを用意した ③指示強化子の設定と交換率の決定 • 指示強化子は相談室での遊びや活 動とした • 活動内容はA子が決定した • 交換率は上限と下限のポイント数を 相談員が決め、その他の活動のポイ ントはA子が決めて記録用紙に記入 • 交換率は各ステップを経るに従い高 くなるよう変化をつけた 表へ 8、結果 ①第一段階 ②第二段階 ③第三段階 表へ ①第一段階(セッション6~9) • 自力登校が主な標的 • トークン・エコノミー導入後それまで 車で通学していた経路の一部を自力 で歩くようになる • セッション9:より高いポイントを得る ためにより学校から近い地点から通 い始める ・セッション22から自力登校が可能にな る 表へ ②第二段階(セッション10~16) • 教室での授業・活動参加行動 • セッション14あたりからすべて の授業に参加可能になる 表へ ③第三段階(セッション17~23) • 自力登下校行動 • 「学校から歩いて帰る」だけでなく、「友人の 家から歩いて帰る」も標的行動にした • セッション17からは授業教科ごとの標的行 動の目標設定から「一日教室にいる」という 項目に変更 • セッション22まででほぼ第三段階からなる 目標が達成。トークン・システム終了を確認 し、セルフモニタリングできるようなプリントを 作成、新たに挑戦した行動や活動の結果や 実施度について記入する方法を提案し、A子 も承諾する。 • 第4学年6月現在、自力での登下校、教室で のすべての活動への参加が確認された 表へ 9、考察 • 再登校や学級での授業参加行動へのトーク ン・エコノミー法による随伴性制御が成立し たものと言える • 標的行動やトークンの交換率の決定に際し てA子の自己選択を優先したりボーナスポイ ントを提案したりしたことは、A子の標的行動 の挑戦に対して、嫌悪的ではなく、誘発的な 弁別刺激となった • A子の自己選択及び自己決定行動を自発・ 維持するために相談室で用いた「おたすけマ ン」が効果的であった。これは相談員がプロ ンプターとなって、自習の標的行動やポイン トの決定に際して、A子自身の「実行できるこ と」の見込みや確認、「挑戦したいこと」の実 行の見通しなどについて適切な弁別刺激を 提供できた
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