当日配布資料(1.9MB) - 新技術説明会

微生物の付着に働く粘着性細菌ナノファイバー
堀 克敏
名古屋工業大学
大学院工学研究科物質工学専攻 准教授
界面微生物工学研究所 所長
科学技術振興機構(JST)さきがけ 研究者
「界面の構造と制御」領域
研究背景
1gの土、1mLの池の水
細菌:106~108
人口:108
土、池の水 1~100g=日本
細菌の大きさ:1/1000 mm
細菌の重量:1 pg (=10-12 g)
繊毛の運動によって引
き起こした捕食のため
の液の流れ(ワムシ)
A4
後生動物
(多細胞)
A3
B3
原生動物
(単細胞)
A2
B2
細菌
A1
B1
有機物
活性汚泥を構成する微生物食物段階 (Aは次の食物段階に移行しなかった
有機物で呼吸により二酸化炭素として放出される、Bは上位の段階取り込ま
れたバイマス有機物を表す。)
A, Bは平均的には50%→4段階で当初の6%まで減少
炭素
異化(呼吸)
有機物
二酸化炭素
好気・嫌気
窒素
硝化
アンモニア
脱窒
(亜)硝酸
好気
窒素ガス
嫌気
好気
リン
ポリリン酸
リン酸
嫌気
細菌
窒素とリンを除いて富栄養化を防ぐには好気処理と嫌気処理の両方が必要
下水道の高度処理
建設費2割、維持費1割増し
スポンジ表面
好気領域
嫌気領域
炭素源
溶存酸素濃度
多孔質担体を用いるC・N同時除去廃水処理バイオリアクターと
担体内溶存酸素(DO)濃度と炭素源(ブドウ糖)の濃度とフラックス
付着過程
細胞外多糖類の生産
substratum
I
II
III
IV
初期付着
付着強化
コロニー形成
バイオフィルム発達
[時間スケール]
[日スケール]
バイオフィルムの形成過程
Center for Biofilm Engineering
of Montana State Univ.
日大:綾部 真一
従来の知見
G (相互作用による全エネルギー)
水中では微生物の表面も付着表面も負に帯電
静電反発力
エネルギー障壁
0
r
[nm]
ファン・デル・ワールス引力
第一極小
ブラウン運動や鞭毛運動のエ
ネルギーでは越えられない
第二極小
短い相互作用
(< 2nm)
長い相互作用
(<10 nm)
不可逆的な付着
可逆的な付着
古典的DLVO 理論による微生物付着機構の物理化学的説明
DLVO theory
エネルギー障壁
<10 nm
物理化学的相互作用
第一段階
第一段階
可逆的付着
可逆的付着
EPS または
細胞表層の繊維構造
第二段階
第二段階
不可逆的付着
不可逆的付着
従来の知見:二段階付着機構( Marshall et al.)
最近の知見
繊維構造(Φ:0.2~0.5 μm)
ファン・デル・ワールス引力
粘着力:0.1 N/mm2
最近の知見
カウロバクター・クレセンタス
細胞一つの付着力=0.6 μN
粘着力>68 N/mm2
自然界最強
発見と新技術
1.驚異的な高付着性を示す芳香族水酸化細菌
(VOC分解細菌)
2.新規の粘着性細菌ナノファイバー
驚異的な高付着性とトルエン分解能力を示す
アシネトバクター属細菌 Tol 5 株を単離
10 μm
振とう
1分
500μm
100 μm
A
C
B
a
a
D
E
p
F
p
a
ウレタンスポンジの表面に付着するTol 5 細胞の走査電子顕微鏡写真
a: アンカー用ナノファイバー; p: 周毛性ナノファイバー
Bars, 5 μm (A) and 300 nm (B to F)
二段階付着機構(通常の微生物、表層繊維欠損株)
二段階付着機構(通常の微生物、表層繊維欠損株)
1.
1. 可逆的付着
可逆的付着
(第一段階)
(第一段階)
substratum
エネルギー障壁
2.
2. 不可逆的付着
不可逆的付着
(第二段階)
(第二段階)
<10 nm
EPSまたは短
い繊維構造
物理化学的相互作用
長い表層繊維を有するアシネトバクター属細菌Tol
長い表層繊維を有するアシネトバクター属細菌Tol 5株の一段階付着機構
5株の一段階付着機構
substratum
tether
tether
アンカー
100-1000 nm
第二の極小まで近づく必要なし
Anchor
アンカーによる微生物の新しい付着機構
代表的な粘着性細菌ナノファイバーの分子構造
粘着蛋白質ユニット
頭部
首部
主構成蛋白質ユニット
柄
細菌細胞表層
膜結合部
細菌細胞質
ピリ
膜結合部
アドヘシン
5 µm
ナノファイバー欠損変異株
300 nm
ナノファイバー欠損/付着性低下株の特性
WT
凝集性
T1
懸濁・分散性
有機溶媒・油滴表面への微生物細胞の単層吸着
(スケールバー: 10 μm)
ナノファイバー欠損変異株
単層吸着=ラングミュア吸着
親株
多層吸着=凝集
高速界面反応が可能
芳香環水酸化反応10 g/(L・h)の高速反応を達成
想定される用途
微生物の固定化・凝集技術
微生物触媒
化成品の生産
バイオマスエネルギー
発酵食品
廃水処理
バイオフィルム利用技術
環境浄化(河川・湖沼・沿岸)
廃水処理
環境浄化資材(接触剤・多孔質)
実用化に向けた課題
粘着性ナノファイバー利用技術
・水中で接着作業な可能な接着剤
・脱着可能かつ強力な接着剤
・界面制御術(分子アレイ・表層提示)
感染防止・バイオフィルム抑制技術
・対感染症用新規医薬品
・抗菌剤・殺菌剤
・抗菌素材
お問い合わせ先
名古屋工業大学
産学官連携センター 企画・管理部門
TEL 052-735-5627
FAX 052-735-5542
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