特別推進研究申請 「地球惑星中心領域の超高圧物質科学」 研究代表者 東北大学大学院理学研究科教授 大谷栄治 1 地球中心領域 どのような組成? どのような状態? 温度は何度か? 核マントル境界 135GPa, 3500K 地球中心 365GPa, 4000~8000K 地球中心 信頼できる地球内部観測:地震波速度(=音速)、 365 GPa 密度解釈に物性データが必要だが、 4000~8000 K 密度の情報:多 未達成 しかし 地震波速度=音速の情報:稀少 物性データ皆無 これまでの研究は、温度・圧力の外挿 核 次々に明らかになる核の新観測事実 内核はマントルと異なる自転速度をもつ Laske and Masters (1999) 内核は、方向によって地震 波速度が異なる(異方性) 最内核(Innermost inner core)が存在 3 核 金属鉄を主成分とする 核の形成・進化(内核の発生・成長): 地球磁場の生成、生命の発生と進化 地球の熱史・温度 極限超高圧 珪酸塩マグマの海 地球と惑星磁場生成と起源 マグマの海で核は分離した。 重いマグマの存在? 核マントル境界の異常 珪酸塩中の鉄のスピン転移、ポストペロブスカイト転移 下部マントル ホットスポット 外核 上部マントル 660km Fig. ホットスポット直下の核マントル境界イ メージ図 下部マントル D”層 核マントル境界 135GPa, 3500 K ICB 外核 内核 Labrosse et al. (Nature, 2007)のモデル マグマの海 現在 核 地球中心365 GPa, 4000~8000K 重いマグマの存在可能性を指摘: Murakami and Bass (PRL, 2010), Ohtani (PEPI, 1983), Ohtani and Maeda (EPSL, 2000) 5 物質大循環と核 地表から核へ核から地表へ: 物質の大循環: “水”そして炭 INTRODUCTION 素 海洋プレート 海洋プレートの沈み込み マントルの物性への影響 核マントル境界での核との相互作用 相平衡、融点、粘性、 電気伝導度、音速… Sano, Ohtani et al. (2008), GRL 6 核・核マントル境界・下部マントルの構成・状態・ 大循環の最重要観測情報:地震波速度=音速、密度 研究目的 相転移・融解の解明、密度・音速の測定にもとづ いて、地球中心領域の物質科学モデルの創出: 研究目的 どのような組成? どのような状態? 温度は何度か? 3つの課題を世界初の手法で解明 ① ② ③ 地球核の温度圧力を実現。 圧力スケールを確立。 鉄のスピン転移、磁気転移、構造相転移、 融解などの相転移現象を解明。 音速と密度を測定。 本研究の特徴、独創的な点 ① 地球中心部の温度圧力 パルスレーザー加熱 世界初 ~5000 K @300 GPa:パルスレーザー 加熱、超高速(ナノ秒)計測技術の導 入:レーザー衝撃波研究者との共同研究 連携研究者 境 毅博士(東北大) 研究協力者 尾崎典雅博士(大阪大) レーザー衝撃波研究の新進気鋭の若手研究者 レーザー加熱中の試料 (連続加熱の写真) 核をカバーする圧力スケールの 構築: 音速と密度の同時測定:NaCl-B2 、MgO 高温高圧ブリルアン散乱法+放射光X線回折 分担者 村上元彦准教授(東北大) A diamond anvil compressed at 374 GPa and 300 K、Asanuma et al. AIRAPT (2009) ポストペロブスカイトを発見、150GPaでのブリルアン散乱の世界記録 8 本研究の特徴、独創的な点 ② 鉄のスピン転移、磁気転 移、構造相転移、融解などの 相転移現象を解明 エネルギードメイン放 射光メスバウア分光 法(ED-MS) +X線粉 末回折+レーザー加 熱ダイヤモンドアンビ ル」統合システムの 構築 世界初 分担者 平尾直久博士(SP-8) SP8で超高圧発生 高圧技術開発の専門家 9 本研究の特徴、独創的な点 ③核と下部マントルの音速と密度の測定 高温高圧X線非弾性散乱法による音速測定 100~350 GPa, 2000~ K 連携研究者 境 毅博士(東北大)核マントル境界の温度圧 力、内核圧力を達成 協力者 Alfred Baron博士(SP8)X線非弾性散乱の権威 SP8-BL35ビームライン責任者 世界最高圧力 100~350 GPa、高温X線非弾性散乱(SP-8 BL35XU)とブリルアン散乱法(SP-BL10XU) の併用。(~150 GPa, 1500 K) 世界最高圧 力 10 本研究の特徴、独創的な点 ③核と下部マントルの音速と密度の測定 外核メルトの密度・粘性測定・界面エネルギー測定 マグマの密度測定:高圧下で重いマグマ 高温高圧X線イメージング法・吸収法による 液体密度の測定 独自開発 分担者 鈴木昭夫准教授 (東北大):マグマ研究の第一人者 寺崎英紀博士(東北大): 金属メルト物性の第一人者 11 本研究の特徴、独創的な点 ③核と下部マントルの音速と密度の測定 高温高圧ブリルアン散乱法(~150GPa,1500 K) 下部マントル 核マントル境界 135GPa, 3500 K 分担者 村上元彦 准教授(東北大) ポストペロブスカイトを発見、150GPa でのブリルアン散乱の世界記録 世界最高 圧力 協力者 Jay Bass教授(イリノイ大学)高圧ブ (Murakami et al., EPSL, 2009) リルアン散乱法の大家・パイオニア MgO 12 研究目的 相転移・融解の解明、密度・音速の測定にもとづ いて、地球中心領域の物質科学モデルの創出: どのような組成? どのような状態? 温度は何度か? 研究目的 3つの課題を世界初の手法で解明 ① ② ③ 地球核の温度圧力を実現 圧力スケールを確立 鉄のスピン転移、磁気転移、構造相転移、 融解などの相転移現象を解明 音速と密度を測定 参考資料 研究組織 研 究 代 表 者 大 谷 栄 治 ( 東 北 大 教 授 ) 超高圧・超高温の発生 連携研究者:連携研究者:境 毅(東北大、助教) 協力者:尾崎典雅(大阪大学、助教):新進気鋭のレーザー衝撃波研究 の若手研究者 エネルギー領域放射光メスバウア+高温高圧X線粉末解析 分担者:平尾直久(SPring8, BL10XU研究員) SP8で超高圧発生、高圧発生技術開発のプロ:200GPaにおいてメスバウ ア法でFe2O3のスピン状態を解明 高温高圧X線非弾性散乱法による音速測定 連携研究者:境 毅(東北大、助教):核マントル境界の温度圧力、 研究支援者 2名 内核圧力を達成、151GPaで非弾性散乱法測定に成功 協力者:Alfred Baron博士(SPring8, BL35責任者) X線非弾性散乱の権威 ブリルアン散乱測定・高温高圧スケール 大学院生 博士4名 修士4名 分担者:村上元彦(東北大 准教授): ポストペロブスカイトの合成、ブリルアン散乱の世界記録 150 GPaで測定 協力者:Jay Bass (イリノイ大教授):高圧ブリルアン散乱のパイオニア 金属メルト、マグマの物性測定密度・粘性:高温高圧イメージング 分担者:鈴木昭夫(東北大 准教授):マグマ物性研究、放射光イ メージングの第一人者 分担者:寺崎英紀(東北大 助教):金属メルト物性測定の第一人者 A1 なぜ前年度の申請を行うのか:緊急性 基盤研究(S) の計画を超えた新たな課題を すでに着手。成功に目処、世界との競争を リードしたい。 X線非弾性散乱法(IXS)による音速測定:151 GPaで測定 に成功。世界にない高温・高圧での測定に着手したい。 珪酸塩・金属鉄のスピン転移、磁気転移を世界最高の 200 GPaまで測定:高温・高圧で鉄のメスバウア分光 測定で世界をリードしたい。 ブリルアン散乱法で、150GPaまでの音速測定に成功。 A2 本研究の特徴、独創的な点 東北大グループの世界初の試み 1.全地球の温度圧力を実現 世界初 ~5000 K @300 GPa:パルスレーザー加熱、超高速 (ナノ秒)計測技術の導入:レーザー衝撃波研究者との 共同研究 核の圧力をカバーする圧力スケールの構築 音速と密度の同時測定による(ブリルアン散乱法) 2.核マントル境界と核での鉄(Fe) の状態解明 エネルギードメイン放射光メスバウア分光(ED-MS)の導入: 「ED-MS +X線粉末回折+レーザー加熱ダイヤモンドアンビ ル」統合システムの構築 世界初 3.核マントル境界と核での音速測定 100~350 GPa、高温 X線非弾性散乱とブリルアン散乱法の併用。(~150 GPa, 1500 K) 最高圧力 A3 本研究の特徴、独創的な点 東北大グループの世界初の試み 1.全地球の温度圧力を実現 世界初 ~5000 K @300 GPa:パルスレーザー加熱、超高速 (ナノ秒)計測技術の導入:レーザー衝撃波研究者との 共同研究 核の圧力をカバーする圧力スケールの構築 音速と密度の同時測定による(ブリルアン散乱法) 2.核マントル境界と核での鉄(Fe) の状態解明 エネルギードメイン放射光メスバウア分光(ED-MS)の導入: 「ED-MS +X線粉末回折+レーザー加熱ダイヤモンドアンビ ル」統合システムの構築 世界初 3.核マントル境界と核での音速測定 愛媛大 核はカバーしてい ない: 外挿 主に下部マントル を対象 焼結ダイヤモンド・マル チアンビル 下部マントル~100 GPa 超音波法による音速測 定(~30GPa, 1500 K) 高温高圧X線粉末回折 室温核共鳴散乱法 100~350 GPa、高温 X線非弾性散乱とブリルアン散乱法の併用。(~150 GPa, 1500 K) 最高圧力 A3 これまでの実績 1. 高温高圧でのX線その場観察実験:XRD (BL10XU) a) 核マントル境界条件の実現: 135 GPa, 3000 K (Hirao et al., 2006; Sakai et al., 2007) b) 核内部の条件の再現: 254 GPa, 3500 K (Asanuma et al., 2008): FeSi合金、FeNiSi合金、Fe3S、(FeNi)3S、 FeHx c) 地球中心を越える圧力の発生: 376 GPa, 700 Kの実現 (Asanuma et al., 2009) 2. 核マントル境界と下部マントルの研究: 状態方程式と弾性波速 度測定: ブリルアン散乱法@高温・高圧 ペロブスカイト、ポストペロブスカイトの150 GPa領域での音速測定 3. 高圧下における下部マントル鉱物の鉄の価数とスピン状態のNA ED-MS(放射光メスバウア分光測定)による予察的測定: 135 GPaにおける最下部マントル相、ポストペロブスカイト相の: Fe3+が50%存在しHS 状態、Fe3+もHS状態であることを解明 (BL11XU) 4. 高圧下でのIXS法による音速測定:FeNiSi @151 GPa (BL35XU)A4 研究の現状と研究計画 レーザー加熱ダイヤモンドアンビルセル A5 Diffraction patterns of Fe0.83Ni0.09Si0.08(Fe-9.8wt%Ni-4wt%Si) at 300 K 300K λ=0.4108(1) Å The hcp phase is stable at the pressure of the center of the Earth λ=0.4108(1) Å λ=0.4109(1) Å λ=0.4109(1) Å λ=0.4109(1) Å A diamond anvil compressed at 374 GPa and 300 K Asanuma et al. (2009, AIRAPT) Typical X-ray diffraction profile for Fe-9.8 wt% Ni-4.0 wt% Si under high pressures at ambient temperature A6 核ブラッグ反射を利用した高輝度超単色X線の生成 エネルギー可変の核分光器によるエネルギースキャン エネルギー領域放射光57Feメスバウアー分光法の原理 放射光 Ie 自然幅 14.4 keV V Ig 反強磁性体 57FeBO 単結晶 3 Energy ΔE~neV @ ~ Neel temp. External magnetic field 電子禁制・57Fe-核共鳴散乱が許 容なブラッグ反射による超単色 X線の生成 Smirnov et al. (1997) Phys. Rev. B 55, 5811.Mitsui et al. (2007) Jpn. J. Appl. Phys. 46, L821. 放射光 試料 エネルギー可変の核 モノクロメーターによる エネルギースキャン Mitsui et al. (2007) JJAP, 46, L930. A7 ✓顕微メスバウアー分光測定が可能な装置・技術が整備済 ➡アンジュレータ・ニ結晶分光器・X線集光光学系 ✓XRDとMSの装置が干渉しない ✓X線集光光学系により10–30 min.で測定可能!? ✓BL10XU既存の測定技術・装置が使用できる ➡冷凍機,加熱システム,ラマン散乱システム etc. BL10XUでの高圧XRD・エネルギー領域放射光 57Fe-MS同時測定 世界で唯一のビームライン GC-CRL 0.004˚ (0.06 mrad, 13 arcs) 放射光 SU8-CRL 0.01˚ (0.2 mrad, 38 arcs) 二結晶分光器 アンジュレータ X線集光光学系 DAC NMC 0.001˚ (0.02 mrad, 4 arcs) 14.4 keV (43.2 keV) OUT 検出器 (IP/CCD) @BL10XU IN 14.4 keV 高温発生用 赤外レーザー Energy 図4 XRD 高温高圧 57Fe-MS A8 SPring-8 BL10XUでの高温高圧XRD・エネルギードメイン 放射光57Fe-MS同時測定システムの開発・導入 計画:世界で唯一のビームライン 高温高圧条件で結晶構造・密度と電子構造・ 磁気構造が同時に測定可能 SRエネルギードメイン法の利点 ・地球深部物質の大きくない超微細相互作用や 高圧下での分裂崩壊の観測に適する ・SR運転モードに依存せず,常時測定が可能 ・高輝度放射光+X線集光技術により短時間で測定可能 ・スペクトルが解釈しやすく,解析手法が確立済 A9 エネルギー領域放射光57Feメスバウアー分光法の利点 Energy-domain SR Mössbauer Spectroscopy Energy synchrotron radiation DAC Radioactive Isotope Mössbauer Spectroscopy Radioactive source Energy 従来のメスバウアー吸収スペク トルが取得可能→解釈が容易 線源では測定不可能な100万気 圧以上における微小試料の測定 が可能 核共鳴前方散乱測定と異なり運 転モードに左右されない →ユーザーの利用時間の増加 Nuclear Forward Scattering: NFS (Timedomain) Time synchrotron radiation Time Detector Detector DAC DAC A10 マルチメガバール領域での57Feメスバウアー分光測定 放射光メスバウアー分光により300 GPa領域のメスバウアー吸収スペク トルが数時間で測定可能 GdFe2@302 GPa (Mitsui, Hirao et al. (2009) JSR) A11 High-pressure Brillouin scattering using DAC Diamond Anvil Cell (DAC) apparatus Ar laser (514.5nm) 6-pass tandem Fabry-Perot interferometer High-pressure Brillouin scattering system A12 Combined system for simultaneous measurements Brillouin scattering + XRD + Laser heating Murakami et al., PEPI, 2009 A13
© Copyright 2024 ExpyDoc