腹囲からみた 保健指導を始める時期について 医療法人社団 新虎の門会 新浦安虎の門クリニック ○村山 利恵子 佐藤 由紀子 堀内 純 沼本 美由紀 大前 利道 大前 由美 目的 当院では、ドック・健診をあわせて年間、約1 万人の受検者がいる。来年4月より特定健 診・特定保健指導が開始されるにあたり、昨 年4月から一部の契約健保組合で腹囲測定 を開始した。そのデーターをもとに、肥満の指 標とされているBMIと、メタボリックシンドロー ムの指標である血圧・脂質・血糖に注目して、 保健指導の時期について考察した。 対象 2006年4月から2007年3月の1年間に 腹囲を測定した434人(男性:242人・女 性:192人)を対象とした。 対象年齢は、全受検者である30歳代から 70歳代とした。 方法① ~腹囲A群の過去のデータをさかのぼる~ 腹囲A群;男性85cm以上(対象者139人) 女性90cm以上(対象者22人) の過去のデーターをさかのぼり、 危険因子;血圧:収縮期血圧130mmHg以上 又は 拡張期血圧85mmHg以上 脂質:中性脂肪150mg/dl以上 又は HDLコレステロール40mg/dl未満 血糖:空腹時血糖100mg/dl以上 又は HbA1c5.2%以上 BMI を男女別にみた。 方法② ~腹囲と危険因子・BMIの関係をみる~ 腹囲と危険因子の関係や割合を調べ、それ らを年代別・腹囲径別に比較した。 BMIと腹囲の関係に注目し、腹囲A群が BMI25以上である割合、腹囲基準範囲内 の人(腹囲B群)がBMI25以上である割合 をみた。 成績① ~腹囲A群の過去のデータをさかのぼる~ 一部サンプルの抜粋 年齢 腹囲 A:血圧 B:脂質 C:血糖 数字:BMI 2006 54 111 36 107.5 72 2005 aC 33.7 aC 31.7 C 36.5 107 BC 30.1 BC 29.8 69 102.5 AC 28.1 A 27.9 60 102 aBc 26.8 57 100 C 27.6 - 66 100 BC 26.8 - 50 99 ab 26.5 63 99 AC 28.0 54 98 C 26.2 2004 AC 32.7 2003 AC 32.9 2002 AC 32.5 26.9 aBc 27.1 C - - 27.0 - aBc 27.5 aBc 27.7 ABC 29.5 abC 26.4 aC 25.0 aC 25.8 a 25.0 AC C 26.0 AC 26.9 C 26.7 27.3 - BMI25以上 BMI28以上 過去にさかのぼれた人数 5年 10年 15年 男性 84人 48人 10人 女性 11人 5人 0人 成績② 100 80 60 40 20 0 31 女性 70 60 50 40 30 20 10 0 60 歳 代 27 54 30 57 55 男85㎝未満 男85㎝以上 19 30 5 8 70 歳 代 27 50 歳 代 40 歳 代 21 17 30 歳 代 男性 ~対象者全体の年代別分布~ 28 11 3 5 2 1 30歳代 40歳代 50歳代 60歳代 70歳代 3 女90㎝未満 女90㎝以上 成績③ 100% 80% 60% 40% 20% 0% 100% 80% 60% 40% 20% 0% 女90㎝未満 女90㎝以上 30 歳 代 40 歳 代 50 歳 代 60 歳 代 70 歳 代 全 体 女性 男85㎝未満 男85㎝以上 30 歳 代 40 歳 代 50 歳 代 60 歳 代 70 歳 代 全 体 男性 ~腹囲A群の年代別割合~ 成績④ 62 57 32 3 40 6 22 17 1 2 65 ㎝ ~ 70 ㎝ ~ 75 ㎝ ~ 80 ㎝ ~ 85 ㎝ ~ 90 ㎝ ~ 95 ㎝ 10 ~ 0㎝ 10 ~ 5㎝ 11 ~ 0㎝ ~ 男性 70 60 50 40 30 20 10 0 ~対象者全体の腹囲径別人数~ 7 8 4 2 11 0㎝ ~ 21 10 0㎝ ~ 80 ㎝ ~ 11 16 33 90 ㎝ ~ 43 46 70 ㎝ ~ 60 ㎝ ~ 女性 50 40 30 20 10 0 1 65㎝~ 70㎝~ 75㎝~ 80㎝~ 85㎝~ 90㎝~ 95㎝~ 100㎝~ 105㎝~ 110㎝~ 60㎝~ 65㎝~ 70㎝~ 75㎝~ 80㎝~ 85㎝~ 90㎝~ 95㎝~ 100㎝~ 105㎝~ 110㎝~ 成績⑤ ~腹囲A群の危険因子の内訳~ 女性 男性 なし 血圧・脂質・ 血糖 なし 血圧・脂質・ 血糖 血圧・脂質 血圧・脂質 血糖 血糖 血圧・血糖 脂質 血圧・血糖 脂質 血圧 脂質・血糖 血圧 脂質・血糖 成績⑥ 70歳代 ~腹囲A群 年代別 危険因子数~ 0 60歳代 男性 2 4 3 50歳代 10 7 40歳代 15 20 4 6 20% 7 0 歳代 0 3 100% 0 2 4 0 歳代 0 1 0 2 0 1 1 0% 80% 8 1 3 0 歳代 60% 2 1 6 0 歳代 0 5 0 歳代 2 4 40% 20% 1 40% なし 1項目 2項目 3項目 10 12 5 0% 2 20 9 30歳代 女性 2 1 60% 80% 0 100% なし 1項目 2項目 3項目 成績⑦ 80% 女性 60% 3 3 18 18 9 0 4 1 9 0 2 0 4 10 5㎝ ~ 5 1 4 0 10 0㎝ ~ 90 ㎝ ~ 11 1 6 14 95 ㎝ ~ 21 85 cm 100% 7 0 0 0 0 0 1 1 6 3 1 2 40% 20% 1 2 0% 90㎝~ 3項目 2項目 1項目 なし 11 0㎝ ~ 100% 80% 60% 40% 20% 0% ~ 男性 ~腹囲A群 腹囲径別 危険因子数~ 2 0 95㎝~ 1 0 0 0 100㎝~ 105㎝~ 110㎝~ 3項目 2項目 1項目 なし 成績⑧ ~腹囲とBMIの関係~ 男性 BMI25以上 BMI25未満 女性 9% 41% 59% 腹囲A群 91% 3% 10% 腹囲B群 97% 90% 考察 腹囲A群の、現在から過去のデーターをさかのぼったが、対 象者が少数であったため、明らかな結果は得られなかった。 腹囲A群の、危険因子を1つ以上持っている割合は男女とも 約9割を占めるため、腹囲A群には、きちんとした保健指導 介入が必要である。 男性では、腹囲85㎝前後の人が全体の約半数を占めるた め、この時点での保健指導介入が有効である。また、BMI2 5を基準とするよりも、腹囲85㎝を基準とした方がより早い 段階で、リスク境界域にたどり着くことができる。 女性では、閉経後の腹囲増加がみられるので、この時点で の保健指導介入が重要である。 他の調査データーと比較すると、血糖の基準値に、特定保 健指導の判定値を用い、メタボリックシンドロームの基準値 よりきびしくしため、全体的に危険因子を持っている率が高 い傾向になっていると考えられる。 まとめ ~保健指導開始の時期について~ 腹囲が基準値を超えている人は保健指 導介入が望まれる。 男性では、腹囲85㎝辺りの人の保健指 導が重要である。 女性では、閉経後の保健指導が重要で ある。 今回は、喫煙歴についての調査はしなかったが、喫煙をして いる場合、メタボリックシンドロームを悪化させることが考え られるため、次回調査することがあれば、喫煙歴も含めて検 討したい。
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