発表概要 H28 年度 熊本大学工学部マテリアル工学科「マテリアル工学演習」 氏名(学籍番号) 論文題目 松崎悠弥 (138-t2744) 著者 Ultrafine-grained magnesium–lithium alloy processed by high-pressure torsion: Low-temperature superplasticity and potential for hydroforming Hirotaka Matsunoshita, Kaveh Edalati, Mitsuaki Furui, Zenji Horita 論文出典 Materials Science and Engineering A 640 (2015) 443–448 【緒言】 巨大ひずみ加工(SPD)の中でも高圧ねじり(HPT)加工は、実験研究および理論モデリングの両面から注目され ている。結晶粒超微細化による Al-Cu-Zr 合金の超塑性が Valiev らによって示されて以来、HPT 加工は注目さ れるようになり、他の Al 合金、Mg 合金、Ti 合金などでも超塑性を示すことが報告されている。このように SPD 加工材の超塑性挙動については多くの報告がなされているものの、超塑性を応用した液圧成形については ほとんど報告がない。超塑性液圧成形には、373K 付近の温度で、少なくとも 400%以上の引張伸びを示す材料 が必要である。高比強度を有し、輸送機器に使用される Mg-Li 合金は、超塑性液圧成形の候補材料の 1 つであ る。Mg-8 wt.% Li 合金については、ECAP 加工により超塑性が起こることが報告されている。そこで本研究で は HPT 加工した Mg-8 wt.% Li 合金の温水中での超塑性液圧成形の可能性を調査した。 【実験方法】 Mg-8 wt.% Li 合金の押出材を厚さ 0.9 mm に切断した後、HPT 加工を施し た(室温、1 rpm、3 GPa、5 回転) 。HPT 加工したディスク試料は硬度、引 張特性、微細組織について評価した。硬度はビッカース微小硬度試験を荷 重 50 g、15 秒で行った。引張特性については引張試験を炉内で行った。さ らに、試料の機械的性質に液圧成形がどのような影響をもたらすかを調査 するため、沸騰水中(Fig. 1)でも行った。 【実験結果および考察】 Fig. 1 Appearance of tensile testing facility for pulling samples in boiling water. HPT 加工により平均粒径は約 500 nm と純 Mg[1]の場合より小さい平均粒 径が得られた。また本研究では、HPT 加工によってビッカース微小硬度 57-63 Hv の硬さが得られ、これは押出材の硬度よりも高かった。これらは 溶質原子が転位のすべり運動を妨げ、転位が蓄積し、結晶粒微細化が進行 するためである。引張強度は 110-160 MPa であった。炉内での引張試験に おいては温度上昇により引張強さの低下と破断伸びの増加が見られた。ま た、炉内で温度を変化させて引張試験を行ったところ、323 K 以上において 400%以上の破断伸びを示した。この 323 K は 0.37 Tm(Tm:合金の融点) と低い温度であり、低温での超塑性が達成されたことを示している。また 沸騰水中の引張試験では、1×10-3 s-1、5×10-3 s-1 といった低い初期ひずみ速度 で試験したときに、破断伸びが 400%以上の超塑性伸びを示した(Fig. 2)。こ れは、液圧成形を行うために材料に求められる条件(373 K 程度で引張伸び が 400%以上)を満たす。このことから、Mg-8 wt.% Li 合金に熱水中での液 圧成形を適応できる可能性が示された。 【参考文献】 [1] K. Edalati, A. Yamamoto, Z. Horita, T. Ishihara Scr.Mate:. 64 (2011) 882 Fig. 2 Nominal stress versus nominal strain curves obtained at different strain rates at 373 K in (a) air and (b) boiling water for samples processed by HPT for 5 turns.
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