発表概要 H28 年度 熊本大学工学部マテリアル工学科「マテリアル工学

発表概要
H28 年度
熊本大学工学部マテリアル工学科「マテリアル工学演習」
氏名(学籍番号)
浦内秀平
論文題目
Electron microscopy of new martensites with long period stacking order structures in
(133t2707)
Ni50AlxMn50-x alloys
Ⅰ. Structures and morphologies.
著者
S. Morito, K. Otsuka
論文出典
Institute of Materials Science, University of Tsukuba, Ibaraki 305, Japan
Received 11 July 1995
【緒言】
β 相合金の多くは、規則化した bcc 構造の母相を冷却あるいは応力を負荷することによって、母相の{110}面を底
面として長周期積層構造を有するマルテンサイトに変態することが分かっている。その構造は合金の種類や組成に
依存している。様々な合金の中で Ni-Al 合金は、唯一 7R 構造を有するものとして特異な物理的性質を示すことか
ら注目されている。さらに Ms 点が高いため、高温形状記憶合金としても期待されている。Ni-Al 合金系におけるマ
ルテンサイトの構造は Al の含有量に依存していており、Al≦37.0 at%では 2M(3R, Ll₀)マルテンサイト、Al≧37.0
at%では 14M(7R)マルテンサイトが出現し[2]、両者の構造は詳細に研究されている。Nakano らは Ni45Al15Mn40 合金に
おいて 14M(7R)マルテンサイトを発見し[3]、さらに著者らは Ni50AlxMn50-x 合金を系統的に調査することで、5 層構造
を有する新規マルテンサイト相を発見した[4]。
そこで本研究では、TEM 及び HREM 観察に基づき Ni50AlxMn50-x (16.0≦x≦20.5)合金の形態や内部欠陥とともに
新規マルテンサイトの構造を詳細に解析するとともに、本合金系におけるマルテンサイト変態の組成依存性を確立
することを目的とした。
【実験方法】
純度 Ni: 99.97%, Al: 99.99%, Mn: 99.9%の各種材料を用いてアーク溶解によって Ni50AlxMn50-x (x= 16.0, 16.5, 17.0,
17.5, 18.0, 18.5, 19.0, 20.0)合金を作製し、1273K で 3 日間アルゴン雰囲気中にて均質化した後、1123K で 1 時間氷水
焼き入れを施した。これらのサンプルを電解研磨し、DSC 測定及び室温以下の光学顕微鏡観察によって変態温度を
決定した。さらにマルテンサイトの結晶構造及び形態は TEM(JEM-200CX, 200 kV)観察によって調査した。
【結果および考察】
Ni50AlxMn50-x (16.0≦x≦20.5)合金の母相は B2 型であると報告されている[1]が、Heusler 型(B2, DO₃, L2₁)の組成に
近い。そこで、母相の結晶構造を電子回折パターンから同定した結果、B2 型と決定できた。x≦17.0 の場合のマル
テンサイトの構造は、電子回折図形から 14M であり、x≧19.0 の場合、5 層構造を有していることが分かった。そ
̅ )₂, (32̅)₂, (21̅11̅)₂と予想され、電子回折図形における各種回折強度の実測値と計算値を比較するこ
の積層順序は(41
とで、(32̅)₂と決定された。17.0≦x≦19.0 の場合、14M、10M、及び新規マルテンサイト相が混在していた。この新
規マルテンサイト相は電子回折図形より 12 層の長周期積層構造を有していることが分かり、その積層順序は計算
結果から(52̅32̅)と決定できた。
図 1 に DSC 測定結果から本合金系の Ms 点におよぼす Al と Mn 濃度の影響を示す。
x≦17.0 合金においては二つのピークが現れた。電子顕微鏡観察を行った結果、14M マ
ルテンサイトのみが観察され、その際の温度は室温であり二番目のピークよりはるか
に低くなっていた。また 2 種類の Ms 点において組成依存性が明瞭に直線的に示され
たことから、x≧17.0 で観察された Ms 点は、x≦17.0 で観察された初めの変態に対応
するものと考えられる。これより二つのピークは連続した変態によるものと説明でき
る。以上の結果から、x≦17.0 では B2-10M-14M マルテンサイト変態、x≧19.0 では B210M マルテンサイト変態、17.0≦x≦19.0 では両者の変態が起こることが分かった。
【参考文献】
[1] G. Petzow and G. Effenberg, Ternary Alloys, Vol. 7, VCH, Weinheim, 1993.
[2] Y. Murakami, K. Otsuka, S. Hanada and S. Watanabe, Mater. Trans. Jpn. Inst. Met., 33 (1992)
282.
[3] E. Nakano, R. Kainuma, K. Ishida and T. Nishizawa, Annu. Fall Meet. of the Japan Institute
of Metals, Hiroshima, October 1991, p. 93.
[4] T. Inoue, S. Morito, Y. Murakami, K. Oda and K. Otsuka, Mater. Lett., 19 (1994) 33.
Fig. 1. The proposed phase
diagram of Ni50AlxMn50-x alloys.
The two straight lines also
represent Ms temperatures
measured by DSC.