補足資料(ノルムと級数)

システム制御Ⅱ
第2学期 火 1, 2限 8:40-10:50
5号館 第16講義室
担当:平田 健太郎
補足スライド
ノルムと級数
Systems Control II
1
ノルムの性質:
つぎの性質をもつ関数 ⋅ をベクトルのノルムという.
0;
i)
ii)
0⇔
0.
, : スカラー
iii)
(三角不等式)
ベクトルのノルムの例
Systems Control II
⋮ ,
(ユークリッドノルム)
2
行列のノルム
同様に, 先の性質 i), ii), iii) を満たすものを行列のノルムとして定める
ことができる.
行列のノルムの例
行列
を行列
∈
に対して
のフロベニウスノルム,
sup
を2-ノルム, または作用素ノルムという. 2-ノルムは右辺のベクトル
ノルムから導かれているので, 誘導ノルムともいう.
Systems Control II
3
行列ノルムの性質
(a)
,
(b)
∑
,
: 行列
min
,
の特異値
Systems Control II
4
行列ノルムの性質
(c) 直交行列 に対して
Systems Control II
5
証明: (b) から
tr
より
は
特異値
∑
の固有値の平方根であったから
が成り立つ.
また, 次ページ以降のLagrangeの未定乗数法から
⋯
が成り立つ.
であるから
⋯
よって
Systems Control II
6
Lagrangeの未定乗数法
s.t. ⇒ subject to
~のもとで
等式制約つき非線形最適化問題
Lagrange乗数
最適性の必要条件
Systems Control II
7
2次元の例
等高線
上から見たところ
,
:
0
0
上で
Systems Control II
,
が最大となる点
8
上から見たところ
関数の各座標方向の微係数の
組を勾配という.
:
,
0
≔
,
関数値が最も増加する方向を表す
から,等高線とは直交する.
曲線に対しては法線方向となる.
上で
,
,
が最大となる点
,
の等高線と は接している
,
と
(スカラー倍)
Systems Control II
,
の勾配は同一方向
0
0
9
【未定乗数法の例: 行列の誘導ノルム
Systems Control II
10
証明
Systems Control II
11
証明
(a)
一般の
0に対して
sup
であるから, 定義
sup
より, 上式が示される (
Systems Control II
0のときの等号成立も含めて).
12
証明
tr
より
tr
tr
(トレースの性質より)
は実対称行列であり, 直交行列によって対角化可能
0
tr
⋱
0
:
⋯
Λ
とする (全て非負).
tr Λ
tr
tr
(性質 (b) から)
∴
Systems Control II
13
証明
任意の非零ベクトル
とすれば, (a) から
に対して
および
が成り立つ. 以上から,任意の非零ベクトル
に対して
,
すなわち
が成り立つ. ここで
sup
であるから,
.
Systems Control II
14
証明
より
は自明.
これより
sup
tr
Systems Control II
sup
tr
15
級数の収束
∈
,
0,1,2, ⋯ に対して級数
⋯
を考える. 右辺の和は要素毎に定義する.
とおくとき
が収束するとき, 級数は収束するという.
各 , について∑
補題: (絶対収束)
絶対収束する.
証明:
任意の ,
Systems Control II
のノルム和が収束するとき, 上の級数は
. よって ∑
∞ であれば ∑
について収束. よって, 上の級数は絶対収束する.
が
16
任意の
∈
に対してべき級数
⋯
2!
⋯
!
を考える. 一般項をノルム評価すると
!
!
!
,
上式右辺を一般項とする級数は任意の有界区間
において収束し
≔
,
⊂
!
したがって, 先の補題から, 任意の区間で上のべき級数は絶対収束
するので定義可能. これを行列指数関数といい,
で表す.
絶対収束する級数は項別微分可能
Systems Control II
17
行列指数関数の性質
(a)
(b)
⇒
(c)
Systems Control II
18
証明 (a)
ℓ ℓ
ℓ
ℓ!
ℓ ℓ
!
ℓ
ℓ!
!
ℓ
ℓ
ℓ
ℓ
ℓ
ℓ
二重和
の順序
変更
Systems Control II
19
ℓ ℓ
ℓ!
ℓ
≔
ℓ ℓ
ℓ
!
0,1,2, ⋯
0, ⋯ ,
!
ℓ
Systems Control II
ℓ
ℓ!
ℓ
!
ℓ
!
! !
ℓ
20
! !
二項定理から
∴
Systems Control II
!
,
! !
!
21
証明 (b)
のとき
!
! !
ℓ
ℓ
!
ℓ
ℓ
ℓ
ℓ! !
ℓ ℓ
ℓ
ℓ!
!
ℓ
ℓ
ℓ
Systems Control II
ℓ
ℓ
22
証明 (c)
級数の項別微分より
⋯
2!
2
2!
⋯
2!
Systems Control II
⋯
!
⋯
2!
⋯
⋯
!
⋯
!
!
⋯
23
ジョルダン標準形のまとめ
Systems Control II
24
行列 が相異なる固有値をもつ → 対角化可能
行列 が代数的重複度
の重複固有値 をもつ
↔ det
, rank
,
幾何学的重複度という.
単純行列は対角化可能.
0
1 であるが, この を固有値 の
である行列を単純であるといい,
1
⋱
ジョルダンブロック
⋱
⋱
0
1
⋱
0
0
⋱
c.f.
rank
1 なので
ランクが1つだけ落ちる.
ランクが
落ちる.
0
Systems Control II
25
4次の例
特性方程式はどれも
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0 0
1 0
0
0
0 0
1
0
0
0
0
0
1
0 0
0 0
0
0
0 0
0 0
0
0
0 0
0 0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0 0
1 0
0
1
0 0
ランクが 4 落ちる.
ランクが 1 落ちる.
ランクが 2 落ちる.
1
Systems Control II
ランクが 1 落ちる.
26
0 0
0 0
0
0
0 0
0
0
0
0
0
1/
0
0
0
Systems Control II
1/
1/
1/
27
0 0
0 0
0
0
0 0
1
0
0
0
0
0
0
0
Systems Control II
1/
1/
1/
1/
28
0 0
1 0
0
0
0 0
1
0
0
0
0
0
0
0
Systems Control II
1/
1/
1/
1/
29
幾何学的重複度 の固有値
0
⋱
0
0
に対応するブロックは
⋱
0
なる変換が可能で, これをジョルダン標準形という.
はジョルダンブロックか単なる対角行列
(サイズ1のジョルダンブロックを集めたもの).
ブロック対角行列
0
だから,
Systems Control II
⋱
0
に対して
が求まれば, 任意の に対する
0
⋱
0
が定義可能.
30
ジョルダンブロック ∈
の行列指数関数:
0
,
1
⋱
⋱
⋱
0
はべき零行列, すなわち
0
1
0
0
.
べき零行列の例:
0 1 0 0 1 0
0 0 1 0 0 1
0 0 0 0 0 0
0 0 1 0 1 0
0 0 0 0 0 1
0 0 0 0 0 0
Systems Control II
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
31
!
と
!
1
0
0
⋮
0
1
0
⋮
0
/
/
/
/2! ⋯
⋱
1 ⋱
⋱ ⋱
0 0
1 !
2 !
3 !
⋮
1
は可換であるから,
∴
Systems Control II
1
0 1
0 0
⋮ ⋮
0 0
/2!
⋯
⋱
1 ⋱
⋱ ⋱
0 0
/
/
/
1 !
2 !
3 !
⋮
1
32
微分方程式の解の存在性・一意性
0,
例)
,
0
1
4
一意でない
1
1
1
微分方程式
, において, を
, は の区分的連続関数とする. さらに
,
の任意の点に固定したとき
,
∀ ,
∈
が成り立つような区分的連続関数
∈ に対して初期条件
, の一意解が存在する.
Systems Control II
1 で不連続.
全ての で解が存在しない.
,
∀ ∈
(リプシッツ条件)
が存在するとき, 任意の
∈
を満足し, に関して連続な
,
33
微分方程式の解の存在性・一意性
,
線形システムの場合は
,
,
は定数なので, 区分的連続関数でもある. よって, 任意の
∈
に関して連続な
Systems Control II
,
∈
に対して初期条件
の一意解が存在する.
を満足し,
34