永津 雅章 - 静岡大学

“未来を切り拓く先進プラズマ科学技術を目指して”
教授 永津 雅章(プラズマエレクトロニクス)
1952年生まれ、1982年名古屋大学大学院博士課程単位取得退学、1982年名古屋大学工学部
助手、1985年工学博士(名古屋大学)、1986-1988年UCLA校客員研究員、1989年同工学部
講師、1991年同工学部助教授、2001年静岡大学工学部教授、2006-2008年同創造科学技術
研究フェロー
研究部長、2008-2015年同創造科学技術大学院長、2016年電子工学研究所教授
2011年より第1期卓越研究者、2013年より第2期卓越研究者、2016年より第3期研究フェロー
研究概要
私たちの研究室では、バイオ・医療分野や環境分野へのプラズマ応用に関す
る研究を行っています。プラズマは、固体、液体、気体に続く、第4の物質状
態といわれ、マイクロ波や高電圧パルスなどの電気エネルギーを印加したり、
波長の短いレーザー光を気体に照射することで容易に生成することができま
す。最近は、大気圧下で生成する低温プラズマが注目され、様々な産業分野へ
の応用に向けた研究開発が行われています。例えば、プラズマ照射によりがん
細胞を死滅させたり、歯の治療にプラズマを用いるなどの医療応用の研究が注
目されています。また、プラズマを用いた新たな材料の合成も、新規エネル
ギーデバイスの開発に重要な役割を果たしています。
最近、私たちが行っています研究課題としては、(1)新たな機能を有する
磁性体ナノ微粒子の作製およびRFプラズマを用いた微粒子表面の高機能化技
術の開発(右上図)および(2)それらを用いた超高感度ウイルス・細菌検出
システムの開発や汚染水から汚染物質を効率的に除去可能な新たな吸着材料の
開発、
(3)ミクロンサイズの微細なパターンをマスクレスで作製可能な超微
細大気圧プラズマ装置の開発(右下図)および(4)それらのマイクロバイオ
チップ作製への応用、などが挙げられます。
メッセージ
気体を放電させるには非常に高いエネルギーが必要ですが、蛍光灯の管に触れても、それほど熱くはありませ
ん。実は、蛍光灯内部のプラズマ放電では、封入した気体が電離して生成される電子やイオンの密度は、電離し
ていない気体の密度に比べて4桁も5桁も低いため、放電管内部の温度はそれほど高くないのです。このような
温度の低い状態のプラズマを上手に活用すれば、樹脂などの耐熱性のない材料や生きた細胞に照射しても、熱的
に損傷を与えることを避けることができます。材料の表面には、放電で生成された電子やイオンの他、励起され
た原子や分子が存在するため、表面層だけはプラズマによる影響を受けます。このことを利用して、医療器具の
滅菌に用いたり、樹脂表面を親水性にしたり、薄膜をコーティングしたりするなど、幅広い分野への応用が期待
されています。人口増加による地球温暖化は、環境変化を引き起こし、私たちの衣食住環境の悪化をもたらすこ
とが危惧されています。その意味で、将来を見据えた地球環境や食の安全などの課題解決にプラズマ科学技術が
果たす役割は大きいと思います。
【主な研究業績】
受賞歴:
文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)
(2016)、
応用物理学会フェロー表彰(2014)
、日本学術振
興会第153委員会 プラズマ材料科学賞基礎部門
(2013)
、応用物理学会第10回プラズマエレクトロ
ニクス賞(2012)
、プラズマ・核融合学会学会賞
第16回技術進歩賞(2011)、㈶浜松電子工学奨励
会 第25回高柳記念賞(2011)。
外部資金獲得状況:
科学研究費補助金挑戦的萌芽研究「中空球状ナノ
カーボンのプラズマ合成技術の開発と分子吸蔵効
果の実験的検証」
(2016-2017)、科学研究費補助
金基盤研究(A)
「高選択性ウイルス検出システ
ム開発のための先進的バイオ・プラズマ融合科学
の基盤創成」
(2013-2016)、科学研究費補助金新
学術領域研究(研究領域提案型)「プラズマプロ
セスによる微粒子ミクロ表面のバイオ活性制御技
術の開発と医療応用」(2009-2013)。
委員等:
日本学術振興会科研費審査委員(2015)、大学機
関別認証評価委員会専門委員(2014-2015)、科学
技術振興機構A-STEP FSステージ「探索タイプ」
専門委員(2010-2013)、科学技術振興機構地域ニ
ーズ即応型査読評価委員(2009-2010)。
学会等:
プラズマ・核融合学会副会長・理事(2014-2016)、
日本学術振興会第153委員会企画運営委員(2011-)
、
応用物理学会代議員(2008-2009)、電気学会支部
代表評議員(2008-2009)、マイクロ波放電に関す
る国際ワークショップ国際組織委員(2006-)。
著書・論文:
1)永津雅章(分担執筆),“ナノ粒子の表面修飾
と分析評価技術 ~各種特性を向上するためのナ
ノ粒子表面関連技術とその評価~”,執筆部分;
第1章・第2節・第8項,第4章・第4節,㈱情
報機構.
2)T. Abuzairi, M. Okada, Y. Mochizuki,
N. R. Poespawati, R. Wigajatri and M.
Nagatsu,“Maskless functionalization of
a carbon nanotube dot array biosensor
using an ultrafine atmospheric pressure
plasma jet”, Carbon, 89(2015)pp. 208-216.
3)I. Topala and M. Nagatsu,“Capillary
plasma jet: a low volume plasma source
for life science applications”, Appl. Phys.
Lett., 106(2015)054105(5pages).
Shizuoka University
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