【東京海洋大学大学院】 申 請 名: 岸壁係留船舶の津波防災・減災対策

【東京海洋大学大学院】
申 請 名: 岸壁係留船舶の津波防災・減災対策に関する調査研究
著者らは岸壁係留船舶の津波防災・減災対策として、「増しもやい」と「浮体式津波対策用岸壁」
について研究を行ってきた。本調査研究では、現在津波防災対策の検討が行われている港湾の港湾
関係者に対して現地ヒアリング調査を実施した。また、その他津波の来襲が想定される地域での現
地調査及び学会に出席し、津波関連研究の動向調査を行った。
調査結果から明らかになったことは、①津波来襲時は人命が優先されるため陸上関係者による「増
しもやい」の作業は難しい、②船側が保有する係留索の本数や索径は船側で決めるため、陸上関係
者側から指示することは難しい、③岸壁に設置されているガントリークレーンは倒れやすく、軽微
な破損であっても以後の作業に支障が出る、④防舷材の破損を防がないと震災後岸壁が使用できな
い等、である。このことから、「増しもやい」のみによって岸壁係留船舶の津波防災を行うことは、
実務上難しいことがわかった。ただし、東日本大震災での事例のように実際に有効だった事例もあ
ることから、船側に対してその効果を周知していくことや、大きな津波被害が想定される港湾にお
いては有効な係留索の張り方を予め指導するといった対策を行っていくことが重要である。また、
「増しもやい」だけでは津波被害を防ぐことが難しい港湾においては「浮体式津波対策用岸壁」は
有効である可能性があることがわかった。ただし、コンテナヤードとして「浮体式津波対策用岸壁」
を用いた場合、ガントリークレーンは多少の揺れでも倒壊や破損の危険性があるため、「浮体式津
波対策用岸壁」自体の動揺を低減することや「浮体式津波対策用岸壁」の利用目的についてさらに
検討を行っていくことが重要であることがわかった。