PVT - 北海道泌尿器科記念病院

第104回 日本泌尿器科学会 総会
ミニマム創前立腺全摘術後の鼡径ヘルニアと
腹膜
状突起切断法(PVT)によるその予防
Processus Vaginalis Transection
精管
精巣血管
右内鼠径輪
三浦克紀 関晴夫 田要
古野剛史 奥山みどり
PV
南谷正水 松野正 谷口光太郎
北海道泌尿器科記念病院
はじめに
●!1996年 Reganにより、RRP術後に鼡径ヘルニア(IH)
! が多く発症することが報告された。
●!現在では 5~30 %に発症すると認識されており、
! 無視できない合併症のひとつとなっている。
●!当科におけるミニマム創RRP術後の IH 発症状況
! および PVT による予防について報告する。
当科のIH発症状況
対 象! :! 2010~2012年にミニマム創RRPを行い、
!
!
1年以上経過観察した 50 例(100 側)
観察期間!:! 12~62 か月(平均 42 か月)
IH 発症!
:9 例(18 %)/ 11 側(11 %)
!
右 5 例 左 2 例 両側 2 例
発症までの期間!:4~31 か月 平均 11 か月
0
10
20
30
40 か月
Risk Factor
● 年齢、PSA、stage、手術時間、出血量 → 有意差なし
● BMI → IH発症群が有意に低い
IH発症
21.8
p=0.03
非発症
23.7
Student t-test
10
20
30
40 BMI
● IH 発症の 9 例中 8 例が BMI 25 未満
IH発症
BMI<25
BMI≧25
非発症
10
20
30
40
50
例
小 括
● ミニマム創RRP後、18 %の症例に IH が発症した
● 右側に多く、術後平均 11 か月で発症していた
● IH 発症群はBMIが有意に低く、9 例中 8 例が
! BMI 25 未満だった
そこで、2012年9月以降
BMI 25 未満の症例を対象に
腹膜
状突起切断法:PVT による
ヘルニア予防処置を行った。
腹膜
状突起切断法:PVT
step ①
外腸骨静脈上で精管を同定・切断
状突起 ④
内鼠径輪
精索
=
②
③
腹膜
=
精巣血管
⑤
①精管
足
頭
step ②
精管を内鼠径輪方向に剥離、
合流する精索を同定
step ③
精索から精管と精巣血管を分離
step ④
残りの組織(PVを含む)を結紮・切断
所要時間:片側で平均 6 分
step ⑤
PV断端∼腹膜下縁を頭側に剥離し
内鼠径輪から離す
Step 1 : 精管 結紮切断(右)
足
右
左
精管
外腸骨静脈
頭
Step 2 : 精索 同定剥離
精管
精索
足
右内鼠径輪
右
左
頭
Step 3 : 精索から精管・精巣血管を分離
足
精管
PV
右
左
精巣血管
PV
頭
Step 4 :
状突起 結紮切断
精巣血管
足
右
左
頭
PV
近位断端
状突起がない場合
腹膜下縁を精索から剥離
足
右
左
頭
精索
腹膜下縁
PVT42側中、明らかに
状突起が
なく、腹膜下縁の剥離のみとした
もの→12側(28.6%) 結 果
対 象!
:!PVT導入後、1年以上経過観察した 39 例
!
!
!
!
PVT 施行 (BMI 25 未満):22 例
PVT 非施行(BMI 25 以上):17 例
観察期間! :12~35 か月(平均 22 か月)
PVT 施行! 22 例 IH 発症 0 例
PVTに伴う合併症なし
PVT 非施行!
17 例 → IH 発症 1 例
BMI 25 未満におけるPVTの効果
IH発症率
30 %
IH発症
非発症
PVTなし
8
30
PVT施行
0
22
p<0.05
Fisher's exact test
20
21%
10
0
0%
PVTなし
PVT施行
考 察
・術後 2 年以内に発症
RRP術後IH
・65 %が右側
・91 %が外鼠径ヘルニア(間接ヘルニア)
・発症率:open RRP 16 % / MIS 7 %
原因
Risk Factor
潜在的PV開存+腹壁損傷によるヘルニア防御機構
(valvular action・shutter mechanism)の破綻説
高齢、Low BMI、吻合部狭窄
subclinical IH、対側IHの既往
Zhu et al. J Urol 2013
Systematic Review
IH予防の報告
予防法
報告者
Sakai
精索
単純剥離
2009
Taguchi
2010
河野
2012
内鼠径輪
縫縮
Stranne
PV開存例
にプラグ
Lee
2010
2014
Fujii
PVT
2010
Koike
2013
BMI<25にPVT
本報告
2016
術式
例数
観察期間
IH発症率(%)
p
RRP
62
対照20
41
41
1.6
50
<0.0001
RRP
101
対照170
12
24
0
11.8
0.009
RRP
186
対照107
22
48
11.4
29.6
N.S.
RRP
254側
対照254側
36
36
3.5
9.1
0.011
RARP
51側
対照47側
12
14
0
34
<0.003
RRP
138
対照431
24
43
1.4
24
<0.0001
RRP
115
対照115
27
50
0.87
15.7
<0.0001
MIES
RRP
22
対照38
22
43
0
21.0
0.02
結 語
● 当科でのミニマム創RRP 術後、18 %に IH が発症した
● BMI が低い症例に多く、ほとんどが 2 年以内に発症した
● PVT を行うことにより、片側 6 分でほぼ完全に防ぐこと
が可能であった
● これまでにBMI 26 以上では IH 発症例はなく、現在は
BMI 26 未満の症例に PVT を行っている