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全 容 解 明に向けて
神戸税関宇野税関支署岡山空港出張所統括監視官付
東京税関調査部統括審理官(検察第7部門担当)付 審理官
井上 睦 美
渡邉 優憲
【平成 22 年Ⅱ種行政】
【平成 16 年Ⅱ種行政】
私は、神戸税関宇野税関支署岡山空港出張所に所属しており、出
重要視されてきています。不正薬物の流入や国内でのテロ活動を
私の所属する統括審理官部門は、税関で摘発された麻薬や覚醒
ういった重圧の中で、時に困難な局面を迎え、調査に行き詰まる
入国する旅客の手荷物検査を行っています。日本では、拳銃、覚醒
未然に防ぐためには、私たち税関職員がこれらを水際で阻止しな
剤をはじめとする不正薬物やコピー商品等の密輸事件、また関税
こともあります。しかし、そんな時こそ上司や同僚と協力し、知
剤や大麻などといった不正薬物、偽ブランド品などの知的財産侵害
ければなりません。テレビニュースで不正薬物やテロに関連する
等の脱税事件の犯則調査を行なっています。
恵を出し合って次の有効な一手を探り続ける。こういった試行錯
物品、国際的に取引が厳しく規制されているワシントン条約に該当
事件などについて取り上げられるたびに、自分の仕事の重要性に
犯則調査の目的は、関税法に基づき、事件の真相を明らかにす
誤とチームワークに審理業務の醍醐味があり、やりがいを感じて
する動植物など、国内への持込みが禁止されているモノがたくさん
ついて改めて思い知らされます。覚えることも多く、緊張感のあ
ることによって嫌疑者を特定し、最終的にこれらの者を処分した
います。専門的な職場に身を置き、自分の未熟さを痛感する毎日
あります。日本に出入国する人は、ほとんど善良な方ですが、残念
る仕事ですが、自身の力で日本を守るという実感を得ながら、日々
り、検察官に告発することです。
の中にあっても、最終的に事件が解明できた時は達成感と同時に
ながらその中に紛れて、持込みが禁止されているモノの密輸出入を
仕事に取り組んでいます。
具体的な調査内容を挙げると、
「張込」や「尾行」に加え「嫌疑者
一回り成長した自分を体感することができます。
企てる人がいるのも現実です。私たち税関は、そうしたモノが国内
また、税関は海外との接点が多い職場のため、仕事を通じて異
の取調べ」といった独特の技術と経験が要求されるもの、さらには、
一方、大きな社会問題となっている危険ドラッグの乱用とそれ
に持ち込まれないよう水際で阻止するために、
取締りを行っています。
文化に触れることができるという点も魅力の一つです。岡山空港
裁判官への令状請求を経て行なう「関係場所の捜索」や「証拠品の
に伴う数々の痛ましい事故を背景として、平成 27 年 4 月、関税法
平成 27 年4月から、指定薬物が「輸入してはならない貨物」と
は、成田空港や羽田空港といった大空港と比べると航空機の便数
押収」等といった強制調査があります。また、業務の性格上、警察
改正により「指定薬物」が関税法上の「輸入してはならない貨物」
して法律に追加され、全国の税関における平成 27 年の不正薬物摘
は少ないですが、それでも、毎日様々な国から旅客が入国してき
や麻薬取締部等といった他の捜査機関と連携して業務を行うこと
に追加されました。これに伴い我々の処理すべき犯則調査の件数
発件数は、1,896 件と過去最高を記録しました。最近では、地方
ます。その分、語学力も必要となってきますが、税関は研修制度
が多いのも特徴のひとつです。こういった業務は私にとって常に
も大幅に増加しましたが、薬物犯罪は依然として多くのメディア
空港を狙った不正薬物の密輸入が増加しており、その手口も年々
が充実しており、働きながら自分の語学力を高めることができま
刺激的であり、初めての家宅捜索や取調べ前日の晩には、緊張と
を通じて私達の前から姿を消すことはなく、税関に寄せられる国
巧妙化しています。手荷物の中や服の内側に縫い付けて隠匿した
す。語学研修に限らず、様々な研修を受ける機会もあり、税関業
興奮でなかなか眠れなかったことを覚えています。
民の期待は一層高まっています。
り、飲み込んで密輸入しようとしたりするなど、その方法は様々
務において必要となる専門知識を深めることもできます。
犯則調査の方針や段取りは事件を扱う人によって様々であり、
密輸を水際で食い止め、事件の全容解明によって潜在的な密輸
です。私たち税関職員は、密輸入の手口を日々研究し、職員一丸
税関の仕事は非常に幅が広く、色々な経験を積むことができる
となって取締りを行っています。
上に、やりがいのある仕事ばかりです。みなさんも、安全・安心
のか?」常に想像力を働かせての舵取りが求められます。つまり、
安心への貢献の形です。
テロに対する取締りもますます厳しくなり、税関の安全対策が
な社会の実現のために、税関で一緒に働きませんか?
事件を解明できるかどうかは担当部門や担当者の経験や力量、何
皆さんも信念を持って私達と一緒に働きませんか。
「どこに有力な証拠が隠れているのか?」
「誰が事件に関係している
の脅威を未然に防ぐことは税関職員だからこそできる日本の安全・
よりその熱意に掛かっていると言っても過言ではありません。そ
旅具通関とは?
不正薬物の摘発件数と押収量の推移
(摘発件数:件)
(押収量:kg)
1,200
2,000
1,500
900
1,000
600
500
300
0
旅具通関とは、旅客又は乗組員の携帯品、引越荷物等の別送品に対する簡易な通関方法です。
9
JAPAN CUSTOMS
平成 27 年の全国の税関における不正薬物
全体の押収量は約 519kg(前年比 18%減)
と 2 年連続で減少したものの、5 年連続で
500kg を超えました。また、指定薬物が関
税法上の「輸入してはならない貨物」に追加
されたことに伴い、摘発件数は 1,896 件(前
年比約 4.9 倍)と過去最高を記録するなど、
依然として深刻な状況となっています。
H18
H19
その他
H20
H21
H22
大麻
H23
H24
覚醒剤
H25
H26
H27
0
件数
なお、押収した不正薬物は、薬物乱用者の
通常使用量で約 1,498 万回分に相当します。
*その他とは、あへん、麻薬(ヘロイン、コカイン等)、向精神薬及び指定薬物をいう。
JAPAN CUSTOMS
10
財務省・税関の業務
審
理
空港旅具
財務省・税関の業務
安 全・安心 な日本 のために