数学の楽しみ 1D[第 9 回・演習問題の解答例(その 2) ] 9.2 次で定義される数列 (an ) を考える: an = n 1 1+ . n 数列 (an ) が単調増加で,かつ任意の n ∈ N に対し an < 3 であることを証明せよ. [証明]まず数列 (an ) が単調増加であることを示す(実際には以下のように,狭義単調増加であることがわ かる) .an の定義式の右辺を二項定理により展開すると次が得られる(二項係数を an = n k X n 1 k k=0 n =1+ n k と書く) : n X n · (n − 1) · (n − 2) · · · · · (n − k + 1) k! k=1 · 1 nk n X 1 n n−1 n−2 n−k+1 · · · · ··· · k! n n n n k=1 n X 1 1 2 k−1 =1+ ·1· 1− · 1− · ··· · 1 − k! n n n k=1 n k−1 X 1 Y l =1+ 1− . k! n =1+ k=1 (∗) l=0 また,n を n + 1 で置き換えて an+1 = 1 + n+1 X k=1 k−1 1 Y l 1− . k! n+1 l=0 したがって "k−1 k−1 # n n X Y Y 1 Y l l 1 l an+1 − an = 1− − 1− + 1− . k! n+1 n (n + 1)! n+1 k=1 l=0 l=0 l=0 右辺各項はすべて正なので,an+1 − an > 0,つまり an < an+1 である.すなわち (an ) は狭義単調増加であ ることがわかった. 次に任意の n ∈ N に対し an < 3 であることを示す.n = 1 のときは a1 = 2 < 3 なので,以下では n ≥ 2 とする.そのとき,再び (∗) を用いて n k−1 n n X X X 1 Y l 1 1 an = 1 + 1− <1+ =2+ . k! n k! k! k=1 l=0 k=1 k=2 k ≥ 2 に対し 1/k! ≤ 1/2k−1 であることを用いて an < 2 + n X k=2 1 2k−1 =2+ 1− 1 2n−1 <3 を得る. コメント 問題文で注意したことをもう一度確認しておきます.この議論は新しい数 e を定義するためのものでし た. 「上に有界な単調増加数列は収束する」という定理(実数の完備性の一表現)があるので,それを適用す るために,前提となる 2 つの仮定の成立を確かめたわけです. 第一の目的はそれだったので,大雑把に an < 3 という評価を与えたのですが,上の議論に少し工夫を加 えるだけで,もっと精密な上からの評価も得られます.たとえば an < n n n X 1 1 X 1 1 X 1 1 1 1 13 = 1+1+ + < 2+ + < 2+ + · = 2+ (= 2.722 · · · ) k! 2 k! 2 3! · 4k−3 2 6 1 − 1/4 18 k=0 k=3 k=3 1 など(計算途中では n ≥ 5 としましたが,(an ) は単調増加ですから,結果的にはすべての n について 正しい不等式です).一方で下からの良い評価を得るのは大変ですけれど,コンピュータで計算すると a74 = 2.7001 · · · .これで e の小数第一位までの値が 2.7 であることがわかりました. n ∞ X X 1 1 でもあります(これを とも書く).こちらのほうが n→∞ k! k! 授業でも触れたとおり,実は e = lim k=0 k=0 収束がはるかに速い. Y なお,もしかしたら初めてかもしれませんが, は積を表す記号です(π の大文字 Π を大きくした記号. π は product の頭文字 p に対応します).使い方は (シグマ)の大文字 Σ を大きくしたわけです) . 2 X と同様です(こちらは sum の頭文字 s に対応する σ
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