解 答

伊 藤 塾
物権混同と債権混同
①(午前 H20-10-ウ)
AがBに対する債権を担保するためにB所有の土地に1番抵当権の設定を受け,Cがその土地の上
に2番抵当権の設定を受けた場合において,AがBを単独で相続したときは,Aの抵当権は消滅しな
い。
②(午前 H16-8-オ改題)
Bがその所有する土地に,抵当権者をA,債務者をCとする1番抵当権及び抵当権者をD,債務者
をCとする2番抵当権をそれぞれ設定した場合において,Aが単独でBを相続したときは,1番抵当
権は,消滅しない。
解 答
① × Aの一番抵当権が混同により消滅するとすれば,AはCの2番抵当権に優先する抵当権を有
していたにもかかわらず,Cに優先される結果となり,Aに不利益な結果となるため,混同の
例外としてAの抵当権は消滅しないが,AがBを単独相続したときは,Aの被担保債権が混同
により消滅する以上,Cが2番抵当権を有していても,Aの抵当権は不従性により消滅する。
② ○ 第1順位の抵当権と抵当権の設定された物の所有権が同一人に帰属したとしても,その物に
第2順位の抵当権が設定されていた場合には,第1順位の抵当権は物権の混同の例外として消
滅しない(大判昭8.3.18)。
1
物権混同と債権混同の比較ができているか
論点抽出
2
比較
①,②ともに後順位抵当権者が存在しているが,①では債権混同が生じ,②では,債権混同は生じてい
ないことから結論が異なってくる。①では,設定者=債務者であるため,被担保債権が消滅した以上,抵
当権は,後順位抵当権があったとしても,付従性により消滅する。それに対し,②のケースでは,設定者
=債務者ではない場合であり,債権混同は生じない。そして,物権が混同で消滅するかどうかを検討する
と,後順位抵当権者Dが存在するため,混同抹消の例外に当たり,1番抵当権は消滅しない。以上のよう
に,まずは債権だけに着目をして,債権レベルで混同が生じているのかどうかを確認し,債権が消滅して
いれば抵当権は絶対に消滅し,債権が消滅していなければ,続いて物権混同を考えるという手順となる。
【①
債権混同】
A
1番
抵当権
【②
C
2番
抵当権
A
C
A
債権混同と物権混同を10分で
比較整理する講義
1番
抵当権
B
B
物権混同】
B
A
-1-
D
2番
抵当権
司法書士試験
3
関連論点&派生論点
・混同の事例
【事案1】
【事案2】
【事案3】
【事案4】
事案
A所有の土地にBが地上権の設定を受けた
後,Cが抵当権の設定を受け,その後,B
がAから土地所有権を取得した。
A所有の土地にBが地上権の設定を受けた
後,Cが抵当権の設定を受け,その後,C
がAから土地所有権を取得した。
A所有の土地にB・Cが準共有の地上権の
設定を受け,その後BがAから土地所有権
を取得した。
A所有の土地にBが地上権の設定を受けた
後,CがBの地上権を目的として抵当権の
設定を受けた。その後,BがAから土地所
有権を取得した。
【事案1】
結論
Bの地上権は消滅しない
Cの抵当権は消滅する
Bの地上権は消滅しない
Bの地上権は消滅しない
【事案2】
①Bの
②Cの抵当権
①Bの
②Cの抵当権
地上権
A
地上権
B
A
C
・土地の賃借人がその対抗要件を備えた後に,同土地に第三者が抵当権を設定した場合には,その後,土地
の賃借人が当該土地の所有権を取得したときでも,賃借権は混同により消滅しない(最判昭46.10.14)。
∵対抗要件を備えた賃貸借は,物権と同視することができる。
・Aがその所有する土地を建物所有目的でBに賃貸し,Bがその土地上に建物を所有する場合において、
A及びCがBからその建物を買い受けても,賃借権は消滅しない(借地借家法15Ⅱ)。
∵借地権が混同により消滅すると,他の準共有者が不当な利益を受けてしまう。
4
学習の指針
平成に入ってからの本試験における混同の出題実績は,平成20年,16年,13年,3年となっている。重
要な分野であり,今年の出題可能性も高いのでしっかりと対策しておこう。一番の肝は物権混同・債権混
同を明確に比較し,理解することである。その他の事例もしっかりと理解した上で帰結を押えておこう。
上記のような簡易な図を書いた上で事例を検討することにより,ケアレスミスを防ぐことができる。
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