(∆W/A)2 = kp・t - 熊本大学工学部マテリアル工学科

H28 年度
熊本大学工学部マテリアル工学科「マテリアル工学演習」
氏名(学籍番号)
論文題目
著者
論文出典
発表概要
永岡佑脩 (135-t2737)
Oxidation Resistance of Mo Coated with Mo(Si,Al)2 Layer Prepared by Dipping into Liquid of Al-25
mass%Si Alloy
Shinsuke Kunitsugu1, Norihide Nishida, Takao Tomiya, Masahiro Nagae,
Makoto Nakanishi, Tatsuo Fujii and Jun Takada
Materials Transactions, Vol. 46, No. 2 (2005) pp. 215 to 218
[諸言]
Mo 基合金は,その高い融点を活かして,代表的な耐熱材料である
Ni 基超合金の代替材料として注目を集めている。しかしながら,700
K 以上で容易に酸化されるという欠点があるため,その実用化におい
てはアルミナイド等で表面を被覆し,高温下での耐酸化性を付与する
必要がある。そのような耐酸化性皮膜として,Mo(Si,Al)2 が挙げられ
る。この Mo(Si,Al)2 は Si を含む Al 融液に Mo を浸漬することで表面
に形成できることは既に報告されているが 1.2),その耐酸化性に関す
る実験的な検証は未だなされていない。そこで本研究では,Al-Si 融
Fig. 1 Cross-sectional microstructures of
液に Mo を浸漬することで Mo(Si,Al)2 皮膜を生成し,その微細組織と
the product layer of the sample
酸化挙動について明らかにすることを目的とした。
after dipping into Al-Si liquid at
[実験方法]
1123 K for 43.2 ks.
純度 99.95 %の Mo を直径 10 mm,厚さ 5 mm に加工した。これを
1123 K に保持した Al-25 mass%Si 融液に 43.2 ks 浸漬して,Mo(Si,Al)2
を得た。この場合,表面には Al-Si 合金が付着し,Mo(Si,Al)2 そのも
のの耐酸化性の評価を困難にするため,融液に浸漬後,室温にて
NaOH 飽和水溶液に浸して余分な Al-Si 合金を取り除いた。その後,
Mo(Si,Al)2 皮膜の耐酸化性を評価するため,大気中,1473 K に最大 360
ks 保持し,その際の重量変化を調査した。さらに,XRD 測定や EPMA
分析によって,Mo(Si,Al)2 皮膜中の構成相の変化を調査した。
[結果および考察]
Fig. 1 は,Al-Si 融液に浸漬した後の試料断面の SEM 像である。表
面付近には厚さ約 80 m の均一な化合物層が形成されている。XRD
測定の結果,これは Mo(Si,Al)2 皮膜であり,定量分析によって組成は
Fig. 2 Cross-sectional EPMA maps of the
Mo(Si0.85,Al0.15)2.25 であることがわかった。
sample oxidized in air at 1473 K
これを酸化試験に供した後の元素マッピングの結果を Fig. 2 に示す。
for 360 ks.
2 次電子像から 4 つの異なる領域が確認される。特に注目すべきは最
表面に位置する反応層であり,Al と O の分布よりアルミナが生じて
いると考えられる。このアルミナ層は非常に密着性がよく,亀裂など
も確認されなかったことから,高温酸化雰囲気からの Mo の保護に役
立っていると考えられる。
Fig. 3 は,Mo(Si,Al)2 皮膜を持つ Mo に対する 1473 K での酸化時間
(t)と単位面積当たりの重量増加量(W/A)の関係を示したグラフであ
る。W/A は酸化時間の平方根に比例して増加したことから,反応速
度定数(kp)に対して次の関係式が導き出せる。
(W/A)2 = kp・t
この場合の kp 値は 2.1 × 10-4 g2m-4s-1 であり,先行研究 3)によって
得られた Mo(Si,Al)2 バルク材での kp の値とよく一致した。したがって, Fig. 3 Specific mass gain of the sample
as a function of oxidation time in
本研究で得られた Mo(Si,Al)2 皮膜は,バルク材と同等の高い耐酸化性
air at 1473 K for 3.6–360 ks.
を有することが明らかとなった。
[参考文献]
1) T. Maruyama, K. Yanagihara and K. Nagata: Crros. Sci. 35 (1993) 934–944.
2) M. Nanko, A. Kitahara, T. Ogura, H. Kamata and T. Maruyama : Intermetallics 9 (2001) 637–649.
3) C. E. Ramberg and W. L. Worrell: J. Am. Ceram. Soc. 85 (2002) 444-452.