酵素を用いない高感度遺伝子検出ツールの開発

平成27年度ベンチャー・ビジネス研究活動報告書
研究開発課題代表者
(所属・職名・氏名)
研究開発課題名
(研究開発期間)
マテリアルサイエンス研究科・教授・藤本健造
酵素を用いない高感度遺伝子検出ツールの開発
(平成27年度~29年度)
1. 研究開発課題の概要
藤本研究室で開発された光反応性核酸技術とDNAチップ技術の融合により、酵素を用いること
なく、極微量しか存在しない疾患マーカーを検出可能な遺伝子検出ツールを開発する。酵素試薬
を用いない技術であることから検査コストの低減、また、煩雑な前処理操作を必要としないこと
からプロトコル簡略化による迅速な検出・システム化、さらに、人的エラーの低減による信頼性
の向上が期待できる。通常酵素を用いて行われる標的遺伝子の蛍光標識を、光反応性核酸を用い
て行う技術の改良、および、標的遺伝子のDNAチップへの結合の光反応による高効率化技術を確
立することで、目的の遺伝子検出ツールを開発し、基礎技術の確立後、医療現場のニーズにあわ
せた、高感度乳がんマーカー検出ツールやマイクロRNA検出ツールの開発を目指す。低コスト化
、迅速化、信頼性向上により、遺伝子診断システムの臨床応用を促進し、増大する医療費の低減
、高齢者のQOLの向上に貢献する。平成27年度は「検体遺伝子の光反応による蛍光標識化技術
のブラッシュアップ」を、平成28年度は「DNAチップ検出の光反応による高効率化」を主に実
施する。平成28年度の後半以降、
「製品化を意識した有効性の評価」および「標的疾患マーカー
の絞り込み」を行い、事業化に繋げる。
2. 研究成果(途中年度の場合は進捗状況)
2-1 光反応性核酸の光反応性の基礎検討
本プロジェクトでは超高速核酸光架橋反応を巧みに用いることで、酵素を用いない、高感度・
高効率な核酸検出ツールを開発することを目的としている。再現性が高く、安定的な核酸検出技
術を確立するため、基礎反応となる超高速核酸光架橋反応の詳細、つまり「光架橋反応の反応速
度を左右するファクターは何
であるか?」を科学的に理解
しておくことは極めて重要で
ある。そこで平成27年度は
、超高速核酸光クロスリンカ
ーである3-シアノビニルカル
バゾールヌクレオシド( CNV K
)の標的塩基であるウラシル
図1 (A) 評価に用いたDNAの塩基配列と光反応スキーム(B)CNVKと5置換2'
デオキシシウリジンの化学構造(C)評価したウラシル5位の官能基
誘導体の5位の置換基が、光反
応性に及ぼす効果について検
討した。
図1aの「X」の位置に各5置
換ウラシルを含むオリゴDNA
に対して、相補的なCNVKを含む
光反応性核酸を添加し、光架橋
反応性を評価した。結果(図2
)、ウラシル5位の置換基によ
って最大で2倍の反応性の差
が見られ、光反応性が5位の置
換基に大きく依存することが
明らかとなった。密度汎関数法
(DFT、B3LYP/6-311++G(d,p)
)により求めた各5置換ウラシ
図2 各5置換ウラシルとCNVKのDNA2本鎖中での光架橋反応
ルの最低非占有分子軌道(LU
MO)のエネルギー準位と、光
反応速度を比較した結果、これ
ら2つの値に良い相関が見ら
れた(図3b)ことから、光架
橋反応の標的ピリミジン塩基
のLUMOが、光反応速度に大き
く影響することが明らかとな
った。一方で、各2重鎖DNA
の2重鎖融解温度(Tm)と光
架橋反応速度には有意な相関
が見られなかったことから、光
架橋反応に2重鎖DNAの熱力
学的安定性は寄与しないこと
が明らかとなった。
図3
5置換ウラシルの光反応性とLUMOとの相関
ここで得られた基礎的な知
見は標的核酸の光照射による蛍光ラベリングおよび、標的のDNAチップへの固定時における光反
応性人工核酸の設計における基礎的な情報として有用である。
2-2 研究成果の発表・知財および共同研究
上記の研究成果を含め、平成27年度の成果として3報の学術論文を報告した。また、18件
の国内学会発表、4件の国際学会発表、PEGS Europe 2015や BioTech 2015 (2015.5.13-15
「光を用いた核酸類操作法の開発」)における展示ならびに発表を行い、学術会ならびに事業化
を視野に入れた産業界へのアピールに務めた。また、平成27年11月より「日華化学株式会社
」との共同研究を開始し、事業化・製品化に向けた技術の具体化に取組んでいる。
(作成に当たっての注意)
・ 研究開発課題の概要及び研究成果については、産学官連携総合推進センターのホームページに掲載予定のため公
表可能な範囲で記入すること。
・ 2ページ以上4ページ以下(図表、写真等を含む)にまとめること。
・ 特許の出願番号、発明の名称等、実用化・製品化されたものがある場合は、その名称を挙げること。
・ 起業化まで進んだ場合は、その旨記載すること。