職 人さんに知ってほしい 材料の話 今回の回答者:中島 英雄さん (ヤブ原産業㈱ 広報担当) 9 『 天 然 石舗装材』について 第 回 テーマ 図 1 天然石樹脂舗装材の透水性 《はじめに》 天然石舗装材のなかでも天然石樹脂舗装材について紹 介します。天然石樹脂舗装材は、天然石玉砂利と透明な 樹脂で固化させた舗装仕上材(塗床材)の総称です。 この舗装材仕上げは50数年前にすでにアメリカに存在 しており、その当時日本人がその仕上りを見て、左官的 施工方法(コテ塗り)を取り入れて、国内での施工を始め ました。天然石と液状樹脂を混練し、コテ塗りするとい う簡易的な施工性から国内の建材メーカー、施工業者が 取扱うようになり、短期的に普及しました。 図 2 天然石樹脂舗装 当時は天然石を固化させるための樹脂(バインダー) は、二液反応硬化型エポキシ樹脂でした。玉砂利間の接 着点が小さいので、その保持のためには最も強度の高い エポキシ樹脂が用いられていました。しかしながら、外 部に施工することが多く、耐候性(主に紫外線劣化によ る黄変、樹脂の劣化)が劣るエポキシ樹脂は耐久性に難 がありました。エポキシ樹脂の耐候性を向上させる改良 や保護用のクリヤー仕上げを行う対策が取られました が、エポキシ樹脂の構造上、紫外線の影響を受ける芳香 図 3 最密充填仕上げ 族環をもつため限界がありました。このことにより、取 扱う会社が減少していきました。 その後バインダーは、耐候性の良い溶剤系一液型ウレ タン樹脂、アクリル樹脂などが開発されて使われるよう になりました。但し、価格がエポキシ樹脂に比べると高 価なので普及には時間がかかりました。また、溶剤を含 むので室内への施工が制限され、作業者への有害性など から無溶剤へ改良されて現在は、この無溶剤一液型ウレ タン樹脂が主流となっています。また、一部水性(エマ ルション)を使用している製品がありますが、耐久性は 50 No.478 2016 年 6 月号 図 4 洗い出し仕上げ それと比較して劣ります。 ④ セメントモルタル充填仕上げ 使用する骨材は主に天然石玉砂利ですが、砕石やリサ 洗い出し仕上げの場合は、バインダーが硬化したのち イクルガラス片、セラミック骨材なども使用されます。 (翌日以降)、専用セメントモルタルを水と混練りし、 またこれらを組み合わせて使用する場合もあります。 適切な粘度にして、骨材間の空隙に充填します。ゴム さらに、最密充填骨材を使用して部材強度を上げる製 ゴテを用いて余剰分をかき出して仕上げます。 品もあります。 施工された舗装材には、玉砂利間にある空隙により透 《天然石樹脂舗装の特長》 水性を有している(図1)のと美観性を兼ね備えているの が特長です。(図2)そして最密充填骨材を混ぜて塗るこ 天然石樹脂舗装材の特長を列記します。 とで、透水性はそのままに部材の強度をアップさせる製 ①透水性があります。 (ただし洗い出し仕上げは除く) 品もあります。(図3) ②天然石による多彩な色調を有します。 また、玉砂利間にある空隙にセメントモルタルを埋め ③成型品にはない自由な意匠性のあるデザインが可能です。 ることで、日本独特の「洗い出し」仕上げを再現する製品 ④自由に施工ができるので多色の塗付けが可能です。 もあります。(図4) ⑤簡便で作業性が良好です。 《製品構成と施工方法》 《施工上の注意》 主な製品構成は、プライマー、バインダー、天然石玉 ①対 象となる下地は、主にコンクリート、モルタルで、 砂利です。「最密充填」仕上げの製品には、最密充填骨材 湿潤面ですと接着強度が低下する恐れがありますので が必要です。「洗い出し」仕上げの製品には、専用セメン 乾燥した状態が必要です。 トモルタルが必要です。専門施工業者は、それぞれの材 ②無溶剤の一液ウレタン樹脂を使用する場合は、配合量を 料を現場で計量し、施工します。また、小面積や初めて 間違えないように注意してください。配合量の間違え の施工には、1㎡や1坪単位にセット化された製品もあり や、均一な混練りがされていないと発泡する恐れがあ ます。したがって、計量する手間が省け、調合ミスが起 ります。 きませんので初心者にも安心して使用できます。 施工方法 ① プライマー塗布 下 地のコンクリート、モルタルにプライマーを塗布 し、乾燥させます。これは、上塗りの天然石樹脂舗装材 と下地の接着を補助する目的と、下地表面の強化です。 ② 舗装材塗り 天然石玉砂利とバインダーを適切な割合でよく混ぜ合 ③バインダーには、可使時間がありますので時間内に施 工を終わらせてください。 ④施工後は、バインダーが硬化するまで降雨など水に当 たらないよう注意が必要です。 ⑤コテ押さえを確実に行わないと耐久性が劣る可能性が あります。 ⑥骨材間の空隙にセメントモルタルを詰める場合は、バ インダーの硬化を確認してから詰めます。 わせます。少量、例えば1㎡にセット化されたもので あれば左官用舟とクワで混練りします。 《まとめ》 また大量であればモルタルミキサーやコンクリートミ キサーで混練りも可能です。 混練りした材料を下地に散布して、金ゴテで均一に所 定の厚みに塗付け、しっかりと押さえ込みます。 都市空間に植栽や緑化といった景観に憩いや安らぎが あるように、天然石樹脂舗装もその中の1アイテムとし て十分な役割を果たしており、建物との調和や意匠性な ③ 最密充填塗り どオリジナリティを表現できる材料です。 天然石玉砂利とバインダーを適切な割合で混ぜ合わせ 今後も都市空間、商業施設や公共施設などの建物に たのち、その中に最密充填骨材を混ぜて下地に散布し マッチしたオリジナリティあふれる材料であることをア て、金ゴテで塗付け、仕上げます。 ピールし、より良い製品を提供していきたいと思います。 No.478 2016 年 6 月号 51
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