28 瓜 生 島 伝 説 堀内医院 堀 内 佳 代 子 4月14日、21:26を少し過ぎたころ、熊本地方 地質変動の跡を発見している。なだらかで平らな を震源とする地震のテロップが流れた。頻回に余 砂地が続く海底と、陸地までの乱れた地質。この 震のテロップが出る。16日、01:25M7.3の地震 間に何らかの地殻変動があったとの結論である。 は朝になって知った。これが本震で多くの被害が 友人は「地震はこれで終息やろか・・・。水はス 出たと。別府市の実家も友人宅も食器棚の食器が トックしとるし、食糧もとりあえず多めに買って 散乱し、電気製品が破損したが、人も家屋も被害 るし。あと何がいる?」靴はすぐ履けるところに はなかったそうだ。 ある?「玄関」ライトは?「iphone」充電器は? 大分県には「瓜生島伝説」がある。昔、別府湾 「充電わすれてたわ」あれこれ準備はしている様 に大小いくつもの島があり、一番大きな島が「瓜 子。困ったら身の安全を優先して飛行機乗って新 生島」だった。たいそう栄えており、外国との交 潟まで来てね。逆の場合はよろしく。まだまだ余 易の場であった。この島には言い伝えがあり、狛 震は続いているそうだ。 犬の目が赤くなったら大災害が起こると。ある日 中越地震の5日後、まだ救援体制が整っていな のこと、神社を訪れた住人が、狛犬の目が赤く染 いが、小千谷の避難場所で具合の悪い人が出てい まっているのを見て村じゅうに知らせ、多くの るので来てもらえないか、との相談を受け一日診 人々は島を離れ命拾いをした。島は一夜にして海 療に行った。被災地は常に混乱しており情報も取 に沈んで消えてしまった、という話である。 れないし、指示も仰げない。ある程度の疾患を予 慶長元年(1596年9月) 、 「慶長豊後地震」が起 想して、内服薬と処置の器具を持参した。疲労に こり別府湾沿岸部、 大分川河口に存在した地域が、 よる不眠、風邪症状、動悸、血圧上昇などがその 地震と津波で大きな被害を出した史実をもとに、 避難所の方たちの症状だった。 被災している地域、 1990年代の後半から大分大学の研究班が、大分川 診療所の情報が速く把握できるシステムを作れ 河口から別府湾にかけて海底地質調査を行ったと ば、近隣市町村医師会から迅速に軽症患者の診療 いう。結果、岩石などの島を構成する痕跡は見つ 支援に入れると思う。 かっていない。 しかし、別府湾のほぼ1km あたりに明らかな 新潟県医師会報 H28.6 № 795 (加茂市医師会報 平成28年5月号より)
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