こしじ往来 瓜生島伝説 堀内佳代子

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瓜 生
島
伝
説
堀内医院 堀 内 佳 代 子
4月14日、21:26を少し過ぎたころ、熊本地方
地質変動の跡を発見している。なだらかで平らな
を震源とする地震のテロップが流れた。頻回に余
砂地が続く海底と、陸地までの乱れた地質。この
震のテロップが出る。16日、01:25M7.3の地震
間に何らかの地殻変動があったとの結論である。
は朝になって知った。これが本震で多くの被害が
友人は「地震はこれで終息やろか・・・。水はス
出たと。別府市の実家も友人宅も食器棚の食器が
トックしとるし、食糧もとりあえず多めに買って
散乱し、電気製品が破損したが、人も家屋も被害
るし。あと何がいる?」靴はすぐ履けるところに
はなかったそうだ。
ある?「玄関」ライトは?「iphone」充電器は?
大分県には「瓜生島伝説」がある。昔、別府湾
「充電わすれてたわ」あれこれ準備はしている様
に大小いくつもの島があり、一番大きな島が「瓜
子。困ったら身の安全を優先して飛行機乗って新
生島」だった。たいそう栄えており、外国との交
潟まで来てね。逆の場合はよろしく。まだまだ余
易の場であった。この島には言い伝えがあり、狛
震は続いているそうだ。
犬の目が赤くなったら大災害が起こると。ある日
中越地震の5日後、まだ救援体制が整っていな
のこと、神社を訪れた住人が、狛犬の目が赤く染
いが、小千谷の避難場所で具合の悪い人が出てい
まっているのを見て村じゅうに知らせ、多くの
るので来てもらえないか、との相談を受け一日診
人々は島を離れ命拾いをした。島は一夜にして海
療に行った。被災地は常に混乱しており情報も取
に沈んで消えてしまった、という話である。
れないし、指示も仰げない。ある程度の疾患を予
慶長元年(1596年9月)
、
「慶長豊後地震」が起
想して、内服薬と処置の器具を持参した。疲労に
こり別府湾沿岸部、
大分川河口に存在した地域が、
よる不眠、風邪症状、動悸、血圧上昇などがその
地震と津波で大きな被害を出した史実をもとに、
避難所の方たちの症状だった。
被災している地域、
1990年代の後半から大分大学の研究班が、大分川
診療所の情報が速く把握できるシステムを作れ
河口から別府湾にかけて海底地質調査を行ったと
ば、近隣市町村医師会から迅速に軽症患者の診療
いう。結果、岩石などの島を構成する痕跡は見つ
支援に入れると思う。
かっていない。
しかし、別府湾のほぼ1km あたりに明らかな
新潟県医師会報 H28.6 № 795
(加茂市医師会報 平成28年5月号より)