会員 寄稿 - 新潟県医師会

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会員
寄稿
お
薬
手
帳
津
端
聖
美
薬を手放した方が医院としては楽です。しかし
に書いて、手帳の初めに挟みます。適宜修正しま
本来の目的を忘れた医薬分業の実態と患者負担の
すが、これがあなたの基礎データカードです(手
大きさを考え、私は院内処方を続けています。一
帳はひとり一冊です。新しいのになれば、この基
方、調剤薬局が発行しているお薬手帳に着目。こ
礎カードだけをその手帳の初めに挟み替えます)。
れの更なる活用を考えました。今のお薬手帳は、
そして来院日毎に、血圧や施行した検査所見(血
薬局が勝手な仕様で薬の内容と副作用等を記して
液・胸部レントゲン・心電図・胃カメラ・超音波
いるだけです(以前72歳女性の他院処方薬の説明
など)や処方内容を書き込みます。他で発行され
に、“このお薬は、生理不順をきたすことが・・・”
た手帳は、私がこれ迄の処方内容を確認。当院の
とあって、笑いました)
。患者さんにとって有用
基礎カードを挟み、後は全く同様です。どこにか
であろうお薬手帳には、条件があります。まず医
かってもこの手帳を医師に提示すれば、当院での
師がお薬手帳を確認し、既に他で出された薬の内
受診内容が解ります。そしてその医師に、記載内
容を考慮しつつ処方する(症状を抑える薬をただ
容を考慮した上での診察と処方を期待します。調
加えて行く“足し算”の処方ではなく、本当にそ
剤薬局はお薬手帳に、医療機関が処方した薬につ
の薬が必要かと自ら問い直す“引き算”の処方も
いてだけ記載しています。その医療機関に付随す
必要)。薬剤師は処方箋通りに薬を出すのでなく、
る形のいわゆる門前薬局が多く、他院の薬との類
飲み合わせや相互作用や類似薬等で疑問があれば
似薬や飲み合わせや相互作用などは殆ど考慮され
医師にすぐ問い合わせができる。この2点です。
ていません。また読んでも、病名・病状の推測し
小規模内科医院の当院は院内処方でカルテもまだ
かできません。私はお薬手帳を薬局に任せず、医
手書き、色々と自由がききます。以下の様にお薬
師自身も確認・監修すべきと考えています。お薬
手帳を発行し、説明しています。
手帳はまず受診時に医師に提示し、読んで貰って
「当院は院内で薬と一緒にお薬手帳をお渡しま
下さい。その後、調剤薬局に出して下さい。当院
す。既にお持ちの方は、その手帳をそのまま使い
は院内処方です。私が毎回確認し、
記入します(薬
ます。私はお薬手帳を、あなたのカルテに近いも
を出さなくても、診察所見の下に無処方と書きま
のにしたいと思いました。B6用紙の大きさの紙
す)
。救急を要することもあります。お薬手帳は
に、氏名・カルテナンバー・既往や主要病名や病
保険証と共にいつも携帯して下さい」
。
状・それぞれに対する薬名や行われた処置を簡潔
(三条市:津端内科医院)
新潟県医師会報 H28.6 № 795