1脳卒中対策プロジェクトの概要(PDF:486KB)

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脳卒中対策プロジェクトの概要
脳卒中対策プロジェクトの取組及び成果の概要
1 脳卒中対策プロジェクトに取り組んだ背景
●脳血管疾患死亡率(人口10万対)が九州で最も高い状態で推移しており,
全国の1.5倍である。
●脳血管疾患による受療率が全国第2位である。
●要介護状態になった主な原因疾患は,脳卒中が最も多く28.4%で,全国
に比べ男女ともに高い。
上記状況から,脳卒中の発症と重症化予防に重点的・集中的に取り組んでい
くために,次のとおり目標を掲げ,プロジェクトを展開してきた。
また,県の健康増進計画である「健康かごしま21(平成25年度∼平成34年
度)」においても,「脳卒中の発症・重症化予防と死亡者の減少」を重要目標の
一つに掲げ,分野別施策「循環器疾患・糖尿病」の中に「脳卒中対策プロジェ
クトの推進」を位置づけて取り組んできた(P6参照)。
2 脳卒中プロジェクトの目標 (P3参照)
<中・長期目標>
脳卒中の発症や脳卒中による早世,要介護状態の減少(又は遅延)により,
県民の健康寿命の延伸・QOLの向上
<H23∼27年度までの5年間の取組目標>
(1) 高血圧有病者・予備群の減少
(2) 糖尿病有病者・予備群の減少並びにコントロール不良者の減少
(3) 脳卒中による要介護認定者の減少と重症化予防
(4) 県民の健康づくり・介護予防意識の向上
3 取組内容
保健・医療・介護等の「脳卒中総合対策」として,発症予防から重症化予
防まで取り組む。
(1)
(2)
期
間:平成23年度∼27年度(5年間)
実施主体:県(健康増進課,保健医療福祉課,国保指導室,介護福祉課),
11モデル市町
医療保険者(国保連,協会けんぽ,後期高齢者医療広域連合)
を含む関係団体等との協働
※「脳卒中対策プロジェクト推進体制」については,P4参照。
(3)
内
容:(P7∼15参照)
プロジェクトチーム設置及び推進検討会の実施
発症及び要因調査
脳卒中対策の推進に係る研修
普及啓発
モデル市町における取組
・地区診断(課題整理)
・体制づくり(国保・保健・介護等関係各課の協働→課題・目標の共有
から施策展開へ)
・一次予防:脳卒中予防の普及啓発,減塩レシピの普及など
・二次予防:発症リスクの早期発見,保健指導強化
・三次予防:脳卒中による要介護者の重症化予防
等
①
②
③
④
⑤
-1-
4 結果
(1) 脳卒中死亡率の低下 (P16参照)
○人口10万対死亡率は全国を上回る減少率
→平成21年から26年で 7.8%減(国6.4%減)
○本県独自の指標である75歳未満の年齢調整死亡率は,「健康かごしま21」
の平成34年度の目標値を下回った。(P16参照)
→平成26年 男性:22.6(25.2以下),女性:10.8(12.2以下)*( )は目標値
(2) 2号被保険者で脳卒中により要介護(要支援)状態になった者の割合の
低下(P16参照)
→平成21年度 61.7%→平成26年度 56.9%
(3) モデル市町における特定健康診査・特定保健指導の実施率の向上(P66参照)
○健診実施率:モデル市町
平成20年度28.7%→平成26年度50.7%
モデル市町以外 平成20年度26.7%→平成26年度39.7%
○指導実施率:モデル市町
平成20年度24.7%→平成26年度39.5%
モデル市町以外 平成20年度18.7%→平成26年度36.8%
(4) モデル市町における特定健康診査における有所見者率(腹囲,内臓脂肪
症候群該当,収縮期血圧の受診勧奨レベル)の減少
等 (P66∼68参照)
○県平均を上回る減少率:腹囲(8モデル市町)
収縮期血圧受診勧奨レベルの割合(7モデル市町)
△県平均を上回る増加率:高血圧症,脂質異常症,糖尿病の各治療薬服用
者の割合
内臓脂肪症候群該当者の割合(6モデル市町)
△県民意識の向上については,運動習慣・喫煙習慣を指標としたが,明らか
な変化はみられない。設定する指標については,今後,改めて検討する
必要があると思われる。
5 まとめ(成果のあがった要因等) (P22∼23参照)
成果のあがった要因として考えられることをモデル市町への聞き取り等によ
り,以下のとおりまとめた。
●
推進体制
組織横断的に脳卒中対策に取り組むために,プロジェクト推進チーム等
の設置や地域関係者との協議の場等を設置することが有効であったこと,
また,全庁的な特定健診受診率向上プロジェクトの実施や地区組織活動を
巻き込んだ事業展開が地域を動かす源となっていた。
●
疫学調査や医療費分析等のデータ活用
プロジェクト開始時に,国保連システム等を用いて医療費分析にしっか
りと取り組み,課題の抽出(地区診断)を行うことで,後々の具体的な事
業展開に結びつけることができた。
●
後ろ向き調査
脳卒中発症者の発症前の生活習慣,健康状態等の聞き取り調査に従事す
ることにより,どの時点での介入が必要だったか,予防的介入の必要性等
を実感できたり,御本人や介護者の思いに触れたりすることが,保健師等
が脳卒中対策に取り組むモチベーションにつながっていた。
また,個別事例を通じて,関係者間の課題意識の共有が図れたことも良
かった。
●
個別支援
ポピュレーションアプローチだけでなく,ハイリスク者への継続的な個
別支援を並行して実施していくことで,重症化予防につながった(ターゲッ
トの絞り込みと健診データの個別追跡で保健指導の効果を見ていく)。
6 今後の計画
●
75歳未満年齢調整死亡率が高い値で推移している地域を重点取組地域に
設定し,引き続き重点的・効果的な取り組みを推進していく。
-2-
1 脳卒中対策プロジェクトの目標(中・長期目標,指標目標)
中・長期
的目標
脳卒中の発症や脳卒中による早世,要介護状態の減
少(又は遅延)により県民の健康寿命の延伸・QOLの
向上を図る。
①高血圧有病者・予備群の減少
・食塩摂取量2g減 ・野菜摂取50g増
②糖尿病有病者・予備群の減少並びにコントロール不良者の減少
・脂肪摂取量減
・運動習慣の増 ・治療中断者の減
5年の
取組目標
③脳卒中による要介護認定者の減少と重症化予防
・医療連携パス活用 ・地域リハに係る検討機会の増
④県民の健康づくり・介護予防意識の向上
・特定健診受診率向上
・適切な生活習慣の増
・メタボ該当者等の減
・介護予防事業への参加
指標目標
脳
卒
中
の
発
症
・
重
症
化
予
防
県民
意識
健康意識の向上
・特定健診・保健指導実施率向上
・食塩摂取2g減 野菜50g増
・運動習慣有りの者の増
・脳卒中に係る知識の増
介護予防意識向上
・介護予防事業への参加
①130∼140未満又は85∼90未満
②140以上,90以上又は内服中
①+②の割合を減少
①高血圧予備群
②高血圧有病者 の減少
糖
尿
病
脳卒中
による
要介護
認定
③予備群 ④有病者
の減少
コントロール不良者減少
③空腹時110∼125,HbA1C6.0∼6.5未満
④空腹時126以上,HbAIc6.5以上減少
③+④の減少
・治療中断者の減少
・HbAIc8.4以上の者の減少
・新規透析導入者の減少
要介護認定減少
新規要介護者減少(75歳未満)
重度化減少
要介護認定の重度化減少
(新規要介護者75歳未満)
-3-
2 脳卒中対策プロジェクト推進体制
★各モデル市町において,脳卒中対策を重点的・集中的に実施するために,保健,国保,介護等で構成する
庁内チームを設置し,我がまちの現状や課題把握,方策検討・評価等を行う。
★更に,地域関係者と協働しながら対策推進を図るための協議の機会を設ける。
★県は,保健福祉部長をリーダーとした3課1室で構成するプロジェクトチームを設置,県の課題分析や地域
での展開方策及び評価等の検討,連絡調整を行う。
モデル市町村
市町内検討チーム
地域振興局,支庁,保健所
保健
協働
国保
介護
【関係課の連携】
①課題・目標の
共有
②①の施策展開
管内研修会や地域検討会等
での取組事例の波及
取組
紹介
協働
地域の関係者・団体
(地域診断,事業企画・評価等
に係る取組支援)
サポート
●モデル市町以外の管内
市町村への情報提供等
●医療・介護関係機関
●地元医師会
●その他健康づくり
組織NPO等
●市町村食改
地域での
活動展開
情報提供
連絡調整
◎プロジェクトリーダー:保健福祉部長
○サブリーダー
:健康増進課長
連携する団体等
協働
◆事務局:健康増進課
関係団体
・健康増進栄養係
・がん対策・歯科保健係
①発生予防対策チーム
・各世代への予防啓発
・職域・学域との連携
・効果的ポピレーショ
ンアプローチ
②早期発見・指導
対策チーム
③介護予防・重症化
予防対策チーム
・切れ目ない地域リハ
・介護度重症化予防
・医療連携体制
・脳卒中ハイリスク者の
把握
・効果的ハイリスクアプ
ローチ
連携
医療保険者
●県医師会
●国保連
●県栄養士会
●協会けんぽ
●県食改協
●県地女連
●後期高齢者
医療広域連合
連携
★L:健康増進課長
★L:国保指導室長
★L:介護福祉課長
(★SL:健増栄養係長)
●健康増進栄養係
●国保指導係
●地域包括ケア推進係
(★SL:国保技補)
●国保指導係
●健康増進栄養係
●地域包括ケア推進係
(★SL:介護技補)
●認知症対策係
●がん対策・歯科保健係
●医療政策係
(★L:チームリーダー,★SL:サブチームリーダー)
-4-
関係機関
相談
助言
循環器
疾患等
部会
●地域リハ施
設協議会
●脳卒中協会
3 脳卒中対策プロジェクトの取組経過
H23年度
H24年度
H25年度
H26年度
H27年度
①脳卒中対策推
進検討会
年2回
年2回
年3回
年3回
年3回
②関係者研修会
年1回
年1回
年2回
年2回
年2回
年1回
年1回
年1回
年1回
③啓発講演会
●地区の現状分析・課題整理
④モデル市町の
事業展開
事業評価
●生活習慣病発症・重症化防止,脳卒中の
悪化防止に係る効果的手法開発・試行
例:人材育成による健康な地域づくり
・重症化防止のための医療機関連
携の保健指導,介護予防 等
効果
・評価
圏域での
波及
県内
での
波及
(地域振興局等)
地域振興局等によるモデル市町村支援
⑤県下全域での
活動
→圏域への波及・体制づくり
モデル市町村を中心とした食生活・運動等の改善→圏域の活動強化
課題整理
⑥情報分析
現状調査
課題抽出
●特定健診
データ分析
●後向き調査
⑦成果報告等
●脳卒中発症
疫学調査
●指宿地域脳
卒中発症者
調査研究
●疫学調査報
告書
●中間評価
●事業報告
(H28.2.2
成果報告会)
4 脳卒中対策に係る調査・分析等
調
査
名
実施時期
目
的
等
結果の公表等
特定健診
データ分析
H23,H24
H27
脳卒中の発症リスクである生活習慣病の状況や 報 告 書 の 作
課題把握のため,市町村国保及び協会けんぽの特 成・配布
定健診データを集計・分析する。
脳卒中既往者へ
の後向き調査
H23
脳卒中既往者の発症前の生活習慣,健康状態等
の聞き取り調査を通じ,発症や重症化等に関与す
る要因を探り,モデル市町における効果的な保健
・医療・福祉事業の提供体制検討の資料とする。
各種研究会
等で結果は
公表
脳卒中に関する
疫学調査
H24
脳卒中既往者の発症前後の生活習慣等を調査
し,行動変容につながる効果的な保健指導や情報
提供等を分析し,脳卒中予防に活用する。
報告書の作
成・配布
指宿地域におけ
る脳卒中発症者
調査研究
H24
指宿地域において,脳卒中発症調査を通じ,脳
卒中発症に係る背景・要因や地域特性を探るとと
もに,医療機関と行政が連携した脳卒中発症・重
症化防止対策を推進する。
本報告書
(P70∼72)
-5-
5「健康かごしま21(平成25年度∼平成34年度)」の推進イメージ
心豊かに生涯を送れる健康長寿県の創造
健康寿命の延伸,生活の質(QOL)の向上
重
要
目
標
脳卒中の発症・重症化予防と死亡者の減少
学校
がんの発症・重症化予防と死亡者の減少
保険者
ロコモティブシンドローム(運動器症候群)の発症・重症化予防
県・保健所
健康関連団体
市町村
認知症の発症・重症化予防
企業
休養・こころの健康づくりの推進
・市町村の支援
・健康関連団体及び企業との協働
・計画の進行管理 ・県民への啓発
・人材・団体の育成
・目標設定 ・健診,保健指導
・食育推進 ・健康づくり支援
・啓発,情報提供
循環器疾患・糖尿病
COPD
脳卒中対策プロジェクトの推進
発症予防・重症化予防の推進
食生活の改善及び運動の習慣化の支援
こころの健康
分
野
別
施
策
飲酒
多量飲酒者の減少
未成年者の飲酒防止
妊娠中の飲酒防止
高齢者の健康
働く世代の健康
子どもの身体やこころの健康
づくりの推進
喫煙・飲酒対策の推進
栄養・食生活
適切な食習慣の普及啓発
産業界との連携による食環境
の整備
知識の普及啓発の推進
発症・重症化予防の推進
人材育成の推進
知識の普及啓発の推進
発症・重症化予防の推進
受動喫煙を防止する環境の整備
次世代の健康
早期発見・早期受診
メンタルヘルスを含む職場ぐる
みの健康づくり支援
自殺対策の推進
CKD
食生活・運動・休養等によ
る健康づくりの普及啓発
職場の健康づくり賛同事業
所の拡大
生きがいづくり・社会参加の促進
適切な食生活の推進
ロコモティブシンドロームの発症・重
症化予防,認知症の発症・重症化予防
休養
身体活動・運動
適切な運動習慣の普及・定着
身体活動等に取り組みやすい社会環境
づくり
喫煙
新規喫煙者の増加抑制
受動喫煙防止,禁煙指導・支援の
充実,妊娠中の喫煙防止
県民の意識啓発の推進
ストレスコントロールのための県内
資源の活用
歯・口腔の健康
ライフステージに応じた歯科疾患予防及
び口腔機能の維持・向上
歯科口腔保健を推進するための社会環境
の整備
産業界との連携,ソーシャルキャピタルの核となる人材等の育成,インフラ整備,性差に
配慮した健康づくり支援などによる健康づくりを支援する社会環境の整備
・生活習慣病の発症予防に加えて重症化予防も推進
・高齢化の進行に伴う生活の質(QOL)の向上策の一層の推進
・社会全体で健康づくりを支援するための環境整備
循環器疾患・糖尿病
現
状
・
課
題
休養・こころの健康づくり
虚血性心疾患による年齢調整死亡率(75歳未満男性)が増加
女性の糖尿病有病者・予備群の推定数(40∼74歳)の増加
栄養・食生活
がん
食塩摂取量は減少しているが,目標量
がんによる年齢調整死亡率
に達していない
(75歳未満女性)が増加
30歳代男性の朝食欠食の割合が高い
身体活動・運動
飲酒
成人の日常生活での歩数が減少
飲酒をする人のうち,休肝日を設け
成人の運動習慣者,地域活動を行って
ていない人の割合が増加
いる高齢者の割合の減少
成人男性の多量飲酒者の割合が増加
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県内の資源を利用してストレスをコントロールして
いる人の減少
職場でメンタルヘルスに関する研修を実施している
事業所が少ない
全国の中で自殺死亡率が高い水準,20歳代の自殺
歯・口腔の健康
乳幼児のむし歯有病者の割合が減少している
ものの全国に比べて高い
45∼54歳において,進行した歯周炎が増加