英語教育ヘッドライン

ここ数年,英語教育に関わる政策が次々と
本プランは下記サイトからダウンロードで
公表されているが,本誌前号からわずか半年
きる。目標と共に平成 39 年度までの「工程
の間にも,また大きな動きがあった。
「生徒の英語力向上推進プラン」
平成 27 年 6 月 5 日付で公表された本プラ
ンは,文字通り,生徒の英語力の向上を図る
ものである。大きな柱は「生徒の着実な英語
力向上を目指し,国及び県で明確な達成目標
を設定」することと「その達成状況を毎年公
表して,計画的に改善を推進」
(いずれも下
線は本稿のもの)することの 2 つである(本
プランの目標を達成することが期待されてい
る年度が 2020(平成 32)年なので,この目
標は「GOAL2020」と命名されている)。し
イメージ」が公開されているので,ぜひご一
読いただきたい。
(http://www.mext.go.jp/a_menu
/kokusai/gaikokugo/1358906.htm)
「平成 26 年度英語教育実施状況調査」
平成 23 年度から実施されている調査の最
新版が公表された(平成 27 年 6 月登録)。小
中高の 3 種類が発表されたが,その中の中学
校版を見てみよう。調査対象となった中学校
(中等教育学校前期課程を含む)は 9,583 校で,
特に指定がない場合は平成 26 年 12 月 1 日時
点での状況を回答することになっている。
生徒の英語力に関すること
かもこの目標の公表が「平成 27 年度(=本
(1)中学校第 3 学年に所属している生徒のう
の公表は来年度の平成 28 年度から実施する。
18.4%。取得はしていないが英検 3 級以上相
年度)末を目処」としており,生徒の英語力
加えて,中学校については,平成 31 年度
から,英語 4 技能を測定する全国的な学力調
査を国が作成・実施し,英語力を把握するこ
ち, 英 検 3 級 以 上 を 取 得 し て い る 生 徒 は
当の英語力を有すると思われる生徒は 16.3%
で,合わせると 34.7%(前年度より 2.5 ポイ
ント上昇)。
とになった。対象は中学 3 年生で,「複数年
(2)「CAN-DO リスト」の形で学習到達目標
中・高・大学での英語力評価や入試で,英語
り 13.8 ポイント上昇。その内 15.3% の学校
に一度程度の実施」が検討されている。また,
を設定している学校は 31.2% で,前年度よ
の 4 技能を測定する民間の資格・検定試験を
では学習到達目標の達成状況を把握している
さらに,教員の英語力・指導力向上を図るた
英語を使用する機会の増加に関すること
引き続き活用するよう促進すると謳っている。 (前年度より 3.7 ポイント上昇)。
め,小・中・高校の全教員の研修も実施した
(1)授業に占める英語を用いた言語活動の時
り,県ごとの教員の英語力の達成状況を定期
間は,「おおむね行っている」と「半分以上
的に検証したりするとしている。
の時間,行っている」を合わせた割合は,第
本プランが公表された背景には,高校 3 年
生を対象に平成 26 年度に実施された「英語
教育改善のための英語力調査」で 4 技能すべ
1 学年では 56.0%,第 2 学年では 51.2%,第
3 学年では 47.7% で,いずれの学年も前年度
より上昇している。
てに課題があること,「英語教育実施状況調
(2)「話すこと」や「書くこと」の能力を評
査」でも中高生の英語力(アンケートで調
価するスピーキングテストやライティングテ
査)が改善されていないことなどがある。
スト等を実施している学校は,第 1 学年で
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及川 賢
埼玉大学准教授 94.5%,第 2 学年で 94.4%,第 3 学年で 93.7%
と,いずれの学年も前年度より上昇している。
(3)中学校における外国語の授業で外国語指導
助手(ALT)等を活用する時数の割合は 22.1% で,
活用したと回答している。内訳はパソコンが
1 位で,デジカメ,電子黒板,ビデオカメ
ラ,書画カメラ等が続く。
目立ったところでは,CAN-DO リストに
平成 24 年度,25 年度に続き,上昇傾向にある。 よる目標設定を行った学校の割合が大きく上
(4)中学校における英語の授業で活用するた
昇している。また,「話すこと」「書くこと」
めに雇用している ALT 等の総数は 6,986 人。
でパフォーマンステストの評価を実施してい
よる ALT が 33.6% と最も多く,次いで,請
3 級以上の取得率(同程度の能力の生徒も含
以外で自治体が独自に直接雇用している ALT
年 6 月)で中学校卒業段階に英検 3 級程度以
ALT 総数に占める割合は,JET プログラムに
る学校の割合の高さも目立つ。しかし,英検
負契約による ALT が 21.7%,JET プログラム
む)が「第 2 期教育振興基本計画」(平成 25
は 20.1%,派遣契約による ALT は 16.1%。
上を取得する生徒の割合として定めた「50%
英語担当教員の英語力・指導力に関すること
以上」に到達していないことが,前項の「生
(1)英語担当教員のうち,英検準 1 級以上ま
徒の英語力向上推進プラン」につながってい
以上,iBT 80 点以上または TOEIC 730 点以
る。調査結果は以下のサイトで確認できる。
年度から 0.9 ポイント上昇している。
gaikokugo/1358566.htm
たは TOEFL の PBT 550 点以上,CBT 213 点
るようだ。今後も注目していきたい調査であ
上を取得している者は,全体の 28.8% で前
h t t p : / / w w w. m e x t . g o . j p / a _ m e n u / k o k u s a i /
(2)授業における英語担当教員の英語使用状
況は,
「発話をおおむね英語で行っている」
教育課程部会 教育課程企画特別部会
本年 1 月より上記の特別部会(第 7 期)が
と「発話の半分以上を英語で行っている」を
開催されているが,ここでの審議結果が次回
合わせた教員の割合が,第 1 学年では 50.5%,
の学習指導要領に大きく関わるほど重要な部
いずれも前年度より上昇している。
至っていないため,詳しくは次号に譲る。現
第 2 学年では 49.3%,第 3 学年では 46.9% で,
会である。本稿執筆時点(8 月)では答申に
(3)都道府県・指定都市が主催した英語担当
時点で,英語に関しては小学校の外国語活動
教員に対する研修の実施状況は,平成 25 年
の早期化が話題の中心で,中学校に直接関わ
度のもので,国内研修を実施した教育委員会
るものは,「英語で授業を行うことを基本と
が 46.3% で前年度より 1.5 ポイント低下。海
する」「身近な話題について互いの気持ちや
(4)小中連携に取り組んでいる中学校区の割
だし,小学校 5 ~ 6 年生の外国語が「年間
外研修は 9.0% で前年度より 3.0 ポイント上昇。
考えを伝え合う」等の確認となっている。た
合も平成 25 年度の数字で 73.2%。前年度よ
70 時間」と具体的に提言されている点,4 技
英語授業における ICT 機器の活用状況
きが置かれる点は注目に値する。詳しくは,
り 2.9 ポイントの上昇。
(1)実績値として示されているものは,こち
らも平成 25 年度のもので,83.5% の学校が
能を教科として育成する点,文字の指導に重
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/
chukyo3/053/index.htm を参照。
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