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【発信】国立大学法人
富山大学総務部広報課
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平成 28 年 6 月 20 日
報 道 機 関
各位
ビメンチンによる脊髄損傷改善作用を証明
(富山大学・和漢医薬学総合研究所・神経機能学分野
執行美智子(大学院生)
、東田千尋 准教授)
富山大学 和漢医薬学総合研究所 神経機能学分野の 執行美智子(発見時・大学院博士後期
課程 3 年、現・カリフォルニア大学)
、東田千尋准教授のグループは、脊髄損傷マウスの脳脊髄
液中にビメンチンを投与すると、歩行障害といった運動麻痺が改善され、脊髄中の損傷部位周囲
では軸索伸展が増加していることを証明しました。
かねてより同グループは、細胞内で中間径フィラメントとして働くビメンチンが、何らかの刺
激でアストロサイトなどから細胞外へ分泌された場合、細胞の外から神経細胞に作用して軸索を
伸展させることとその分子機序を明らかにしていました。その知見の意義を疾患モデルで証明す
るために、今回の研究を進めてきました。
中間径フィラメントに分類されるタンパク質ビメンチンは、細胞の中で骨格維持の役割を担っ
ています。このビメンチンが細胞外に分泌される現象は以前から知られていたものの、その意義、
すなわち細胞外に分泌されたビメンチンの役割はほとんど分かっていませんでした。
同グループの一連の研究によって、細胞外に局在するビメンチンは神経細胞に作用して軸索を
伸展させることが細胞レベルでも動物レベルでも証明され、特に脊髄損傷病態の場合は、その運
動麻痺を改善させることが明らかになりました。
損傷部位にビメンチンを投与したり、損傷部位に集積するアストロサイトからのビメンチン分
泌を活性化したりすることで、軸索修復されることが治療に必要な神経疾患の、機能改善が期待
されます。
ついては、下記にもとづき取材・報道方よろしくお取り計らい願います。
記
1.発表内容
別紙資料のとおり。
2.報道解禁時間
2016 年 6 月 21 日(火)午後 6 時
*理由:英国時間 2016 年 6 月 21 日午前 10 時に雑誌 Scientific Reports に掲載されるため。
※本件の取り扱いについては、上記解禁時間以降でお願いいたします。
3.研究に関する取材・問合せ先
東田千尋 富山大学和漢医薬学総合研究所(神経機能学分野)准教授
TEL: 076-434-7646
E-mail: [email protected]
別紙資料
ビメンチンによる脊髄損傷改善作用を証明
【研究の概要】
中間径フィラメントタンパク質に分類されるビメンチンは、多様な細胞に発現し細胞骨格
タンパクとして形態維持の役割を主として担っている。一方、アストロサイトやマクロファ
ージからビメンチンが分泌されているという報告がわずかになされてきたが、その生理的意
義は十分に示されていなかった。我々の以前の研究では、脊髄損傷したマウスの損傷部位に、
ビメンチンを分泌するアストロサイトが増加すると軸索の伸展ならびに運動機能改善が促
、分泌型ビメンチンの重
進することを見出し(British Journal of Pharmacology (2013) )
要な役割を示唆してきた。さらに、ビメンチンが細胞外から神経細胞に働きかける時に、イ
ンスリン様成長因子1(IGF1)受容体を直接活性化することも明らかにしてきた(Scientific
Reports (2015))
。
今回、細胞外から作用するビメンチンの、脊髄損傷改善への関与を直接証明することを目
的とし、脊髄損傷させたマウスの脳脊髄液中にビメンチンを 21 日間持続的に注入した。ビ
メンチン注入群では対照群と比べて、後肢の運動機能障害が有意に改善された。脊髄組織中
の軸索の伸展を可視化したところ、ビメンチン投与群では損傷中心を越えた側まで軸索の伸
展が認められた。この作用は、他の神経成長因子等の分泌を介した間接的なものではなくビ
メンチン直接の作用である。本研究は、ビメンチンが、新しい軸索伸長因子であり、かつ脊
髄損傷改善に有効であることを示唆するものである。
Injury site
Glial scar
Vehicle
Vimentin
1
【雑誌名】Scientific Reports(サイエンティフィックリポーツ)
【論文名】
:Extracellular vimentin is a novel axonal growth facilitator for functional recovery in spinal
cord-injured mice
【日本語訳】
:
細胞外ビメンチンは脊髄損傷マウスの機能回復を促進する新しい軸索伸長因子である
【研究に関する問合せ先】
東田千尋 富山大学和漢医薬学総合研究所(神経機能学分野)准教授
TEL: 076-434-7646
E-mail: [email protected]
以 上
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