低温基材用ナノインクに最適! シングルナノサイズ(約2nm)の 銅ナノ粒子 関西大学 化学生命工学部 化学・物質工学科 准教授 川崎 英也 1 金属ナノ粒子の低温焼結 金属ナノ粒子・・・ 粒径が1~100nmの金属の粒子。金属本来の融点 (Tm)よりはるかに低い温度で焼結可能 ナノインク・・・ ナノインクとは、ナノ粒子を溶剤に分散させたインク 小 比表面積 表面エネルギー 大 金属のナノサイズ化 → 融解に必要な熱エネルギーの減尐 → 低温で焼結可能 Tm (銀):バルク:961℃ 、ナノ粒子:150-300 ℃ 2 金属ナノ粒子の焼結プロセス ナノインク 金属ナノ粒子の焼結体 金属ナノ粒子 バルク金属 分散媒 加熱焼成 分散媒の蒸発 表面保護剤の分解 加熱 粒成長 表面保護剤 低温加熱によって、粒子間が金属接合を起こす(サイズ効果による融点低下) →高い熱・電気伝導性を有する導体形成、接合実装を低温で実現 3 インクジェット技術を利用したナノインクの 配線技術への応用 回路パターン 描画データ 有機物保護した 単分散ナノ粒子を含む ナノインク インクジェット ナノインク 基板 焼結 低温焼結により金属接合 加熱して有機物を除去 金属配線 高い熱・電気伝導性をもつ 金属配線の形成 (低温基材用銀ナノインク) 4 銀ナノインクの課題 マイグレーション現象が起こりやすい 欠陥率が増加する マイグレーション現象 配線や電極として使用した金属が, 絶縁物の上を移動して、配線の 短絡を起こす Ag+ Ag析出 短絡 〈 マイグレーション現象 〉 マイグレーションの傾向 Ag+>Pb2+>Cu2+>Sn2+>Au+ 1.マイグレーション傾向 小さい、2. 高い電気伝導度、 3.コスト面で、銅 がよい代替材料になる 5 “銀ナノインク”から“銅ナノインク”への展開に向けて ~問題点~ 銅ナノ粒子の融点(理論) バルク ナノ粒子 1.焼成温度が高い 現状:300~400℃ 目標:150℃での低温焼結 2.ナノサイズ化が困難 現状:数百nm~数μ m 目標:10 nm以下(1桁小さい) 3.銅の酸化 導電率の低下、焼成温度の上昇 現状:ナノサイズ化 →酸化しやすい 目標:耐酸化性 上記の問題があり、銅ナノインクは、広く利用されるまでには 至っていない 6 銅のナノサイズ化に向けて (砕く) 数百nm~数μ m 物理法 粉砕 金属の塊 化学法 金属ナノ粒子 表面保護剤 (ナノサイズ化、凝集の抑制) 還元剤 熱、光、 超音波 金属前駆体 金属原子 (イオン、錯体) クラスター (組立てる) 数nm~数百nm ナノサイズ化には、化学法が有効。但し、銅と強く結合する表面保護剤が必要 →焼結時に表面保護剤を分解しなくてはならない、焼結を妨害する可能性 (“表面保護剤”を添加しないことが望ましい) 7 新技術の特徴・従来技術との比較 1.銅のナノサイズ化 (現状:数百nm~数μ m) 粒子径: 約2nm (シングルナノサイズ) 表面保護剤の添加なし 2.焼結温度 (現状:300~400 ℃) 150℃で低温焼結を確認 3.耐酸化性 (現状:容易に酸化) ・高い耐酸化性 (シングルナノサイズと耐酸化性を両立) ・単結晶 8 シングルナノサイズ(約2nm)の銅ナノ粒子! 1 nm 100 Number of particles 80 dav = 2.30± 0.25 粒径 2.3 0.2 nm 60 40 20 0 1.6 1.8 2 2.2 2.4 2.6 2.8 Diameter / nm Diameter / nm 3 3.2 9 銅ナノ粒子の抽出 酸性条件下 減圧による 溶媒除去 銅ナノ粒子 ペースト 銅ナノ粒子の EG分散液 ジエチルエーテル層 に抽出 10 低温焼成(150℃) 焼成前 焼成後 11 簡便な合成法(ポリオール法) エチレングルコール 銅イオン 塩基, 185℃ 銅ナノ粒子の分散液 M.W.加熱(0.5 h) 溶媒と前駆体イオンのみ、表面保護剤添加なし 12 ポリオール法とは エチレングルコール(EG)中 に銅イオンが溶解(塩基性) EGによる銅イオン の加熱還元 核形成および粒子成長 による銅ナノ粒子の生成 還元 銅イオン 脱水 EG HOCH2CH2OH アセトアルデヒド CH3CHO F. Fievet et al, Solid State ionics, 32, 198 (1989) ne- 銅 酸化 ジアセチル CH3-CO-CO-CH3 13 マイクロ波 (M.W.)加熱の利用 ・外部熱源による加熱と異なり、熱伝導や対流の影響が小さい ・特定の物質のみを選択的かつ急速・均一に加熱できる 【応用例】 電子レンジ 急速・均一な銅ナノ粒子の核形成、 シングルナノサイズの単分散な銅ナノ粒子の生成を促進 溶質の溶解度 核形成 濃度 金属原子 の生成 核生成濃度域 核形生成 粒子成長 粒子成長濃度域 飽和 溶解度 時間 時間 時間 14 酸化の抑制 FT-IR Cu2p3 932.6 eV 200 Intensity (arb. units) Intensity (arb. units) 400 XPS 300 200 100 Ethylene glycol Cu LMM 150 100 50 Cu NCs 0 945 940 935 930 Binding Energy (eV) 925 0 580 3600 3200 2800 575 570 565 2400 2000 1600 1200 (eV) 800 400 Binding Energy Wavelength / cm-1 文献値: シングルナノ銅(~932.4 eV)* シングルナノ酸化銅 (~934 eV) 酸化銅の吸収、600cm-1 付近を中心としたブロードな ピークがない *サイズ効果によって、バルク銅とは、異なるピーク位置 15 銅ナノ粒子の分散安定性、経時変化 2.5 Black line : after just preparation Red line : 7 days after Blue line : 21 days after 2 銅の表面酸化によって、紫外 可視吸収スペクトルが変化する ことを指標にした場合 1.5 1 0.5 0 200 300 400 500 600 700 800 調製後、空気中に放置(3週間)してもスペクトルに変化なし (高い耐酸化性) 16 ナノサイズ化による銅ナノ粒子の発光 紫外可視吸収スペクトル 励起・蛍光スペクトル 1.2 200 excitation 1 emission 0.8 0.6 0.4 Intensity (a.u.) Absorbance 150 100 50 0.2 0 200 250 300 350 400 450 500 550 600 Wavelenght / nm 0 200 250 300 350 400 450 500 550 600 Wavelenght / nm water, ethanol, N,N-dimethylformamide, and ethylene glycol (left-to-right). 17 本技術の特徴・従来技術との比較 ~まとめ~ 従来技術 ・銀ナノ粒子の利用 →銀の酸化による配線の欠落(マイグレーションの問題) →高コスト ・銅微粒子の利用 →ナノ粒子化が困難(~μ m)、銅の酸化、粒子の凝集の問題 本技術 ・約2nmのシングルナノサイズの銅ナノ粒子、高い分散安定性 ・有機保護剤を無添加で液中合成 ・銅ナノ粒子の酸化抑制 ・低温焼成 ・銅の利用による安価、マイグレーションの抑制 18 その他のシングルナノサイズの金属ナノ粒子 ~本研究グループ成果~ Pd, パラジウム(約1.5 nm) Pt, 白金(約1 nm) Pt4f 7/2, 72.8 600 Intensity (arb. units) 500 400 300 200 100 2nm Au, 金 (約1nm) Fe, 鉄系 (約 4 nm) 0 85 80 75 Binding Energy (e 19 想定される用途 • 高い熱・電気伝導性を有する導体形成、 接合実装を実現する銅ナノ粒子ペースト への応用が期待される。 • 次世代電子部品の小型化・軽量化・高性 能化のニーズに対応する微細配線、高温 ハンダ代替、接合、インクジェット配線、 ナノインプリントへの応用など。 20 実用化に向けた課題 • 現在、約2nmの銅ナノ粒子の合成が可能なと ころまで開発済み。しかし、大量合成の点が 未解決である。 • 今後、大量合成が可能な新規調製法を検討 し、ナノインク材料として適用していく場合の 条件設定を行っていく。 • 実用化に向けて、約2nmの銅ナノ粒子を用い たナノインク調製のために、溶媒、分散・粘度 調製剤等の検討、最適焼成温度、焼結後の 抵抗値の評価などを行う必要がある。 21 企業への期待 • 未解決の銅ナノ粒子の大量合成については、現 在、検討中の本技術を改良した新合成技術によ り克服できると考えている。 • 金属ナノ粒子の大量合成の技術、ナノインクを用 いた金属配線作成・金属接合の経験と評価技術 を持つ、企業との共同研究を希望する。 • また、シングルナノサイズの金属ナノ粒子を、発 光プロープなどの光機能材料分野、化学触媒な ど触媒工業分野への展開を考えている企業にも、 本技術の導入が有効と思われる。 22 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 :分散安定性の高い銅ナノ 粒子の製造方法 • 出願番号 :特願2011-196237 • 出願人 :関西大学 • 発明者 :川﨑英也、荒川隆一 23 お問い合わせ先 関西大学 先端科学技術推進機構 コーディネーター 板倉 正 TEL 06-6368 - 1245 FAX 06-6368 - 1247 e-mail syakairenkei@ml.kandai.jp 24
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