第1回講義「水が結ぶ生活環境と農・畜・水産業」(6月4日)で 皆さんから

平成28年6月25日
第1回講義「水が結ぶ生活環境と農・畜・水産業」(6月4日)で
皆さんからいただいたご質問にお答えします
渡部 徹
渡部よりメッセージ
たくさんのご意見,ご質問をいただき,ありがとうございました。遅くなってしまい
ましたが,それぞれ以下の通り回答をお伝えしたいと思います。
皆さんからの質問カードには,お名前を書いていただきましたが,この書類を全員に
配布する都合上,匿名としました。ご了解ください。ご自身の質問内容を思い出してい
ただけると良いのですが・・・
資料が大きくて見やすい。先生の話の内容がわかりやすい。
【回答】どうもありがとうございます。次に講義をする機会がありましたら,またお
越しください。
学校の食品製造の授業でも少しカキの話をしてもらいましたが、今回の講座でより理解が
深まりました。肥料成分やウイルスをため込む性質が他の動植物にもあるならば多種多様
な問題の解決につながると思い可能性を感じました。これからの学習に生かしていきたい
です。
【回答】動物や植物の生態については,まだ分かっていないことが多いです。私たち
の役に立つもの,逆に,私たちの害になるもの,どちらにしても,研究しなければい
けないことはたくさんありますね。
下水処理水の再利用について、今年度は浄化センター内の水田で実証実験を行うとのこと
ですが、求める成果が得られた場合実用化に向けた課題は何でしょうか。
①必要水量から、作付面積が限られる、あるいは作付箇所が限定される
②灌漑方式は、パイプ灌漑か?
③営農者や消費者の意識は?処理水への抵抗は?(無害だとしても・・・)
④費用的効果は?
【回答】課題は①~④のすべてですね。よく理解されていると感じました。①,②,
④は技術的な課題で,研究を進めることで解決に近づくと思いますが,③のような心
理的な課題については,地道な啓蒙活動が必要かと思っています。
専門ではないかも知れませんが、下水処理された水ではなくも残った物の中には有害な物
質が多く残っているんですか?それはどこに捨てるんですか?
【回答】下水処理で残る固形物は「汚泥」と呼ばれます。この汚泥は産業廃棄物であ
り,これまでは,脱水した後,燃やして灰にしてから,他の廃棄物と一緒に埋め立て
られるのが一般的でした。最近では,ただ捨てるだけでなく,脱水後に焼き固めて建
設資材としたり,発酵させて肥料にするなど,できるだけ有効利用するようになって
います。鶴岡浄化センターでは,汚泥を発酵させるときに出るメタンガスを回収して,
それを燃料とした発電も行っています。下水に含まれる有害物質については,多くは
下水処理過程や汚泥の発酵過程で分解されます。重金属は分解されないので,汚泥か
ら肥料を作る際には注意が必要です。鶴岡浄化センターの汚泥から作られた肥料(コ
ンポスト)は市販されていますが,その重金属含有量は厳しく検査され,一般の肥料
の基準を満たしていることが常に確認されています。
処理水を再利用したら下流の酒田市等へ流れる水が今より少なくなるんですか?水資源の
サイクルは大丈夫ですか?
【回答】水田で再利用された処理水は,いずれ水田から放流されて河川に戻ります。
よって,酒田市のような下流の地域に流れる水が減る,ということはありません。
カキの品種改良をすすめて、ノロウイルスがカキから人の生活に影響をしないように(将
来的に)可能ですか?
【回答】カキの品種改良は良いアイディアだと思います。ぜひトライしてみたいです。
最近、クマ、イノシシ、シカ等が人の生活圏に多く出現しています。遺伝子操作によりそ
の数を減らせますか?殺処分のニュースに大変心を痛めています。子供の教育、生活、環
境にもよくありませんね。
【回答】これは,なかなか難しいでしょう。まず,遺伝子操作をした動物を自然に戻
すことは,予測できない重大事態が起こる可能性が否定できないため,いまの日本で
は認められていません。過去に,沖縄ではウリミバエと呼ばれる害虫駆除のために,
放射線を当てて不妊化した個体を放つ,という対策が取られたことがありますが,こ
れは遺伝子操作には当てはまりません。また,昆虫のように世代時間が短い動物には
効果がありますが,1年に1回しか出産をしない動物の場合には,効果が出るまで長
い時間がかるでしょう。
水は古代より出でて人の現在にあり、そして未来に至る!と考えています。家庭での啓蒙
活動の推進、又は一部の地域で行われている家庭内での流水による(鯉を飼う等)で使用
水の汚染を減らす工夫を!洗剤利用の減少を真剣に再考慮しましょう。
【回答】そうですね。皆さんの家庭で,水環境の保全のためにできることはたくさん
あります。鯉を飼う話は初めて聞きましたが,興味深いですね。
14 ページにある資源循環システムでは畜産もサイクルの一つの中に組み込まれていますが、
TPP の採決により日本における畜産業が地位を脅かされていると感じます。家畜の糞を利
用した土壌改善と採草放牧による遊休農地の保全管理には個人的に注目しておりますし、
そもそも畜産が盛んでいなければ飼料米自体の需要も無くなってしまいます。農地農業の
ためにも畜産についても両輪的に国には捉えてもらいたいと日頃から感じております。
【回答】同感です。TPP は,日本の畜産業にとってチャンスかもしれません。私は海
外での仕事も多く,各国で肉料理を口にする機会がありますが,日本産の肉ほどおい
しい肉はありません。価格の安さではなく,その品質の高さで勝負してほしいですね。
下水処理水を分析することは出来ないか。
【回答】分析できます。今回の講義では窒素濃度のみデータを示しましたが,他にも
いろいろな分析をしています。
水による、農業と水産業のつながりの話をすると思ったのでもしあればそこを詳しく教え
ていただきたいです。
【回答】もちろん,農業と水産業にもつながりはあります。次に講義をする機会があ
れば,その辺もお話ししたいと思っています。
ここまで大規模な研究をして下水道の再利用や最近の検出感度を限界まで改良していると
は思いませんでした。研究を続け結果を出すまでの努力と行動力に驚きました、
【回答】どうもありがとうございます。学生を教育することとともに,社会に役立つ
研究成果を出すことが大学の使命ですので,そのための努力は全然苦でありませんよ。
以上です。もし,講義の後で新たに疑問をもたれたことがありましたら,できればメー
ル([email protected])にてご連絡いただければと思います。その他,皆さ
んのお困りごとで,私の専門知識が役に立つことがあればご相談ください。
なお,この書類は以下のウエブサイトからもダウンロードできます。
http://www.tr.yamagata-u.ac.jp/~water/profile.html
今回の講義では,皆さんには最後まで真剣に聴いていただき,私も楽しく話ができまし
た。本当にありがとうございました。