低放射化フェライト鋼 F82H の最適製造技術による製作 仕様書 平成 28 年 5 月 量子科学技術研究開発機構 核融合研究開発部門 核融合炉構造材料開発グループ 1. 一般仕様 1.1 概要 「幅広いアプローチ(BA)」活動の一環として実施される原型炉 R&D 活動においては、 低放射化フェライト鋼を対象として原型炉ブランケットにむけた材料工学研究開発活 動が進められている。その内の低放射化フェライト鋼製造技術最適化検討を進めてき た成果の確認を目的とし、原子力機構で開発を進める低放射化フェライト鋼 F82H(Fe8Cr-2W,V,Ta)を溶解し、各代表的部材を製作して、その諸特性の評価を行う。 1.2 納入場所および納入条件 納入場所: 量子科学技術研究開発機構 六ヶ所核融合研究所 納入条件: 持込渡し 1.3 納期 平成 29 年 2 月 28 日 1.4 納入品 厚板 厚さ 25mm 幅 530mm 残材 試験片切り出し残材 1.5 長さ~600mm 2枚 提出図書 図書名 提出時期 部数 承認 本溶解要領書、工程表 契約後速やかに 3部 要 打ち合わせ議事録 各打ち合わせ後 1 週間以内 3部 要 全作業報告書*, ** 作業終了時 3部 要 上記報告書の電子データ 作業終了時 1部 不要 * 全作業報告書には、以下の項目を含むこと • 原料情報 • 化学組成分析結果(炉前分析値、Ladle 値も含む) • 第 2 編 3 に記載した試験・結果に関する要領と結果 ** 以下の項目については、可能な範囲で報告に含めること。 • 操業記録 • 熱履歴、鍛造履歴、および、圧延履歴 1.6 検収条件 外観及び員数試験に合格し、提出図書の内容確認をもって検収とする。試験の項目、 実施時期および合格条件については以下のとおりである。 試験項目: 外観および員数試験 時期: 納入時 判定基準: 表面に割れが無いこと。 2.2 項に示す物品の員数および形状、寸法を満たしていること 報告書の記載内容が第 2 編の技術仕様を満足していること 2 技術仕様 2.1 溶解 溶解する F82H の化学組成を表 1 に示す。組成は表 1 の目標値であることが望まし いが、許容範囲内であれば合格とする。 溶解は電気炉溶解、取鍋精錬 または真空誘導溶解により実施する。ESR による再 溶解を実施する。原材料、および操業手法の詳細条件については、溶解前に機構と 協議の上、決定することとする。また、成分のバラ付きを防ぐため1チャージで製作す ることとする。 表 1 に指定した元素について分析を行い、ESR 後の値が許容範囲内にあることを 確認することとする。溶解が複数回にわたる場合には、バッジ毎に元素分析を実施す ることとする。 複数の鋳塊に鋳込む場合には、鋳込み順がトレース出来るように管理することとす る。また各鋳塊については、トップ部、ボトム部がわかるように管理することとする。 原材料、および操業手法等の詳細条件については量子科学機構との協議の上決 定する事とする。 表 1. F82H の化学組成(重量%) 元素 目標値 許容範囲 C 0.100 0.080 - 0.120 Si 0.10 0.05 - 0.20 Mn 0.45 0.40 - 0.50 Cr 8.00 7.60 - 8.40 W 1.85 1.7 - 2.0 V 0.20 0.15 - 0.30 Ta 0.08 < 0.10 B (0.0010) < 0.003 N (0.0050) < 0.020 Fe Bal. Bal. 強度上抑制が必要な不純物の目標値 Ti (< 0.002) Lap. < 0.01 P < 0.003 < 0.040 S < 0.0005 < 0.003 Al (< 0.0150) Lap. < 0.030 O < 0.0020 Lap. < 0.010 低放射化上抑制が必要な不純物の目標値 Mo <0.0005 < 0.05 Ni <0.001 < 0.1 Cu <0.01 < 0.05 Nb <0.0001 <0.002 Co <0.001 <0.01 ( )は、参考目標値 *Lap.: 出来る限り低く 2.2 スラブ・ビュレットの製作 2.2.1 鍛造 鋳塊は、均質化処理を行った後、鍛造を行うこととする。均質化処理は、参考条件と して 1180±25℃×72 時間とする。均質化処理後に一端冷却(空冷)した後に鍛造する 場合は、鍛造前に 1150℃±25℃(炉内雰囲気温度での管理)まで再加熱し、鍛造を 行う。但し、均質化処理条件、および鍛造条件は別途量子科学機構との協議を要す る。 熱処理行程、鍛造工程の詳細を記録し報告書に記載することとする。 各スラブ・ビレットについては、鋳塊およびトップ部、ボトム部がわかるように管理、刻 印することとする。 2.2.2 熱処理 製作したスラブおよびビレットのうち、部材製作に供さないものは焼き鈍し熱処理を 施し、納品する。熱処理条件は、参考条件として 810±10℃×≧1 時間とする。但し熱 処理温度は別途原子力機構との協議のうえ決定する。 2.2.3 超音波探傷検査 製作したスラブおよびビュレットに対して超音波探傷検査を実施する。JIS G0587 に 従い、分類 4 以下を合格する。別途自社検査規格を有する場合には、協議によりこれ を定める。 2.2.4 化学組成の分析 各スラブおよびビレットについてトップおよびボトム部の 2 箇所よりサンプルを採取し、 元素分析を実施することとする。表 2 に指定した目標精度で指定した元素について 分析を行い、許容範囲内にあることを確認することとする。Al については、Total Al、 Sol.Alそれぞれについて分析を実施する。分析に当たっては、難溶性の介在物にな っている可能性に留意しつつ実施するものとする。Nb については GD-MS による分析 を実施する。GD-MS 分析は装置の感度係数による参考値で可とし、感度係数がない 場合はイオン強度比による算出値で可とする。 表2 分析元素 および 目標精度 (mass%) 元素 目標分析精度 元素 目標分析精度 C 0.001 O < 0.001 Mn 0.01 Si 0.01 P < 0.005 Ni < 0.01 S 0.0001 Cu 0.01 Cr 0.01 Mo < 0.001 V 0.001 Co < 0.002 B 0.0001 Ag 0.002 Al < 0.002 Sn < 0.0002 Ti 0.001 As 0.0001 Ta 0.01 Sb 0.0001 W 0.01 Nb 0.00001 N 0.0001 2.3 板材製作 2.3.1 熱間圧延 製作したスラブのうち、1つについて熱間圧延に供する。熱間圧延前の予加熱温 度は 1200 °C を超えないものとする。また、鍛造終止温度は 1000 °C を大幅に下回 らないものとする。可能な範囲で写真撮影し熱処理履歴を報告すること。 製作する熱間圧延材は黒皮を除いた際、その最終の厚さが表3の最終寸法となる べく、反りや曲りなどがないようにすること。また精度は一般的な製板時に求められ る標準的寸法精度要求を適用するものとする。 表3 熱間圧延材の寸法と数 (枚) (mm) 厚さ 最終 黒皮付き 18 25 幅 長さ 数 530 ~1300 2 2.3.2 熱処理 製作した板について、焼きならし:1040±15℃/40 分 空冷 /焼き戻し:750±15℃× 60 分/空冷 の熱処理を実施する。 • マルテンサイト単相となるよう、冷却速度は毎秒 0.1℃以上とする。 • 各熱処理後は必ず 100ºC 以下まで冷却した後に実施すること。 • 温度計測は、穿孔の上、熱電対を挿入しセメントで接着した上で実施し、測定履 歴を記録すること。計測点の位置は試験体の中心とする。 • 加熱および冷却に関する詳細条件は原子力機構との協議の上決定すること。 2.3.3 検査 製作した板について、超音波探傷検査を実施する。 3 評価試験 3.1 板材評価 表3の熱間圧延板の両端より必要量の鋼材を切り出し、表4に従って金相試 験、ヴィッカース硬さ試験、室温引張試験、およびシャルピー衝撃試験を実施す ること。試験片の本数、採取位置および方向は表5に従うこと、またそれらの記 録を残すこと。強度試験結果はその後の解析のためにマイクロソフト社 Excel で 扱える電子ファイルとして保存すること。 表4 No. ① 内容 金相試験 試験内容 規格 説明 JIS G 0551 王水エッチング 倍率:100 倍および 400 倍 視野数:各 5 視野 粒度番号評価:100 倍の 5 視野 (5 視野の平均粒度番号から粒径を計 算すること) JIS G 0555 および ASTM E45 Method D ② 介在物解析 ③ ヴィッカース硬さ 試験 JIS Z 2244 測定回数:5 点 ④ 室温引張試験 JIS Z 2241 測定回数:3 回 破面:デジタルカメラ等で写真撮影 ⑤ 高温引張試験 JIS G 0567 ⑥ シャルピー衝撃 試験 JIS Z 2242 測定回数:3 回 (200、250、300、350、400、450、 500、550 および 600 °C) 破面:デジタルカメラ等で写真撮影 温度:10 水準 (室温、0、-20、-40 および-60 °C、他 5 水準は協議の上、決定) 破面:デジタルカメラ等で写真撮影 表5 ①金相試験 試験片採取位置と方向(解析面) ②介在物解析 ③硬さ試験 ④室温 引張試験 ⑤高温 引張試験 ⑥シャルピー衝撃 試験 1/4t 3 面 1/2t L-t 面 1/4t L-T 1/4t L, T 1/4t L, T 1/4t LT, TL 特記事項 契約後、量子科学機構の担当者と詳細について打合わせること。検討および実施 に際して疑義が生じた場合は、量子科学機構の担当者と協議し、量子科学機構の担 当者の決定に従うこと。試験片製作時に生じる残材については、採取位置および採取 方向を明示の上納入すること。強度試験結果はその後の解析のためにマイクロソ フト社 Excel で扱える電子ファイルとして保存すること。 4
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