直面する大きな課題と 乗り越えた先に見える未来 産業構造を変えて

ロボットビジネスが新しい 時 代を迎えて いる。
2014 年に「第 3 次ロボットブーム」として注目を
集め、「日本再興戦略」として現在もさまざまな
取り組みが続くなか、本格的な事業化に向けて着
実な動きが見られるようになってきた。
いま求められる「実際にビジネスになるロボット」と
は? 本特集ではヒューマノイド、ドローン、モビリ
ティ、パワーアシストにフォーカスし、確立しつつ
あるロボットビジネスの最新状況をレポートする。
ビジネス向けロボ 産業構造を変えてしまいそうな
ロボティクスの進化
領域が誕生している。
ヒューマノイドでは「Pepper(ペッ
パー)」が発売され、意外にも B to B の
直面する大きな課題と
乗り越えた先に見える未来
「第 3 次ロボットブーム」といわれて
市場を切り開いた。ホビーの空撮から
一方で、ここにあげた 4 ジャンルに
から 2 年が過ぎ、言葉としてのブーム
生まれたドローンは、いまや物流にお
おいても、すべてが順調というわけで
はすでに旬の時期を過ぎた。当時「今度
ける期待を担っている。クルマの領域
はなく、むしろいま一つの転換期を迎
えているともいえる。
はホンモノ」といわれたブームに実体は
では自動車産業のプレイヤーではな
ともなっただろうか? その答えはとも
かった IT の巨人たちが次の覇権を伺っ
ヒューマノイドは、最初のインパク
かく、ここ数年の潮流は一過性のもの
ており、人の力をアシストするデバイ
トの段階を過ぎ、次に打ち出す新しい
ではなく、さまざまなジャンルで現在
スは福祉分野にとどまらない広がりを
機能(おそらくは AI:人工知能)をどう
も進行中といえる。
見せている。
実装するか。ドローンは航空法の改正
なかでも今回フォーカスを当てた
これらの状況を見ると現在のロボ
によりルール作りが進む段階になり、
「ヒューマノイド」
「ドローン」
「モビリ
ティクスは、ブームどころかこれまで
都市部でいかに運航するかという課題。
ティ」
「パワーアシスト」の 4 ジャンル
の産業構造を大きく変えるほどの影響
自動運転は 2020 年に向けて政府が規制
では、数年前には考えられなかった技
力を持っていることがわかる。
を緩和するなか、実際の交通システム
術が登場し、それぞれ新しいビジネス
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にどうやって組み込んでいくか。そし
The ROBOT イノベーション×ビジネス
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特集1
ボ ティクス最前線
てパワーアシストは、それを必要とし
り、医療・介護系や、交通系、コミュ
リンピックが開催される。5 カ年計画で
ている人たちが無理なく使うための環
ニケーションなど、さまざまな分野で
ある「ロボット新戦略」のゴールの年で
境整備と、社会にロボティクスを取り
利用されるロボットを提供すべく、従
もある。2015 年に 1.6 兆円だった国内
入れるための大きな課題に取り組んで
来の事業から転換を図る企業や新規参
ロボット産業の市場規模はこの年、2.9
いるところだ。
入した企業も数多い。
兆円に達すると予測されている。さら
政府が成長戦略の重点項目としてロ
に 2035 年には、日本の人口は 1 億 909
2020 年に向けた
さらなる進化へ
ボット産業の拡大をあげていることも
万人に減少し、この年、日本のロボッ
理由の 1 つだが、背景としては少子高
ト産業の市場規模は 9.7 兆円に膨れ上が
10 年前、ビジネスとしてロボティク
齢化による労働人口の減少にともなう
る見込みだ。
スに取り組むほとんどの企業が産業用
労働力の補充にロボットを利用したい
ロボティクスの進化にとって、大き
ロボットメーカーだった。しかし現在、
という思いや、インターネットビジネス
な転換期が訪れようとしているいま、
さまざまな業種の企業で、ロボットや
で世界に後れを取った経験を糧に、日
各企業が最前線でどのようにビジネス
AI、IoT(モノのインターネット)などの
本のお家芸であったロボットジャンル
を本格化していくのか、これからの動
テクノロジーが基礎教養と化している。
でのアドバンテージを維持したいとい
きに目が離せない状況だといえるだろ
これまでほぼ市場がなかったサービス
う希望もあるだろう。
う。
ロボット分野も急成長が見込まれてお
2020 年には東京オリンピック・パラ
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