調査結果(PDF:512KB)

要介護高齢者の口腔状況調査(全国調査)
地域医療対策部
【背景と目的】2025 年に訪れる超高齢社会に象徴されるように、日本における高齢化は加速
している。その中で、地域包括ケアシステムの構築が進み、これまで病院や施設で療養して
いた高齢者が地域に戻り、訪問歯科医療、高齢者歯科医療の需要も高まるであろう。
かつては、残存歯が少ないことから総義歯の調整等が訪問歯科診療への要望の中心であっ
たが、歯科医療技術の向上や 8020 運動などによる国民の意識の高まりから高齢者の残存歯
は増加し、口腔内状況の変化、食べる事への関心の高まりなどから、歯科医療は歯の形態の
回復から口腔機能の回復に移行するとされている。
たしかに、高齢者の口腔内状況は変化し、求められている歯科医療も変化している。しか
し、高齢者の残存歯の増加に伴い、う蝕や歯周病は多発傾向にあると想像できる。さらに、
要介護高齢者となれば、複数の疾病を抱えていることが考えられ、歯科固有の処置のリスク
は高くなるといえる。これからの歯科医療は、口腔機能の維持・回復と共に、歯の形態の維
持・回復、最期まで食べられるよう、口腔環境を整えることが求められると考える。現在の
診療報酬は、高齢者歯科医療、訪問歯科医療に対する評価が十分とは言えず、改善が求めら
れる。
そこで、口腔内状況の実態調査を行い、課題の整理と、要介護高齢者の増加に対応した歯
科医療が提供できるよう、高齢者歯科医療の改善に向け、取組みを行うことを目的として実
施した。
【調査方法】
・調査期間:平成 27 年 1 月から 8 月
・ 調査対象者:上記期間で直近に訪問診療を行った初診または再初診の人(65 歳以上)
1 協会 5 人の訪問診療実施役員に調査を依頼(1 人あたり 10 人記載)
(47 協会☓5 人☓10 人=2350 人)
・調査方法 カルテより初診・再初診時の状態を調査用紙に記載し返信封筒で保団連に送付。
667 人分の回答があった。
・回収率 667/2350=28.4%
1
無回答
0.3%
女
64.6%
【調査結果】
1、基本属性
① 性別
男性 234 人女性 431 人(1:1.84)無回答 2 人
男
35.1%
② 年齢別
無回答
0.1%
70 歳代が 25.3%80 歳代が 49.1%90 歳以上が
9 0 歳以上
17.8%
17.8% 最高齢者は 103 歳平均年齢 83.6 歳
70 歳 代 後 半 か ら は 女 性 が 多 く な っ て い る 。
6 5 ~7 0 歳
7.5%
7 1 ~7 5 歳
7.5%
男女とも 80 歳代後半が最も多い
7 6 ~8 0 歳
17.8%
8 6 ~9 0 歳
26.5%
8 1 ~8 5 歳
22.6%
性別年齢別人数
120
100
80
人
102
60
0
91
75
40
20
118
25
25
28
22
44
49
59
28
男性
65-70 71-75 76-80 81-85 86-90
男性
年齢
女性
91-
③ 居住先
無回答
1 .5 %
在宅 34.5%介護保険 3 施設 33.4%居宅系
施設 20.2%とこの 3 つの場所が居宅先と
して多い
在宅
3 4 .5 %
病院
1 0 .3 %
高齢者向け
居住系施設
2 0 .2 %
介護保険3
施設
3 3 .4 %
2
④ 要支援・要介護度
無回答
4.8%
要介護 3 が最も多く 24.9%要介護 4
要介護5
21.4%
が 21.9%要介護 5 が 21.4%と続き、
要支援1
1.8%
これらで 7 割弱を占める。
年齢別では高齢になるにしたがって
要支援2
3.6%
要介護4
21.9%
重症化するという傾向にはなかった。
要介護1
6.9%
要介護3
24.9%
居住別では介護保険施設と病院で介
要介護2
14.7%
護度が高い傾向にある。
100%
80%
要介護5
要介護4
要介護3
要介護2
要介護1
要支援2
要支援1
60%
40%
20%
0%
65~70歳
71~75歳
76~80歳
81~85歳
86~90歳
91歳以上
居住別要介護度
介護施設 02 9
居住系施設 3 5
29
17
21
19
40
在宅 7 13
病院 2 3 1
0%
75
8
20%
53
38
28
40
9
要支援1
要支援2
要介護1
要介護2
要介護3
要介護4
要介護5
22
51
14
40%
43
57
19
60%
80%
100%
3
⑤ 主疾患
脳血管疾患が 36.0%認知症が 23.1%と多くこれらで約 6 割を占めている。認知症患者が増加
している傾向にある。整形外科疾患が 11%(骨折・転倒・関節疾患)だった。
無回答
3.1%
その他
10.3%
パーキンソン病
4.3%
脳血管疾患
36.0%
高齢による
衰弱
6.4%
骨折・ 転倒
7.3%
2、歯の状態
認知症
23.1%
心疾患
5.5%
関節疾患
3.7%
① 有歯顎者の割合
118,
18%
有歯顎者は 82%、無歯顎者は 18%
と有歯顎者が圧倒的に多い。
無歯顎者
有歯顎者
549,
82%
② 現在歯数
21 歯以上が最も多くこ
現在歯数
(人)
のデータからも多くの歯
160
が残存している人が多いこ
140
とがわかる。平均現在歯数
120
12.35 本であった。
(有歯顎者では 14.59 本)
140
118
97
100
104
107
6-10歯
11-15歯
101
80
60
40
20
0
0歯
1-5歯
16-20歯
21歯以上
4
③ う蝕状況
有歯顎者では 1 人平均健全歯数は 4.54 本、処置歯は 6.21 本と比較的多い。C4 は 1 人平均
1.85 本であった。未処置歯が合計 3.84 本であった。
全対象者では 1 人平均健全歯数は 3.77 本処置歯は 5.22 本と比較的多い。
C4 は 1 人平均 1.61
本であった。未処置歯が合計 3.36 本であった。
667 人中 C1保有者 80 人 C2 保有者 172 人 C3 保有者 123 人 C4 保有者 283 人であった。
全対象者の現在歯状況
歯のある人の現在歯状況
6
本
7
6
5
4
5.22
6.21
5
4.54
4
3.84
3.77
3.36
3
3
2
1.85
0.4
1
0
健全歯 処置歯 う蝕歯
1.07
C1
C2
2
0.52
1.61
0.94
1
C3
0.46
0.35
0
C4
健全歯
処置歯
う蝕歯
C1
C2
C3
C4
④ 年代別現在歯状況
年齢が進むに比例し現在歯が少
現在歯数
なくなる。しかし 80 歳代前半
でも 12.2 本あり、90 歳以上で
も 9.5 本残存している。
20
16.1
16.3
13.2
15
12.2
10.4
9.5
10
5
0
65~70 歳
71~75 歳
81~85 歳
86~90 歳
90 歳 以上
年代別現在歯状況
う蝕の割合は年齢別ではあまり差
はなかった。
76~80 歳
100%
3.5
3.7
3.9
3.2
2.4
12.6
12.6
9.3
9
8
65~70 歳
71~75 歳
76~80 歳
81~85 歳
86~90 歳
80%
3.3
60%
40%
6.2
20%
0%
健全+処置歯
う蝕歯
90 歳 以上
5
⑤ 根面う蝕
C2 保有者 172 人中、根面う蝕がある者
は 70 人であった。根面う蝕の本数は約 4
割が 1-5 本あり、21 本以上ある人も 2 人
いた。
0歯
57.1%
歯以上
126
11~2
~1
5歯
0
01..02%%
6 ~1 0 歯
2.5%
1 ~5 歯
39.3%
⑥ 残根の状況
残根は 1 人平均 1.61 本である。有
歯 顎 者 では 1.85 本
0-5 歯が
83.6%を占めた。残根は 283 人にあ
り有歯顎者の 51.5%に認められた。
0歯
42.1%
無回答
6.4%
2 1 歯以上
0.2%
1 6 ~2 0 歯
0.4%
1 1 ~1 5 歯
1.3%
1 ~5 歯
41.5%
6 ~1 0 歯
8.2%
⑦ 要介護度別健全歯数とう蝕数
要支援 1 では健全歯が多い。要介護度が高くになるにしたがって、う蝕が多くなるとは言え
ない。
0.0
1.0
2.0
3.0
4.0
5.0
6.0
7.0
平均健全歯, 6 . 1
要支援1
平 均 う食 歯 , 2 . 5
平均健全歯, 1 . 9
要支援2
平 均 う食 歯 , 3 . 5
平均健全歯, 4 . 0
要介護1
平 均 う食 歯 , 2 . 9
平均健全歯, 4 . 3
要介護2
平 均 う食 歯 , 3 . 0
平均健全歯, 3 . 6
要介護3
平 均 う食 歯 , 2 . 7
平均健全歯, 3 . 3
要介護4
平 均 う食 歯 , 3 . 5
平均健全歯, 4 . 1
要介護5
平 均 う食 歯 , 3 . 8
平均健全歯, 3 . 9
無回答
平 均 う食 歯 , 2 . 4
平均健全歯, 3 . 9
平均
平 均 う食 歯 , 3 . 0
6
0%
20%
要支援1
40%
60%
健全歯 73
健全歯 46
要支援2
要介護1
処置歯 48
処置歯 129
健全歯 184
要介護3
要介護5
C1, 39C2, 124 C3, 57
処置歯 812
健全歯 121
無回答
C4, 40
C1, 45C2, 132 C3, 74 C4, 190
処置歯 705
健全歯 582
C3, 7 C4, 6
C1, 43 C2, 86C3, 41 C4, 120
処置歯 801
健全歯 485
要介護4
C2, 17
C1, 10 C2, 53 C3, 16 C4, 55
処置歯 533
健全歯 584
100%
C1, 13 C2, 17 C3, 14
処置歯 253
健全歯 412
要介護2
80%
処置歯 126
C4, 292
C1, 69 C2, 144 C3, 73
C4, 256
C1, 1C2, 14 C3, 6
C4, 57
⑧ 居住別の現在歯の状況
大きな違いは認められなかったが、高齢者居住系施設でやや未処置歯が少なかった。
0%
20%
40%
60%
80%
100%
C3, 143
在宅
健全歯 980
処置歯 1,219
C2, 277
C4, 375
C1, 93
介護保険3施設
健全歯 704
C2, 176
処置歯 1,016
C3, 70
C4, 380
C1, 33
C3, 65
高齢者居住系施設
健全歯 485
処置歯 740
C2, 53
C4, 161
C1, 25
C3, 10
病院
無回答
健全歯 297
健全歯 19
処置歯 413
処置歯 20
C1, 69 C2, 77
C2, 4
C4, 80
C4, 21
7
⑨ 疾患別の現在歯の状況
疾患別で現在歯の状況に差はなかった。
0%
10%
脳血管疾患
30%
40%
50%
健全歯 1,016
心疾患
処置歯 199
健全歯 600
関節疾患
その他
C1, 15
C2, 36
処置歯 99
100%
C4, 68
C4, 232
C3, 19
C4, 40
C4, 94
C1, 23 C2, 33 C3, 16
C1, 3
C2, 38
処置歯 373
健全歯 23
C3, 21
C1, 14C2, 26C3, 7
処置歯 189
健全歯 288
90%
C1, 40 C2, 121 C3, 69
処置歯 215
健全歯 111
パーキンソン病
C2, 39
処置歯 292
健全歯 143
80%
C1, 97 C2, 211 C3, 99 C4, 355
C1, 7
処置歯 164
健全歯 156
高齢による衰弱
70%
処置歯 723
健全歯 60
骨折・転倒
60%
処置歯 1,154
健全歯 86
認知症
無回答
20%
C4, 71
C3, 17
C4, 60
C1, 16C2, 48C3, 28 C4, 55
C1, 5
C2, 29
C3, 11
C4, 35
3、歯周病について
① 歯周病の状況
軽度 22.4 %中等度 55.7%重 度
なし
1.6%
無回答
5.6%
14.6%と殆どの人が何らかの歯周
病に罹患している。
② 要介護度別
している
20%
要支援1
要介護1
要介護2
要介護3
なし, 6
軽度, 1
軽度, 13
なし, 20
なし, 38
なし, 23
要介護5
なし, 22
なし, 7
60%
80%
軽度, 4
なし, 8
要介護4
無回答
40%
なし, 3
要支援2
中等度
55.7%
重度
14.6%
要介護 3 以上では歯周病も重度化
0%
軽度
22.4%
中等度, 3
軽度, 27
軽度, 25
軽度, 5
重度, 1 無回答, 1
中等度, 12
中等度, 20
軽度, 24
軽度, 25
100%
重度, 2 無回答, 1
重度, 4 無回答, 3
中等度, 46
中等度, 76
中等度, 70
中等度, 66
中等度, 12
重度, 4無回答, 4
重度, 20 無回答, 7
重度, 20 無回答, 6
重度, 24
重度, 5
無回答, 6
無回答, 3
8
③ 居住別の歯周病の罹患状況
特に大きな違いは認められなかった。
0%
在宅
10%
20%
なし 36
30%
50%
軽度 47
なし 46
介護保険3施設
40%
なし 34
病院
なし 17
80%
軽度 22
90%
重度 26
中程度 64
軽度 11
中程度 2
無回答, 5
無回答, 14
重度 7 無回答, 8
中程度 31
軽度 1
100%
重度 38
中程度 102
なし 4
無回答
70%
中程度 104
軽度 35
高齢者居住系施設
60%
重度 8
重度 1
無回答, 2
無回答, 2
④ 疾患別歯周病罹患状況
疾患別では歯周病の状況に大きな差はなかった。
0%
脳血管疾患
心疾患
10%
20%
30%
なし 45
軽度 5
軽度 22
なし 7
骨折・転倒
なし 11
高齢による衰弱
なし 10
パーキンソン病
なし 4
その他
なし 9
無回答
なし 3
60%
中等度 56
軽度 2
軽度 7
軽度 6
軽度 2
80%
90%
100%
重度 25
無回答, 6
重度 3
中等度 23
中等度 18
無回答, 4
重度 26
中等度 13
軽度 6
軽度 17
70%
中等度 115
中等度 20
なし 43
関節疾患
50%
軽度 49
なし 5
認知症
40%
重度 2
重度 6
重度 6
中等度 16
中等度 30
中等度 12
無回答, 7
無回答, 1
無回答, 2
無回答, 3
重度 2 無回答, 1
重度 7
重度 2
無回答, 6
無回答, 2
9
⑤年齢別の歯周病罹患状況
年齢による歯周病の罹患率に差はなかった。
年齢別歯周病
40
9138
86-90
年齢
28
28
81-85
76-80
17
71-75
9
65-70
16
12
77
29
24
74
21
5 0
23
40%
60%
6
9
27
13
20%
17
5
10
14
55
9
5
0%
46
8
80%
なし
軽度
中等度
重度
無回答
1
100%
4、義歯の状況
① 上顎義歯の使用状況
総義歯は 34.8%と多いが、義歯な
しも 36.4%と多かった。
総義歯と部分床義歯を合わせると
無回答
0.3%
総義歯
34.8%
422 人が使用。
なし
36.4%
部分床義
歯
28.5%
② 下顎義歯の使用状況
義歯なしが最も多く 39.9%であっ
総義歯
24.0%
た。総義歯は 24.0%と上顎に比較し
少ない。
総義歯と部分床義歯を合わせると
無回答
1.6%
部分床義
歯
34.5%
390 人が使用。
なし
39.9%
10
※上下共義歯なしが 208 人と最も多かった。次いで上下総義歯が 133 人であった。
250
208
200
150
100
127
6
133
50
27
上顎なし
36
20
上顎部分床義歯
76
22
0
下顎総義歯
下顎部分床義歯
上顎総義歯
下顎なし
③ 居住別の義歯の状況
病院での義歯使用が少なく、入院すると義歯を外してしまうことが多いと考えられる。
0%
在宅
10%
20%
総義歯 130
総義歯 138
高齢者居住系施設
総義歯 87
無回答
総義歯 27
40%
50%
60%
70%
部分床義歯 162
介護保険3施設
病院
30%
なし 165
部分床義歯 92
総義歯 10
90%
なし 163
部分床義歯 138
部分床義歯 23
80%
なし 90
なし 87
部分床義歯 5
100%
無回答 5
無回答 5
無回答 1
無回答 1
なし 4
無回答 1
11
④ 疾患別の義歯の状況
0%
脳血管疾患
10%
20%
総義歯 120
心疾患
総義歯 26
認知症
総義歯 107
関節疾患
骨折・転倒
その他
無回答
40%
50%
70%
80%
90%
無回答 4
なし 19
部分床義歯 78
なし 120
部分床義歯 24
なし 12
部分床義歯 34
総義歯 33
無回答 2
無回答 1
なし 31
部分床義歯 20
無回答 1
なし 25
部分床義歯 52
総義歯 11
無回答 3
なし 34
部分床義歯 21
総義歯 41
100%
なし 213
部分床義歯 29
総義歯 29
総義歯 13
60%
部分床義歯 143
総義歯 12
高齢による衰弱
パーキンソン病
30%
なし 45
部分床義歯 19
なし 8
無回答 4
⑤ 要介護度別
0%
要支援1
要支援2
要介護1
20%
総義歯 6
総義歯 22
総義歯 62
要介護3
総義歯 109
総義歯 78
無回答
総義歯 17
80%
100%
なし 8
部分床義歯 15
なし 18
部分床義歯 34
なし 35
部分床義歯 66
なし 66
部分床義歯 122
総義歯 83
要介護5
60%
部分床義歯 10
総義歯 15
要介護2
要介護4
40%
なし 98
部分床義歯 95
なし 109
部分床義歯 64
なし 143
部分床義歯 14
なし 32
無回答 1
無回答 2
無回答 3
無回答 5
無回答 1
無回答 1
疾患別では差はなかった。要介護度別では要介護 5 で義歯なしが多かった。必要でも使用し
ていないケースが多いと考えられる。
⑥ 義歯の問題点
使用していないが義歯が必要と判断さ
れるものは 9.3%・62 人と多くないが、
修理 170 人再製作 97 人が必要で 40%
使用してい
ないが義
歯が必要
無回答 と判断され
る
26.7%
9.3%
であった。義歯の問題があるものは合
計 329 人であった。
その他
24.0%
修理が必
要
25.5%
再製作が
必要
14.5%
12
5、インプラント
① インプラントの有無:まだインプラントがある要介護者は少なかったが今後増加が予
想される。
件数
あり
1
なし
660
無回答
6
計
667
6、食事の状況
その他
1.9%
① 食形態
常食が 38.4%軟食が 42%と多く、
嚥下食は 9.3%と比較的少なかっ
常食
38.4%
胃ろう
5.8%
経鼻栄養
2.5%
た。胃瘻は 5,8%経鼻栄養は 2.5%
と胃瘻の方が多く、約 17 人に 1
嚥下食
9.3%
人程度いる。
軟食
42.0%
② 要介護度別食形態
要支援1から要介護2までは常食が最も多い。要介護3以降は軟食が多くなり、
嚥下食も徐々
に多くなる。要介護5では軟食に次いで胃瘻が2番めに多くなっている。
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
常食 10
要支援1
要支援2
軟食 9
常食 24
その他 1
その他 1
軟食 35
常食 70
要介護3
嚥下食 1
軟食 21
常食 58
要介護2
嚥下食 3胃ろう 1
3
経鼻栄養 その他
2
軟食 75
嚥下食 14
要介護4
要介護5
無回答
常食 49
常食 25
常食 7
軟食 12
嚥下食 24
胃ろう 1
経鼻栄養 4 その他 2
胃ろう 4
嚥下食 17
軟食 70
軟食 55
100%
軟食 2
常食 14
要介護1
90%
経鼻栄養 8
嚥下食 3 経鼻栄養 3
胃ろう 27
その他 5
胃ろう 6
その他 1
13
③ 居住別食形態
高齢者居住系施設や在宅で常食が多くなっている。病院では嚥下食以下が多くなっており経
鼻栄養や胃瘻も多い。
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
その他, 1
常食 107
在宅
嚥下食 13 胃ろう 16
軟食 91
経鼻栄養 2
その他, 8
常食 71
介護保険3施設
軟食 108
嚥下食 23
胃ろう 10
経鼻栄養 2
その他, 2
常食 58
高齢者居住系施設
嚥下食 12 胃ろう 3
軟食 57
経鼻栄養 3
病院
常食 17
軟食 20
常食 3
無回答
経鼻栄養 10
嚥下食 12
軟食 4
その他, 1
胃ろう 10
嚥下食 2
その他, 1
④ 疾患別食形態
脳血管疾患・認知症・高齢による衰弱で常食が少なく、脳血管疾患・認知症・パーキンソン
病で嚥下食以下の割合がやや多くなっている。
0%
脳血管疾患
10%
20%
常食 81
心疾患
認知症
50%
60%
70%
軟食 93
軟食 7
常食 37
常食 5
嚥下食 3
嚥下食 3 その他, 3
軟食 26
常食 12
嚥下食 胃ろう
2
1
嚥下食 5
軟食 20
軟食 10
その他, 4
経鼻栄養 その他,
2
4
嚥下食 16
胃ろう 4
軟食 21
常食 14
100%
嚥下食 1
軟食 12
常食 22
その他
90%
嚥下食 経鼻栄養
25
胃ろう
10
27
軟食 73
常食 10
パーキンソン病
80%
軟食 16
常食 55
骨折・転倒
無回答
40%
常食 20
関節疾患
高齢による衰弱
30%
経鼻栄養 2 胃ろう 3
経鼻栄養 3 その他, 2
嚥下食 3
胃ろう 4
嚥下食 6
14
⑤
現在歯数と食形態
0%
0本
20%
40%
常食 44
60%
80%
軟食 75
100%
その他 5
胃ろう 3
嚥下食 17
経鼻栄養 3
常食 41
1~5本
胃ろう 5
嚥下食 13
経鼻栄養 1
軟食 51
その他 3
常食 35
6~10本
嚥下食 8
軟食 57
胃ろう 6
経鼻栄養 5
11~15本
常食 33
常食 37
16~20本
胃ろう 6 その他 1
嚥下食 6
経鼻栄養 4
軟食 43
軟食 30
嚥下食 11
胃ろう 10
その他 1
経鼻栄養 2
常食 66
21本以上
軟食 24
嚥下食 7 胃ろう 9 その他 3
経鼻栄養 2
現在歯が多くなるにしたがい、常食が多くなる傾向にある。嚥下食以下では歯数に関係ない
と考えられる。
⑥ 歯周病と食形態
0%
なし
20%
常食 40
重度
無回答
60%
80%
常食 113
常食 27
常食 12
軟食 34
軟食 135
軟食 34
軟食 9
100%
その他 2
嚥下食 15 胃ろう 7
経鼻栄養 4
軟食 68
常食 64
軽度
中等度
40%
嚥下食 9 胃ろう 7
経鼻栄養 2
その他 5
嚥下食 25胃ろう 16
経鼻栄養 11
嚥下食 9 胃ろう 8 その他 1
嚥下食 4胃ろう 1その他 5
歯周病の状態と食形態には大きな差はなかったが、軽度の人では常食が多い。
15
⑥
義歯と食形態
0%
20%
40%
常食 77
自分の歯のみ
上下総義歯
60%
総義歯と部分床義歯
総義歯と義歯なし
その他 3
胃ろう 2
嚥下食
5
経鼻栄養
1
軟食 61
常食 10
部分床義歯と義歯なし
その他 1
胃ろう 4
嚥下食 7
軟食 49
常食 55
上下部分床義歯
その他 5
経鼻栄養
3
嚥下食 14
軟食 66
常食 35
100%
胃ろう 31
嚥下食 27
その他 4
経鼻栄養 11
軟食 59
常食 44
80%
胃ろう 2
経鼻栄養
1
嚥下食 3
軟食 12
常食 32
経鼻栄養 1
嚥下食 4
軟食 26
義歯による食形態に差はなく、摂食嚥下機能による差が大きいと考えられる。
⑧年齢別食形態
嚥下食以下については年齢による差はないが、高齢になるにしたがい軟食が多くなる。
年齢別食形態
91-
年亭
86-90
31
65
66
81-85
61
76-80
47
0%
14 34 5
62
10 1 14 3
17
26
14
24
20%
15
40%
3 41
84
40
71-75
65-70
14
60%
5 9 3
4
3 2
80%
3
5
30
常食
軟食
嚥下食
経鼻栄養
胃ろう
その他
1
100%
16
【考察とまとめ】
歯科医療の進歩や国民に口腔衛生意識の向上に伴って、超高齢社会の中であっても要介護
高齢者の口腔内状態は改善されてきていると言われ、今後の歯科医療の目標は口腔機能の改
善や向上に重点が置かれている。しかし 8020 運動の成果で確かに高齢者の現在歯数は多く
なっているが、要介護状態になり口腔清掃が十分にできなくなると,う蝕や歯周病が進行して
いるのではないかとの疑問もある。そこで今回、全国の保険医協会・医会に依頼し要介護高
齢者の口腔実態調査を実施した。
全国から 667 名の調査票が得られた。男女比は 1:1.84 と女性が 2 倍近く多かった。基礎
疾患では脳血管疾患と認知症が多く、この 2 疾患で約 6 割を占めた。また要介護 3・4・5 で約
7 割を占めた。
口腔内の状態は、無歯顎者は 18%の 118 人であり、一方 21 歯以上現存している人は 140
人いた。平均現在歯数は 12.4 本であった(有歯顎者では 14.6 本)
。そのうち 1 人平均健全歯
数は 3.8 本、処置歯は 5.2 本であった。C4(残根状態の歯)は 1 人平均 1.6 本であり、未処
置歯が合計 3.4 本であった。つまり残っている歯の約 3 割がう蝕であった。C1(歯の表面
の初期のう蝕)保有者は 80 人 C2(う蝕が象牙質に進行したもの)保有者は 172 人 C3(う
蝕が歯髄に達したもの)保有者は 123 人 C4 は保有者 283 人と C4 保有者が多く全対象者の
35.7%のものに C4 があった(有歯顎者では 51.5%)
。またう蝕の割合は年齢や要介護による
違いは必ずしも無かった。
歯周病の状態は中等度以上の歯周病が 70.3%と多くのものが歯周病に罹患している。要介
護 3 以上では歯周病も重度化している。
義歯は約 6 割のものが使用しており、そのうち約 8 割に問題があった。
食事摂取状況であるが、経鼻栄養 2.5%胃瘻 5.8%であり 90%以上は経口摂取していた。
要支援 1 から要介護 2 までは常食が最も多い。
要介護3以降は軟食が多くなり、
嚥下食も徐々
に多くなる。要介護 5 では軟食に次いで胃瘻が2番めに多くなっている。
今回の調査は初診時または再初診時の調査であり、治療前の状況であることを考慮しなけ
ればならないが、現在歯が多く残り、そのうち約 3 割にう蝕があり、特に残根が多かった。
歯周病も中等度以上であり義歯も問題があるものが多かった。このように要介護者の口腔内
はまだまだ治療の必要な状況である。臼歯部での咬合が治療により回復されると低栄養や認
知機能が改善されるという報告もある。また義歯を装着したり PAP(舌接触補助床)を装着
することにより舌圧が改善し摂食嚥下機能の改善にも繋がる。口腔機能低下による誤嚥性肺
炎を繰り返す者も少なからずおり、口腔ケアや口腔機能リハビリが必要である一方、在宅要
介護高齢者の訪問歯科診療での要望の多くは義歯やう蝕に関するものである。実際に要介護
高齢者に対し訪問診療をしていると VE 検査(嚥下内視鏡)や摂食嚥下リハビリテーション
の要望はまだまだ少ない。したがって口腔の機能的な回復改善も今後重要になっていくと考
えられるが、
そうした対応とともに口腔の形態的な回復改善もまだまだ必要だと考えられる。
訪問歯科診療の実施率は 18%程度と言われている。在宅や施設において口腔疾患の治療、
17
口腔ケア、口腔機能改善などさまざまな需要があると思われる。医科歯科連携、ST(言語聴
覚士)などとの多職種連携のもと訪問歯科診療が今後さらに実施されるように期待したい。
今回の調査がその一助になれば幸いである。
【参考】自由意見欄
1
義歯問題や抜歯だけでなく、C2 の必要な患者を多岐にわたり多いと感じている。また、
衛生上による口腔ケアがとても必要と感じるが、衛生士不足により出来ていないのが現
状です。
2
良好な方と極端に悪い方と2つに分かれる。
3 残存歯の有無に関係なく介護者のサポートが重要。サポートの程度で口腔内も変化する。
4
殆ど老健施設入所の患者さんで高齢な方が多いのですが、無歯顎か又は残根あるものの
無歯顎に近い方が多いです。前の病院で入院中口腔ケアがされず残根状態になり、主訴
として咀嚼不全の訴えがあり歯科が介入する事が多いと感じます。
5
欠損はすくなくない。セルフケア出来ている人はほとんどいない。認知症の人が多く、
意志の疎通も出来ない人も多い
6
残根状態で放置されているケースがあまりに多い。根面カリエスがかなり多い。また食
形態において常食が可能と思われるのに軟食、嚥下食が提供されている。
7
症状がでるまで口腔内をフォローしている人がいない
8
嚥下障害は口腔をケアをしていても進行する時はしてしまうか、う蝕や歯周病の進行は
通院している患者さんより分からないかもしれない。認知の中でも拒否というか暴力的
な人、暴言をはく人の割合が増えている。
9
意識レベルの高低により歯科治療の要求度が異なる。意識レベルが低く、かつ要介護度
が高く、残存歯数の多い人は口腔が汚れ未処理歯が多い。
10 残根が多い。歯周病も、義歯を入れていない方も
11 残存歯が多くなっている。う蝕も多い。摂食嚥下障害も多くなっている。
12 職員の指導が良いため重度の歯周病は見られない。
14 施設の従業員が少なくて口腔ケアができていない
15 口腔機能の低下がみられ、概ね含嗽が苦手である
16 当院通院不可になり往診に移行した患者は概ね口腔状態は良好(対応が早期でもあり)。
介護施設、医科からの依頼は痛みの訴えによるため口腔状態はかなり厳しい。
17 インプラント埋入しているがメンテナンスのための通院ができなくなっている患者様
がここ数年散見されるようになってきました。中には要撤去のものもありますが、訪問
診療においては手が出せない状況です。
18 口腔清掃状態を良好に保つのが難しいというのを痛感しました。同時に治療が必要な
方々もまだまだいると思いました。
19 口腔内の清掃状態が悪い、乾燥している、口臭がある。
18
20 週に1回の治療でも歯周病治療を継続すると口腔機能の向上につながる。
21 口腔清掃状態不良で多量の歯垢付着している場合が多いです。要欠損補綴や要修理の義
歯が放置され摂食機能の低下があります。
22 ロングのブリッジやインプラントをされている介護の必要な方のケアに大変です。補綴
が外れかかったり痛んでも処置が難しいことが多いです。
23 要介護者のう蝕、歯周病は多い。私の行っている訪問診療は口腔ケアは良好であった。
24 病院等管理下におかれた患者は比較的清潔であるが、居宅の場合は口腔状態は不十分な
状態である。
25 介助者の口腔内衛生管理への関心と管理方法技術によって個人差が極めて大きいと考
えられる。
26 身内及び家族さんの対応の違いが往診の数を決定づける要因の1つであること。口腔ケ
ア、歯科往診への認知はいまだ偏りを感じる。
27 口腔の状態が身体の状態に関わる事について認識の差が大きい。食事摂取についても食
形態や摂取方法が患者さんに合ってないケースが多い。
28 正常な人はほとんどいない。ブラッシングができない人がほとんど。口腔ケア認識ゼロ。
29 口腔内の初診で対応が必要です。
30 居宅においてはできるだけ衛生士が介護者に口腔ケアの大切さとケアの仕方を伝える
事が大切と感じます。老健施設においては口腔機能を体制加算のシステムも広がり、ス
タッフも同じ目標でケアすることで肺炎の入院も少なくなり、舌体操パタカラなどによ
り80代、90代の方々も元気に過ごされてます。又週1回歯科医師、歯科衛生士が入
ることでスタッフのモチベーションが続いていると思います。
31 口腔清掃状態が悪い方が多い印象です。全身疾患、服薬状況も様々ですので、それを考
えてのケア、治療方針を考えていくことが大切であると思っております。
32 80歳代を超えると根面カリエスが多発して治療が追いつかない。
33 清掃不良が多い。義歯が合っていないまま使用している人が多い。
34 口腔内の状態が悪くなってから依頼のあるケースが多く、介入しているにもかかわらず
崩壊していくケースが多い
35 施設入居者の義歯は清掃状態良好。在宅の方は食糟が残っており清掃不十分。
36 口腔状態が向上することはもちろんの事、ADL の向上にも繋がる。
施設入所と在宅を比べるとやはり家族介護においての口腔健康に難しいように感じま
す。機能訓練に関しても家族に指導しても維持されないようです。
19