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乾燥度合いの異なる泥岩の
クリープ載荷中における湿潤時変形特性
萩野知
Geo-disaster Mitigation Engineering
研究目的と実験手法
斜面崩壊の素因のひとつである乾湿繰り返しによる泥岩の風化現象(スレーキング)について、原地盤を想定した応力
条件下で検討された研究はほとんどない。本研究では、乾燥度合いの異なる泥岩礫質土の強度、および異方応力条件下
での湿潤時変形特性について、三軸試験機を用いて検討した。
実験においては、スレーキング指数(SI)=2の泥岩試料を用いて、図1に示すプロセスで、含水比を調整した三軸試料を
作成した。Case1とCase2は拘束圧σh’=50kPaまで供試体を圧密させた後、排水単調載荷を行った。Case3とCase4は圧
密後、軸差応力q=25kPa(鉛直応力σv’=75kPa)とし、クリープ載荷状態で供試体下部から注水を行い、クリープ変位を計
測した。なおCase3とCase4で設定したクリープ応力条件は、斜面勾配θ=11.5°、深度h=1.30m程度の地盤に相当する。
初期試料
三軸試料
泥岩試料
SI=2
炉乾燥
炉乾燥
(100℃)
浸水 5cm
5cm
自然
乾燥
乾燥試料
(Case1 & 3)
15cm
不飽和試料
(Case2 & 4)
図1 試料の作成方法
Case
作成時含水比 [%]
作成時乾燥密度[g/cm3]
実験プロセス
1
0(乾燥)
1.05
単調載荷
7.5cm
図2 三軸供試体
表1 実験条件
2
11.3(不飽和)
0.983
単調載荷
3
0(乾燥)
0.964
クリープ中に注水
4
13.2(不飽和)
0.939
クリープ中に注水
泥岩試料のせん断強度および湿潤時における変形特性
単調載荷試験開始時に乾燥状態であった
軸差応力(q)[kPa]
200
含水比が低いほど
せん断強度は増加
150
含水比が低いほどクリープ載荷中の
飽和による変位が大きい
100
50
0
0
10
20
収縮方向
0
5
10
15
軸ひずみ(εa) [%]
図3 三軸試験結果
20
体積ひずみ (εvol) [%]
q(Case1)
q (Case1)
q(Case2)
q (Case2)
q(Case3)
q (Case3)
Case4-2
q (Case4)
εvol (Case1)
e(vol)-ea(1)
εvol (Case3)
e(vol)-ea(3)
εvol (Case4)
e(vol)-ea(4)
25
Case1の方が、 不飽和状態のCase2よりもせん
断強度は大きくなり、泥岩のせん断強度に及ぼ
す含水比の影響が非常に大きいことを示す。こ
れは、泥岩試料の場合、せん断時の含水比が
高いほどせん断変形に伴う粒子破砕が顕著で
あるためだと考えられる。
一方、σv’/σh’=1.5でクリープ載荷中に飽和した
際に生じる軸ひずみ、体積ひずみは共に、乾燥
試料(Case3)の方が、不飽和試料(Case4)より
も大きい。これは、含水比が低いほど飽和による
粒子破砕の程度が高くなるためだと考えられる。
また本結果は、スレーキングのしやすい泥岩斜
面では、降雨前の地盤の含水状態により、その
勾配が緩い場合でも地盤変形が非常に大きくな
る可能性を示唆している。
KIYOTA Lab., Institute of Industrial Science, The University of Tokyo
2016