株式会社マキタ御中 IR活動高度化のための資料

市場の役割と株主戦略
株式会社インベスター・インパクト
角 里香
www.investorimpact.com
2015年11月12日
市場の役割と機能
金融資本市場は、市場メカニズムによる効率的な資金配分機能に基づき、投資家の資産運用の場、
また、企業の資金調達の場として、わが国経済において重要な役割を担う。
市場は、複雑に絡まり合った大量の情報や市場参加者の予測、そして人々の行動を包括的に反映する。
これらの力がフェア・バリュー(公正価値)となる。
企業は資本獲得の為に互いに競い合い、何百万という投資家は最も魅力的なリターンを求めてお互いに
投資戦略を戦わせている。この競争こそがフェア・バリューを速やかに実現させる。
しかしこれは市場メカニズムが正常に機能してこそ…
1
投資主体別株式保有の変化
1999年頃から、海外・国内機関投資家保有が増加したことで資本市場の機能が効率的になり、
市場メカニズムが正常に機能しはじめた。
出典:東京証券取引所資料より作成
2
企業統治の整備は機関投資家の購入を促進する
機関投資家は企業統治制度が十分に整備された企業を優先的に購入するという因果関係がある(宮島、保田
[2012])。
マッキンゼー社のレポート(McKinsey and Company [2002])は、機関投資家が企業統治制度の整備された企業
にプレミアムを付与することを指摘している。
これが正しければ、企業にとっては、投資家を惹きつけるために企業統治を整備することが重要な戦略になる。
企業統治の整備とはすなわち①社外取締役が優位な取締役会構成、②積極的な情報公開、③買収防衛策の抑制、
④業績連動報酬の導入、などである。
整備された企業統治制度は、リスクテイク、R&D 促進、配当性向の引き上げに関して有意な効果を持つこと、また、
事業ポートフォリオの集約、事業再組織化の促進に対しても効果があることがNguyen[2012]、蟻川他[2011] で
報告されている。
日本のリーディング企業に関する限り、企業統治の機関設計はほぼ整備を終えたので、機関投資家の保有を呼び込み
自社株式のパフォーマンス向上を図ると同時に、経営改革を行い、自社のパフォーマンスを高める好機を迎えている。
3
中規模企業の株式所有構造の問題点と株主戦略の必要性
日本の上場企業の多くは、海外機関投資家の投資対象になることの少ない中規模の企業からなり、そこでは、
機関投資家の圧力が作用していない。
中規模企業の所有構造の問題は、事業法人間、事業法人・銀行間の相互持合いであり、これがパフォーマンスの
低迷が長期化する企業群の企業統治上の問題の核である。
企業統治の整備が遅れ、パフォーマンスの低迷が長期化し、メインバンク制が後退する中で、企業統治に空白が
生じている可能性がある。
この問題を解決する意味で、日本版コーポレートガバナンス・コードが、上場株式の政策保有の理由の開示を求めた。
今後、日本企業は自社の株式所有構造を根本的に見直すことを迫られるが、自社の事業特性、外部環境を考慮
した上で慎重に行うべきである。
自社の事業特性にあった様々な態様を持つ投資家をターゲティングし、保有を促す活動を戦略的に行い、
経営改善・企業価値向上サイクルを構築する。
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参考資料:IRを中心とする経営改善スキーム
経営の規律付け/
カバナンス設計
経営改革
IR
パフォーマンス
向上
モニタリング
外部株主の増加
5
参考論文・文献
参考論文
Nguyen, P. (2012) “The Impact of Foreign Investors on the Risk-taking of Japanese Firms”, Journal of Japanese and International
Economies, Vol. 26
林 順一 (2014) 「統合報告書作成の決定要因分析についての一考察
『国際マネジメント研究 第3巻』 2014年3月
―機関投資家持株比率との関係を中心として―」 青山学院大学
宮島英昭・保田隆明 (2012) 「変貌する日本企業の所有構造をいかに理解するか:内外機関投資家の銘柄選択の分析を中心として」 金融庁
金融研究センター、FSA Institute Discussion Paper Series, DP2011-11、2012年3月
宮島英昭・保田隆明 (2015) 「株式所有構造と企業統治:機関投資家の増加は企業パフォーマンスを改善したのか」 財務省財務総合政策研
究所 『フィナンシャル・レビュー』 第121号、3-36頁
参考文献
宮島英昭編 『日本の企業統治:その再設計と競争力回復に向けて』 東洋経済新報社、2011年
『山を動かす』 研究会編 『ROE最貧国日本を変える』 日本経済新聞出版社、2014年
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