金属労協・2016年闘争 評価と課題(中間まとめ)

2016年6月23日
金属労協/JCM
第7回中央闘争委員会
2016年闘争評価と課題・中間まとめ
Ⅰ.2016年闘争の経過
1.2016年闘争をとりまく情勢
金属労協は次のような情勢認識の下で、2016年闘争に取り組みました。
*わが国経済は、2014年末以降、消費税率引き上げをきっかけとした景気の低迷を脱し、景気
諸指標は回復傾向を示していた。しかしながら、2015年6月の上海株式市場の暴落に象徴さ
れる中国経済の落ち込みにより、世界経済の先行き不透明感が強まっており、国内経済にも
その影響が懸念されるところとなっている。
*資源価格の下落により消費者物価指数は明確なプラスとなっておらず、個人消費、設備投資
にも力強さが見られる状況とはなっていない。
*一方、円高是正による国内投資の拡大、都心の再開発や2020年東京オリンピック・パラリン
ピック開催などにより、外部要因を除けば、日本経済は中期的に底堅く推移することが期待
されている。アメリカ経済も成長を続けており、世界経済の安定にとって要石の役割を果た
している。
しかしながら、2016年の年明け以降、円相場が急騰、株価が急落し、景況感は一気に悪化し
て、企業収益も下方修正の方向となりました。日銀は1月末、金融機関が保有する日銀当座預
金の超過準備の増加分に対し0.1%の金利を徴収する「マイナス金利」を導入しましたが、目立
った効果は現れていません。消費者物価指数に関しても、資源価格の下落が影響して上昇率が
大幅に鈍化し、足下ではほぼゼロの状態となりました。
こうした中で4月には、円相場が理論的な為替レートである購買力平価の水準まで上昇し、
熊本地震や企業不祥事などの影響による生産活動の停滞もあり、5月以降に回答を引き出す組
合に対する影響が懸念されました。
2.2016年闘争推進の基本的考え方と金属労協の方針
2014年闘争、2015年闘争では、金属労協全体で賃上げに取り組み、その成果により景気の底
支えに一定の役割を果たしてきました。しかしながら、賃上げ獲得組合が回答組合の6割に止
まること、企業規模ごとの賃上げ額の差が広がったこと、非正規労働者の雇用環境改善と賃金・
労働諸条件の改善の取り組みが緒に就いたばかりであること、加えて、実質賃金がマイナスを
1
続けてきたことなどから、個人消費の回復、デフレ脱却、
「経済の好循環」の実現は、道半ばと
なっていました。
こうした認識の下、2016年闘争では、JC共闘が一枚岩となって、継続的な賃上げを求めて
いくこととし、この中で、
*賃上げ獲得組合の拡大、積極的な賃金格差是正
*基幹労働者の個別賃金重視による水準形成
*企業内最低賃金協定の全組合締結と水準引き上げ
*特定(産業別)最低賃金の取り組み強化
*非正規労働者の正社員への登用促進、賃上げ、労働諸条件改善
などに全力で取り組むことにより、賃金の底上げと賃金格差の是正を図ることとしました。
あわせて、企業間の付加価値の適正配分に向け、適正取引の確立とバリューチェーンにおけ
る「付加価値の適正循環」構築に向けた対政府および産業内の具体的活動の展開を打ち出しま
した。
これらの一体的な取り組みにより、連合方針を踏まえたマクロの観点からの雇用労働者の所
得引き上げを図り、
「人への投資」と「家計の改善」を通じて、デフレ脱却、
「経済の好循環」
の達成、世界経済のさまざまな変動に耐えうる強固な国内経済の構築を図り、もって勤労者生
活の安定と向上を実現することとしました。
具体的には、
「賃金・労働諸条件」
「非正規労働者の雇用と賃金・労働諸条件」
「政策・制度課
題、産業政策」を3つの柱として、下記のとおり具体的な取り組みを決定しました。
<
2016年闘争の具体的取り組み(概要)
>
1.賃金・労働諸条件
(1) 賃金
①賃金の引き上げ
グローバルな経済情勢を見据えた国内経済の動向、生産性や金属産業の動向、物価動向をは
じめとする勤労者生活などを総合的に勘案しつつ、底上げ・格差是正の観点を踏まえ、以下の
とおり、賃上げに取り組みます。また、賃上げ要求・獲得組合の拡大に向け、取り組みを強化
します。
◯賃金制度に基づき賃金構造維持分を確保した上で、3,000円以上の賃上げ。
【基幹労働者(技能職35歳相当)の「あるべき水準」】
*目標基準:各産業をリードする企業の組合がめざすべき水準:基本賃金338,000円以上
*到達基準:全組合が到達すべき水準:基本賃金310,000円以上
*最低基準:全組合が最低確保すべき水準:到達基準の80%程度(24.8万円程度)
②賃金実態の点検と賃金制度の確立
2
(2) JCミニマム運動
①企業内最低賃金協定の全組合締結と水準の引き上げ
○企業内最低賃金協定の全組合締結。
○非正規労働者(直接雇用)を含めた協定締結。
○企業内最低賃金協定の水準は、高卒初任給準拠を基本。
○月額159,000円以上の水準、もしくは月額2,000円以上の引き上げ。
②特定(産業別)最低賃金の水準引き上げ
③「JCミニマム(35歳)」の確立
(3) 一時金
金属産業の企業業績は、産業・企業ごとにバラツキはあるものの、全体として堅調に推移し
ています。組合員の努力に報い、適正な成果配分を獲得するため、一時金は「年間5カ月分以
上」を基本として取り組みます。とりわけ金属労協として、
「年間5カ月分以上」を基本として
掲げてきた重みを踏まえ、その着実な確保に努めます。
○年間5カ月分以上を基本。
○最低獲得水準として、年間4カ月分以上を確保。
(4) ワーク・ライフ・バランスとダイバーシティ
①総実労働時間の短縮
○年間総実労働時間1,800時間台の実現。
○年間所定労働時間1,800時間台の実現。
○36協定の特別条項の限度時間の引き下げ、その厳格な運用、実効性ある勤務間インターバ
ルの導入・活用、労働時間管理の徹底などを図り、過重な所定外労働をなくす。
○時間外労働60時間超の割増率は、猶予措置の対象となっている中小企業についても50%以
上。所定労働時間を上回るすべての労働時間を時間外労働算定対象時間とする。
○年次有給休暇の完全取得に向けて、計画取得など具体的な施策の導入。
○職場の意識・風土の改革や働き方の見直し。労働時間等設定改善法に基づき労使で設置す
る「労働時間等設定改善委員会」の積極的活用。
②仕事と家庭の両立支援の充実
③男女共同参画推進などダイバーシティへの対応強化
(5) 労働諸条件の改善と職場環境の整備
①60歳以降の賃金・労働諸条件
②安全衛生体制の強化、労働災害の根絶と労災付加補償の引き上げ
③退職金・企業年金
2.非正規労働者の雇用と賃金・労働諸条件の改善
(1) 正社員への登用促進
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○派遣労働者、契約社員、期間従業員などの非正規労働者の正社員への登用促進。
(2) 労使交渉・労使協議の基盤整備
○非正規労働者の組織化。
○非正規労働者の賃金・労働諸条件の引き上げに取り組む基盤整備として、職場の非正規労
働者の実態・課題把握。
(3) 賃金・労働諸条件改善の取り組み
○労使の話し合いを通じて、未組織労働者を含めた非正規労働者(直接雇用)の賃金・労働
諸条件の改善。各産別の賃上げ要求基準を踏まえ、非正規労働者についても具体的な賃上
げ水準を設定するなど、取り組みの前進。
(4) 非正規労働者に関する法令に対応した取り組み
*非正規労働者に適用される就業規則の作成・変更の届出の際に添付する労働組合の意見聴
取に対し、十分な対応。
*同一事業場における3年を超える労働者派遣受け入れに際しての労働組合に対する意見聴
取に対し、十分な対応。
*有期雇用者やパートタイム労働者の労働諸条件が、期間の定めがあることやパートタイム
労働者であることにより不合理なものとなっていないかどうかのチェック。
*派遣元に対し、派遣先の賃金水準の情報提供が実施されているかどうかのチェック。
*派遣元から、派遣労働者の派遣先での直接雇用の依頼があった場合に、積極的な検討が行
われているかどうかのチェック。
*派遣労働者に対し、派遣先の募集情報の周知が適切に実施されているかどうかのチェック。
3.政策・制度課題、産業政策
○国内経済の安定を図るための経済運営、経済変動が生じた場合には的確に対処する機動的
な金融政策。
○大企業と中小企業などの間における付加価値の適正な配分の実現に向けて、適正取引の確
立。公正取引委員会の対応強化、
「適正取引推進マニュアル」
「CSR会計」の普及。
○バリューチェーンにおける「付加価値の適正循環」構築の取り組み。
○安全の確認された原子力発電所の再稼働や再生可能エネルギー固定価格買取制度の見直し
などによる安定的かつ低廉な電力供給確保。
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3.2016年闘争の経過と労使の主張
(1) 闘争の経過
①第58回協議委員会の開催
2015年12月4日、金属労協は第58回協議委員会を開催し、2016年の闘争方針として、
「2016年
闘争の推進」を決定しました。協議委員会では、各産別からJC共闘の一員として精一杯の取
り組みを展開するとの決意表明がなされ、JCM5産別が一枚岩で取り組むことによって成果
を上げていくことを確認しました。
②2016年闘争推進集会の開催
2016年1月26日に、
「2016年闘争推進集会」を開催し、2016年闘争における交渉参考資料につ
いて提起しました。また、5産別の書記長・事務局長をパネラーに、
「2016年闘争における各産
別の取り組み」と題してパネルディスカッションを行い、加盟組織の産業状況、闘争方針に関
して、相互に理解を深めました。
③2016年最低賃金連絡会議の開催
2016年1月27日に、「2016年最低賃金連絡会議」を開催し、「2016年度の特定(産業別)最低
賃金の取り組み方針」を報告し、意見交換を行いました。特定(産業別)最低賃金は、賃金の
底上げための大きな道具となり得る制度であり、社会的責任として取り組んでいくことを確認
しました。
④戦術委員会、中央闘争委員会の開催
*2015年12月14日に第1回戦術委員会、16日に第1回中央闘争委員会を開催しました。12月17
日付けで確認した第1回戦術委員会確認事項では、JC共闘の集中回答日を2016年3月16日
にするなど、2016年闘争の主要日程について決定しました。
*2016年1月22日の第2回戦術委員会および第2回中央闘争委員会では、経団連が1月19日に
発表した「経営労働政策特別委員会報告」に対し、金属労協として、
「経済の好循環実現に向
けて、働く者全体の賃上げを」との見解をとりまとめるとともに、各企業連・単組の労使交
渉に資するための「2016闘争の推進 交渉参考資料」を確認しました。
*2016年2月25日の第3回戦術委員会および第3回中央闘争委員会では、集計登録組合を中心
とした要求提出状況および交渉状況を把握し、労使の果たすべき社会的な役割と責任を自覚
し、強力に交渉を展開することを確認しました。
*2016年3月11日の第4回戦術委員会では、金属労協全体の要求状況および交渉状況を把握し、
交渉の最終局面に向けた方針を以下のとおり確認するとともに、JC共闘200万人の意思結集
を図り、一枚岩となって経済・社会の変革を牽引すべく、最後まで粘り強く交渉を展開し、
要求の実現を図ることを確認しました。
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○賃上げ要求を行ったすべての組合は、一枚岩で闘う3年目の本年、着実な前進を図ると
ともに、底上げ・格差是正に資する賃上げを獲得する。とりわけ中小組合においては、
自らの賃金水準の底上げ・格差是正の実現に向け、最大限努力する。
○一時金は、組合員の生活の安定を図り、その努力や成果を踏まえた適正な配分を求める。
○企業内最低賃金の協定締結および引き上げは、未組織労働者・非正規労働者の賃金底上
げの観点からも、要求の実現を図る。
○非正規労働者の賃金・労働諸条件の改善は、確実に具体的な前進を引き出す。
*2016年3月14日の第5回戦術委員会では、集中回答日を前にした交渉の最終局面における情
報交換を行いました。
*2016年3月16日の集中回答日には、第6回戦術委員会および第4回中央闘争委員会を開催し、
集計登録組合を中心とする回答の受け止め、ならびに中堅・中小登録組合の回答状況の公表
などによって後続組合に対する支援を行うことを確認しました。
*2016年4月4日の第7回戦術委員会では、金属労協全体の回答状況を把握し、賃上げ獲得組
合が拡大する流れを、今後回答を引き出す組合に波及させていくことなどを確認しました。
*2016年4月27日の第8回戦術委員会と4月28日の第5回中央闘争委員会では、第7回戦術委
員会で発表した「2016年闘争金属労協全体集計(第2回)
」の数値の訂正を確認するとともに、
組合員1,000人以上の組合の賃上げ額と299人以下の組合の賃上げ額の差が32円に縮小し、一
部の産別では、299人以下の賃上げ額が1,000人以上のそれを上回る状況となっている中で、
引き続き共闘体制を維持し、各組合は産別指導の下、精力的に交渉を展開し、速やかに決着
を図ることを確認しました。
*2016年5月31日の第9回戦術委員会と6月1日の第6回中央闘争委員会では、金属労協全体
の取り組み状況を把握し、今後回答を引き出す組合についても、大手と中小の賃上げ額の差
の大幅縮小という流れを波及させていくこと、などを確認しました。
*2016年6月21日の第10回戦術委員会と6月23日の第7回中央闘争委員会では、2016年闘争に
かかわる諸機関を、第7回中央闘争委員会をもって解散することを確認しました。また、交
渉継続中の組合は、大手と中小の賃上げ額の格差の大幅縮小という流れを受け止め、各産別
の指導の下、早期解決に努力を傾注することを確認しました。
(2) 2016年闘争における労使の主張
①経団連「経営労働政策特別委員会報告」への見解
経団連は、2016年1月19日に「経営労働政策特別委員会報告」を発表し、2016年の労使交渉
に臨む経営側の姿勢を明らかにしました。経労委報告では、2016年の賃金決定で重視すべき考
慮要素として、
「経済の好循環を回すという社会的要請」を挙げているものの、賃上げについて
は、
「収益が拡大した企業」で、
「2015年を上回る年収ベースの賃金引上げ」と述べるに止まり、
所定内賃金に関しては、デフレ時代そのままの賃金抑制姿勢を示しました。また、中小企業に
対しては、
「各企業の支払能力に基づかない要求を掲げることは、建設的な労使交渉・協議の妨
げになるだけでなく、自社の労使関係に悪影響を与える懸念がある」として、賃上げや格差是
6
正を強く牽制しました。さらに、非正規労働者の賃金に関しては、労働市場の需給関係によっ
て「今後も高まっていく」との認識を示す一方、非正規労働者の処遇改善は「自社における総
額人件費管理の下で考えるべき」として、総額人件費については、あくまで抑制の姿勢を示し
ました。正社員への転換についても、
「優秀な人材の確保・定着がこれまで以上に重要な経営課
題」としつつ、その具体策は、いわゆる限定正社員制度の活用を掲げています。
これに対し金属労協では、1月22日に「
『経済の好循環』実現に向けて、働く者全体の賃上げ
を」との観点から見解を発表し、
「あくまで一時金を中心とする『年収ベース』にこだわってい
ることには、強いいきどおりを感ぜざるを得ない」
「日本全体の生産性向上を勤労者全体の生活
向上に反映させる賃金の社会性の観点、各産業において、その仕事に見合った賃金水準を確立
していく公正労働基準の観点、競争力の強化と付加価値の増大に向けた『人への投資』の観点、
人手不足の中で産業の魅力を高め、人材を確保していくという観点を忘れてはならない」など
の主張を展開しました。
②「2016年闘争の推進 交渉参考資料」の作成
2016年1月末には「2016年闘争の推進 交渉参考資料」を作成・発表し、経営側の賃金抑制
姿勢に対し、
「中小企業も含めたすべての組合で、継続的に、正社員・非正規労働者に関わらず
すべての従業員に、所定内賃金の引き上げを行っていくことの重要性・必要性を踏まえ、真摯
な議論を積み重ねていくことが重要」との基本的な認識を示しました。その上で、直近の景気
動向、企業収益、欧米系多国籍企業と日本企業との比較などについて認識を整理するとともに、
労働組合の要求の根拠、賃上げの消費拡大効果、物価と賃上げ、非正規労働者、労働力需給、
企業の支払い能力、中小企業の賃上げ、内部留保、総額人件費など、経団連「経営労働政策特
別委員会報告」で掲げられている経営側の見解への反論を中心に、12項目にわたって主張点を
とりまとめました。
③企業別交渉における労使の主張点
要求提出以降、各企業における労使交渉では、次のような主張がそれぞれ展開されました。
<経営側の主張>
*日本経済の好循環に向けた社会的な要請については理解する。
*国内外の経済の先行き不透明感、低い物価上昇率、諸経費の上昇や為替の影響により収益
構造が悪化していることなどから、組合の賃上げ要求に応えることは困難である。
*2年連続で賃上げを実施して賃金水準が上昇している。
*「人への投資」の選択肢は賃上げだけではない。
*一時金は、業績を基本に、職場の頑張り、期待などを総合的に勘案する。
*年齢別に最低賃金を設けることの妥当性や産業別に最低賃金を設けることの必要性は薄ら
いでいる。
<労働組合の主張>
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*個人消費を喚起して、デフレ脱却と経済の好循環を確実なものとするとともに、
「人への投
資」によって、職場全体のモチベーションの向上、現場力の一層の強化を図るため、月例
賃金にこだわった継続的な賃上げにより、底上げ・格差是正を図る必要がある。
*人手不足感が強まり、中長期的にも生産年齢人口が減少する中で、人材確保に向け、魅力
ある賃金・労働諸条件を確立する必要がある。
*一時金は、組合員の協力・努力や成果に報い、働く意欲・活力につなげ、さらに生活の安
定を踏まえた適正な配分を行うべきである。
*企業内最低賃金協定の締結・引き上げや非正規労働者の賃金・労働諸条件の改善により、
勤労者全体の底上げ・格差是正を果たすべきである。
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Ⅱ.2016年闘争の評価と課題
2016年闘争は、2014年、2015年に引き続き、賃上げの要求基準を掲げ、JC共闘が一枚岩と
なって賃上げに取り組みました。年明け以降、急速に景況感が落ち込み、消費者物価上昇率も
足下ではほぼゼロの状態となりましたが、3年連続の「継続的な賃上げ」を確保し、デフレ脱
却と「経済の好循環」実現の道筋を維持するため、労働組合としての役割を果たすことができ
ました。
また、重要な柱として取り組んだ賃金の「底上げ・格差是正」についても、大手労組と中小
労組の賃上げ額の差が大幅に縮小し、格差拡大に歯止めをかけることができたことや、集計登
録組合において企業内最低賃金協定の引き上げ額が賃上げ額を上回っていること、非正規労働
者の賃上げや労働諸条件改善の取り組みが進んだことなど、一定の成果を上げることができま
した。
さらに、仕事と育児・介護の両立支援や、60歳以降の賃金・一時金の改善など、誰もが働く
ことのできる職場環境の整備に向けて、労働諸条件の改善が図られました。
しかしながら、デフレ脱却と「経済の好循環」実現、
「賃金の底上げ・格差是正」は、未だ途
上にあり、実現に向けて、継続的に取り組むことが必要です。
1.賃金・労働諸条件
(1) 賃
*
集計データは6月17日現在
金
①要 求
賃金については、グローバルな経済情勢を見据えた国内経済の動向、生産性や金属産業の動
向、物価動向をはじめとする勤労者生活などを総合的に勘案しつつ、底上げ・格差是正の観点
を踏まえ、具体的な要求基準を「3,000円以上の賃上げ」として取り組みました。また、賃上げ
要求・獲得組合の拡大に向け、取り組みを強化することとしました。
金属労協の方針を踏まえ、各産別では、賃上げに関して以下の方針を示しました。
自動車総連:すべての単組は、目指すべき経済の実現、物価動向、生産性向上の成果配
分、産業実態、賃金実態を踏まえた格差・体系の是正など様々な観点を総
合勘案し、3,000円以上の賃金改善分を設定する。
なお、直接雇用の非正規労働者の賃金についても、原則として、賃金改善
分を設定する。
電機連合 :開発・設計職基幹労働者賃金(基本賃金)〔スキル・能力基準:レベル4、年齢要
素:30歳相当〕 水準改善額(引上額)
:3,000円以上
JAM
:賃金水準の引き上げ額 賃金構造維持分に加え、6,000円基準
基幹労連 :賃金改善
○産別一体となって、2016年度・2017年度の中で2年分の賃金改善要求を
行う。
9
○要求額:8,000円を基準
○具体的には業種別組合のまとまりを重視して要求を行う。
○条件が整う組合は格差改善にも積極的に取り組む。
全電線
:
「定期昇給をはじめとする賃金構造維持分の確保」を図ったうえで、賃金引
き上げに取り組む。
・35歳標準労働者賃金で3,000円以上を個別賃金方式で要求する。個別賃金
方式が困難である単組については、平均賃金方式で3,000円以上を要求
する。
大手の集計登録組合は、全51組合が賃上げを要求し、要求額の平均は3,817円となりました。
金属労協全体集計では3,271の構成組合のうち、6月下旬時点で2,818組合が要求、そのうち
80.4%にあたる2,267組合が賃上げを要求しました。規模別では、1,000人以上の組合が91.2%、
300~999人が93.7%、299人以下が76.2%、賃上げを要求しています。要求額の平均は3,726円
となっており、要求額を規模別に見ると、1,000人以上の組合が3,610円、300~999人が3,675円、
299人以下が3,741円となっています。
②回 答
集計登録組合は、賃上げを要求した51組合のうち、47組合が賃上げを獲得し、平均賃上げ額
は、1,424円となりました。
全体集計では、1,532組合が平均1,226円の賃上げを獲得しています。
賃上げを獲得した組合は、回答を引き出した組合の57.3%、賃上げを要求した組合の67.6%
となりました。2014年(最終)の55.8%、67.0%を上回っているものの、2015年(最終)の60.9%、
72.3%を下回る状況となっています。回答引き出し組合に対する賃上げ獲得組合の比率を規模
別に見ると、1,000人以上が82.8%、300~999人が75.0%、299人以下が49.8%となっています。
賃上げ額を規模別に見ると、1,000人以上が1,328円、300~999人が1,121円、299人以下が1,238
円となりました。1,000人以上を100とした場合の299人以下の比率は93.2となり、2014年の
87.9(最終)、2015年の71.3(最終)に比べ、格差が縮小しました。
③評価と課題
年明け以降、急速に景況感が落ち込み、消費者物価上昇率も足下ではほぼゼロの状態となる
中で、3年連続の「継続的な賃上げ」を確保し、労働組合として、デフレ脱却と「経済の好循
環」実現の道筋を維持する役割を果たすことができました。かつて「失われた20年」の間には、
低成長とグローバル競争の中で、もはや賃上げを行う時代ではない、との声も聞かれましたが、
2014年以降の3年間の取り組みを通じて、デフレ脱却や「経済の好循環」実現のための賃上げ
の必要性、
「人への投資」としての賃上げの意義、底上げ・格差是正の重要性などに関して、組
織内はもちろん、中小企業も含めた経営側、そして社会全体の理解が深まったということがで
きます。
産別ごとに違いがあるものの、組合員1,000人以上の組合の賃上げ額と比べた299人以下の組
合の賃上げ額の差は、2014年、2015年に比べ縮小しました。2015年闘争において拡大した賃上
10
げ額の差が、2016年闘争において大幅に縮小したことで、格差拡大に歯止めをかけることがで
きました。もちろん、大手と中小の賃金格差是正においては、賃上げ額の格差是正だけでなく、
賃金水準そのものの格差是正の実現をめざしていかなくてはなりません。
大手と中小の賃上げ額の差が縮小した理由としては、
*大手と中小の格差問題がクローズアップされ、中小企業において、大手並みの賃上げを行な
うことに対する躊躇感が薄れてきた。
*有効求人倍率が24年振りの水準となるなど、人手不足が顕著となっており、とくに中小企業
の人材確保が困難となっている。
*2014年、2015年に賃上げを実施しなかった企業、
「失われた20年」の間に賃金水準が低下した
企業などでは、その回復の意味合いを持った賃上げが行われた事例も見られた。
ことなどがあげられます。具体的な労使交渉に際し、産別ごとに、グループ労組・関連労組の
連携、大手の賃上げに準じた中堅・中小労組に対する歯止め基準の設定、ベンチマーク指標を
使った格差是正の取り組みなど、さまざまな取り組みを行ったことが効果を発揮しました。
一方、底上げ・格差是正の観点、および賃上げ要求・獲得組合の拡大に向け、JC共闘全体
が一枚岩となって取り組む賃上げ要求の基準として「3,000円以上」を示しましたが、賃上げを
要求する組合の比率は、JC共闘全体として上昇するまでには至らなかったものの、2014年、
2015年に引き続き、8割の組合が賃上げを要求しました。また回答組合に対する賃上げ獲得組
合の比率についても、明確な物価上昇がないことなどから、2015年を上回ることができません
でしたが、6割程度の組合が賃上げを獲得することができました。全組合における賃上げ要求
の提出、そして賃上げの獲得が引き続き大きな課題となっており、個別企業の事情を超えて、
賃上げの必要性を要求・回答に反映させていくことが重要です。
これらは、3年連続で賃上げに取り組む中で、デフレ脱却、
「経済の好循環」といった賃上げ
のマクロ的な必要性、
「人への投資」や底上げ・格差是正の必要性については、経営側も含めて
理解が深まった一方、景気の低迷、消費者物価がほとんど上昇しないというマクロ経済の状況
の中で、2016年年初以降に企業収益の見通しが急激に下方修正され、賃上げ要求や賃上げ回答
引き出しが困難となったことが要因として考えられます。
また、金属労協では、賃上げ獲得組合の拡大、賃金格差是正、個別賃金重視による水準形成、
企業内最低賃金の締結拡大・引き上げ、特定(産別)最低賃金の取り組み強化、非正規労働者
の正社員への登用拡大・賃上げ・労働諸条件改善などにより、
「連合方針を踏まえたマクロの観
点からの雇用労働者の所得引き上げ」を図る闘争方針としましたが、その成否については、今
後、さらに精査をしていきます。
2016年闘争では、バリューチェーンにおける「付加価値の適正循環」構築を掲げました。バ
リューチェーンの各プロセス・分野の企業で適切に付加価値を確保し、それを「人への投資」、
設備投資、研究開発投資に用いることにより、強固な国内事業基盤と企業の持続可能性の確保
を図っていこうとする取り組みです。各産別では、産別労使交渉・労使協議、業界団体との協
議などの場などで、経営側に対し考え方を提示していますが、経営側からも関心と理解を得る
ことができました。今後、バリューチェーンにおける「付加価値の適正循環」構築に向けた取
り組みを具体的に展開し、
「人への投資」の取り組み環境を整備していきます。
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なお、海外からの出資などにより、従来のいわゆる「春闘方式」による労使交渉が進めにく
くなっている企業もあり、実効性ある労使交渉の回復に向け、金属労協内での情報交換に努め
ていくことが必要となっています。
(2) JCミニマム運動
①要 求
企業内最低賃金協定は、全単組締結に向けて、未締結組合の協定締結を進めるとともに、最
低賃金額の基準をこれまでの156,000円から引き上げ、高卒初任給に準拠した水準を基本としな
がら、
「月額159,000円以上の水準、もしくは月額2,000円以上の引き上げ」を図ることにしまし
た。また、非正規労働者(直接雇用)を含めた協定の締結に取り組みました。
集計登録組合では、51組合のうち、42組合が引き上げを要求し、その他の組合においても、
労使協議などで取り組んでいます。
②回 答
企業内最低賃金協定に関しては、集計登録組合では、現時点で39組合が水準を引き上げ、1,868
円の引き上げを獲得しています。
(7月末の全体集計で補強)
③評価と課題
2016年闘争では、企業内最低賃金の全組合の締結に向けて取り組むとともに、多くの組合が、
2015年までの金属労協の要求基準156,000円を上回る状況にある中で、要求基準を159,000円に
引き上げ、強力に取り組みました。その結果、集計登録組合では企業内最低賃金協定の引き上
げ額の平均が賃上げ額の平均を上回り、賃金の底上げに前進を図ることができました。
(7月末
の全体集計で補強)
人手不足が顕在化する中で金属産業の魅力を高める観点から、そして後述するように、地域
別最低賃金が大幅に引き上げられる状況となっていることからも、賃金の入口である初任給や
企業内最低賃金協定の水準を継続的に引き上げていくことが不可欠となっています。
近年、特定(産業別)最低賃金の引き上げが地域別最低賃金の引き上げに追いつかず、特定
(産業別)最低賃金の水準が地域別最低賃金を下回り、無効となってしまう事例が出てきてい
ます。2016年6月に発表された「ニッポン一億総活躍プラン」では、
「年率3%程度を目途とし
て、名目GDPの成長率にも配慮しつつ引き上げ」
「全国加重平均が1,000円となることを目指
す」ことが盛り込まれており、地域別最低賃金については、従来以上の引き上げが見込まれま
す。地域別最低賃金に対する水準差を維持・拡大するため、2016年1月に確認した「2016年度
特定(産業別)最低賃金の取り組み方針」において、
「少なくとも地域別最低賃金の引き上げ額
以上」の確保を打ち出しており、その具体化に向けた情報提供に努めています。
金属労協では、企業内最低賃金協定、特定(産業別)最低賃金、JCミニマム(35歳)によ
る賃金の下支えをJCミニマム運動として位置づけ、金属産業で働く者全体の賃金の底上げに
取り組んできました。地域別最低賃金の水準が高まる中で、企業内最低賃金協定の水準のあり
方などについて、改めて検討することが必要となっています。あわせて特定(産業別)最低賃
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金についても、制度の意義・役割、中期的に継承・発展させていくためのあり方について、検
討を深めていかなければなりません。
(3) 一 時
金
①要 求
産業・企業ごとにバラツキはあるものの、全体として企業業績は堅調に推移していることか
ら、組合員の努力に報い、適正な成果配分を獲得するため、金属労協として、
「年間5カ月分以
上」を基本として掲げてきた重みを踏まえ、その着実な確保に努めることとしました。
②回 答
集計登録組合(51組合)は、6月下旬時点で49組合が確定しています。平均獲得月数は年間
5.23カ月となり、前年の年間5.35カ月を0.12カ月下回っています。前年と比較できる49組合の
うち、20組合(40.8%)が前年実績を上回り、22組合(44.9%)が下回っています。最低獲得
水準である年間4カ月を下回る組合は4組合となり、前年の1組合から増加しました。
全体集計では、2,122組合が回答を引き出し、平均獲得月数は年間4.39カ月となり、昨年より
増加傾向となりました。前年と比較できる2,048組合のうち、883組合(43.1%)が前年を上回
り、671組合(32.8%)が下回っています。年間5カ月以上の組合は、655組合(32.1%)とな
り、前年に比べて低下傾向にあるものと思われます。また、最低獲得水準である年間4カ月を
下回る組合は、608組合(29.8%)となり、前年を若干上回る傾向となっています。
③評価と課題
一時金は、全体平均では、増加傾向となっていますが、為替の影響や海外経済の影響などが
企業業績に影響し、前年を上回る組合の比率が、前年同時期と比較して減少し、前年を下回る
組合が増加しました。
金属労協では、一時金について、
「年間5カ月分以上」を基本として掲げてきた重みを踏まえ
て取り組みましたが、業績の厳しさを反映して、年間5カ月以上を獲得した組合は低下しまし
た。引き続き、
「年間5カ月分以上」の重みを踏まえて、安定的に獲得できる取り組みが重要で
す。また、最低獲得水準である年間4カ月を下回る組合が増加しており、業績にかかわらず、
最低でも年間4カ月以上を確保する取り組みが重要となっています。
一時金は、年間決定を基本に取り組んでいますが、半期の回答に止まる組合が少なくありま
せん。年間総賃金の一部として、生活の安定の観点から年間決定にこだわった取り組みを行う
とともに、半期で決定する場合であっても、年間で4カ月以上を確保することが重要となって
います。
(4) ワーク・ライフ・バランスとダイバーシティ
ワーク・ライフ・バランスの実現によって、男女がともに安心して働き続けることができる
社会を実現するため、年間総実労働時間の短縮や、仕事と育児・介護など家庭責任の両立支援
の充実に取り組みました。
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取り組みの結果、育児・介護休業制度の充実や年次有給休暇の半日・時間単位取得の導入、
フレックスタイム制度の導入など、柔軟な勤務制度の導入、ハラスメントの相談窓口の設置な
どの前進が図られています。
今後、介護離職の問題が本格化することが予想され、早急な対応が求められる中で、多くの
組合で具体的な制度の拡充が図られたことは、ワーク・ライフ・バランスを実現しながら働き
続けられる職場づくりに向けて、大きな前進となりました。今後、通年の労使協議等で取り組
む組合においても制度の拡充を図るとともに、制度を利用しやすい環境づくりに取り組むこと
が重要です。
2016年闘争の方針では、人種、性別、出身国、年齢、障がいなどに関わりなく、誰もがいき
いきと働くことのできる職場環境の整備に向けて、継続的にダイバーシティの取り組みを進め
ることを掲げました。
ダイバーシティの取り組みでは、女性活躍推進法に基づく行動計画の策定にあたって、労使
協議の場を設置するなどの取り組みが前進しています。誰もがいきいきと働き続けることがで
きる職場をつくるには、組合員のニーズや職場の実態・課題を踏まえた取り組みが重要です。
着実に行動計画を実施し、目標を達成するため、労使協議の場などを活用して、継続的に取り
組むことが必要です。
(5) 労働諸条件の改善と職場環境の整備
①60歳以降の賃金・労働諸条件
60歳以降の就労者に関しては、2013年の制度見直し後の就労希望の状況や仕事の内容、賃金・
労働諸条件、働き方など、職場の実態・課題を把握し、継続的に課題解決に取り組むこととし
ています。2016年闘争では、60歳以降についても、60歳以前の組合員の賃上げを踏まえた賃上
げに取り組みました。
取り組みの結果、集計登録組合中29組合において、60歳以前の組合員に準じた賃上げや、年
収の改善、定年延長を見据えての賃金の見直しなど、賃金・一時金などの改善が図られていま
す。
60歳以降の就労者については、高年齢雇用継続給付や厚生年金の報酬比例部分の支給を前提
とした賃金水準である場合も少なくありません。そうした中で、多くの組合が賃上げを獲得し
たことは、60歳以降の賃金・労働諸条件の改善に向けて、前進を図ることができたものと考え
ます。今後、年金の支給開始年齢が段階的に引き上げられることから、60歳以降の就労者が有
する豊富な経験や技術・技能を発揮し、働きがいを持って、企業の発展に積極的に寄与できる
ように、賃金・労働諸条件の改善に取り組むことが必要です。
②安全衛生体制の強化、労働災害の根絶と労災付加補償の引き上げ
労災付加補償については、死亡ならびに障害等級1~3級3,400万円以上に未達の組合は、到
達に向けて取り組むこととしました。取り組んだ組合の多くで、労災付加補償の水準改善が図
られています。
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労働災害の根絶に向けた取り組みとして、「2016~2017年政策・制度要求」に、「労働災害防
止のための教育・指導徹底の促進」
「60歳以降の就労者の労働災害発生リスクの低減策」を盛り
込み、リスクアセスメント、危険予知(KY)活動の徹底や高年齢労働者の労働災害防止に向
けた指導の徹底を政府に求めています。
③退職金・企業年金
退職金については、産業・企業の実態を踏まえて取り組むこととしました。各産別の掲げる
方針や基準、業種ごとの目標への到達に取り組み、増額を獲得しています。
2.非正規労働者の雇用と賃金・労働諸条件の改善
①要 求
2016年闘争では、非正規労働者の賃金・労働諸条件に関して、具体的な賃上げ水準を設定す
るなど、取り組みの前進を図るとともに、正社員への登用促進、組織化や実態・課題の把握な
どによる労使交渉・労使協議の基盤整備、非正規労働者に関する法令に対応した取り組みなど
に通年で取り組むこととしました。
自動車総連では、
「賃金改善分については、平均賃金要求基準を踏まえ、時給20円を目安とし、
各単組における労務構成や配分決定のあり方などを考慮して決定する」と、具体的な金額を方
針に明記して取り組みました。電機連合では、従来の取り組みに加えて、交渉の前段で非正規
労働者に関する大規模な実態調査を行いました。JAMでは「取組み指針」などに基づき、非
正規労働者の処遇改善に取り組みました。基幹労連では、「労使話合いの場」「別途申し入れ」
を含め対応可能な方策で取り組みました。全電線では、雇用の安定と職場の安全確保、公正な
労働条件の確保、および受け入れ時の対応など、労使協議の充実に取り組みました。
②回 答
取り組みの結果、一般組合員に準じた賃上げや時給・日給の引き上げなど、具体的な賃上げ
要求に取り組んだ組合が前年から拡大し、要求の趣旨に沿った賃上げや一時金の改善など、具
体的な前進回答を引き出す組合についても拡大しています。
③評価と課題
非正規労働者の賃金・労働諸条件の改善に取り組み、具体的な前進回答を引き出す組合が拡
大したことは、賃金の「底上げ・格差是正」を図る上で、大きな前進となりました。各産別が
非正規労働者の賃金・労働諸条件改善に粘り強く取り組んできたことが、成果につながってい
ます。具体的な要求に至らない組合においても、労使の話し合いを通じて、非正規労働者の賃
金・労働諸条件の改善への取り組みが広がりつつあります(7月末の全体集計で補強)
。同一価
値労働同一賃金の観点や、人材の確保・定着の観点に立って、同じ職場で働く仲間として、さ
らに取り組みを強化していかなければなりません。
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また労使交渉・労使協議の基盤整備のため、職場の非正規労働者の実態・課題の把握に取り
組んだ産別もあり、今後、取り組み強化する上で、大きな力になるものと考えます。
金属労協として、非正規労働者の組織化を進めていくとともに、労働組合として非正規労働
者の賃金・労働諸条件引き上げの取り組みが困難なところについては、その要因を把握し、取
り組みに向けた具体策を検討していくことが重要です。
非正規労働者については、正社員への登用促進が喫緊の課題となっており、労働組合として
も積極的に取り組むことが必要です。とりわけ、有期雇用の無期転換ルール導入から5年後の
2018年4月以降に、無期転換申込権が発生するケースが多いと考えられます。正社員への転換
を基本に、賃金・労働諸条件の低い無期雇用に転換することがないように、取り組むことが必
要です。
3.政策・制度課題、産業政策
金属労協では2016年4月、
「2016~2017年政策・制度要求」を策定しました。従来同様、
*民間産業に働く者の観点
*グローバル産業であり、かつわが国の基幹産業であるものづくり産業に働く者の観点
*なかでも、その中心たる金属産業に働く者の観点
に立って、ものづくり産業・金属産業のさまざまな環境変化の中で、産業の健全な発展とそこ
に働く者の生活向上に向け、
Ⅰ.ものづくり産業を支えるマクロ経済政策
Ⅱ.ものづくり産業の強みをさらに強化する「攻め」の産業政策
Ⅲ.ものづくり産業における「良質な雇用」の確立
Ⅳ.革新的技術開発を促すエネルギー・環境政策
という4つの柱の下に考え方を整理し、課題解決に向け、強力な取り組みを推進していきます。
実現に向けた方策としては、引き続き厚生労働省、内閣府、法務省、外務省、財務省、文部
科学省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛省などの各府省および公正取引委員会、日本
銀行などへの要請活動を強力に展開します。また政治顧問との連携を一層強化し、民進党の政
策への反映を図るとともに、
「政策レポート」の発行・配布により、国会議員、経営者団体、報
道、その他関係各方面への情報提供・理解促進に努めていきます。
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Ⅲ.2017年闘争に向けて
2017年闘争については、引き続き賃金・労働諸条件の改善、非正規労働者の雇用と賃金・労
働諸条件の改善、そして政策・制度要求、産業政策に取り組んでいくことが必要です。デフレ
脱却、
「経済の好循環」を図り、
「人への投資」を実現する観点、そして勤労者に対する適正な
配分を確保する観点から、継続的な賃上げに取り組むことを基本とし、とりわけ中小企業や非
正規労働者などの「底上げ・格差是正」の取り組みが最重要課題となります。具体的な闘争方
針に関しては、国内外の経済情勢、生産性の状況、産業動向、雇用情勢、そして物価をはじめ
とする勤労者の生活実態などを踏まえ、決定していくことになります。
現時点で、経済情勢は芳しいものとなっておらず、とりわけ3年連続の賃上げにも関わらず、
個人消費に顕著な回復が見られない、との指摘があります。消費不振の背景には、勤労者の将
来不安、具体的には、社会保障不安、雇用不安、収入不安があるものと思われますが、そうし
た不安要因を解消し、個人消費の回復を果たすべく、労働組合として、政策・制度要求も含め
た取り組みを進めていかなくてはなりません。具体的には、
*マクロ経済環境としての為替の安定
*非正規労働者の正社員への転換、労働組合への組織化、賃金・労働諸条件の改善
*60歳以降の就労者の雇用の安定、賃金・処遇の改善
*自社の賃金実態・課題の把握・分析
*勤続年数の増加による職務遂行能力の向上を反映し、かつ増加する必要生計費に対応して
昇給する定期昇給制度など賃金構造維持分の確保、賃金制度上の賃上げの実施
*企業内最低賃金協定と特定(産業別)最低賃金の取り組み
*ワーク・ライフ・バランスの実現と働き方の見直し
などに取り組むことが重要です。
デフレ脱却、
「経済の好循環」、
「人への投資」といった賃上げの意義・役割・必要性に関して
は、経営側も含め、社会的に理解が深まったものと思われますが、中小企業などでは、個別企
業の行動に結びついていない場合も少なくありません。賃上げの意義・役割・必要性を引き続
き前面に押し立てていく中で、賃上げの必要性に関する裏付けについて、さらに補強していく
ことが重要です。
2016年闘争で提唱したバリューチェーンにおける「付加価値の適正循環」構築の取り組みに
関しては、政策・制度要求や産業政策の取り組みを進めつつ、金属労協および各構成組織それ
ぞれにおいて、経営者団体や業界団体、経営側に対する理解促進活動を展開するとともに、地
域の中小企業における付加価値の創出、下請適正取引の確立をはじめとする付加価値の適正配
分に向け、具体的な取り組みを展開し、
「人への投資」の環境整備に努めていくことが重要です。
現在、2020年代前半までを念頭においた「第3次賃金・労働政策」の策定に向けて、検討を
進めています。金属産業の強みである「現場力」を一層強化することが必要となっている中で、
雇用の安定を基盤とした多様な人材の活用、
「同一価値労働同一賃金」を基本とする均等・均衡
待遇の実現、ワーク・ライフ・バランスの実現を3つの柱に、誰もが雇用の安定と公正な処遇
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の下でいきいきと働くことのできる賃金・労働諸条件の実現をめざしていくことが重要となっ
ています。
闘争の集計に関しては、集計登録組合、中堅・中小登録組合および全体集計における闘争情
報の登録や集計のあり方に関し、情報共有を進めつつ、簡潔でかつ格差是正の観点に沿った改
善を進め、とりわけ、個別賃金水準を重視した取り組みの強化に向けて、全体集計のデータ収
集・分析の充実が必要となっています。
以 上
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