第 143 回日商簿記検定試験 1級 講評 商業簿記(25 点) 損益計算書の総合問題です。 ただし,決算整理前残高試算表の推定部分や貸借対照表などの項目も別途解答する問題です。 また、解答要求が欲張りなために,少し時間がかかる問題でした。 とはいえ,出題内容は、ここ最近の問題としては非常にシンプルで解答しやすいものばかりだ ったので高得点を狙える問題です。 少しだけ計算が面倒なP/L法人税等調整額とC/F財務活動によるCFの2カ所を除けばすべ て解答して欲しいところです。 会計学(25 点) 第1問はシンプルな空欄記入問題です。 (1)使用価値, (2)時価ヘッジ会計,(4)移転損益の3つは必ずできて欲しいところです。 第2問は在外子会社等の財務諸表項目の問題です。 「のれんをS社の修正仕訳で計上する方法」というマイナーな方法で出題されたため,いつも どおりの解き方だと間違えてしまうところもありますが,ほとんどは解答できる問題です。7 カ所のうち4カ所以上は解答して欲しいところです。 第3問は工事契約の問題です。工事契約基準が公表されてからは初出題です。 「やっと出たか!」 という感じです。テキストの設例レベルの問題なので,全問正解して欲しい問題です。 今回は,商業簿記・会計学で点を稼げる問題だったと思います。商業簿記 20 点,会計学 20 点, 合計 40 点は取って欲しいところです。 工業簿記(25 点) 第1予想の実際総合原価計算からの出題でした。 3カ月分の完成品原価と売上原価の計算、差異分析、営業利益の計算、その他を行わなければ ならないので、大変な手数を要します。 また、前月の月末仕掛品原価が翌月の月初仕掛品原価になるなど、連続した計算が要求されて いる点もミスが連鎖することになりかねず、見た目に反して得点にはつながり難そうです。 以上を勘案すると、15 点程度の得点が欲しいところです。 原価計算(25 点) 品質原価計算と第3予想の業務的意思決定からの出題でした。 見慣れない形式であったため、問題の骨子を把握するまでが大変ですが、難易度としては至っ て標準的な問題です。 落ち着いて問題文を解析し、計算できたかどうかがポイントです。 問1は、問題の随所に見られるヒントを頼りに正解を導いて欲しいところです。 問2は、固定費が埋没する点に注意すれば差額原価を適切に把握することができることから、 基本に忠実に集計して欲しい問題でした。 以上から、原価計算は 16 点程度の得点が欲しいところです。 平成 28 年 6 月 12 日 簿記検定講座
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