Thermo Scientific Dionex AERS 500

Application Note IC16006
Thermo Scientific Dionex AERS 500
Carbonate サプレッサー
サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社
キーワード
び陽イオン交換体に保持されながら、溶離液中の陽イオンと泳動
サプレッサー、炭酸系溶離液、リサイクルモード
交換され、
Regent Outから排出されます。溶離液中の陽イオン
はじめに
H2 CO3水溶液に変わります。H2 CO3は、ほとんど解離しないため、
Thermo Scientific™ Dionex™ Integrion™ HPICシステムと同時に発売された
陰イオン分析用 Thermo Scientific Dionex AERS™ 500 Carbonate電解再生
サプレッサーをご紹介します。このサプレッサーは Dionex AERS 500サプレッ
が 交 換 体 上で ヒド ロ ニウムイオ ンと 交 換されると、溶 離 液は
その水溶液の電気伝導度は高くありません。
図1に示すように、溶離液中の陽イオン成分はヒドロニウムイオン
と交換されて、系外へ排出されます。
3H3O+
サーを炭酸系溶離液条件専用に最適化したモデルです。Dionex AERS 500と同
じ、陽イオン交換膜および陽イオン交換体を充填しています。異なる点は、再生液
の流路配管と電解再生部が三電極構造に変更されている点です。 Na2CO3 / NaHCO3
イ
オ
ン
交
換
2
3H2CO3
3Na+ + 3H2O
Dionex AERS 500 Carbonate
サプレッサー
こ の Dionex AERS 500 Carbonateサプレッサーは、Dionex
AERS 500の基本構造から炭酸系溶離液専用に開発され、再生液流
路を直列配管から二方向に分岐するスプリット配管と電解再生部が
三電極型の構造に変更されています。従来の電解型サプレッサーは
二電極型で、各電極に電流を供給するとサプレッサー内の陽イオン
が水の電気分解により生成する水素イオン(ヒドロニウムイオン)と
交換されます。陽極では2 H2 O → O2 + 4 H+(4 H3 O+)の電解反
応が起こり、ヒドロニウムイオンを生成し、陰極では2 H2 O → H2 +
2 OH− の電解反応が起こります。
AERS型サプレッサーの場合、各電極で生成したイオンは陽イオンだ
けが陽極から陰極へ泳動することができ、陰イオンは泳動すること
なく、サプレッサー Eluent Outから電気伝導度検出器へと流れてい
きます。陽極で生成したヒドロニウムイオンは陽イオン交換膜およ
H3O+:ヒドロニウムイオン
Na+:ナトリウムイオン
CO32-:炭酸イオン
HCO3-:重炭酸イオン
H2CO3:炭酸水素
図1:イオン交換模式図
炭酸系溶離液は、一価と二価イオンを溶離剤として用いているた
め、溶離液濃度を高く設定することができません。
また、グラジエント溶出を設定することができないため、使用設定
範囲が水酸化物系溶離液に比べ、その濃度範囲は狭く設定されて
おり、
Dionex AERS 500サプレッサーの高い交換効率を100 %
使用しているわけではありません。AERS 500サプレッサーのイ
オン交換膜全面をサプレッションに使用しておらず、大半の溶離
液条件では In Letから交換膜の2 /3長程度で陽イオンの除去が終
わります。
AERS 500 Carbonateサプレッサーでは、あまり活用されていな
いサプレッサー Out Let付近の1/3長に低 電 流を加えることで、
ベースラインノイズの原因の一つである電気分解で生じる気泡に
よるノイズを低減させています。図2に示すように、このサプレッ
サーの内部構造は水素イオン(ヒドロニウムイオン)を生成する陽
極を二電極化して、陰極と合わせて三電極型に変更しています。イ
オン交換膜長さの2 /3長の一次陽極、1/3長の二次陽極、イオン交
換膜と同じ長さの三次陰極で、構成されています。一次陽極に印
加する電流値を一定比率で減衰した電流値を二次陽極に印加し
ます。
図1.Dionex
AERS 500 Carbonateサプレッサー 最新のサプレッサー ERS型
構造と働き 構造と働き
0.015
微弱な電流を供給し、
ゆるやかに電気分解
微弱な電流を供給し、ゆるやかに電気分解
をさせて大きい気泡が生成するエリア
をさせて大きい気泡が生成するエリア
AERS 500 Carbonate
AERS 500 Carbonate
0.010
陽極: 2H2O → O2 + 4H+
2H2O
µS/cm
µS/
cm
4H+ + O2
イオン交換膜
カラム
0.005
イオン交換樹脂
イオン交換膜
2OH- + H2
:H+
:O2
AERS 500
検出器
0.000
AERS 500
2H2O
陰極:2H2O → H2 + 2OH-
-0.005
0.0
10.0
図2:Dionex AERS 500 Carbonateサプレッサー構造図
平均
サプレッサー サプレッサー
ノイズ
(nS)
1
AERS 500
ノイズ軽減
AERS 500 2 .35
大量に生成・イオン交換するよう制御します。この時、一次陽極で
カラム
溶離液
条件
カラム
(4 ×
AG12 A
Dionex IonPac
50 mm)
平均ノイズ
/ Dionex IonPac AS12A (4x200mm)
Dionex IonPac AS12 A(4 × 200 mm)
溶離液
:2.7mmol/L Na2CO3 / 0.3mmol/L NaHCO3
(nS)
図3:AERS ノイズ比較
2
: Dionex IonPac AG12A (4x50mm)
流量 Na 2 CO3 NaHCO
:1.5mL/min
2.7 mmol/L/0.3 mmol/L
3
2.35
カラム温度
サプレッサー
検出器
注入量
:35℃
:クロマトグラムに記載, リサイクルモード
:電気伝導度検出器
:25μL
サプレッサー クロマトグラムに記載 , リサイクルモード
流量
1.5 mL/min
AERS 500 Carbonate
0 .88
カラム温度
AERS 500 Carbonate
サプレッサーの溶離液 In Letから行程2 /3ぐらいまでの間で陽イ
オン交換除去が終わるように、交換に必要なヒドロニウムイオンを
15.0
Time
min)
Time([min]
℃
35
0.88
検出器
電気伝導度
注入量
25 µL
図3.溶離液濃度の違いによるベースラインノイズの比較
は大量の酸素ガスも発生し排出されます。続いて、二次陽極で減
0.035
4.5 mmol/L Na 2 CO3 / 0.8 mmol/L NaHCO3
衰された電流値により水が電気分解され酸素ガスが発生し、この
(IonPac AS23)
二次電極でのガス発生量、振動波長などと異なる状態が溶離液
4.5mmol/L Na2CO3
/ 0.8mmol/L NaHCO3
(IonPac AS23)
0.010
Out Let付近で作られ、ノイズを抑える働きをします。一次陽極の
2.7 mmol/L Na 2 CO3 / 0.3 mmol/L NaHCO3
µS/cm
µS/
cm
高い電流値で発生する酸素ガスは大量の微細泡です。二次陽極
では Regent InLet側なので、発生する気泡は大きく、電極から離
(IonPac AS12 A)
2.7mmol/L Na2CO3
/ 0.3mmol/L NaHCO3
(IonPac AS12A)
0.005
1.8 mmol/L Na 2 CO3 / 1.7mmol/L NaHCO3
れます。その大きめの気泡が一次陽極で発生する微細泡を取込み
(IonPac AS4 A-SC)
0.000
1.8mmol/L Na2CO3
/ 1.7mmol/L NaHCO3
(IonPac AS4A-SC)
排出します。発生する気泡の状態と電気分解で生じる異なる振動
波形がノイズ低減に寄与しています。サプレッサーからスムーズに
-0.005
0.0
排出させるため、Regent配管を直列型から並列型へ変更していま
5.0
(min
)
Time
Time
[min]
す。炭酸系溶離液の場合、供給する電流値が 50 mAを超える条件
溶離液
溶離液
はあまりなく、Regent配管を並列型としてもイオン交換膜へのダ
4.5mmol/L
0.8mmol/L
4 .5
mmol/L NaNa
NaHCO3 1 .313
2CO
3 /mmol/L
2 CO
3 /0 .8
メージが小さいため、問題にはなりません。
2 .7
mmol/L NaNa
NaHCO
0 .88 2 COCO
3 /0 .3 /mmol/L
3
0.3mmol/L
NaHCO
2.7mmol/L
2
3
1 .8 mmol/L Na2 CO3 /1 .7 mmol/L NaHCO3
同じ測定条件で AERS 500と AERS 500 Carbonateのベースラ
インノイズをモニターしたクロマトグラムを図3に示します。AERS
4
図4:溶離液別ノイズ比較
10.0
条件
平均
カラム平均ノイズ
クロマトグラムに記載
カラム
ノイズ
溶離液 (nS)
クロマトグラムに記載
溶離液
(nS)
1.5 mL/min 流量
NaHCO 流量
1.31
3
1 .44
1.8mmol/L Na2CO3 / 1.7mmol/L NaHCO3
ベースライン比較
:クロマトグラムに記載
:クロマトグラムに記載
:1.5mL/min
:35℃
カラム温度
カラム温度 35℃
サプレッサー
: AERS 500 Carbonate 4mm,
0.88
AERS 500 Carbonate 4 mm, リサイクルモード
サプレッサー
検出器
:電気伝導度検出器
リサイクルモード
注入量
:25μL
1.44
検出器
電気伝導度
注入量
25 µL
まとめ
500 Carbonateでは AERS 500に比べてベースラインノイズが低
炭 酸 系 溶 離 液 専用である Dionex AERS 500 Carbonateサプ
いことがわかります。また、
AERS 500と AERS 500 Carbonate
レッサーは、今までにない発想からベースラインノイズの低減を実
で 感 度にほとんど 差はありません。しかし、AERS 500に 比べ
現します。炭酸系溶離液は、さまざまな試料の分析に使用されて
AERS 500 Carbonateではノイズが低くなった結果、シグナルノ
おり、その多くのアプリケーションにこのサプレッサーは高い再現
イズ比が向上し、低濃度での分析の精度が上がります。
性と安定性を示します。特に Dionex Integrion HPICシステムと
高分離能カラムとの組み合わせでは高いパフォーマンスを発揮し
ます。
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Application Note IC16006
電気分解により微細な気泡が
電気分解により微細な気泡が
生成するエリア
生成するエリア
図2.AERS 500 と AERS 500 Carbonateのベースラインノイズの比
較
IC117_A1605SO