PDF版 - 東京都

別紙
諮問第973号~第980号
答
1
申
審査会の結論
「卒業式の君が代斉唱時の生徒を起立させる方向での指導の際の、不適切な発言等の
件数と内容を記述した文書」ほか2件について、不存在を理由として非開示とした決定
は、妥当である。
2
異議申立ての内容
(1)異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、東京都情報公開条例(平成11年東京都条例第5号。以下
「条例」という。)に基づき、異議申立人が行った別表に掲げる本件開示請求1から
4に対し、東京都教育委員会が平成27年6月2日付け及び同月4日付けで行った各非
開示決定について、その取消しを求めるというものである。
(2)異議申立ての理由
異議申立書及び意見書における異議申立人の主張を要約すると、以下のとおりであ
る。
ア
『卒業式の〝君が代″斉唱時(予行演習含む)の生徒を起立させる方向での指導
の際、別紙マスコミ市民15年5月号(甲1号証)の73頁の○○高校の教員のような
「不適切な発言」や、○○高校在任中の副校長○○氏、君が代裁判で出た○○のよ
うに、生徒の体に手をかけ、有形力を行使し起立させた、不適切な件数と内容を記
述した文書』(以下「本件開示請求1」という。)については、卒業式の‘君が代’
時、自らの思想良心に基づき不起立した生徒に対し、○○氏や○○学校の管理職が
「立たせる」ため違法な有形力の行使をした事実は明らかとなっているが、国旗国
歌法審議時の政府側答弁でも、
「有形力の行使は違法。許されない。」としていると
ころである。「立たせる」ための「有形力の行使」は、体罰と同じで、生徒の自尊
- 1 -
感情・自己肯定観を大きく損ねるという、教育者としてあってはならない非違行為
ゆえ、再発防止のためにも厳重な再捜査と文書提出は絶対に必要である。
イ
『2015年1月○日の校長連絡会の都教委職員の読み上げ原稿→卒業・入学式(君
が代と答辞・送辞)(以下「本件開示請求2」という。)、2015年1月○日の副校長
連絡会の都教委職員の読み上げ原稿→卒業・入学式(君が代と答辞・送辞)』
(以下
「本件開示請求3」という。)並びに『2015年1月○日の校長連絡会、2015年1月
○日の都立学校副校長連絡会やその他の会合で、都教委職員(支援センター含む)
が、「答辞・送辞は管理職が事前に確認すること」及び「不起立(いわゆる服務事
故)があると式典・当日対応しなければならず、他の業務ができなくなるため本来
の仕事を妨害することになる」という趣旨の発言をした原稿(もしくは記録)、あ
るいは同趣旨の内容を管理職ら学校側に発出した文書、また、回答を求めた文書と
回答』
(以下「本件開示請求4」という。)については、平成27年1月○日開催の校
長連絡会や同月○日開催の副校長連絡会等で、都教委職員(おそらく主任指導主事
クラス)が「不起立があると式典当日、対応しなければならず、他の業務ができな
くなるため、本来の仕事を妨害することになる」と放言した事実は、複数の現職都
立学校教職員が集会等で明言し、私もこの耳で聞いている。いかなる裁判所の判決
も、教員の‘君が代’不起立(不伴奏等含む)行為を「妨害」と判じたものはなく、
当該行為に対し、都教委職員が今後、「妨害」という不適切な用語を発する非違行
為の再発を防止するためにも、この不適切な用語を用いた都教委職員の「職・氏名」
を特定する必要があり、また、上司に当たる者が「妨害」という用語を用いること
を許可した文書も開示させる必要がある。
民主主義を守るためにも、刑法の威力妨害罪に当たるかのような表現で、卒業式
の‘君が代’時に着席される先生を牽制・威嚇する言動、すなわち、憲法第19・20・
21条に違反する違憲・違法な行為をなした、教育庁人事部職員課もしくは指導部高
等学校教育指導課の不良職員の職・氏名を明らかにするため、徹底した情報公開が
必要である。
3
異議申立てに対する実施機関の説明要旨
理由説明書及び口頭による説明における実施機関の主張を要約すると、以下のとおり
- 2 -
である。
(1)本件開示請求1については、文書保存期間の範囲で遡り確認を行い、さらに、当時
の教育庁職員に聞き取りを行った結果、卒業式当日の生徒への対応状況に関して東京
都教育委員会から各学校等に報告等を求めた事例は認められず、本件請求内容に該当
する情報が記載された公文書は作成及び取得しておらず、存在しない。
(2)本件開示請求2及び3については、当該校長連絡会及び副校長連絡会においては、
教育庁人事部から、教育課程の適正な実施について口頭で説明した。なお、仮に職員
が説明を行う際に参考とするために作成したメモ書き等があったとしても、個人で使
用したに過ぎず、組織的に共用したものではないことから、条例2条2項における「公
文書」に当たらない。
(3)本件開示請求4については、上記(2)に記載したとおり、当該校長連絡会及び副
校長連絡会では、教育庁人事部から、教育課程の適正な実施について口頭で説明して
おり、その際、卒業式等の学校における儀式的行事の意義を踏まえて、それらの式典
の円滑な進行を図ることの重要性等について述べたものである。なお、仮に職員が説
明を行う際の参考とするために作成したメモ書き等があったとしても、個人で使用し
たに過ぎず、組織的に共用したものではないことから、条例2条2項における「公文
書」に当たらない。
また、当該説明は、各学校経営支援センター及び同支所の職員が行ったものではな
いことから、発言に係る読み原稿について、同センター及び支所においては作成及び
取得していない。
さらに、当該校長連絡会及び副校長連絡会における説明内容と同趣旨の内容を記載
した文書は作成・発出しておらず、学校からの回答を求める文書も作成していない。
以上(1)から(3)により、実施機関では不存在を理由とする非開示決定を行った
ものである。
- 3 -
4
審査会の判断
(1)審議の経過
審査会は、本件異議申立てについて、以下のように審議した。
年
月
日
審
議
経
過
平成27年11月18日
諮問(諮問第973号~第980号)
平成27年12月25日
新規概要説明(第165回第一部会)
実施機関から理由説明書収受
平成28年
2月12日
(諮問第973号~第980号)
平成28年
2月17日
平成28年
3月
実施機関から説明聴取(第167回第一部会)
異議申立人から意見書収受
3日
(諮問第973号~第980号)
異議申立人から意見書収受
平成28年
3月
4日
(諮問第973号~第980号)
平成28年
4月20日
審議(第168回第一部会)
(2)審査会の判断
審査会は、実施機関及び異議申立人の主張を具体的に検討した結果、以下のように
判断する。
ア
審議の併合について
諮問第973号から980号については、異議申立人が同一であること及び異議
申立ての趣旨が関連するものであることから、審査会は、これらを併合して審議す
ることとした。
イ
本件請求文書について
本件各異議申立てに係る各諮問における請求文書は、別表に掲げる本件請求文書
- 4 -
1から5であり、実施機関は、各本件請求文書について、いずれも保有していない
として、不存在を理由とする非開示決定を行った。
ウ
卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について
東京都教育委員会では、東京都教育委員会教育長通達「入学式、卒業式等におけ
る国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について」(平成15年10月23日15教指企第569号)に
より、「入学式・卒業式等における国旗掲揚・国歌斉唱に関する実施指針」を定め、
各学校における学習指導要領及び当該指針に基づく入学式・卒業式等の適正な実施
を求めている。
エ
校長連絡会及び副校長連絡会について
校長連絡会及び副校長連絡会は、教育庁が都立学校の校長及び副校長に対して、
庁内関係部署の連絡事項を伝える目的で開催している連絡会であり、校長連絡会は
毎月(8月を除く。)開催され、副校長連絡会は、それより若干少ない回数で開催
されている。これらの連絡会は、都立学校の全校長が一堂に会する全体会(以下「校
長全体会」という。)及び全副校長が一堂に会する全体会(以下「副校長全体会」
という。)をそれぞれ年に3回開催するほかは、都内6か所に設置されている学校
経営支援センター及び同センター支所ごとに開催している。
全体会では、教育庁職員から都立学校全体にかかわる事項について、校長及び副
校長に直接周知を図っており、本件開示請求2から4に係る平成27年1月○日の校
長連絡会(以下「校長連絡会」という。)及び同月○日の副校長連絡会(以下「副
校長連絡会」という。)は、それぞれ全体会として開催されているとのことである。
オ
条例における公文書について
条例2条2項において、公文書とは、
「実施機関の職員が職務上作成し、又は取得
した文書、図画、写真、フィルム及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他
人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。)であって、
当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有しているも
のをいう。」と規定している。
ここでいう「職務上作成し、又は取得した」とは、実施機関の職員が自己の職務
- 5 -
の範囲内において事実上作成し、又は取得した場合をいい、文書等に関して自ら法
律上の作成権限又は取得権限を有するか否かを問わないとされている。
また、
「当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有し
ているもの」とは、当該文書がその作成又は取得に関与した職員個人段階のもので
はなく、組織としての共用文書の実質を備えた状態、すなわち、当該実施機関の組
織において業務上必要なものとして利用、保存されている状態のもの(以下「組織
共用文書」という。)を意味するとされており、職員が自己の執務の便宜のために保
有する正式文書と重複する当該文書の写しや職員の個人的な検討段階にとどまる資
料等は、これに当たらないとされている。
カ
本件請求文書の不存在の妥当性について
(ア)本件請求文書1について
本件請求文書1に係る開示請求については、卒業式の国歌斉唱時に、教員が圧
力的な発言や有形力の行使により生徒に起立させた事案の件数と内容を記述し
た公文書を求める趣旨であると解される。
そこで、審査会が実施機関に確認したところ、本件請求文書1について、文書
保存期間の範囲で該当する文書を探索し、また、当時在籍していた関係職員に聞
き取り調査を行ったが、本件請求文書1に該当する文書は確認できず、現に存在
しないとのことである。
(イ)本件請求文書2及び3について
本件請求文書2及び3に係る開示請求については、校長連絡会及び副校長連絡
会における「卒業式・入学式(君が代と答辞・送辞)」に係る東京都教育委員会
職員の「読み上げ原稿」の開示を求めるものである。
そこで、審査会が実施機関に確認したところ、当該各連絡会においては、教育
庁人事部及び同指導部の職員(以下「本庁職員」という。)が卒業式等の国歌斉
唱時における教職員の不起立等に関する内容等、教育課程の適正な実施について
の説明を口頭で行ったものであるが、仮に当該職員が説明を行う際にメモ書き等
を作成した場合であっても、当該メモ書き等は個人で使用したに過ぎず、組織的
に共用した事実はないことから、組織共用文書に該当しないため、本件請求文書
- 6 -
2及び3は現に存在しないとのことである。
(ウ)本件請求文書4及び5について
本件請求文書4に係る開示請求については、校長連絡会及び副校長連絡会やそ
の他の会合において、「不起立(いわゆる服務事故)があると式典当日対応しな
ければならず、他の業務ができなくなるため本来の仕事を妨害することになる。」
という趣旨の発言をしたとして、その発言についての「原稿(もしくは記録)、
あるいは同趣旨の内容を管理職ら学校側に発出した文書、また、回答を求めた文
書と回答を記載した文書」の開示を求めるものであると解される。
また、本件請求文書5に係る開示請求については、実施機関が所管する各学校
経営支援センター及び同支所の職員(以下「支援センター職員」という。)が校
長連絡会及び副校長連絡会やその他の会合において、「答辞・送辞は管理職が事
前に確認すること」、
「不起立(いわゆる服務事故)があると式典当日対応しなけ
ればならず、他の業務ができなくなるため本来の仕事を妨害することになる。」
という趣旨の発言をした原稿(もしくは記録)、あるいは同趣旨の内容を管理職
ら学校側に発出した文書、また、回答を求めた文書と回答を記載した文書を求め
るものであると解される。
実施機関は、本件請求文書4について、本庁職員の説明に係るものとして、ま
た、本件請求文書5について、支援センター職員の説明に係るものとして、それ
ぞれ不存在を理由とする非開示決定を行っている。
審査会が実施機関に確認したところ、校長連絡会及び副校長連絡会においては、
本庁職員が説明を行っており、当該説明において卒業式等式典の円滑な進行を図
ることの重要性等について述べた事実は存するが、説明は口頭で実施され、説明
を実施する際に仮にメモ書き等を作成した場合であっても、当該メモ書き等は個
人で使用したに過ぎず、組織的に共用した事実はないことから、組織共用文書に
は該当しないとのことである。
また、実施機関は、校長全体会及び副校長全体会においては、およそ支援セン
ター職員が説明を行うものではないことから、校長連絡会及び副校長連絡会にお
ける発言に係る原稿については作成及び取得していないと説明する。
加えて、校長連絡会及び副校長連絡会における発言内容と同旨の内容を記載し
- 7 -
た文書を作成して発出した事実もなく、学校からの回答を求める文書も作成して
いないことから、本件請求文書4及び5は現に存在しないとのことである。
さらに、審査会が実施機関に対して改めて本件請求文書1から5の探索を依頼し
たところ、実施機関において当該各請求文書を保有していないことが確認できた。
以上のことを踏まえると、本件請求文書1から5について存在しないとする実施
機関の説明に不自然・不合理な点は認められず、他にその存在を認めるに足りる事
情も見当たらないことから、実施機関が本件請求文書1から5について、不存在を
理由として非開示とした決定は、妥当である。
なお、異議申立人は、その他種々主張しているが、いずれも審査会の判断を左右
するものではない。
よって、「1
審査会の結論」のとおり判断する。
(答申に関与した委員の氏名)
秋山
收、浅田
登美子、神橋
一彦、隅田
憲平
別表
本件開示請求
1
本件請求文書
卒業式の〝君が代″斉唱時
卒業式の〝君が代″斉唱時
(予行演習含む)の生徒を起
(予行演習含む)の生徒を起
立させる方向での指導の際、
立させる方向での指導の際、
別紙マスコミ市民15年5月号
別紙マスコミ市民 15 年5月
(甲1号証)の73頁の○○高
1
号(甲1号証)の 73 頁の○
校の教員のような「不適切な
○高校の教員のような「不適
発言」や、○○高校在任中の
切な発言」や、○○高校在任
副校長○○氏、君が代裁判で
中の副校長○○氏、君が代裁
出た○○のように、生徒の体
判で出た○○のように、生徒
- 8 -
諮問番号
第973号
に手をかけ、有形力行使し起
の体に手をかけ、有形力を行
立させた、不適切な件数と内
使し起立させた、不適切な件
容を記述した文書
数と内容を記述した文書
2015年1月○日の校長連絡会
平成 27 年1月○日開催の校
の都教委職員の読み上げ原稿
2
長連絡会の都教委職員の読
2
→卒業・入学式(君が代と答
み上げ原稿→卒業・入学式
辞・送辞)
(君が代と答辞・送辞)
2015年1月○日の副校長連絡
平成 27 年1月○日開催の副
会の都教委職員の読み上げ原
3
校長連絡会の都教委職員の
3
稿→卒業・入学式(君が代と
読み上げ原稿→卒業・入学式
答辞・送辞)
(君が代と答辞・送辞)
2015 年 1 月 ○ 日 の 校 長 連 絡
平成 27 年1月○日開催の校
会、2015年1月○日の都立学
長連絡会や同月○日開催の
校副校長連絡会やその他の会
副校長連絡会やその他の会
合で、都教委職員(支援セン
合で、都教委職員が「不起立
ター含む)が、
「答辞・送辞は
(いわゆる服務事故)がある
と式典・当日対応しなければ
管理職が事前に確認するこ
4
ならず、他の業務ができなく
と」及び「不起立(いわゆる
(教育庁
4
なるため本来の仕事を妨害
服務事故)があると式典・当
人事部決
することになる」という趣旨
日対応しなければならず、他
定分)
の業務ができなくなるため本
の発言をした原稿(もしくは
来の仕事を妨害することにな
記録)、あるいは同趣旨の内
る」
容を管理職ら学校側に発出
という趣旨の発言をした原稿
した文書、また、回答を求め
(もしくは記録)、あるいは同
た文書と回答を記載した文
趣旨の内容を管理職ら学校側
書
- 9 -
第974号
に発出した文書、また、回答
2015 年1月○日の校長連絡
を求めた文書と回答
会、2015 年1月○日の都立学
校副校長連絡会やその他の
会合で、都教委職員(支援
センター含む)が、「答辞・
送辞は管理職が事前に確認
すること」及び「不起立(い
5
わゆる服務事故)があると式
(各学校
典・当日対応しなければなら
第975~
ず、他の業務ができなくなる
980号
経営支援
センター
ため本来の仕事を妨害する
決定分)
ことになる」
という趣旨の発言をした原
稿(もしくは記録)、あるい
は同趣旨の内容を管理職ら
学校側に発出した文書、ま
た、回答を求めた文書と回答
を記載した文書
- 10 -