試験設備紹介 コーンカロリーメーター 中央試験所 防耐火グループ 写真 1 コーンカロリーメーター外観 1.はじめに 大規模建築物や特殊建築物等における壁及び天井の仕上 げ(内装材)を不燃化することを内装制限という。技術的基 準については,建築基準法施行令第 108 条の 2 にて以下① 2.方法 発熱性試験の装置はコーンカロリーメーターを用いる。 〜③の 3 要件が定められており,コーンカロリーメーター 99mm × 99mm の小片に切り出した試験体を,アルミはくで (写真 1 )を用いた発熱性試験によって,①および②を判定 裏面および四周の小口面を覆い,これを 94mm × 94mm の開 する。 口部をもったステンレス製のホルダーに設置する。この際, ① 燃焼しないものであること。 加熱面がホルダー開口部の内面に接触するよう,セラミッ ② 防火上有害な変形,溶融,き裂その他の損傷を生じな クファイバーブランケットを試験体の裏当て材に用いて高 いものであること。 ③ 避難上有害な煙又はガスを発生しないものであるこ と。 さ調整を行う(写真 2) 。 試験体の加熱は,コーンヒーターにより 50kW/m2 の輻射 熱(火盛り期に壁面が受ける輻射熱の最大値)を与える。 柱,はりなどの主要構造物がたとえ耐火構造であったと ヒーターと試験体の間にはスパークロッドが設置されてお しても,壁や天井の内装材が燃えやすい,あるいは有毒ガ り,加熱によって試験体から発生した可燃性ガスがこれに スが発生しやすいものであると火災時の物的および人的な 引火して燃焼が生じる(写真 3 ) 。本試験で得られる物理量 被害は共に大きくなってしまう。火災は,点火→成長期→ 及び目視観察結果に対し,以下①〜③の判断基準が定めら フラッシュオーバー(急激な延焼)→火盛り期→減衰期と れている。 推移していくが,被害を最小限にするためにはフラッシュ オーバーが引き起こる前に初期消火を行うことが極めて重 要である。火災時,火は壁や天井の上部を這うようにして 燃え広がっていくため,壁及び天井の内装制限を行うこと によって,初期消火を行うための時間が増え,避難や消火 活動の円滑化を図ることができるのである。 ① 加熱開始後,要求時間の総発熱量が 8MJ/m2 以下であ ること。 ② 加熱開始後,要求時間,防火上有害な裏面まで貫通す る亀裂及び穴が無いこと。 ③ 加 熱開始後,要求時間,最高発熱速度が 10 秒以上継 続して 200kW/m2 を超えないこと。 防火材料(内装材)の等級は 3 種類あり,上位から不燃材 試験は 3 体行い,すべてが上記①〜③を満足した場合に 料/準不燃材料/難燃材料である。適用例として,地下街 合格となる。要求時間は,不燃材料で 20 分,準不燃材料で において 500m 以内に防火区画が設けられた部分では不燃 10 分,難燃材料で 5 分である。なお,試験は ISO5660-1 に 材料,温湿度調整を必要とする作業を行う無窓居室では準 従って行うが当該試験規格には試験方法のみが定められて 不燃材料,3 階以上で延べ面積が 500m2 を超えるものでは難 おり,これらの判断基準は当センターなどの指定性能評価 燃材料を用いなければならない。 機関が定めたものである。具体的な内容は, 『防耐火性能試 2 験・評価業務方法書』に規定されている。 16 建材試験情報 2016 年 6 月号 写真 2 左上:セラミックファイバーブランケット 中央及び右:ステンレス製ホルダー 左下:試験体( せっこうボード ) 図 1 試験装置の概略図 4.おわりに 当センターでは,防火材料の分野において,以下の装置 を保有しており,各種試験への対応が可能である。各種試 験および装置などについて,ご相談頂ければ幸いである。 ・ガス有害性試験装置(性能評価認定試験のみ対応) ・表面試験装置( JIS A 1321) ・基材試験装置( JIS A 1321) ・発火促進及び耐着火性試験装置( JIS A 9521, 9523) ・ISO 不燃性試験装置( ISO 1182) 写真 3 燃焼試験時の状況 ・建築工事用シートの溶接及び溶断火花に対する難燃性 試験装置( JIS A 1323) 3.原理 試験体を加熱することで得られる発熱量および発熱速度 【参考文献】 1) 「火災便覧第 3 版」日本火災学会編,共立出版 は,酸素消費法と呼ばれる方法によって計算されている。 これは,燃焼する物質の質量当たりの発熱量は物質によっ 【試験に関するお問い合わせ先】 て大きく異なるが,燃焼時に消費される酸素の質量当たり 中央試験所 防耐火グループ の発熱量は物質によらずほぼ一定の値( 13.1MJ/kg)を示す TEL:048-935-1995 FAX:048-931-8684 ことを利用している 。加熱により発生した燃焼生成ガス 1) を排気フードで吸引し,試験体の燃焼により消費された酸 (文責:中央試験所 防耐火グループ 高橋 一徳) 素量をリアルタイムで測定し,発熱量や発熱速度を計算し ている(図 1)。 建材試験情報 2016 年 6 月号 17
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