マーケティング・チャネルの変容:"ビジネスシステム"の視角からの接近

太田
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マ ー ケ テ ィン グ ・チ ャネ ル の変 容
マ ー ケ テ ィ ン グ ・チ ャ ネ ル の 変 容
一一"ビ ジ ネ ス シ ス テ ム"の
太
田
視 角 か らの接 近 一
一
樹*
ChangesinMarketingChannels
AnEmpiricalApproachFrom"BusinessSystem"Viewpoint
KazukiOHTA
要
わ が 国流 通 の構 造 特 性 や 取 引 慣 行 にっ い ての 研 究 、 お よ び マ ー ケ テ ィ ング チ ャネ ル に 関す る 研 究 に
は優 れ た 多 くの業 績 が 蓄 積 され て い る。 しか し最 近 の流 通 環 境 変 化 に伴 う チ ャネ ル の変 容要 因 の 解 明
及 び再 構 築 に関 す る研 究 は 、 今 だ 多 くの 課 題 が 残 され て い る。 そ こ で 本稿 で は 、 この 現代 的 問 題 に 対
して実 践 的 な イ ン プ リケ ー シ ョン の導 出 を主 眼 に、"ビ
ジネ ス シ ス テ ム(論)の
視点 か ら主 に ケ ー
ス を中 心 に分 析 を試 み た も ので あ る。 そ の結 果 か ら、 い くっ か の理 論 的 ・実践 的課 題 が示 唆 さ れ た 。
主 要 な も の と しては 以 下 の 通 りで あ る。 第 一 に系 列 小 売 店 の 「や る気 」 の醸 成 と それ に 関連 した社 会
的 イ ンセ ンテ ィ ブの 重 要 性 で あ る。 第 二 に、 チ ャネ ル の変 容 は 、外 部 環 境 変 化 のみ に規 定 され ず チ ャ
ネ ル 自 らが 社 会 的 依 存 関 係 の 中 で 変 容 してい る可 能 性 の あ る こ とで あ る。 これ らの結 果 は 、理 論 的 に
も実 践 的 に も従 来 の チ ャネ ル 研 究 に対 して 新 しい 視 点 の 存 在 を示 唆 す る も ので あ る。
1は
じめ に
本 稿 で はわ が 国 の マ ー ケ テ ィ ン グチ ャネ ル の変 容 に つ い て論 考 す る。 わ が 国 の 流 通 を概 観 す
る と 、構 造 的 に は小 売 業 の 零 細 ・過 多 、 生 業 性 、卸 売段 階 の 多 段 階 性 や 流 通 系 列 化 な どが 、 ま
た 取 引 の制 度 ・慣 行 で は 、 建 て 値 制 、 リベ ー ト制 、特 約 店 制 度 、 返 品 制 な どが 特 徴 と して多 く
の研 究 者 か ら指 摘 され て い る1)。しか し他 方 、 最 近 の 円 高 や バ ブ ル 崩 壊 等 の 影 響 で 流 通 構 造 や
取 引 構 造 に変 化 の 兆 しが み られ る とい う主 張 も多 くな って い る。 そ の議 論 の 特 徴 と して は 、 消
費 者 の低 価 格 化 志 向 、低 価 格 を 訴 求 す る カ テ ゴ リー キ ラー や デ ィス カ ウ ン トス トア の 台頭 、 そ
して長 年 の慣 行 で あ った 特 約 店 制 度 の 見 直 し、取 引 先 の 集 約 化 、 大 手 製 造 企 業 と大 手 量 販 店 と
の 「製 販 同 盟 」 の 構 築 等 が 、 そ の変 化 要 因 と して 指 摘 され る2)。一 方 、 これ ら の研 究 と呼 応 す
る よ う にチ ャネ ル 論 の研 究 者達 に お い て も、 新 た な概 念 の 取 り組 み が 始 め られ て い る3)。こ こ
平 成7年9月29日
受 理*社
会学部産業社会学 科
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奈
良 大
学 紀
要
第24号
で 研 究 の 集 計 水 準 に着 目す る と 、概 念 的 に は 経済 体 制 、 国 民経 済 、 産 業 の レベ ル に分 類 され 、
これ ら大 半 の 研 究 は これ らに該 当す る 。 研 究 の 理 論 的 志 向性 の観 点 か ら、 これ ら集 計 水 準 の研
究 は 評 価 さ れ る も の で あ る 。 しか し㍉ これ ら の研 究 にお い て も パ ラ ダ イ ム の 共 約 不 可 能 性
(Kuhn(1962))や
理 論 負 荷 性(Hanson(1969))が
存 在 して い る こと も 否 定 し難 い事 実 で あ
ろ う。
そ こで 本 稿 で は、 流 通 構 造 や チ ャネ ル を 対 象 に多 くの研 究 者 達 が 取 り組 ん で きた 方 法 論 と は
異 な った ア プ ロ ー チで これ らの 問 題 に 取 り組 み 、 そ こ か ら仮 説 的 な問 題 提 起 を試 み た い と考 え
て い る。 と りわ け 、実 践 的 な イ ン プ リケ ー シ ョ ンの導 出 を 念頭 に 置 き なが ら、 チ ャネ ル の変 容
と再 構 築 の論 理 の探 究 を 中 心 課 題 と し、 方 法 論 と して は 「ビジ ネ ス シ ス テ ム(論)」4)の 視 点 か
ら主 にケ ー ス分 析5)を行 う こ とが 中心 と な る。
以 下 、 本 稿 の構 成 に つ い て 示 して お く。 第0点 目に マ ー ケ テ ィ ン グチ ャネ ル に関 す る研 究 の
'レビ
ュ ー を行 う。 そ こ で の 焦 点 は チ ャネ ル 論 研 究 の系 譜 を 論 議 す る こ と よ り も 、本 稿 の主 題 で
あ る チ ャネ ル の変 容 を論 考 す る上 で 理 論 的 な手 助 け と な る研 究 を 紹 介 す る こ と に あ る。 第 二 点
目は 、研 究 者 に お い て は 抽 象 的 ・概 念 的 に、 実 務 家 ・評 論 家 等 にお い て は個 別 事 例 的 に議 論 さ
れ る こ と の多 い マ ー ケ テ ィ ン グチ ャネ ル の変 容 問題 に っ い て 、 そ の実 態 にっ い て定 量 的 な 視 点
も加 え て接 近 してみ る 。 そ こで は 、 研 究 蓄 積 の少 な い我 が 国 唯 一 の マ ク ロ デ ー タで あ る 『商 業
実 態 基 本 調 査 報 告 書』 を 用 い た 時 系 列 分 析 と チ ャネ ル競 争 の 基 盤 変 化 の要 因 に っ い て 論 究 して
い る。 以 上 の 二 点 が 、 い わ ば本 題 を 展 開 す る た め の 準 備 段 階 と い え る6)。本 稿 で は 紙 幅 の制 約
のた め要 点 のみ の紹 介 に 留 め て い る。 そ して第 三 点 目に チ ャネ ル シ ス テ ム変 容 の 実 態 と新 た な
取 り組 み にっ い て ケ ー ス 分 析 を 試 み る。 そ こ で は リー ダー 企 業 と して君 臨 して き た 松 下 電 器 を
先 ず 取 り上 げ る。 次 に 、 最 近 わ が 国で も 台頭 し始 め 多 くの 研 究 者 が 注 目す る 「戦 略 的 同 盟 」 や
「生 販 統 合 シ ス テ ム 」 の 分 析 を 行 う。 最 後 に マ ー ケ テ ィ ン グチ ャネ ル と の 比較 や 再 構 築 に 向け
た イ ンプ リケ ー シ ョンを 得 るた め に も、 我 が 国 で最 も優 れ た シ ス テ ム と評 され るセ プ ン イ レブ
ンの シ ス テ ム に つ い て 検 討 して お く。 以 上 の論 考 か ら、 チ ャネ ル の変 容 と再 構 築 に 関 す る一 っ
の論 理 と実 践 的 イ ンプ リケ ー シ ョン を、 さ らに は チ ャネ ル 研 究 に対 して理 論 的 課 題 を 提 起 して
み た い。
IIマ
1流
ー ケ テ ィ ン グ チ ャ ネ ル に 関 す る 研 究 の レ ビ ュ0
通 チ ャネ ル の2つ の タ イ プ
流 通 機 構 に お い て は 、 商 品 を生 産 者 か ら消 費 者 に 流 通 させ るた め に 、 生 産 者 、 卸 売 商 、 小 売
商 の流 通 主体 は様 々 な流 通 機 能 を遂 行 し、社 会 的 な分 業 を行 って い る。 この 製 造 業 者 か ら消 費
者 に い た る ま で の 取 引 で 結 ば れ る主 体 問関 係 の連 鎖 は 、 流 通 チ ャネ ル と 呼 ば れ る。 そ して、 製
造 業 者 が マ ー ケ テ ィ ン グ上 の 目的 を も って統 制 す る と き、 そ れ は特 に マ ー ケ テ ィ ン グ ・チ ャネ
ル7)と呼 ばれ る 。 こ の流 通 業 者 を媒 介 と す る流 通 チ ャネ ル は 、 製 造 業 者 や 流 通 業 者 に よ っ て統
制 され な い タ イ プ と統 制 され る タイ プ の2っ に 分 け て考 え られ る8)。第 一 の タ イ プ は 、 流 通 業
者 は意 思 決 定 の 自立 性 を確 保 して い て 、 自 らの 目標 達 成 のた め の購 買 や 販 売 の 活 動 を して お り、
自己 の 負 担で 特 定 の 他者 の 目的 に貢 献す る よ う な行 動 は と らな い。 っ ま りこ の伝 統 的 な 流通 チ ャ
ネ ル(ConventionalMarketingChannels)は
、価格 メ カニズ ムという市場原 理優勢 の流通
シ ス テ ム で あ り、 企 業 間 の 関 係 は個hの 交 渉 毎 の1回 限 り の も の で あ り、長 期 的 取 引 関 係 は構
築 され な い。 企 業 の 行 動 も短 期 的 か っ 対 処 療 法 的 で あ る。 第 二 の統 制 され る タイ プで は、 上 記
の よ う な 自律 的 な 流 通 業 者 を通 じて製 品 が 流 通 す るの で は な く、他 の 企業 に よ り統 制 され て い
太 田:マ
241
ー ケ テ ィ ン グ ・チ ャ ネ ル の 変 容
る流 通 業 者 を通 じて製 品 が 流 通 す る。 そ の代 表 が製 造 業 者 に よ って統 制 され て い るマ ー ケ テ ィ
ング ・チ ャネ ル で あ り、 垂 直 的 マ ー ケ テ ィ ン グ シス テ ム(VerticalMarketingSystem)と
も
呼 ばれ る。 この シ ス テ ム は 「運 営 の 経 済 性 お よ び市 場 効 果 の 極 大 化 を達 成 す るた め に あ らか じ
め 構 築 され た 、 専 門 的 に管 理 さ れ 集 中 的 に プ ロ グ ラ ム化 さ れ る仕 組 み 」9)を形 成 して い る 。
2垂
直 的 マ ー ケ テ ィング シ ス テ ム と系 列 シ ス テ ム
(1)垂
直 的 マ ー ケ テ ィ ン グ シス テ ム
垂 直 的 マ ー ケ テ ィ ン グ シ ス テ ム は 、 結 合 形 態 の 相 違 に よ っ て 以 下 の3タ
企 業 シ ス テ ム(CorporateVerticalMarketingSystem):大
イ プ に 分 類 さ れ る10)。
規模製 造業者 が流通業 者 を
合 同 ・合 併 あ る い は 内部 拡 張 に よ り流 通 部 門 を設 け た り して 、 流 通 業 者 ・流 通 部 門 を 自社 の単
0の 所 有権 の下 に 置 くも ので あ る。 これ には 統 合 の 方 向 に よ り、 前 方 垂 直 統 合 、 後 方 垂 直統 合 、
混 合 垂 直 統 合 の3タ イ プ に 類 別 す る こ とが で き る。
契 約 シ ス テ ム(AdministeredVerticalMarketingSystem):フ
ラ ンチ ャイ ズ 契 約 等 に 代
表 され る よ う に契 約 に よ って 流 通 業 者 を 自 己 の系 列 化 に お こ う とす る も ので あ る 。 この シス テ
ム に は 、 フ ラ ン チ ャ イ ズ ・シ ス テ ム 、 卸 売 業 者 主 催 の ボ ラ ン タ リー ・チ ェ ー ン 、 小 売 業 者 主 催
の コ ー オ ペ ラ テ ィ ブ ・チ ェ ー ン の3つ
の タ イ プが あ る。
管 理 シ ス テ ム(ContractualVerticalMarketingSystem):あ
る意 味 で 、伝 統 的 な流 通 チ ャ
ネ ル と 同様 にチ ャネ ル ・メ ンバ ー が所 有 や 契 約 と い う形 で 統 合 され ず 、 自律 した意 思 定 機 関 と
して存 在 す る。 しか しマ ー ケ テ ィ ン グ ・チ ャネ ル の統 制 を と るた め 、 製 造 業 者 が そ の 流 通 業 者
に有 力 な ブ ラ ン ド、割 引 、財 務 上 の援 助 、 譲 歩 と い った誘 引 を 提 供 し、 流 通 業 者 か ら協 調 した
努 力 を引 き 出す ◎ そ して流 通 業 者 を 自己 の 系 列 下 に お こ う と 試 み る。
この よ うに 流通 チ ャネ ル には 、統 制 され な い 「伝 統 的 な流 通 チ ャネ ル」 と、 統制 され る 「マ ー
ケ テ ィ ング チ ャネ ル」 の大 き く2つ の タイ プが あ り、 さ らに 後 者 は3つ の タイ プ に 分類 され る。
(2)系
列 システム
上 述 の よ う に、 垂 直 的 マ ー ケ テ ィ ン グ シス テ ム は3つ の タ イ プに 分 類 され るが 、 マ ー ケ テ ィ
ン グチ ャネ ル と い う場 合 、製 造 業 者 が 主 催 す る垂 直 的 マ ー ケ テ ィ ン グ シ ス テ ム の こ と を 指す の
が 一 般 的 で あ る 。 そ の た め チ ャネ ル 研 究 の 焦 点 は 、 製 造 業 者 の 流 通 業 者 に対 す る管 理 ・統 制
(協 調 と コ ン フ リク トの 問題)が
中心 課 題 と な っ て い る。 そ の 意 味 か ら、 マ ー ケ テ ィ ング チ ャ
ネ ル の 問 題 は 流 通 系 列 化 と い う視 点 か ら も議 論 され る。 こ こで は 我 が 国 で 識 別 され る系 列 シ ス
テ ム の 種 類 とそ の 特 徴 を簡 単 にみ て お こう11)。
M・W型:M(メ
ー カ ー)-W(卸
路 の う ち、MがWを
売業)-R(小
売 業)-C(消
費 者)の4段
階 の 流通 経
資 本 や 人 的手 段 で垂 直 統 合 す る も の で 、 「販 社 型 」 と も呼 ばれ る。 流 通 系
列 化 の 中 で は 最 も流 通 経 路 の統 制 水 準 が低 い タ イ プ。 卸 と小 売 の 間 は 市 場 取 引 を原 則 とす る が
販社 の コ ン トロー ル も 見 られ る。 特 徴 と して は流 通 在 荷12)が小 さ く小 売段 階 まで 排 他 的 流 通 チ ャ
ネ ル を形 成 す る の は困 難 で あ る こと が あ げ られ る。 代表 的業 種 と して 、洗 剤 、 カ メ ラ等 で あ る。
M・R型:メ
ー カー が 直 接 小 売 店 を組 織 す る もの で 「直 販 型 」 と も呼 ば れ る。 卸 機 能 は メ ー
カー 完 全 に 内部 化 され 、 さ らに小 売 段 階 も メ ー カー の営 業 活 動 の 延 長 線 上 に あ り流 通 の各 段 階
にあ る ブ ラ ン ド内競 争 は完 全 に排 除 され て い る。 これ の商 品 に 共 通 して い る の は 、製 品 の 販 売
に必 要 な情 報 、 サ ー ビス の提 供 が 既 存 チ ャネ ル で は 困 難 で あ る と 同 時 に 、 メー カ ー単 独 で十 分
な流 通 経 路 在 荷 が あ るた め 流 通 過 程 に お い て 他 社 製 品 の品 揃 え を 必 要 と しな い こ と で あ る 。 こ
れ には 以 下 の2タ イ プが 識 別 され る。
・チ ェー ン メー カー 型 … … … 高級 バ ック 、 高 級 アパ レル 、大 衆 製 薬 等 。
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奈
良 大
学
紀 要
第24号
・垂 直 統 合 ・専 売 店 型 … … … 自動 車 、 ピ ア ノ、 ミシ ン、 ベ ッ ドメー カー 等 。
M-W-R型:3つ
の流 通 段 階 を 一 つ の 流 通 組 織 と して 統 合 しよ う とす る も ので 、 い わ ゆ る
生 販 一 貫 型 。 販 社 型 と直 販 型 の 中 間 に位 置 す る形 態 で あ る 。 卸 段 階 は 販 社 化 に よ り垂 直 統 合 を
図 り、 小 売 段 階 で は 「店 会 組 織 」 、 「専 売 店 化 」 、 「派 遣 店 員 」 、 あ る い は 「リベ ー ト制 」 な
ど に よ る契 約 関 係 や 協 力 関係 を 介 して 小 売 店 を 中 間 的 な組 織(内 部 組 織 化 に準 じた 効果)と
し
て ま とめ てお り、 市 場 取 引 の枠 を 越 え て統 合 が 図 られ て い る。 販 社 型 と比 べ て流 通 経 路 在 荷 が
大 き く配 荷 小 売 店 舗 数 が 少数 とい う特 徴 が み られ る。 代 表 的 業 種 と して家 電 、化 粧 品等 が あ げ
られ る。
3チ
ャネ ル統 合 の 論 理
伝 統 的 な流 通 チ ャネ ル で は な く、 なぜ マ ー ケ テ ィ ング チ ャネ ル の構 築 が 要 請 され た の か 、 こ
の点 にっ い て検 討 して お こ う13)。それ は 、 以 下 の2点 に要 約 で き よ う 。 第 一 は 、 社 会 的 な合 理
性 が 必 ず しも一 企 業 の合 理 性 に は 結 び っ か な い こ と で あ る。 っ ま り、 差 別 化 され た価 値 実 現 を
図 って い く上 で 、伝 統 的 流 通 チ ャネ ル よ り も統 制 さ れ た チ ャネ ル(垂 直 的 マ ー ケ テ ィ ン グ シス
テ ム)の 方 が差 別 的 有 利 性 が 確 保 さ れ る点 で あ る14)。第 二 は 、 「神 の 見 え ざ る手 」 に統 制 さ れ
る伝 統 的 流 通 チ ャネ ル が 本 当 に万 能 か と い う点 で あ る。 っ ま り、 「市 場 の失 敗 」 あ るい は 「組
織 の意 思 決 定 能 力 の 限 界 」 な どへ の対 応 の 問題 に 帰 着 す る。 こ の点 につ い て は 多 くの 研 究 の 蓄
積 が み られ る。 以下 、代 表 的 な見 解 を整 理 し3っ の パ ラ ダ イ ム に分 類 し要 約 して 示 して お こ う。
(1)情 報 プ ロセ シ ン グパ ラ ダ イ ム
Galbraith(1973)は
組 織 の情 報 処 理 能 力 の 増 進 に は組 織 が 情 報 処 理 の 必 要 性 を 削減 す る か 、
あ る い は組 織 の情 報 処 理 能 力 そ の も の を 向上 させ る か の2つ の 方 法 が あ る こ とを 指 摘 した 。 さ
らに 加 護 野(1980)は
不 確 実 性 対 処 と い う 視 点 か ら 「コ ン トロ ー ル に よ る不 確 実 性 対 処 」 と
「情 報 プ ロセ シ ン グに よ る不 確 実 性 対 処 」 の2つ の 不 確 実 性 対 処 の メ カ ニ ズ ム を 明 らか にす る
が 、 こ こで は 前 者 にっ い て 説 明 しよ う15)。 「コ ン トロー ル に よ る 不 確 実 性 対 処 」 と は 、 不 確 実
要 因 の範 囲 を 限 定 す るあ る い は不 確 実 要 因 の 不確 実 性 の 幅 を狭 め る こと に よ って 不 確 実 性 に対
処 す る方 法 で あ る。 この 対 処 方 法 の基 本 は 、不 確 実 性 発 生 主 体 が と りう る状 態 を 限 定 す る と い
う方 法 で あ る。例 え ば 、 組 織 を と りま く不 確 実性 発 生 要 因 は1っ で は な い か ら、 組 織 は 交i換関
係 を もっ 要 素 の範 囲 を 減 少 させ る こ と に よ って行 動 代 替 案 の 幅 と監 視 の 費用 を 減 少 させ て不 確
実 に対 処 す る こ と な どで あ る。 そ の具 体 例 と して は 、 組 織 の 境 界 の拡 大 に よ って 原 材 料 市 場 あ
る い は製 品 流通 市 場 の 不 確 実 性 を 削減 す る垂 直 統 合 や 、 市 場 競 争 の不 確 実 性 を 削 減 す るた め の
合 併 、契 約 、協 調 、 組 織 の 活 動 領 域 の 限定 、 そ して 製 品 差 別 化 や 広 告 に よ る顧 客 の グ ッ ドウ イ
ル の獲 得 な どは 外 部 不 確 定 要 因 を コ ン トロ ー ルす る こ と に よ って不 確 実 性 を 削 減 す る行 動 で あ
る。 この パ ラ ダイ ム に依 拠 す る と 、消 費者 ニ ー ズ の 複 雑 化 、 技 術 革 新 の 加 速 化 や 競 合 激 化 な ど
の環 境 の 不 確 実 性 の 増 大 に対 処 す る た め 、組 織 の 境 界 の 拡 大 、 っ ま り流 通 を 統 合 して 情 報 処 理
の 負 荷 を 削 減 す る と と も に、 垂 直 的 な情 報 伝 達 経 路 を 増 強 し相 対 的 に 情 報 処 理 能 力 を 高 め て い
くと捉 え られ る16)。
(2)取
引費用パ ラダイム
企 業 の 存 在 理 由 を 明 らか に す る た め に 取 引 費 用 の 概 念 を 提 唱 した の は コ ー ス(Coase,
R.H.(1937;1988)で
あ るが 、 コ ー ス の企 業 拡 張 論 を 継 承 ・発 展 させ た も の に ウ ィ リア ム ソ ン
(Williamson,0.E.(1986))の
理 性(boundedrationality)」
「取 引 費 用 理 論 」 が あ る 。 こ の理 論 で は 、 「制 限 さ れ た 合
と 「機 会 主 義 的 行 動(oPPortunism)」
底 に 存 在 し、 こ れ か ら引 き起 こ され る 「市 場 の 失 敗(marketfailure)」
と い う行 動 仮 設 が 根
を 「取 引 の 困 難 性
太 田:マ
(transactionaldifficulty)」
243
ー ケ テ ィ ン グ ・チ ャ ネ ル の 変 容
あ る い は 「取 引 費 用 」 に集 束 させ て 市 場 取 引 か 内部 組 織 の 取
引 か の 選 択 を説 明 しよ う とす る もの で あ る。 こ の理 論 に よ る と 内 部 組 織 取 引 に係 る費 用(資
源
の 固 定 化 等)が 市 場 取 引 を下 回 る とき は 、 内 部 取 引 が 進 む こと に な る。 っ ま り こ のパ ラ ダ イ ム
で は 、 内 部 組 織 や 中 間 組 織 の形 成 を 市 場 支 配 の 観 点 で は な く費用 節 約 とい う経 済 合 理 性 の 立 場
か ら分 析 して い る と こ ろ に特 徴 が み られ る。 この パ ラ ダ イ ム に依 拠 す る と、 メー カ ー の差 別 化
され た 商 品 供 給 に必 要 と され る流 通 サ ー ビス 享 受 の 困難 性 お よ び 商 業 者 の 機 会 主 義 的 性 格 の 程
度 に よ り、 取 引 費 用 面 か ら流 通 チ ャネ ル の統 合(垂 直 的 統 合)が 決 定 さ れ る こ と に な る17)。
(3)中
間組織パ ラダイム
わ が 国 の 流 通 で は 、 準 垂 直 統 合 と も 呼 び う る よ う な市 場 取 引 と組 織 内 取 引 の 中 間 に位 置 す る
「中 間 的 な取 引 様 式 」(中 間 組 織)が
と られ 、 そ れ は 「継 続 的 な取 引 関 係 」 を ベ ー ス と して支
持 され て い る、 と いわ れ る18)。上 述 の 「取 引 費 用 パ ラ ダ イ ム」 は 、 取 引 費 用 の観 点 か ら市 場 取
引 か 内部 組 織 取 引 か の 二 者 択 一 的 選 択 を強 調 す る もの で あ る。 しか し、 取 引 に は 「市 場 と 内部
組 織 」 と い う2分 法 に 対 して 中間 領 域 を形 成 す る形 態 も存 在 す る と考 え る。 い わ ゆ る 「中 間 組
織 」 の存 在 で あ る。 こ の 中 間 組 織 パ ラ ダ イ ム に 基 づ いた 研 究19)では 、 市 場 と企 業 の境 界 領 域 を
情 報 や 取 引 とい う鍵概 念 を 用 い て分 析 が 進 め られ 、 日本 の流 通 シ ス テ ム は 内部 組 織 と して の垂
直 統 合 と市 場 利 用 との 中 間 組 織 と して形 成 され 中 間 組 織 の 特 色 を発 揮 して き た と解 され る。 こ
のパ ラ ダ イ ム に依 拠 す る と、 流 通 チ ャネ ル は取 引 上 の 理 由や 市 場 の 欠落 等 に よ り垂 直 統 合 化 す
る契 機 は存 在 す る が 、 逆 に統 合 化 が もた らす 欠点 も存 在 す る こ と に な る。 そ の 矛 盾 を 解 決 す る
過 程 で 、組 織 は市 場 と内 部 組 織 の 長 所 を兼 ね 備 え た 中 間 組 織 へ と拡 張 して い く。 っ ま り、 内部
組 織 化 の長 所 で あ る取 引 や 情 報 流 通 の 円滑 さ を確 保 し なが ら、 内部 組 織 化 の短 所 で あ る 「市 場
リス ク の集 中」 と 「特 殊 化 した 資 源 の リス ク」20)を回避 す る と い う市 場 取 引 の長 所 を 組 み 込 ん
だ チ ャネ ル シ ス テ ム が構 築 され る こ と に な る。 この チ ャネ ル シ ス テ ムは 準 垂 直 統 合 と も呼 ば れ 、
垂 直 的 マ ー ケ テ ィ ング シ ス テ ム の 中 の 管 理 シ ス テ ム に該 当 す る こ と に な る21)。
以 上 か ら理 解 で き る よ う に 、各 パ ラ ダ イ ム に は異 な った 固 有 の視 点 を主 張 す る もの で あ る が 、
そ れ ぞ れ に マ ー ケ テ ィ ン グチ ャネ ル 統 合 の 論 理 が 説 明 さ れ る。
IIIマ
ー ケ テ ィ ン グ チ ャネ ル の 変 容
本 章 で は、 マ ー ケ テ ィ ング チ ャネ ル の 変 容 問 題 にっ い て 取 り扱 う。 こ こで は先 ず 、 我 が 国 の
マ ー ケ テ ィ ング チ ャネ ル の時 系 列 的 推 移 を系 列 シス テ ムの 視 点 か ら 『商業 実態 基 本調 査報 告 書 』
を用 い て分 析 す る。 次 に チ ャネ ル 競 争 の 基 盤 が どの様 な要 因 で 変 化 して い る の か を確 認 して お
く。
1系
列 シ ステ ムの 変 化 一r商
業 実 態 基 本 調 査 報 告 書 』 に よ る 分 析一
『商 業 実 態 基 本 調 査 報 告 書 』(中
小 企 業 庁)は 商 業 実 態 に 関 す る調 査 報 告 書 と して は 『商 業
統 計 表 』 と並 ん で 代 表 的 な も の で あ り、 近 年 ほぼ6年
は 『商 業 統 計 表 』 が 事 業 所 単 位(全
数 調 査)で
お き に 実 施 され て い る。 こ の調 査 の 特 徴
あ る の に対 し企 業 単 位(標 本 抽 出調 査)で あ る
が 、 系 列 シ ス テ ム の状 況 な ど 『商業 統 計 表 』 で は把 握 で き ない 経 営 実 態 の詳 細 な点 に ま で 踏 み
込 んで い る と こ ろ に あ る。 結 果 だ け を要 約 してお こ う22)(図 表 一1、2)。
特 徴 と して は 、 「家 庭 用 機 械 器 具 小 売業 」(84.7%)や
第0に 小 売 段 階 の
「医 薬 品 ・化 粧 品 小 売 業 」(67.6%)が
典 型 例 で あ る が 、系 列 比 率 の高 い業 種 群 は メー カー 系 列 の 占め る比重 の 高 い こと が指 摘 で き る。
また 、 従 業 員 規 模 別 に分 析 す る と、 相 対 的 に 「1人 一4人 」 層 は 商 品 回 転 率 は低 い も の の 営 業
余 剰 率 は高 い こ とが あ げ られ る。 この 結 果 か ら、 チ ャネ ル 問 題 に っ い て の示 唆 が得 られ る。 そ
奈
244
良 大
学
紀 要
第24号
れ は 、 第0に 商 品 回転 率 が低 い が 故 に回 転 差 資 金 が 不 足 しが ち で あ る点 と生 業 的 性 格 が強 い が
故 に営 業 費 比 率 が 低 い と い う点 の 長 所 ・短 所 を併 せ も っ チ ャネ ル メ ンバ ー の特 性 で あ る 。 第 二
に、 卸 売 段 階 の特 徴 と して は 、 「医 薬 品 ・化 粧 品 卸 」 と 「機 械 器 具 卸 」 は小 売 業 と 同様 に 「系
列 に入 って い る」 と ころ が 多 く、 か っ 「メ ー カ ー系 列 」 の 比 重 が 高 い こ とが 指 摘 で き る。 この
結 果 は、 これ らの業 種 を 中 心 に今 なお 小 売 段 階 ま で含 め た 系 列 シ ス テ ムが 存 続 して い る こ と を
傍 証 す る も の で あ る 。 第 三 に、 時 系 列 的 推 移 の特 徴 と して は 、 系 列 シ ス テ ム の典 型 的 業 種 で あ
る 「医 薬 品 ・化 粧 品卸 」 と 「機 械 器 具 卸 」 に お い て も 、 メ ー カー 主 催 の系 列 シ ス テ ムが 相 対 的
に低 下 す る傾 向 が み られ る。 と りわ け先 の両 業 種 に っ い て は 、 メ ー カ ー ・卸 売 段 階 で は今 な お
「メ ー カ ー系 列 」 に 属 す る卸 売 業 の比 重 は 高 い も の の 、 そ の 比 重 は低 下 して い る。
これ らの結 果 か ら、 産 業 ・業 種 レベ ル の視 点 で 見 る限 り、 系 列 シ ス テ ム は 変 調 の 兆 しを見 せ
始 め て い る こ とが うか が え る。 こ の こ と は 同 時 に 、 マ ー ケ テ ィ ング チ ャネ ル の 変 容 を 示 唆 す る
も の で も あ る。
図表 一1小
売段 階 にお け る系列 化 シ ステ ムの状 況(単
第6回
調 査(平
成4年10月
系 列 に 入 っ て い る
位:%)
調 査)
非系列
無回答
系列計
メー カー系列
卸 系列
小売系列
計
28.9
42.5
26.1
31.5
68.7
2.4
各種 商 品 小 売 業 計
25.6
22.8
41.2
36.0
72.8
1.6
織 物衣服 ・身回品 小売業計
17.0
24.0
40.4
35.5
80.8
2.2
飲 食 料 品小 売 業 計
22.5
16.9
35.7
47.4
75.2
2.4
小
売
業
総
自動 車 ・自転 車 小 売 業 計
43.7
50.6
23.8
25.6
54.2
2.1
家具 ・建具 ・什器 小売業 計
17.3
23.2
34.5
42.3
79.7
3.0
家庭用機械器具小売業
74.4
84.7
6.5
8.8
24.6
1.0
医 薬 品 ・化 粧 品 小 売 業
40.9
67.6
12.4
20.0
56.0
3.1
燃
業
71.1
61.9
28.0
10.1
27.7
1.2
業
26.3
41.5
22.9
35.6
70.8
2.9
料
小
そ の 他
売
の 小 売
出典:『 商業 実 態基 本調 査報 告 書』(速 報 版)
図 表 一2
卸 売段 階 にお ける系 列化 システ ムの状 況(単
第6回
調 査(平
成4年10月
系 列 に入 って い る
調 査)
非系列
無回答
系列計
メーカー系列
卸系列
計
30.7
45.0
48.4
6.6
67.4
1.9
計
22.6
45.5
51.5
3.0
76.7
0.7
計
19.7
・
69.5
1.7
77.0
3.3
計
38.0
59.9
34.9
5.2
60.2
1.8
衣 服 ・身 の 回 り 品 卸 計
23.3
42.4
52.0
5.6
74.8
1.9
農 畜 産 物 ・水 産 物 卸 計
25.9
11.4
78.6
10.0
72.2
1.9
食 料
計
31.3
49.5
45.9
4.5
67.2
1.5
医 薬 品 ・化 粧 品 卸 計
50.8
64.3
33.4
2.3
47.8
1.4
家 具 ・建 具 ・什 器 卸 計
27.2
32.1
62.5
5.3
71.1
1.7
計
27.7
39.8
53.0
7.1
70.5
1.8
卸
各
売
種
繊
機
そ
業
維
械
の
総
商
品 卸
品
器
卸
具
卸
・ 飲 料 卸
他
の
卸
・
小売系列
位:%)
出典:『 商 業実 態基 本調 査報 告 書』(速 報版)
太 田:マ
2チ
ー ケ テ ィ ン グ ・チ ャ ネ ル の 変 容
245
ャネ ル競 争 の基 盤 変 化
マー ケ テ ィ ング チ ャネ ル の 変 容 が なぜ 生 じて い る の か にっ い て検 討 して お く。
(1)流 通 環 境 の変 化
田村(1994)に
よ る と、 従 前 の マ ー ケ テ ィ ング を 「パ ワー ・マ ー ケ テ ィ ング 」 と位 置 づ け 、
そ の マ ー ケ テ ィン グの 有 効 性 が 急 速 に制 約 され る よ う に な って き た と 指摘 す る23)。それ に伴 い 、
マ ー ケ テ ィ ング チ ャネ ル も 変 容 せ ざ る を得 な い状 況 が 十 分 に想 像 され る 。 そ れ らを 引 き起 こ し
た 環 境 変 化 の要 因 と して は 以 下 の5点
に要 約 され る 。
消 費 者 の変 化
消 費 者 の行 動 圏 の拡 大 が あ げ られ る。 これ に は 自由 時 間 の 増 大 や マ イ カ ー の 普 及 な どに よ る
時 間 ・空 間 レベ ル の変 化 、 さ らに は パ ソ コ ン通 信 や 専 門 情 報 雑 誌 な どに よ る情 報 レベ ル の 変 化
な どが あげ られ る。
製品の変化
プ ロ ダ ク トラ イ フ サ イ クル の 短 縮 化 か ら生 じる 「不 良 在 庫 の 増 大 」 、 そ して物 的 製 品 とサ ー
ビス の 融 合 化 か ら くる 「製 品 の サ ー ビス 化 」 な どが あ げ られ る。
競 争 市 場 の範 囲 の変 化
円 高 や 規 制 緩 和 な どに よ って 促 進 され る経 済 体 制 の 開 放 化 へ の 移 行 で あ る。 価 格 と品 質 の 面
で 競 争 優 位 性 を持 っ 「エ ク セ レン トプ ロ ダ ク ト」(卓 越 製 品)の 輸 入 の増 大 に伴 う 国 内 製 品 と
の 競 合 の 問 題 で あ る。
大 手 流 通 業 のパ ワ ー シ フ ト
これ は 、 「競 争 市 場 の範 囲 の 問題 」 や 「取 引 様 式 の変 化 」 と も関 連 す るが 、 メ ー カー を 凌 ぐ
品 揃 え や 市 場 情 報 の蓄 積 でパ ワ ー を 発 揮 し始 め た 大 手 流通 業 の 変 化 で あ る。 輸 入 や 開 発 輸 入 さ
ら には そ の 潜 在 的 可 能 性 が メ ー カー へ の 依 存 度 を弱 め 、 交 渉 に お い て も大 き なパ ワ ー を 持 ち始
め て い る。
取 引 様 式 の変 化
投 機 型 か ら延 期 型 へ の取 引様 式 の 変 化 が あげ られ る 。 これ は 企 業 の在 庫 投 資活 動 の 変 化 に よ
る もの で あ る。 こ の点 に っ い て は 以 下 で 詳 し く議 論 しよ う。
(2)延 期 型 流 通 シ ス テ ムへ の移 行
上 述 した よ う に 、取 引 様 式 は 「投 機 型 」 か ら 「延 期 型 」 へ と変 化 して い る。 こ の変 化 は チ ャ
ネ ル シ ス テ ム に も大 き な影 響 を与 え る。 この 背 後 には 企 業 の 在 庫 投 資 活 動 の 変化 が潜 ん で い る。
こ こで は 、 流 通 チ ャネ ル を一 つ の シ ス テ ム とみ な し、市 場 リス ク と不 確 実 性 に対 す る対 応 方 法
に着 目 しなが らそ の特 徴 にっ い て み よ う24)。
「投 機 型 」 在 庫 投 資 活 動 は 、 在庫 投 資 に関 す る意 思決 定 を で き るだ け速 い タ イ ミ ン グで 行 お
う とす る も ので あ る。 意 思決 定 が 時 間 的 ・地 理 的 に早 い 段 階 で 行 わ れ るた め 、例 え ば 製 品 形 態
は 生 産 段 階 で 決 られ る。 ま た 、在 庫 位 置 の 決 定 は機 会 損 失 が 生 じな い よ う配 慮 され るた め 、 小
売 段 階 に実 需 以 上 の在 庫 が 予 め保 管 され る こ と に な る 。他 方 「延 期 型 」 在 庫 投 資活 動 は 、 市 場
の 不 確 実 性 の増 大 に対 応 し、 これ を 回 避 しよ う とす る行 動 で あ る。 市 場 で の実 需 に で き る限 り
迅 速 に対 応 し、 「投 機 型 」 で は 引 き起 こ され が ち な不 良在 庫 の 増 大 を極 力解 消 しよ う とす る行
動 が 典 型 例 で あ る。
しか し、 現 実 的 に は 「延 期 型 」在 庫 投 資 活 動 は流 通 チ ャネ ル 内 の全 て の企 業 が 無条 件 に 実 施
で き る も ので は な い。 それ は 第 一 に 、 これ らの両 投 資活 動 の 遂 行 に は均 衡 点 が存 在 し、 原 理 的
に全 て の企 業 が 「延 期 型 」 行 動 を と る と取 引 は完 結 しな い とい う こ とで あ る。 っ ま り両 者 は 相
互 補 完 的 で あ り、 「延 期 型 」 活 動 に はそ れ を引 き受 け る 「投 機 型 」 活 動 が 必 要 と な る。例 え ば 、
246
奈
良 大
学
紀 要
第24号
小 売 企 業 が 「延 期 型 」 在 庫 投 資 活 動 を 行 え ば 、 そ れ に対 応 して メ ー カー や 卸 売 業 な どの納 入業
者 は 「投 機 型 」 の活 動 を行 う 必 要 が あ る。 第 二 に 「延 期 型 」 在 庫 投 資 活 動 は市 場 の不 確 実 性 に
は 対 応 で きて も、 他 方 で 欠品 に よ る 販 売 機 会 の 損 失 の 可 能 性 は常 に 生 じる点 で あ る25)。
3流
通業のチ ャネルシステム
マ ー ケ テ ィン グ チ ャネ ル の 変 容 を 考 え る場 合 、 流 通 業 の系 列 シ ス テ ム の動 き に も着 目 して お
く こ とが 大 切 で あ る。 それ は 、 対 抗 勢 力 と してだ け で は な く、 新 た なチ ャネ ル シ ス テ ム の論 理
を潜 め て い るか らで あ る。 こ こで は そ の 動 き を概 観 して お こ う。 新 た な系 列 化(「 逆 系列 化 」
と も称 され る)と
して 、CVS(コ
ンビニエンス ・ス トア)を 主 催 す る本 部 の チ ャネ ル 政 策 が あ げ
られ る。 そ の代 表 格 と して の セ ブ ンイ レブ ンは 、 チ ェー ン本部 が 加 盟 店 を フ ラ ンチ ャイ ズ 契 約
で 組 織 化 す る一 方 、卸 売 業 者 や メ ー カー を 管 理 シ ス テ ム型 の チ ャネ ル で 統 制 して い る。 基 本 的
に 商 品 の 所 有 権 を持 た な い セ ブ ンイ レプ ンの 本 部 が 、加 盟 店 へ の 推 奨 商 品 を選 定 す る た め に 商
品 を 探 索 す るだ けで な く、 本部 自 らが 商 品 企 画 を行 い 、厳 しい 要 求 の 基 に メ ー カ ー に 生 産 を 依
頼 す る。 メ ー カ ー側 も セ ブ ンイ レブ ン独 自の 品 質 水 準 や パ ッケ ー ジ ン グ さ らに は価 格 設 定 に 応
じ、 生 産 の専 用 ラ イ ンや 配 送 セ ン ター を 設 け る と こ ろ も あ る。 パ ー トナ ー シ ップ と い う名 の も
と に、 取 引 特 殊 的 投 資 が きわ め て 積 極 的 に行 わ れ て い る。 最 近 の 事 例 で は、 セ ブ ンイ レブ ン と
ア イ ス ク リー ム の共 同 開発 を行 うた め 森 永 乳 業 、 雪 印乳 業 な どの 大 手 ア イ ス ク リー ム メ ー カー
5社 は セ ブ ンイ レブ ンの共 同配 送 セ ンター 内 に 専 用 の 冷蔵 倉庫(エ
リア デ ポ)を 設 置 して い る。
他 方 、 も う一 つ の動 き と して 小 売 業 を 起 点 とす る商 品 開発 を 志 向 した イ トー ヨー カ堂 の 「チ ー
ムMD」
が あ げ られ る。 イ トー ヨー カ堂 のバ イ ヤ ー が コー デ ィネ ー タ役 と な り、 素材 メ ー カ ー 、
縫 製 メー カ ー、 商 品 企 画会 社 、 物 流 業 者 な ど の核 と な る企 業 が 参 加 し、 高 品 質 の商 品 を 低 コス
トで 生 産 しよ う とす る も の で あ る。 この 動 き は、 直 線 的 な価 値 連 鎖 を基 本 に形 成 され て い た 系
列 シ ス テ ム に対 して 、 「意 思 決 定 の 共 同 化 」 を 円滑 に進 め るた め ネ ッ トワ ー ク型 シ ス テ ム を 志
向す る点 に一 つ の特 徴 が あ る 。
IVチ
ャ ネ ル シ ス テ ム の 再 構 築 一"ビ ジネスシステム"の 視角
マ ー ケ テ ィ ング チ ャネ ル を 取 り巻 く環 境 要 因 が 変 化 す る 中 で 、 具 体 的 に チ ャネ ル は どの よ う
な問 題 を抱 え 、 ま た どの よ う な新 た な取 り組 み を行 お う と して い る のか 、 これ を 明 らか に す る
こ とが 本 章 の課 題 で あ る 。 こ こで は 、 チ ャネ ル論 の視 点 よ り も、 ビジネ ス シ ス テ ム(論)の
視
点 に重 点 を置 き な が らそ の 「仕 組 み づ くり」 にっ い て 分析 を 試 み る。 以 下 で は 、 チ ャネ ル 戦 略
で は最 も進 んで い る業 界 の 一 っ と評 され る家 電 業 界 を取 り上 げ る。 そ こで は リー ダ0企 業 で あ
る松 下 電 器 の ケ ー ス が 中 心 と な る。 また 、 多 くの研 究 者 が 注 目 し始 め た 「戦 略 的 同盟 」 や 「生
販 統 合 シ ス テ ム」 に つ い て はP&Gと
花 王 を取 り上 げ 、 そ の ケ ー ス を検 討 す る。 最 後 に 我 が 国
で 最 も優 れ た シ ス テ ム と 評 さ れ るセ ブ ン イ レブ ンの シ ス テ ム に っ い て も検 討 した が 、 紙 幅 の 関
係 上 割 愛 し、 そ の要 点 を 図表 に 要 約 す る26)(図 表 一3)。
1松
下 電 器 の チ ャネ ル シ ス テ ム の 変 容 と新 た な 「仕 組 み 」 づ く り
(1)歴 史 的 変 遷
松 下 は 、 い ち早 く系列 小 売 店 を 組 織 化 し流 通 系 列 化 策 に 取 り組 み 成 功 を納 め る な ど、 資 生 堂
と並 んで わ が 国 を代 表 す るマ ー ケ テ ィン グ の成 功 事 例 企 業 と して 有 名 で あ る。 先 に松 下 の 系 列
シ ス テ ム の立 ち 上 が り期 を 簡 単 に 振 り返 ってみ よ う。 松 下 は 、 戦 後 他 の消 費 財 メ ー カ ー が 生 産
体 制 の 再 建 に 追 わ れ る 中 い ち早 く販 売 体 制 の整 備 に と りか か る。 昭和21年 代理 店(契 約 卸 売 業)
太 田:マ
制 度 を、 次 いで24年 に は加 盟 店(契
247
ー ケ テ ィ ン グ ・チ ャネ ル の 変 容
約 小 売 店)制 度 を それ ぞ れ 復 活 させ 、27年 末 に は3万3千
店 に達 して いた と され る。 さ らに 昭和30年 代 の 電 化 製 品 ブ ー ム の 時 代 の 到 来 に呼 応 し流 通 系 列
化 策 を 強 化 し始 め た 。 しか し この 背 景 に は 、 安 売 店 に対 す る メ ー カー の 出 荷 停 止 措 置 が 独 占禁
止法 違 反 に 該 当す る との 公 正取 引 委 員 会 の勧 告 が 販 売 体 制 の 必要 性 を強 く認 識 させ る結果 に な っ
た と もい わ れ る。32年 に、 松 下 の製 品 の 専 売 度 の 高 い有 力 連 盟 店 「ナ シ ョナ ル シ ョ ップ」 が 選
定 され 強 力 な販 売 支 援 策 が 投 入 され る。 いわ ゆ る 「シ ョ ップ店 制 度 」 の 導 入 で あ る。 これ と並
行 して 、全 国各 地 の 販 売 代 理 店(卸 売 業 者)と
の 共 同 出資 に よ る販 売 会 社 が 設 立 され 、34年 ま
で に そ の 数 は100社 に も達 した 。 他 社 も この 動 き に刺 激 を受 け 、 昭 和30年 代 前 半 ま で に 販 売 会
社 、系 列 小 売 店 づ く りに 取 り組 ん だ 。 昭 和39年 、松 下 は 昭 和25年 以 来 の減 収 ・減 益 を 味 わ った
こ の年 に 、 全 国 販 売 会 社 制 度 の確 立 を 中 心 とす る新 販 社 制 度 に乗 り出 す 。39年 に 販 売 会 社221
社 、 代 理 店220社 だ った も のが 、1年 後 の 昭和40年 末 に は、 代 理 店 を廃 止 し販 売 会 社 の み の174
社 の体 制 と した 。 そ の後 、販 売 会 社 の 集 約 ・再 編 成 の 動 きの 中 で 昭 和50年 代 に販 売 会 社 を 県 単
位 に集 約す る と い う動 き は あ るが 、 昭 和60年 前 後 まで は 特 筆 す べ き大 きな 改 革 は な い。 いわ ば 、
この 時 期 まで は迂 余 曲線 は あ るが基 本 的 に は 系 列 シ ス テ ム の 展 開 方 法 や そ の潜 在 的 優 位 性 に 大
き な変 化 は なか った と 言 え る。 系列 シ ス テ ムの 基 盤 条 件 に 変 化 が 生 じチ ャネ ル シ ス テ ム に変 容
の 萌 芽 が 見 られ る の は 、 それ 以 降 の 昭和60年 代 で あ る。 そ の 時 代 以 降 の 動 き を詳 細 に検 討 しよ
う。 代 表 的 な改 革 と して以 下 の点 が重 要 で あ る。
(2)松
下の改革
第 一 に 、 他 社 に 先 駆 け た 積 極 的 な系 列 店 活 性 化 運 動 で あ る。 そ れ は 昭 和60年 か ら実 施 した
「変 身 シ ョ ップ 作 戦 」 と 「ヒ ュー マ ンシ ョ ップ作 戦 」 で あ る。 前 者 は 店 舗 形 態 にっ い て立 地 、
店 舗規 模 、 対 象 顧 客 の4つ の 基 本 業 態 に分 類 し、 そ れ に合 わ せ た 系列 小 売 店 の 店 舗 改 装 を支 援
す る も の で あ る 。rナ
シ ョナ ル シ ョ ップ」 の約4割
に相 当す る約1万 店 が 実 施 した と され る。
後 者 に っ い て は 前 者 に 加 え 、 新 た に情 報 機 器 、住 宅 関 連 専 門 店 づ く りを進 め た もの で あ る。 さ
らに 、平 成 元年 か らス ター トした 「パ ナチ ェー ン」 の 構 築 ・導 入 と平 成2年
会 」 解 散 に伴 う販 売促 進 集 団 「MAST」(マ
の 「ナ シ ョナ ル 店
ー ケ ッ トオ リエ ンテ ッ ド ・エ ー ス ・シ ョ ップ ・
チ ー ム)の 創 設 で あ る 。 これ らの チ ャネ ル 戦 略 に っ い て は 、 既 存 の系 列 小 売 店 支援 策 の 枠 組 の
中で小 売業 のマ ー ケテ ィング機 能 を強 化 しよ うと した 「変 身 シ ョ ップ作 戦」 と 「ヒュー マ ンシ ョ ッ
プ作 戦 」 と は異 な った 意 味 合 い を 持 って お り、 こ の含 意 に っ い て は後 に議 論 す る。 第 二 に 、 昭
和60年 代 前 半 に60社 あ った地 域 販 売 会 社 を 再 編 ・統 合 し、 販 売 促 進 機i能を充 実 した広 域 圏 販 売
会 社 のrLEC」(ラ
イ フ ・エ レク トロニ ク ス ・コー ポ レー シ ョン)が 設 立 され る 。 松 下 資 本
が 過 半 数 以 上 を 占 め る販 売 会 社 「LEC」
は 全 国で21社 に な った 。 「LEC」
の設 立 の 大 き な
目的 は 、 「規 模 の経 済 性 」 の追 求 に よ る業 務 の 効 率 化 、実 需 に 対 す る迅 速 な対 応 、 そ して 専 門
ス タ ッフの 集 結 に よ る コ ンサ ル テ ィ ン グセ ー ル ス の充 実 が あ げ られ る。 っ ま り、販 売 支 援 活 動
とマ ー ケ テ ィン グ活 動 が 業 務 の 中心 と して 位 置 づ け られ た。 第 三 に 、 平 成2年
TM」(松
に開 始 した 「M
下 マー ケ ッ トオ リエ ンテ ッ ド ・ トー タル ・マ ネ ジ メ ン ト・シ ス テ ム)が あ げ られ る。
これ は 情 報 ネ ッ トワー ク をベ ー ス に市 場 の 需 要 に柔 軟 か っ 機 敏 に 反 応 で き る製 造 ・販 売 体 制 を
っ く り、 「ス ピ ー ドの 経 済 性 」 を実 現す る もの で あ る。 こ の シ ス テ ムの 導 入 に伴 い ビジ ネ ス シ
ス テ ム も見 直 され た 。 そ の概 要 は 、① 販 売 店 の 在 庫 負 担 を軽 減 す る(現 在 の 平 均 的 在 庫 日数 は
展 示在 庫30日 、 バ ックヤ ー ド在庫30日 の 計60日)、
② 迅 速 な商 品 の配 送 体 制 を整 備 す る(現 在 、
小 売 店 が 発 注 か ら納 品 まで の リー ドタ イ ム は 約1日 か ら2日)、
③ 販 売 会 社 の 在 庫 を事 業 部 の
在 庫 と して 計 上 し販 売 会 社 の在 庫 も事 業 部 が 責 任 を 持 っ と と も に 、 販 売 会 社 か ら系 列 店 へ の販
売 が 行 わ れ た 時 点 で 事 業 部 の売 りが た っ 「実 需 体 制 」 とす る 、④ 在 庫 情 報 、 販 売 情 報 な どが 迅
奈
248
良 大
学
紀 要
第24号
速 に端 末 か ら監 視 で き る情 報 シ ス テ ムを 整 備 す る、 ⑤ 販 売 会 社 の 販 売 計 画 と事 業 部 の販 売 計 画
を調 整 す る 、 と い った こ とで あ る。 さ ら に これ らの改 革 に 伴 い 、 ⑥ 物 流 シ ス テ ム も 見直 さ れ 、
物 流 拠 点 の集 約 化 を含 む 情 報 と0体 と な った 「フ ロ ー型 物 流 シ ス テ ム」 の構 築 に取 り組 ん で い
る。 これ らの改 革 の 背 景 に は 実 需 に支 え られ た 流 通 体 制 の 確 立 ・整 備 が 目標 と して あ り、 販 売
会 社 「LEC」
も そ の シ ス テ ム の0環 と して機 能 す る こ とが 期 待 され て い る。
(3)販 売 促 進 集 団 「MAST」
の仕 組 み
第 一 で 指 摘 した 「パ ナ チ ェー ン」 と 「ナ シ ョナル 店 会 」 解 散 に伴 う販 売 促 進 集 団AMAST」
の創 設 と い う、松 下 の 系 列 店 策 に と って重 要 な 戦 略 的 含 意 を持 っ そ の仕 組 み に っ い て詳 細 に議
論 しよ う。 先 ず 「ナ シ ョナル 店 会 」 解 散 に伴 い創 設 され た 「MAST」
しよ う。 「MAST」
の 仕 組 み にっ い て紹 介
は 、 これ まで 松 下 の 系列 店 の 運 営 母 体 で あ る 「ナ シ ョナ ル 店 会 」 の 運 営
の反 省 に 立 って 新 た に誕 生 した 販 売 促 進 集 団 で あ る。 入 会 資 格 と して は 、 松 下 と契 約 を結 ん で
い る 「松 下 シ ョ ップ」(松 下 製 品 を ほぼ100%扱
う系 列 店)で
あ る こ と 、 そ して月 間 の 仕 入 額
が100万 円 以 上 で あれ ば 原 則 的 に入 会 で き る こ と に な って い る。 入 会 に 当 り特 別 な契 約 は 交 わ
して い な い。 現 在 全 国で1万9千
店 が 加 入 し、1チ ー ム約30店 で構 成 され る 「地 区MAST会
を 基 本 的 な活 動 基 盤 と し販 売 促 進 活 動 を 中 心 に行 って い る。r地
同 地 域 の メ ンバ ー店(事 業 規 模 の 大 小 は 考 慮 され な い)が1つ
ら選 出 さ れ る 「会 長 」 店 の 指 導(「
「愛 情 点 検 サ ー ビス」(個
」 の組 織 構 成 は
の チ ー ム を結 成 す る。 そ の 中 か
世 話 係 」 の 表 現 の 方 が 妥 当)の 下 に、 「合 同展 示 会 」 、
別 訪 問 し点 検 サ ー ビス を実 施)や
こ の活 動 を支 援 す る た め 事 務 局 機 能 と してrLEC」
の 「地 区MAST会
区MAST会
」
「訪 問 販 売 」 な どの活 動 を行 う。
の販 売促 進 担 当者 が 配 属 され て い る 。 こ
」 の 特 徴 は 、 会 長 は メ ンバ ー店 に対 して 全 く権 限 ・責 任 を持 た ない こ と、
会 と して の予 算 は 一切 持 た ない こ と、 そ して解 散 した 「ナ シ ョナ ル 店 会 」 の よ う な親 睦 団 体 的
な要 素 は一 切 排 除 し販 売 促 進 を 共 同 で 遂 行 す る と い う経 済 的 行 為 のみ に特 化 して い る こ とで あ
る。 ち なみ に 、松 下 か らは 会 長 に対 して特 別 な りべ 一 トや 手 当 金 は支 払 わ れ て い ない 。 会 長 は
社 会 的 イ ンセ ンテ ィブ で 機 能 して い る ので あ る。
なぜ 、 こ の よ う な 集 団 を 形 成 す る必 要 が あ った の か 。 こ こ に マ ー ケ テ ィ ン グチ ャネ ル が 持 っ
本 質 的 な一 っ の 問 題 を 導 出 す る こ とが で き る。 そ れ は 、 経 済 的 環 境 条 件 と い う外 的 与 件 と言 う
よ りは組 織 集 団 が 陥 りや す い 内的 な社 会 的 連 帯感 の 問 題 で も あ る。
「ナ シ ョナ ル 店 会 」 は昭 和32年 に 松 下 の 大 規 模 グル ー プ 組 織 と して 、 「福 祉 共 済 事 業 」 、
「共 栄 事 業 」(店 会 積 み 立 て な ど)、
国2万7千
「販 売促 進 の 支 援 」 の3つ の理 念 を 掲 げ 設 立 され た 。 全
店 が 加 盟 し、29連 合 会 と770地 区 店 会 か ら構 成 さ れ る こ の集 団 は 「共 存 共 栄 主 義 」
の 理 念 を 実 践 す る組 織 と して 、 当時 松 下 の 大 き な牽 引 力 の役 割 を果 た した の も事 実 で あ る。 し
か し時 代 が 経 過 し環 境 が 変 化 す る に っれ 、 零 細 小 売 店 を 中心 と して構 成 され た 「店 会 」 の経 営
構 造 に も変 化 が 起 こ る。 端 的 に は店 主 の 高 齢 化 で あ り、 さ らに は 零 細 小 売 商 を営 む 最 小 の経 営
単 位 が 維 持 で き な くな る と い う 「零 細 店 舗 に お け る家 商 分 裂 」27)の進 展 で あ る。 だ が これ だ け
で あ れ ば 、 メー カー の経 営 資 源 を活 か した 系 列 店 支 援 策 で 再 生 す る こ とは まだ 可 能 で あ る。 し
か し悪 い こ とに この危 機 感 が 「や る気 の あ る店 」 の足 を引 っぱ り、企 業 化 精神 温 れ る新 規 シ ョ ッ
プの 加 入 を 自分 た ち の商 圏 が侵 さ れ る とい う理 由で 拒 み だ した の で あ る。 こ の よ う な行 動 が 可
能 な の は 「ナ シ ョナ ル店 会 」 に は 予 算 の 執 行 権 限 を持 っ 三 役 とい う実 力 者 が 存 在 す る な ど会 運
営 の 自主 性 ・独 立 性 が か な り強 か った こ と、 そ して過 去 の 成功 体 験 が 「共 存 共 栄 主 義 」 を 誇 張
的 に解 釈 させ る方 向 に働 い た こ とが あ げ られ る。 経 営 の危 機 感 が 自 ら の経 営 努 力 の方 向 に 作 用
せ ず 自分 達 の既 得 権 益 を 守 る方 向 に働 いた 。r共 存 共 栄 主 義 」 を 錦 の 御 旗 に あ げ た圧 力 集 団 へ
と変 貌 した しま った の で あ る。 この 悪 循 環 の鎖 を 断 ち切 るた め に も、 松 下 は新 しい 集 団 を 組 織
/
太 田:マ
249
ー ケ テ ィ ン グ ・チ ャネ ル の 変 容
化 す る必 要 が あ った 。 しか も過 去 の経 験 を 活 か し、 既 得 権 益 を 守 る圧 力 集 団 へ と暴 走 しな い よ
う な組 織 や 仕 組 み をっ くる こ とが 要 請 さ れ た 。 そ れ が 予 算 を持 た ず 権 限 も持 た な い会 長 制 度 を
採 用 した 、 販 売 促 進 と い う経 済 行 為 の み に 特 化 す る 「MAST」
会 なの で あ る。
(4)戦 略 的 小 売 集 団 「パ ナチ ェー ン」 の仕 組 み
「パ ナ チ ェー ン」 の 仕 組 み につ い て簡 単 に 紹 介 しよ う。rMAST」
る も の の 、 結果 的 に 「MAST」
置 づ け る こ とが で き る。 こ の組 織 は 、運 営 本 部 を 「LEC」
とす るVCの
と設 立 年 代 は相 前 後 す
の 欠点 を 補 い サ ポ ー トす る組 織 と して 「パ ナ チ ェー ン」 を位
と し 「パ ナ ・シ ョ ップ」 を加 盟 店
よ う な組 織 的 結 合 を して い る と ころ に特 徴 が あ る。 現 在 全 国 で 約5000店 の 「松 下
シ ョップ」(大
半 は 「MAST」
店)が
、地 域 の 運 営 本 部 「LEC」
と契 約 を 結 び 加 盟 して い
る。 提 供 す る メ ニ ュー は 各 地 域 本 部 に よ って 異 な るが 、 販 売 促 進 の 指 導 、 共 同 チ ラ シ の作 成 、
経 営 指 導 、顧 客 管 理 の 代 行 等 が 標 準 的 な サ ー ビス 内 容 で あ る。rパ
ナ ・シ ョ ップ」 側 の義 務 と
して は 、本 部 に対 して 指 導 料 と して数 万 円(店 に よ り一 律 で は な い)を 支 払 う こ と と、 経 営 業
績 な ど経 営 内 容 を 本 部 に 対 してオ ー プ ンにす る こ とで あ る。 こ の会 は 、 「MAST」
が権 限 ・
責 任 関 係 の ない 組 織 で あ る の に対 し契 約 に よ りか な り権 限 ・責 任 関 係 を 明確 に した 組 織 で あ る。
仲 間意 識 の連 帯 感 だ け で は な く、 両 者 の 「緊 張 関係 」 を 基 盤 と して競 争 力 の あ る系 列 小 売 店 を
育 成 しっ っ あ る。 そ れ に 連 動 し 「MAST」
も松 下 本 体 か らの 出 向社 員 を 引 き 上 げ 、 「地 元 の
言 葉 が 理 解 で き る 」 プ ロパ ー 社 員 を重 視 し始 め て い る。
家 電 市 場 に 占 め る系 列 小 売 店 の 販 売 額 は年 々縮 小 し、 昭 和48年 に約80%あ
った そ の 比 率 が30
%を 割 り込 む 可能 性 も 高 い と言 わ れ て い る。 松 下 も そ の 兆 候 は免 れ な い が 、 他 方 、 同 じ家 電 業
界 に あ って三 洋 電 機 は 唯 一 、 年 々系 列 小 売 店 数 を増 加 させ て い る。 そ の チ ャネ ル シ ス テ ム を こ
こで 詳 細 に議 論 す る 余裕 は ない が 、 後 ほ ど簡 単 に触 れ る。
2P&Gの
(1)米
戦略 的同盟
国 に お け る 「ウ ォ ル マ ー ト」 と の 戦 略 的 同 盟
戦 略 的 同 盟 と い え ば 、P&Gと
米 国 最 大 の 小 売 業 ウ ォ ル マ ー トの そ れ が 有 名 で あ る 。 ウ ォル
マ ー トは 売 上 高 の 大 き さ と そ の 成 長 率 の 高 さ で も 有 名 だ が 、 経 費 率 約15%と
徹 底 した ロー コス
ト ・オ ペ レー シ ョ ン の 実 践 で も 注 目 を 集 め て い る 。 米 国 で は 、QR(QuickResponse)やE
CR(EficientConsumerResponse)導
EDI(電
入 の 前 提 と な るEDIの
導 入 は か な り普 及 して い る 。
子 取 引 デ ー タ 交 換:ElectricDataInterchange)の
普 及 は 流 通 の 効 率 化 、 コス ト
の 低 減 、 さ ら に 自社 の 競 争 ア ッ プ の た め に 、 企 業 、 業 界 を 越 え た 協 力 関 係 の 構 築 が 既 に 必 要 不
可 欠 な も ので あ る と い う 認 識 が 広 ま って い る こ と を示 す もの で あ る。 さ らに進 ん で 企 業 間 の 協
力 体 制 は強 ま る傾 向 に あ り、 流 通 業 者 と メー カ ー の 協 力 関 係 の 下 に経 費 の 削減 、利 益 の 改 善 、
プ ラ イ ベ ー トブ ラ ン ドの 開 発 、 長 期 的 な 商 品 供 給 ・価 格 設 定 な ど の 改 善 等 が 志 向 さ れ て い る 。
こ の よ う な 協 力 体 制 が 一 般 的 に 「戦 略 的 同 盟 関 係 」28)と 呼 ば れ て い る も の で あ る 。 特 に 、 米 国
の 食 料 品 業 界 で は 約300億
ECRの
ドル の コ ス ト削 減 を 図 り 効 率 的 な 食 品 流 通 シ ス テ ム を 構 築 す る た め
導 入 が 図 られ よ う と し て い る 。 導 入 の 目的 は 以 下 の と お り で あ る29)。
① 効 率 的 な 商 品 品 揃 え(EfficientStoreAssortments):品
揃 え の最 適 化 に よ る死 筋 在 庫 、
販 売 機 会 ロ ス の削 減 。
② 効 率 的 な 商 品 補 充(EfficientReplenishment):ジ
ャ ス ト ・イ ン ・ タ イ ム 方 式 の 発 注 ・補
充 お よ び ロ ジ ス テ ィ ッ ク ス ・シ ス テ ム 構 築 に よ る 在 庫 圧 縮 。
③ 効 率 的 な 販 売 促 進(EfficientPromotionStrategies):フ
及 び ダ イ バ ー テ ィ ン グ(転
売)に
よ る滞 留 在 庫 削減 。
ォ ワ ー ドバ イ イ ン グ(先
買 い)
250
奈
良 大 学
紀
要
第24号
④ 効 率 的 な商 品導 入(EfficientProductIntroductions):共
同 商 品 開発 、共 同 市 場 テ ス ト等
に よ る ヒ ッ ト率 の 向 上 。
これ らの活 動 を 通 して10.8%の
消 費者 価 格 の低 下 を もた らす こ とが で き る と推 計 され て い る。
しか し食 品業 界 を あ げ て こ の取 り組 み を始 め た 最 大 の 理 由 は、 協 力 な バ イ イ ン グパ ワ ー を持 っ
た ウ ォル マー トに 対 抗す るた め で も あ る と指 摘 され る。 っ ま り 、 ウ ォル マ ー トの 「エ ブ リデ イ ・
ロー ・プ ラ イ ス」(EverydayLowPrice)戦
略 に対 抗 す るた め で あ る。 そ の戦 略 を 実 践 す る
た め ウ ォル マ ー トは 以 下 の も の をP&Gを
含 め メ ー カー に提 案 した 。
① メ ー カー は 年 間 の プ ロモ ー シ ョン ・コス トを 通 常 の 販 売 価 格 に織 り込 む 。
② 小 売側 は フ ォ ワー ドバ イ イ ング及 び ダイ バ ー テ ィン グ を行 わ な い 。
③ 上 記② の 代 わ り と して、 メ ー カ ー は セ ン トラル バ イ イ ング の条 件 を よ くす る。
④ 小 売側 は 年 間 の 仕 入 量 を確 保 す る 。
⑤ 上 記④ の 代 わ り と して 、 メ ー カ ー は価 格 を で き る限 り下 げ 、 か っ 期 間 内 の 同一 価 格 を提 供 す
る。
これ に 同 調 した のがP&Gで
あ り、 ウ ォル マ ー トと戦 略 的 同 盟 を 結 び 店 舗 側 の詳 細 な販 売 情
報 の 収 集 や フ ォ ワ ー ドバ イ イ ン グや ダイ バ ー テ ィン グ の阻 止 を 図 る こ と を企 図 し、 さ らに ス ー
パ ー マ ー ケ ッ ト業 界 に新 秩 序 の 形 成 を 試 み て い る と も言 わ れ る 。p&Gと
ウ ォル マ ー トの戦 略
的 同 盟 に貫 徹 す る理 念 は 、 「物 流 オ ペ レー シ ョン の合 理 化 を進 め て 価 値 の あ る も の を い か に 消
費 者 に 提 供 で き るか 」 で あ り、徹 底 的 に ム ダ な コ ス トを排 除 し競 争 力 の 向上 を 図 る こ とが 主 眼
で あ る。 こ の シ ス テ ム の特 徴 は 以 下 の2点
に要 約 で き る。 第 一 は 、 効 率 的 商 品 補 充 シ ス テ ム に
よ る ロ ジ ス テ ィ ック ス の効 率 化 で あ る。 これ はP&GがEDIを
活 用 しウ ォル マ ー トの 商 品 在
庫 を セ ン ター 単 位 で 管 理 し 自動 的 に 補 充 す る も ので あ る。 この シス テ ム に よ り、短 期 の 市 場 の
実 需 に即 応 す る店 頭 品 揃 え を 効 率 的 な行 う も ので あ る。 っ ま り、 あ くまで も市 場 の 実 需 に 基 づ
く(追 随 す る)と い う 意 味 で 「プル 型 」 対 応 の シ ス テ ム で あ り、 オ ペ レー シ ョン レベ ル で の 取
り組 み で あ る と言 え る。 第 二 は 、POS情
は 、P&Gが
報 に よ る マ ー チ ャ ン ダ イ ジ ング の改 善 で あ る。 これ
ウ ォル マ ー トの 各 店 舗 か ら収 集 され る販 売 情 報 を 分 析 しカ テ ゴ リー マ ネ ジ メ ン ト
の 改 革 に活 用 す る も の で あ る 。 また 、 長 期 的 な生 産 計 画 に も反 映 され る。 さ らに この 情 報 を も
と に ウ ォル マ ー トのバ イ ヤ ー とP&Gの
るが 、P&G側
マ ー ケ テ ィ ング部 が 長 期 的 な視 点 で商 品政 策 を 議 論 す
か らす る と 、 メ ー カー と して の新 製 品導 入 計 画 を 伝 え る場 と して も 機 能 して い
る。 っ ま り 、消 費 市 場 に 対 して 製 品 を提 案 して い くと い う意 味 で 「プ ッシ ュ型 」 機 能 と して 働
く仕 組 み を 内在 させ て い る。 この ビジ ネ ス シ ス テ ム は 、 「プ ル 型 」 機 能 を 基 本 と し なが ら も
「プ ッシ ュ型 」 機 能 を併 存 さ せ た 仕 組 み で あ る と言 え る30)。
(2)日 本 に お け る 「中核 代 理 店 卸 」 と の戦 略 的 同盟
P&Gは
、 日本 に お い て も戦 略 的 同盟 を結 ぼ う と して い る。 しか し、 それ は 米 国 で の そ れ と
は異 な る も の で あ る 。 日本 で は 米 国 の ケ ー ス の よ う に 小 売 業 と直 接 取 引す る の で は な く、 卸 売
業 と戦 略 同 盟 を 提 携 す る こ と に よ りチ ャネ ル戦 略 の 遂 行 を 試 み て い る。 そ の 戦 略 的 同 盟 の 中 核
と な る 戦 略 は、 約2400の 卸 売 企 業 を 約100社 に集 約 化 した 「中核 代 理 店 制 度 」 に あ る。 この 制
度 は 昭和61年 に 始 ま った 。 多 くの卸 エ リア単 位 に 中 核 と な る有 力 卸 を1社(い
に絞 り込 み 、 他 の卸 は2次 卸(現
在 約500社)に
わ ゆ る1次 卸)
降 格 させ る と い う も の で あ る。 現 在 、 この 制
度 の 導 入 で 全 国 約8割 の エ リア を カバ ー して い る と言 わ れ る。 なぜ 「中核 代 理 店 制 度 」 を導 入
した の か 。 そ れ は 、P&Gが
日本 に進 出 した 昭和47年 に遡 る こ と に な る。 当 時 は 日本 企 業 数 社
と の合 弁 で 事 業 を 展 開 し始 め たP&Gは
先 企 業(数
、 日本 の 取 引 慣 行 にっ い て の 情 報 不 足 も相 ま って合 弁
社 で 構 成)の 輻 綾 した チ ャネ ル を 整 理 す る こ と な く利 用 さ ぜ る得 なか った 事 情 が あ
太 田:マ
251
ー ケ テ ィ ン グ ・チ ャ ネ ル の 変 容
る。 そ の た め 、 チ ャネ ル 統 制 が 困難 で 企 図す る マ ー ケ テ ィ ング戦 略 が 採 れ ず 事 業 展 開 に苦 心 し
た ことが あ げ られ る。 そ れ に加 え 「花 王 の販 売 会 社 制 度 を 活 用 した 戦 略 に 脅威 を 抱 い て いた 」
こ と も 同制 度 導 入 の 大 き な刺 激 と な った 。 そ こ で 、P&Gは
「顔 の見 え る取 引 」 を 行 う こ と に
よ り 「共 通 の 目標 の共 有 化 」 を 図 ろ う と した 。 っ ま り 「パ ー トナ ー と い う 限 られ た 卸 との 取 り
組 み の方 がP&Gと
して もや り易 い し、 先 方 に と って も 限 られ た 中 で や って い る とい う意 識 を
も って も らいや す い」 と い う関 係 の 構 築 を戦 略 的 に志 向 した の で あ る。 例 え ば 、 そ の 関 係 を 通
して 「目標 の共 有 化 」 や 「取 り引 きの 合 理 化 」 、 さ らに は 「取 引 先 の 教 育 」 や 「エ リア 内 で の
過 当競 争 か ら生 じる ロ ス ・リー ダー の 排 除 」 が 行 い易 くな る と言 う。
しか しなぜ 米 国 の よ う に小 売 店 と 直 接 取 引 を しな い の か 。 そ の 疑 問 に対 しP&Gは
以下 の2
点 の理 由 をあ げ る。 第 一 は 、 消費 者 の 満 足 を第 一 義 的 に考 え た価 値 を提 供 で き るム ダ の無 い チ ャ
ネ ル づ く りが 重 要 で あ る と した上 で 、 多 くの 小 売 店 に多 品 種 少 量 の 製 品 を効 率 よ く流 通 させ る
に は(米 国 で はパ レ ッ ト単位 、 日本 で は ピー ス単 位 とい った相 違 が み られ る)、
トラ ンス フ ァー
の 役割 を 担 う機 関(対 大 手 小 売 業 の場 合 で も)が 必 要 で あ る と指 摘 す る。 日本 の 場 合 それ は卸
売業 を活 用 す る こ とで あ り、P&Gの
「中核 代理 店 制 度 」 も そ の役 割 を 期 待 して い る と言 う。
第二 は 、 日米 の 大 手 小 売 業 の 機 能 構 造 上 の相 違 で あ る。 米 国 の小 売 企 業 は 日本 の 卸 売 業 の機 能
を併 せ 持 っ と こ ろが 多 い と指 摘 す る。 例 えば ウ ォル マ ー トの場 合 、 自社 で デ ィス トリビ ュー シ ョ
ンセ ンタ ー(保 管 倉庫)や
トラ ンス フ ァー セ ン ター(輸 送 用 品 揃 え セ ン ター)を 保 有 して い る
と 言わ れ る。 日本 の場 合 そ の よ う な機 能 を持 っ 大 手 小 売 業 は数 少 な い。 した が って 「米 国流 の
戦 略 的 同盟 を そ の ま ま 日本 に 適 用 す る こ と は 困難 で は ない か 」 とP&Gは
指 摘 す る。
最 後 に、 米 国 と異 な って採 用 され て い る 「中核 代 理 店 制 度 」 の特 徴 と それ を 活 用 したP&G
の ビジネ ス シ ス テ ム に っ い て 簡 単 に 触 れ てお く。 第0に
、 チ ャネ ル 形 態 は販 売 会 社 を 軸 と した
花 王 と、 問 屋 に依 存 した ラ イ オ ン との 中 間 に位 置 す る と 指 摘 され る。 第 二 に 、 ビジ ネ ス シス テ
ム の基 本 理 念 と して卸 売 業 の 介 在 とい う相 違 は あ るが 、 米 国 の そ れ と は大 き な差 異 は ない よ う
に思 え る。 パ ー トナ ー と して の卸 売 業 を活 用 した ロ ジ ス テ ィ ックス の効 率 化 、 そ して カ デ ゴ リー
マ ネ ジ メ ン トを標 榜 す る 「ス ペ ー スマ ン」(棚 管 理 シ ステ ム)を 活 用 して小 売 業 の 直接 的 なマ ー
チ ャ ンダ イ シ ング へ の提 案 な どを 積 極 的 に 展 開 し よ う と して い る。 っ ま り 「プル 型 」 機 能 と
「プ ッシ ュ型 」 機 能 を並 存 させ た仕 組 み づ く り に努 め て い る の で あ る。
この 事 例 か らチ ャネ ル 構 築 に関 して 以下 の 点 を 指 摘 す る こと が で き る。 第 一 に 、 「プ ル 型 」
機 能 と 「プ ッシ ュ型 」 機 能 を並 存 させ た仕 組 み づ くり の視 点 で あ る。 第 二 に、 日本 で の事 例 に
み られ るよ うに 、 メー カー と小 売 業 と の 直接 取 引 だ け が 最 も優 れ た ビ ジネ ス シ ス テ ム の姿 で は
な く、 卸 売 業 を 介 在 させ た シ ス テ ム の 中 で取 引 の 効 率 化 を 図 る方 が チ ャネ ル 戦 略 上 有 効 な ケ ー
ス が あ る とい う こ とで あ る。 そ して第 三 に 、 上 記 の ケ ー ス に 関 して 「顔 の 見 え る取 引 」 、 つ ま
りパ ー トナ ー と して の 関 係 の 中 で 「共 通 の 目標 の 共 有 化 」 を 図 る こ との 重 要 性 が 示 唆 され る 。
第 四 と して 、米 国の ウ ォル マ ー トとP&Gの
事 例 にみ られ る よ う に、 戦 略 的 同盟 は両 社 間 に様 々
な メ リ ッ トを 与 え る反 面 い ず れ どこか で そ の 限 界 に 突 き 当た らざ るを 得 ない 危 険 な側 面 も 内 包
して い る こと で あ る。
3花
王 と ジ ャス コ の 生 販 統 合 シ ステ ム
花 王 と ジ ャス コの 生 販 統 合 シス テ ム は、 わ が 国 で のECR型
戦 略 提 携 の 第1号
と され る。 花
王 と ジ ャス コの提 携 の 契 機 は 、 提 携 以 前 か ら 「ビジ ネ ス 以 上 の付 き合 い が あ り親 類 み た い な 関
係 」 と 言わ れ る ぐ らい か な り親 密 な企 業 間 関 係 に あ った こ とが あ げ られ る。 また 、 花 王 の製 品
は ジ ャス コの 日用 雑 貨 部 門 で 約30%の
シ ェア を 占 め 、 当 製 品 カ テ ゴ リー 内 で は トップ の シ ェア
奈
252
良 大 学
紀
要
第24号
を 占 め て い る31)。提 携 の発 端 は 、 これ らの 状 況 を踏 ま え 情 報 の共 有 化 を べ 一 ス と した双 方 の コ
ス トダ ウ ンを 図 る こ と に 同意 した こ と が主 因 で あ る と言 わ れ る。 取 り組 み の 内 容 は 「ム リ ・ム
ラ ・ム ダの 排 除 を 第 一 義 的 に 目指 した シ ス テ ム づ く り」 で あ り 、 以下 の 取 り組 み が 計 画 され 実
践 さ れ て い る。
① 取引業務の革新
② 発注の革新
③ 棚割の革新
④ 商談の革新
⑤ 売 り場 の革 新
現 在 ま で 、 これ らの 取 り組 み は2段 階 に分 け て 進 め られ て い る。 第 一 段 階 は'93年10月 か ら
開 始 され たEDIの
導 入 で あ る。 っ ま り 「取 引 業 務 の 革 新 」 で 、 受 注 、 発 注 、納 品 、請 求 、 支
払 い 、商 品 情 報 、販 売 動 向 な どの 商 取 引 情 報 にっ い て 一 切 伝 票 を 使 わ な い 「ペ ーパ ー レス 化 」
の推 進 で あ る。 花 王 か ら ジ ャス コ に 出す 納 品 伝 票 だ け で も36万 枚 に も達 して い る と言 わ れ るだ
け に 合 理 化 効 果 は 大 き い32)。第 二 段 階 は 、'94年2月
か ら開 始 され た 。 店 別 単 品 販 売 量 のPO
S情 報 に基 づ き 花 王 が 店 別 在 庫 補 充 量 を算 出 し納 品 す る とい う 自動 発 注 シ ス テ ム へ の 取 り組 み
で あ る。 っ ま り 「発 注 の 革 新 」 で あ る。 現 在 、 適 正 な在 庫 量 や 納 品 数 量 に っ い て は 両 社 で 話 合
い なが ら ロ ジ ックの 調 整 を行 って い る が 、基 本 的 に は 花 王 が 自社 の コ ン ピ ュー タで 判 断 す る こ
とに な る。 また 「棚 割 の革 新 」 も実 施 さ れ 、 花 王 の 提 供 した 棚 割 シ ス テ ム を ベ ー ス に品 揃 え の
最 適 化 を 図 る こ とが 可 能 と な って い る 。 ジ ャス コは 従 来 、 年2回
の シス テ ムを 使 え ば理 論 的 に は週2回
国 にお け るECRの
の棚 割 変 更 を して いた が 、 こ
の 棚 割 変 更 が 可 能 に な る。 この 生 販 統 合 シ ス テ ム は 、 米
導 入 手 順 と 一致 した 経 緯 を た ど ってお り、0見 す る とP&Gと
トと の戦 略 的 同盟 と も よ く似 て い る。 しか し、P&Gと
ウ ォル マ ー
ウ ォル マ ー トとの 戦 略 的 同盟 は 自動 発
注 シ ス テ ム の成 熟 化 や カ テ ゴ リー の 利 益 保 証 関 係 に まで 進 展 して い るの に対 し、花 王 と ジ ャス
コの 関 係 は ま だ初 歩 的 段 階 で 止 ま っ てい る。 また この 生販 統合 シ ス テ ム に 対す る両 社 の期 待 は 、
「1社 で は合 理 化 に 限 界 が あ り取 引 先 まで 広 げ て コス トダ ウ ンに 取 り組 む こ と が大 切 」 とい う
共 通 の認 識 は持 って い る も の の 、 将 来 構 想 に な る と両 社 間 で 微 妙 に食 い違 って い る 。 そ の 端 的
な例 と して は共 同 開 発 へ の 取 り組 み 姿 勢 で あ り、 ジ ャス コは 肯 定 的 で あ る の に対 し花 王 は 否 定
的 で あ る。 さ らに この 生 販 統 合 シス テ ム は 、上 述 したECRと
同 様 の メ リ ッ トは 指 摘 され 得 る
が 以下 の よ う な課 題 も指 摘 され る。 第 一 は 、 ジ ャス コ側 に お い て 自動 発 注 が進 む こ と に よ り、
「顧 客 を 発 見 し理 解 す る能 力 」 が 欠 如 しな い か と い う危 惧 で あ る。 第 二 は 、 この シ ステ ム に よ
り花 王 との取 引 が シス テ ム化 され 最 適 化 され るほ ど、 ジ ャス コ側 に他社 と の取 引 にオ ペ レー シ ョ
ン上 の 支 障 が 生 じる可 能 性 が 高 い と い う こと で あ る。 第 三 に上 述 した よ う な両 社 の 志 向 の相 違
に つ い て どの 段 階 で 妥 協 を図 る のか と い う将 来構 想 の 問 題 で あ る。
最 後 に 、 この シス テ ム の構 築 を可 能 と して い る要 因 と して花 王 自身 も 指 摘 す る よ う に、 販 社
とい う卸 売 機 能 の 存 在 が あげ られ る。 この 点 に っ い て は、 日本 に お け るP&Gの
戦 略 的 同盟 で
も指 摘 した とお りで あ る。 ジ ャス コ側 も 他 社 メー カー(ラ
の取引 におい
て も、 卸 売 業 を活 用 したECRを
イ オ ンやP&G等)と
構 築 した い と言 う。 日本 に お け るメ ー カー と小 売 業 の新 た な
取 り組 み は 、 米 国 と は異 な った形 で の 統 合 シス テ ムが 展 開 され る可 能 性 は 高 い。 っ ま り 、 日本
のP&G、
イ トー ヨー カ堂 そ して セ ブ ン イ レブ ンが そ う で あ るよ う に、 既 に 日本 の流 通 制 度 に
深 く根付 い てい る卸売 業 を活 用 した統 合 シス テ ム を構 築 す る方 が 、 メー カー 、小 売 業 双 方 に と っ
て の メ リ ッ トが 大 き い の か も しれ ない 。 わ が 国で は 、 中 間 組織 の 原 理 を活 用 す る こ と が競 争 優
位 に結 び付 くこ と の傍 証 と して 理 解 で き る。 いず れ に して も、 メー カー と小 売 業 が こ の よ う な
太 田:マ
253
ー ケ テ ィ ン グ ・チ ャ ネ ル の 変 容
取 り組 み を模 索 し始 め て い る こ と は、 わ が 国 の 流 通 チ ャネ ルや 伝 統 的 系 列 シス テ ム の今 後 を 占
う上 で も大 き な 試金 石 と な る こ と は間 違 い な い 。
図表 一3代
松 下電器の
系列システ
ム
表 的企業 の チ ャネ ルシ ステ ム(ビ ジネ スシ ステ ムの視 角)(1)
代表 的 なチ ェー ンの
代表 的 チ ェー ンの
チ ェー ン組 織
チ
組織名(戦略的組織)
組織 原理(店 舗 数)
の 運 営 方 法
の
・MAST
・販売 会社LECが
(松下 工 一 ス ・シ ョ
ップ)
本 部 と な るV.C
的性格 。
(5000店)
・パ ナ ・チ ェ ー ン
(LEC発
1989か ら展 開)
・メ ンバ ー店 か ら選
・ssc
系列 システ
は な い)を 支 払 う 。
・販 促 、 経 営 指 導 、 顧 客
イ プ)
5372店
・自営 店:151店
(1973に シ ス テ ム 導
入 し1974に 第1号
を東 京 ・豊洲で オー
プ ン)
図表 一3代
役
割
・本部 と販売会社 が
松下電器 の
系列 システ
ム
部 と な るF.C的
性 格 。(400本
部
2000店)
系列シス テ
ム
セ ブンイ レ
ブ ンの シス
テム
・メ ンバ ー 間 で は 仕 入 値 は 同
じ。(平
る。r社 長 会 」(月1回)
等 性 の 原 則)
が最 高意思決定機関 。
セ ブンイ レプ ン本部
との関係
・加 盟 店:F
.C契
約。
・納 入 業 者:管
理シ
ステ ム
・FC料
と して 荒 利 益 額
の43%前 後(タ イ プ に
よ り異 な る)を 支 払 う。
・荒 利 益 額 最 低 保 証 制 度
(1900万 円)が あ る。
・OFC(オ
ペ レー シ ョ
ン ・フ ィー ル ド ・カ ウ
ン セ ラ ー)が 原 則 週2
回加盟店 を指導。
系 列店 の概 要
・大半 がMAST店(19000
同一であるために、
店)か ら構成
販売責任とスーパー ・自前で経営可能 な企業家精
・バ イザー という
神旺盛 な店舗 は参 加 して い
ない。
矛盾す る役割が並
・
指導力の面で系列
店か ら若
存(発 足当初 は分
干の不満あ り。
離)
・小売店主導型チ ェ
ー ン運営のため 、
三洋電機 の
・小売業 の知 を活か した組織
・荒利益 を分配する共存体制。
・本部 の強 力な指導力 と加盟
店 の 自律 性 を 活 か した シ ス
テム構築。
・加 盟 店 の 公 平 的取 扱 が 徹 底 。
盟(イ
料金
ニ等)
シ ャ ル ・コス トや 加
・徹 底 した ロ ス排 除 の シ ス テ
ム で 利 益 を追 求 。
表 的企 業 のチ ャネ ル シス テム(ビ ジネ ス シス テム の視 角)(2)
本部(販売会社)
の
限 ・
責任関係 な し)を 補う組織。
契 約 。 フ ィー と して 売
実 験 、1981
・FC店(4タ
テム
第一 義的。
・MAST会
の 弱 点(権
・本 部 店 とメ ンバ ー店 が
よ り本 格 的 に展 開)
ブンのシス
せ るための組織展開。
・売上 な どの店舗規模拡大 が
・メ ンバ ー 店 で 構 成 さ れ
(1972に
セ ブンイ レ
律で
ム)
(サ ン ヨ ー ・サ テ
ム
点
ラ イ ト ・シ ス テ
チ ェ ー ン)
・sss
ばれ た小売業が本
調
展開(事 業拡大の意欲等)。
・店主 の生涯 設計に重点 をお
上 の数%(2%程
度)
を本部店に支払 ・経 営
いた利益重 視の姿勢。
指導は本部店が実施 し、 ・メ ンバ ー店 間 で は 経 営 成 果
事務 局は販社。
が オ ー プ ンに さ れ る。
・商 品 は 各 店 仕 入 。
(サ ン ヨ ー ・バ ラ ・
三 洋電機の
Cが 契約。指 導料 とし
管 理の代行等 を実 施。
・商 品は各店仕入。
足後の
強
・松下 の理 念を地域 に浸透 さ
・パ ナ ・ シ ョ ッ プ とLE
て 一 定 の 料 金(一
ェ ー ン 組 織
販社 は事務局 と し
てのス タッフ的役
割 に専念。
(三洋の方針は月
1回 開催され るメ
ンバ ー主催の 「
社
長会 」で伝達)
系列店(加盟店)
系 列 店 の 自律 性 ・
の
意 欲 の 創 出 ・維 持
品
揃
え
・原則的に 自社製 品 ・中堅層以下 の系列店に
に限定 され る。 た
っい ては、経営 指導や
だ しグルー プ企業
業務代行等 による経営
の取扱は一部ある。
力向上 の支援 。
(例:松 下電工 の
製 品)
・自社 製 品 と関 連 製
・本 部 店 に な る と 、 メ ン
品
(ア シ ス ト ・ブ ラ
ン ド:40社200品
目)。
組 も多い。
・経 営 意欲 旺盛 な店 舗 が参 加 。 ・系 列 店 専 用 のSB
バ ー 店 の 売 上 げ増 加 等
に よ り、 フ ィー が増 大
す る仕組み。
・SBC(サ
ン ヨ ー ・バ ラ ・
チ ェー ン:6000店)店
の一
部 で 構 成 され て い る 。
・他 の 家 電 系 列 店 か らの 転 換
C重 点 商 品 あ り
(荒 利 益 率 を高 く
設 定)。
・本部 は原則的に仕
・業 種転 換 が 多 いが 、 脱 サ ラ
・本部 推奨5000品 目
入 ・在 庫機能を持
たず サー ビス(経
営指導 等)提 供 に
専念 。
・加盟店 利益の追求
が第 一義的。
組 も2∼3割
存在。
・リク ル ー ター が 加 盟 後 の 満
の内約30∞品 目を
加盟店 の商圏 に応
じ独 自に選択。
(PB商 品含む)
足 度 も 重 視 して 、加 盟 店 を
選別 。
・業 績 の 伸 び は 他CVSと
比
較 す る と、 か な り伸 び て い
る。
・発注業務は、加盟店 の
権限 と責任で行われ る。
・店 頭業務 に専念 できる
仕組み。
・運 営が軌道 に乗れ ば加
盟店夫婦の労働が軽 減
され る仕組み。
・新 製品の継続的投入 。
奈
254
良 大 学
Vお
紀
要
第24号
わ りに
最 後 に 、 上述 の ケ ー ス 分 析 を 踏 ま え なが らマ ー ケ テ ィ ン グチ ャネ ル が抱 え る現 代 的 問 題 にっ
い て検 討 す る 。 ま た これ らの 結 果 を通 して 、 チ ャネ ル構 築 に 向 け て の実 践 的 イ ン プ リケー シ ョ
ンと と も に若 干 の理 論 的 課 題 にっ い て も仮 説 的 に提 起 して お こ う。
1マ
ー ケ テ ィ ング チ ャネ ルの 現 代 的 問題
こ こ で の 主 張 点 は 、 チ ャネ ル 変 容 問題 は外 部 環 境 の 変 化 要 因 だ け に 帰 着 させ て 理 解 す るだ け
で は十 分 で な さ そ うだ と言 う こ とで あ る。 そ の 点 を 強 調 しチ ャネ ル の 現 代 的 問 題 を検 討 して お
こう 。 第 一 に 系 列 小 売 店 の 問 題 で あ る。 そ の 一 つ め は 、 松 下 の例 で み た よ うに 店 主 の 高 齢 化 と
「零 細 店 舗 に お け る家 商 分 裂 」 の進 行 が 既 得 権 益 集 団 化 と い う よ う な 悪 循 環 の 罠 に陥 っ て い る
こと で あ る 。 そ れ に 関 連 し付 け加 え る と 「価 格 破 壊 神 話 」 に 自滅 す る零 細 小 売 店 の 存 在 も指 摘
で き る か も しれ な い33)。っ ま り、 小 売 店 主 の 「や る気 」 の 阻 害 が 自生 的 悪 循 環 の 中 で 引 き起 さ
れ て い る 可 能 性 が あ る こ とで あ る。 二 っ め は 、 系 列 店 の 品 揃 え は 系 列 メー カー 製 品 に限 定 され
品揃 え が 狭 い こ とで あ る。 松 下 は グ ル ー プ 企 業 内 の 品 揃 えで 対 応 しよ う と して い るが 、三 洋 電
機 は さ ら に それ を 進 め 他 企 業 の 製 品(三
洋 で は 「ア シ ス ト商 品」 と呼 び 、 現 在 約40社 の200品
目を 取 り扱 う)を 品 揃 え に含 め系 列 小 売店 に 提 供 して い る。 三 っ め は 、 系 列 小 売 店 問 題 は あ る
種 の パ ラ ドクス が 存 在 す る こ と で あ る 。 自社 の コ ン トロ ー ル に適 す る 自律 性 の相 対 的 に低 い 系
列 小 売 店 の 存 在 が メー カ ー の成 長 に適 して い た が 、 現 在 の環 境 下 で は 系 列 小 売 店 は 自律 性 が低
い が 故 に メ ー カー の 志 向す る機 能 面 で の 分 権 的 シ ス テ ム に は対 応 し難 い。 ま さ に チ ャネ ル管 理
と 系 列 店 の 自律 性 に関 す るパ ラ ドク ス で あ る。 しか し品 揃 え の狭 さを 克 服 す るた め に他 社 製 品
を 提 供 す る こ と に も問 題 は あ る。 そ れ は 他 社 製 品 の品 揃 え を強 化 しす ぎれ ば、 チ ャネ ル統 制 が
困 難 に な るか らで あ る。 こ こ に も チ ャネ ル 管 理 と品 揃 え と のパ ラ ドク ス は発 注 す る。
第二 と して は系 列 シ ス テ ム の中 心 的 役 割 を果 たす 販 売会 社 の 問題 が あ げ られ る。 松 下 の場 合 、
実 需 に 支 え られ た 流 通 体 制 の確 立 ・整 備 を 目標 と して 「MTM」
と して 機 能 す る販 売 会 社 「LEC」
の 導 入 とそ の シ ス テ ム の 一 環
が 創 設 され た 。 そ の 中 で 「LEC」
は販 売 支 援 活 動 と マ ー
ケ テ ィン グ活 動 が 業 務 の 中心 と して位 置 づ け られ た 。 こ の動 き は 市 場 リス クへ の対 応 と 不確 実
性 吸 収 の メ カ ニ ズ ム の調 整 問 題 と して理 解 で き る。 お そ ら く この 問題 が 意 識 され 始 め た契 機 は 、
メ ー カー の 製 品 種 の増 大 と小 売 業 の 店 頭 品 揃 え の多 品 種 化 が 相 互 依 存 的 に繰 り返 され 、 増 幅 的
な商 品 の 多 様 化 と短 サ イ ク ル化 が 引 き起 され た こ と に あ る 。 多 品 種 化 は在 庫 リス ク を 「量 」 の
大 小 か ら色 ・柄 ・イ メ ー ジ と い う 「質 」 へ と変 質 させ る こ とで リス ク を増 大 させ る 。 短 サ イ ク
ル 化 は 需 給 斉 合 の時 間 的 側 面 で リス ク を増 大 させ る。 この結 果 、 独 立 した 利 益 責 任 を 追 求 す る
メー カー と販 売 会 社 は 、 お互 い に 陳 腐 化 す る在 庫 を市 場 へ と押 し込 む イ ンセ ンテ ィブ に駆 られ
る。 そ の こ とが リベ ー トの増 大 やDS(デ
ィス カ ウ ン ト ・ス トア)へ
の製 品 の横 流 しを 招 く。
この 悪 循 環 が 市 場 で の値 崩 れ を 引 き起 こ し、 系 列 メ ー カ ー と して は最 も危 惧 す る系 列 店 か らの
批 判 を招 く。 で は 、 なぜ 販 売 会 社 にそ の よ う な 問題 が生 じ るの か 。 一 っ め は 、系 列 販 売 会 社 は
メー カー の専 属 的 役 割 を担 うの で 、 一 般 卸 売 商 人 が 遂 行 す る中 間 在 庫 の持 ち合 い に よ る社 会 的
リス ク の低 減(リ
ス ク の 分散)を
十 分 に遂 行 で き な い こ とで あ る。 っ ま り基 本 的 に チ ャネ ル 内
で 不 確 実 性 に対 処 し リス クを 吸 収 しなけ れ ば な らな い 。 二 っ 目は 、 上 述 と 関連 す る が 、 系 列 小
売 店 の 「延 期 型 」 在 庫 投 資 活 動 の 反 作 用 で 生 じる リス ク を メ ー カー と販 売 会 社 が 吸 収 しな け れ
ば な らな い こと で あ る。 三 っ め は 「市 場 の有 界 性 」34)の低 下 が 指 摘 され るが 、 そ れ に か か わ る
中 間 組 織 メ カ ニ ズ ム変 容 の 問 題 で あ る。 中間 組 織 パ ラ ダイ ム に従 え ば 、 そ の特 徴 は あ る程 度 の
自律 性 や 独 自性 を発 揮 しなが ら環 境 変 化 に微 調 整 を繰 り返 しなが ら適 応 して き た こ とに あ る。
太 田:マ
255
ー ケ テ ィ ン グ ・チ ャネ ル の 変 容
も し 「市 場 の 有 界 性 」 が ドラ ス チ ック に 低 下 す れ ば 、 こ の メ カニ ズ ムが 十 分 に機 能 しな い こ と
が 考 え られ る。 っ ま り、 市 場 リス クへ の対 応 と不 確 実 性 吸 収 の メ カニ ズ ム の修 正 へ の対 応 が 求
め られ て い る の か も しれ な い。
しか し商 品 の 多 様 化 と短 サ イ クル 化 の 問題 は 必 ず しも外 的 環 境(例
変 化)だ
え ば 消 費 者 の購 買行 動 の
け に よ って 引 き起 され た も ので は な い と い う可 能 性 を改 め て確 認 して お く必 要 が あ ろ
う。 っ ま り、 チ ャネ ル シ ス テ ムの 各 メ ンバ ー 自か らが そ の 状 況 を相 互 依 存 的 に 招 き リス ク を 高
め た 側 面 も あ る と い う点 で あ る35)。比喩 的 に言 え ば 「外 な る敵 よ りも 内 な る敵 に揺 さ ぶ られ る
チ ャネ ル シ ス テ ム」 と で も表 現 で き よ うか 。
こ こで は チ ャネ ル の現 代 的 問 題 と して 、 数 多 くあ る 問題 の 中 で 、 チ ャネ ル 自 らが 社 会 的 相 互
依 存 関 係 の 中 で 変 容 の源 泉 を誘 発 して い る可 能 性 を強 調 して お きた い。
2チ
ャネ ル 問 題 につ い ての 理 論 的 ・実践 的 課 題
上 述 で は 、 系 列 小 売 店 と販 売 会 社 に焦 点 を 当 て チ ャネ ル変 容 の 現 代 的 問 題 をみ て き た。 そ こ
で の議 論 で 、 い くっ か の 実 践 的 イ ンプ リケ ー シ ョンが 示 唆 され た 。 こ こで は 、 と りわ け チ ャネ
ル メ ンバ ー(系 列 小 売 店 な ど)の
「や る気 」 の醸 成 と 「顧 客 を発 見 し理 解 す る能 力 」 を育 成 す
る仕 組 み づ く りの 重 要 性 を強 調 してお こ う。 それ は チ ャネ ル シ ス テ ム に お け る市 場 リス クへ の
対 応 と不 確 実 性 吸収 の 問 題 は 、 っ ま る と こ ろ市 場 と の 取 引 接 点 で あ る小 売店 の 役 割 に依 存 す る
と こ ろが 大 き い か らで あ る。 っ ま り、 小 売 段 階 の成 長 が 最 終 的 に不 確 実 性 を 吸 収 し市 場 リス ク
を低 減 す るか らで あ る。 そ して も う一 点 つ け加 え る と す れ ば チ ャネ ル シ ス テ ム 全 体 の バ ラ ンス
を考 慮 しなが ら系 列 小 売 店 が 分 権 化 した 機 能 を遂 行 で き るよ う な仕 組 み を 再 構 築 す る こ とで あ
る。 これ にっ い て は 、 い くっ か の 点 で 家 電 業 界 で は三 洋 電 機 、 流 通 業 界 で は セ ブ ンイ レブ ン の
ビジネ ス シ ス テ ムが 参 考 に な ろ う(図 表 一3)。
最 後 に、 理 論 的 課 題 にっ い て若 干 提 起 して お こ う。 第 一 に 、 チ ャネ ル 変 容 は外 的 な 環 境 要 因
だ け に規 定 され て い な い可 能 性 が あ る こ とで あ る。 こ の点 に っ い て は 前 述 した 統 制 の3つ の パ
ラ ダ イム を 含 め 既 存 のチ ャネ ル理 論 で は 、 そ の 理 由 を十 分 に 説 明 で き な い可 能 性 を示 唆 して い
る。 第 二 に 、 と りわ け 強 調 した 系 列 小 売 店 の 「や る気 」 の醸 成 の 問 題 で あ る。 経 済 的 イ ンセ ン
テ ィブ だ け で な く社 会 的 イ ンセ ンテ ィブ の 視 点 も含 め て一 層 研 究 して い く必 要 が あ ろ う。 第 三
に生 販 統 合 の 動 きを 理 論 的 に どの よ う に説 明す るか で あ る。 こ の 問題 に っ い て は 「リ レー シ ョ
ンシ ップ(Dwyer,F.R.etal.(1987))や
「信 頼 」(Anderleeb,S.S.(1992))を
た研 究 が 進 展 して い る。 しか し我 が 国で はPB(プ
視座 に し
ラ イベ ー ト)商 品 を 除 き、 今 だ わ が 国で は
米 国 の よ う に共 同 製 品 開 発 に まで 至 る本 格 的 な統 合 化 は み られ な い。 ま た 卸 売 業 を介 在 させ て
い る ケ ー ス も多 い。 この 点 に っ い ては 今 後 の展 開 を十 分 見 守 る必 要 が あ ろ う 。
これ らの理 論 的 課 題 は 上 述 の ケ ー ス 分 析 か ら仮 説 的 に 提 起 した も の で あ る 。 今 後 さ らに、 理
論 的 研 究 を深 め なが ら、 ま た 他 の 産 業 の ケ ー ス を分 析 す る こ と に よ り慎 重 に 吟 味 して い くこ と
が 必 要 で あ る。 今 後 の筆 者 の課 題 と した い 。
奈
256
良 大
学 紀
要
第24号
[注]
1)わ
が 国流 通 の構 造 や 取 引 内容 に焦 点 を 当 て 、そ の特 徴 ・特 性 にっ い て論 究 して い る優 れ た 研究 は数 多
い 。例 え ば 、 田 島(1984),久
宮 澤 ・高丘(1991),三
保 村 ・流 通 問題 研 究 会(1988),田
村(1992),丸
連 で は矢 部 ・山 田 ・上杉(1991)、
2)流
どが あ げ られ る。 また 、 取 引 と独 占禁 止 法 と の 関
多段 階 性 の時 系列 分 析 で は 太 田(1989)な
ど参 照 の こ と。
あ げ られ る。
ャネ ル 研 究 の 蓄 積 は 深 く こ こで 全 て を 紹 介 す る こ とは 困 難 で あ る。 さ しあた り、 本 稿 の 関 連 で 代 表
的 な研 究 を あ げ て お く。Alderson(1957),Mallen(1963),風
etal.(1989),石
4)ビ
輪 ・西 村(1991),
通 や 取 引 の構 造 変 化 を 指 摘す る も の は 、 ビジ ネ ス雑 誌 ・実 務 書 を 含 め 非 常 に多 い が ・ 最 近 の 優 れ た
研 究 の 一 つ と して は 加 藤(1995)が
3)チ
山(1992)な
村(1986),三
井(1983),石
ジネ ス シス テ ム(論)は
呂(1968),田
原(1982),Andaleeb(1992),高
村(1980),Stern
嶋(1994),崔(1995)。
、 米 国で は経 営 戦 略 論 の範 疇 で 様 々 な名 称 で呼 ばれ て き て い る。 しか し・
わ が 国で 明示 的 に提 唱 され しか も多 くの研 究 成 果 が 現 れ だ した の は ご く最 近 の こ とで あ る。 以下 で は 、
わ が 国で の先 駆 的 研 究 者 で あ る加 護 野(1993)の
概 念 を示 してお く。 ビジ ネ ス の世 界 に お け る競 争 に は
2種 類 の も のが あ り 、一 っ は個 々 の商 品 サ ー ビス レベ ルで の競 争 、 も う 一 っ は ビジ ネ ス シ ス テ ム レベ ル
で の競 争 で あ る。 後 者 は前 者 に比 べ 、 目立 ち に くい が 、 そ の優 位 は長 期 に わ た って持 続 す る傾 向 が あ る
と指 摘 す る。 ビジ ネ ス シ ス テ ム と は 、商 品 を 開発 し、顧 客 に届 け る た め の 能 力 と 仕 組 み で あ る 。 企業 内
部 の 分業 の仕 組み(っ
ま り組 織 編成)、 仕事 を行 うた めの 技術 や ノ ウハ ウ 、物 的 ・人 的 資源(経 営 資 源)、
企業 外 部 と の連 携 の仕 組 み(企 業 間 関係)、
生 産 や 物 流 さ らに 取 引 の 仕 組 み(ロ
ム や 流通 シ ス テ ム)、 人 々の物 の 考 え 方 や 見 方(パ ラ ダイ ム)な
ジス テ ィ ック ・シス テ
どか ら構 成 され て い るの が ビ ジネ ス シ
ス テ ム で あ る 。 あ る 分 野 で 事業 を 営 む た め の 総 合 力 だ とい って よ い とす る。
5)ケ
ー ス ・ス タ デ ィー の 有 効性 に っ い て は 、Yin(1984)を
参 照 の こ と6
6)本
稿 で は 紙 幅 の 制 約 で 、 と りわ け 第II、 第III章は そ の 内 容 を 大 幅 に割 愛 してい る。 そ のた め 、 網 羅 的
な紹 介 に な って い る点 は 否 め な い。 これ らの 章 に つ い て は 、他 の研 究 者 と共 同で 出版 予 定 の著 書 「生 産 ・
販 売 の ビ ジネ ス シス テ ム」(仮)の
7)風
呂(1968)は
中 で 詳 細 に 議 論 を 行 う予 定 で あ る。
以 下 の よ う に指 摘 す る。 製 造 業 者 を 操 作 主 体 と し販 売 業 者 を被 操 作 者 とす る 「行 動 シ
ス テ ム」 を製 造 業 者 の マ ー ケ テ ィン グ 目的 にそ う よ う に構 築 し維 持 す る 、 そ の よ う な行 動 シ ス テ ム を特
に 「マ ー ケ テ ィン グ ・チ ャネ ル ・シ ス テ ム」 と呼 ぶ 。
8)三
村 優 美 子(1992)『
現 代 日本 の流 通 シ ス テ ム』 等 参 照 。
9)Kotler,P.(1986),"PrinciplesofMarketing,"Prentice-Hal1,1986,p448.(村
『マ ー ケ テ ィン グ原 理 』,ダ
田昭治監修
イ ヤ モ ン ド社,1988)
10)そ れ ぞれ の タ イ プ の特 徴 にっ い て は 、例 え ば 以下 の文 献 を参 照 の こ と 。
McCammon,B.C.,Jr.(1970)"PerspectivesforDistributionProgramming,"in.L.P.Bucklin
(ed),VerticalMarketingSystems,ScottForesmanandCo.,p.43.;陶
(1994)『
11)3タ
山 計 介 ・高 橋 秀 夫 編 著
マ ー ケ テ ィ ング チ ャネ ル』,PP.58-60.
イ プの 分 類 に っ い て は 主 に 以下 の 文献 に依 拠 した 。 矢 作 ・小 川 ・吉 田(1993)、
編(1993)、
日本 経 済 新 聞 社
鈴 木 ・関 根 ・矢 作(1994)
12)流 通 在 荷 とは 、 個 別 生 産 企 業 に と って の 潜 在 的 販 売 額 の 大 き さに 対 応 した 商 業 企 業 の 購 入 額 を そ の 製
品 の 回 転 数 で 除 した 値 で 、 そ れ は そ の 製 品 が そ の 市 場 空 間 に お い て 常 に流 通 在 荷 と して 市 場 に と ど ま ら
なけ れ ば な ら ない 大 き さを 貨 幣 単 位 で 表 現 した もの で あ る。 っ ま り、 流 通 在 荷 の 大 き さは 、 当 該 寡 占企
業 の製 品 が 特 定 の市 場 で っ ね に滞 留 す る量 を貨 幣 単 位 で 示 した もの と い え る。(石
pp.218-224.)
原 武 政(1982),
太 田:マ
13)丸 山(1992)は
257
ー ケ テ ィ ン グ ・チ ャ ネ ル の 変 容
、 自動 車 ・家 電 ・医 薬 品 ・化 粧 品 の 分 野 で の 歴 史 的 経 緯 よ り、 「戦 後 の高 度 成 長 期 の
大 量 生 産=大 量 販 売 体 制 を 確 立 して い く過 程 に お い て 、 と りわ け 取 引 に関 わ る情 報 収 集 ・伝 達 上 の効 率
性 の 追 求 を 媒 介 に して 、 製 品 政 策 、 販 売 促 進 政 策 の 展 開 と連 動 す る形 で 、 流 通 系 列 化 が 進 め られ た 」 と
指 摘 す る。
14)こ の 問 題 は 商業 経 済 論 の枠 組 み の 中 で は 、 商業 資 本 排 除 の 問 題 と して 扱 わ れ る。 商 業 資 本 自立 化 の 展
開 に つ い て は森 下(1977)参
照 の こ と・ ま,た・ マ ー ケ テ ィ ング全 体 の活 動 と も関 連す るが 、風 呂(1968)
は 以 下 の よ う に指 摘 す る 。 マ ー ケ テ ィ ング活 動 は種hの 側 面 を 持 つ け れ ど も、 そ れ は 究 極 す る と ころ 、
そ う した(排 他 的独 占化 を意 図す る …筆 者 注)産 業 資 本 が そ の利 潤 目的 を 達 成 す るた め に 市 場 占拠 率 を
拡 大 ・維 持 し、 そ こ で独 占 的 な価 格 で製 品 の差 別 的価 値 実 現 を は か る こ とで あ った 。 そ の 意 味 で 、 商 人
依 存 か らの決 別 も 、 それ 自体 が 産 業 資 本 家 に と って の 目的 で は な く、 製 品 政 策 、価 格 政 策 、 広 告 そ の 他
販 売 促 進 の諸 政 策 が そ う で あ る よ う に 、市 場 競 争 に お け る 「差 別 的 有利 性 」 を 確保 し、 差 別 化 さ れ た 価
値 実 現 を図 る手 段 と して要 請 され た も の にほ か な らな い(p.142)。
15)情 報 プ ロ セ シ ン グ理 論 を適 用 した 研 究 の 中で わ が 国 の代 表 的 な も の と して は 、野 中(1974)、
(1980)、
16)も
石 井(1983)の
加 護野
研 究 が あげ られ る。
う一 つ の 「情 報 プ ロセ シ ン グ に よ る不 確 実 性 対 処 」 と は 、不 確 定 要 因 の動 き を察 知 し、 それ に対 応
して組 織 自体 の行 動 を変 え る こ と に よ っ て不 確 実 性 に対 処 す る方 法 で あ る。 こ の対 処 方 法 の基 本 は 、組
織 は不 確 実 性 発 生 主 体 が と り う る状 態 よ り も多 い行 動 代 替 案 を準 備 し、不 確 実 性 発 生 主 体 の行 動 を監 視
しっ づ け なけ れ ば な ら な い こ とで あ る。 っ ま り 「最 小 有 効 多 様 性 の原 理 」 に基 づ く行 動 原 理 が 必 要 と さ
れ る。
17)ウ
ィ リア ム ソ ンの 取 引 費 用 パ ラ ダ イ ム を流 通 に適 用 す る こと の批 判 もみ られ る。 例 え ば 、 風 呂(1978;
1987)な
ど参 照 の こ と。
18)丸 山 雅 祥(1992)参
照。
19)例 え ば 、 今 井 賢 一(1983)、
今 井 ・伊 丹 ・小 池(1982)、
今 井 ・伊 丹(1993)な
ど参 照 の こ と。
20)「 特 殊 化 した 資 源 の リス ク」 とは 、 特 殊 化 した 資 源 とは 流 通 を 完 全 に統 治 す る に は非 常 に大 き い コ ス
トが か か るだ け で な く、 そ の 投 資 は 他 に は 応 用 の 効 か ない 特 殊 化 した 蓄 積 に な る。 そ の こ との リス クで
あ る(石 井(1991))。
21)こ の 「中 間組 織 」 と して の 性格 を 持 った 流 通 シ ス テ ム が 、 わ が 国 の 流 通 系 列 化 の 特 徴 で あ る と多 くの
研 究 者 か ら指摘 され る 。
22)こ
の調 査 で は 「系 列 化 」 の 定義 に っ い て 次 の 内 容 を被 調 査 者 に 示 して い る。 「系 列 に 入 って い る」 と
は、 「
取 引先 と特 約 店 契 約 や 代 理 店 契 約 を結 ん だ り、 ま た は 取 引 先 か ら経 営 面 な どの 援 助 を 受 け る こ と
を い い ます 。 そ の かわ りに取 引先 の商 品 を優 先 的 に販 売 す る こ とを い い ます 」 と説 明 して い る。 この 定
義 内容 に曖 昧 性 が残 る懸 念 は あ る も の の 、全 体 的 な傾 向 を 一応 理解 す るに は 最 適 なデ ー タ源 で あ る と判
断 され る。 な お小 売 業 を対 象 と した 系 列 化 に 関す る設 問 は 、 第6回(平
成4年10月
調 査)か
ら初 め て 実
施 され て い る。 な お 、紙 幅 の制 約 で 一 部 分 析 資 料 の紹 介 は割 愛 し結 果 の 要 約 の み に 止 め て い る。 詳 細 は
別 稿 で紹 介 す る予 定 で あ る。
23)パ
ワ ー ・マ ー ケ テ ィン グ と は、 「マ ー ケ ッ ト ・パ ワ ー の形 成 を志 向 し、 そ れ を 強 化 す る方 向 で マ ー ケ
テ ィン グ行 為 を展 開 して い くこ とが 、 市 場 問題 の万 能 薬 に な る と い う 信 念 に基 づ くマ ー ケ テ ィ ン グ行 動
の体 系 」 の こ とで あ る(田 村(1994))。
そ の崩 壊 の兆 候 と して 、 「消 費者 の ブ ラ ン ド忠 誠 の 衰 退 」 、
「系 列 経 路 の崩 壊 」 、 「メー カー 希 望 小 売 価 格 を基 準 とす る建 値 制 の形 骸 化 」 を示 して い る 。
24)流 通 分野 に お け る延 期 の 概 念 の重 要 性 は オ ル ダー ス ン(Alderson,W.(1957))に
バ ック リ ン(Bucklin,L.P.(1966))が
また 、 最 近 で は 田村(1989)に
よ って 強 調 され 、
これ に投 機 の 概 念 を対 比 し理 論 的 拡 張 を行 った もの で あ る。
よ っ て この 概 念 が 再 評 価 され 、 市 場 戦 略 論 に こ の投 機 一 延 期 の原 理 を応
奈
258
用 した 。 田村(1989)に
良 大
学 紀
要
第24号
よ る と以 下 の よ う に説 明 され る。 生 産 ・流 通 シ ス テ ム にお け る在 庫 投 資 は、 一
般 に次 の一 連 の 決 定 を と も な っ て い る。 在 庫 す べ き製 品 形 態(製 品 の属 性)、 在 庫 の地 理 的 位 置(生 産
地 、中 間 地 、 小 売 店 頭 で の在 庫)、 在 庫 の先 物 性(市 場 危 険 を負 担 す る在 庫 の 比率)で
あ る。 「投 機 型
在 庫 投 資 」 は、 以 上 の決 定 を タ イ ミン グ上 で き るだ け早 い時 点 で行 う と い う も の で あ る。 す なわ ち 、製
品 形 態 の決 定 は 、生 産 段 階 で す べ て行 わ れ る。 在 庫 位 置 の決 定 にっ い て は 、 小売 段 階 で 欠 品 に よ る販 売
機 会 損 失 を発 生 させ な い と い う配 慮 を 中心 に行 わ れ る。 そ して 、市 場 危 険 を 負担 す る 先物 在 庫 の 比 率 が
大 き くな る。 一 方 、 これ に対 して 「延 期 型 在 庫 投 資 」 は次 の性 質 を持 っ 。 第 一 に 、 製 品形 態 の 全 体 的決
定 が 、製 品 の ソ フ ト化 に よ って流 通 段 階 に ま で延 期 され る 。っ ま り、 製 品 の 最 終 加 工 が 可 能 な限 り最 終
消 費地 に近 い と こ ろ ま で延 期 され る。 第 二 に 、在 庫 位 置 の決 定 に っ い て 延 期 が 図 られ る。 っ ま り、 最終
需 要 地 に近 い と こ ろ で の在 庫 量 は で き るだ け 削減 され る 。第 三 に 商 流 面 で も在 庫 投 資 の延 期 化 が 図 られ
る 。 っ ま り、生 産 ・流 通 の各 段 階 に お け る企 業 に お い て 、 市場 危 険 を 負 担 す る先 物 在庫 比 率 は 、低 下 す
る こ と に な る。 ま た 高 嶋(1994)も
、製 品 流通 の 投機 型 か ら延 期 型 へ の 動 きが み られ る と した 上 で 、 延
期 化 を も た ら した要 因 と して 、 「情 報 処 理 と 物 流 に お け る技 術 革 新 」 と 「消 費 者 需 要 の 不 確 実 化 」 とい
う2種 類 の環 境 変 化 を あ げ る 。
25)流 通 の 変 動 を 説 明す る この 「延 期 ・投機 」 の理 論 で は 、 原 理 的 に は 流 通 主 体 全 て が 延 期 型 行 動 を 採 用
し流 通 在 庫 を 皆 無 に す る こ とが 可 能 に な る と理 解 さ れ る。 しか し現 実 的 問 題 と して は 、 小 売 段 階 で 顕 著
な傾 向 と な って き た 「延 期 型 」 在 庫 投 資 活 動(に よ る リス ク転 嫁)を い か にチ ャネ ル 全 体 で 吸 収 す るか
は 大 き な課 題 で あ り、 この 解 消 に は 生 産 ・流 通 取 引 活 動 の 加 速 化 、 っ ま り 「速 度 の 経 済 性 」 を享 受 で き
る仕 組 み づ く りが 大 切 で あ る と指 摘 され る(田 村(1989))。
26)本 章 で の ケ ー ス 内 容 は 、 平 成6年 度 か ら平 成7年 度 にか け て 実 施 した イ ン タ ビ ュー 調 査 に負 う と こ ろ
が 大 き い。 当該 企 業 の 担 当 者 お よ び 関連 企 業 の 担 当 者 の 一 人 ひ と り のお 名 前 をあ げ る こと は で き な いが 、
こ こで 改 め て お 礼 を 申 し上 げ た い 。 なお 、 松 下 の 歴 史 的 変 遷 の 記 述 につ い て は、 矢 作(1993)、
(1993)、
下 谷(1994)の
加護野
各 文 献 も参 照 した 。
27)「 零 細 店 舗 に お け る家 商 分 裂 」 の 概 念 は 石 井(1994)に
よ り提 唱 され た 。 「家 商 分 裂 」 と は 、 「家 族
が す で に小 売 業 の 経 営 単 位 で な く な って しま って い る」 事 態 や 「商 売 と家 族 は別 だ 」 と意 識 され る事 態
の こ とを 言 う。 家 商 分 裂 した 家 族 は 商店 主 を再 生 産 す る家 族 とは な り得 な い こ とが 指 摘 さ れ る。 さ らに 、
店 主 の加 齢 化 が この 傾 向 に追 い打 ち をか け て い る と い う。 こ の傾 向 は 、商 人 に と って絶 好 の成 長 の チ ャ
ンス で あ った 消 費 社 会 の 到 来 が 家 商 分 裂 を引 き起 こす と い うパ ラ ドク ス で あ る と も指 摘 され る。 こ の点
は、 以 前 に比 べ 成 長 率 は 鈍 化 して い るが 他 の 小 売 業 態 に比 較 す る と以 前 高 い成 長 を遂 げ て い るCVSの
加 盟 店 の意 識 調 査 か ら も傍 証 され る(商 業 界(1994)『
コ ン ビニ エ ンス ス トア のす べ て』,P.37.参
照
の こ と)。
28)こ
こで は厳 密 な定 義 をせ ず に戦 略 的 同盟 と い う用 語 を用 い て い る。 いわ ば ビジ ネ ス雑 誌 等 で 一般 的 に
用 い られ て い る よ う な意 味 で 用 い てい る。 この 厳 密 な定 義 とそ の特 徴 にっ い て は 、例 え ば米 谷 雅 之(19
95)等 参 照 の こ と。
29)詳
し く は 、 三 輪 総 合 研 究 所(1994)『
海 外 卸 売 業 事 情 一 ア メ リ カ を 中 心 と して一 』 、"Efficient
ConsumerResponse(ECR):EnhancingValueintheGroceryIndustry",ECRCommittee,
1993.1.な
30)日
どを参 照 の こ と。
本 で も 先駆 的事 例 と して賞 賛 され る こ の 同盟 関係 も 、 現在 順 調 に継 続 さ れ て い るか に っ い て は 否 定
的 な 見解 も あ る。 原 因 の 一 っ は ウ ォル マ ー トがP&Gに
呂(1968)が
過 大 な要 求 を 迫 って い るか らだ と言 わ れ る。 風
指摘 す る 「商 人 の論 理 と メ ー カ ー の論 理 が対 立す る契機 」 に まで 到 達 して い る こ との 傍 証
と も み れ る が 、 この 点 に っ い て は 詳細 な検 討 が 必要 で あ る。
31)ジ
ャス コは ワ コー ル とも 戦略 的 同 盟 を 提携 して い る 。 イ ン タ ビ ュー 調 査 に よ る と、 平 成7年 度 に 第 一
太 田:マ
ー ケ テ ィ ン グ ・チ ャ ネ ル の 変 容
259
段 階 目の 取 り組 み一 自動 発 注 シ ス テ ム の稼 働 一 が ス ター トす る予 定 で あ る。 ワ コー ル の場 合 、 自動 発 注
の 対 象 と な るの は 「Wacoal」 ブ ラ ン ドで は な く量 販 店 向 け 「wing」 ブ ラ ン ドの商 品 で あ る。 しか しこ
こで 強 調 して お き た い こと は 、 花王 の ケ ー ス と 同様 に 、 ワ コー ル とは 長 年 の 取 引 実 績 が あ り、 か っ 製 品
カテ ゴ リー に 占 め る ワ コー ル の シ ェア が 高 い こ と で あ る。 この 事 実 は 、 「信 頼 」 の 概 念 と関 りチ ャネ ル
問題 を考 え る上 で重 要 な点 で あ る。
32)山
田泰 三(1994),PP.220-225.
33)例
え ば、 こ の現 象 は 「トイザ らス」 進 出 に伴 う橿 原 市 域 の地 元 玩 具 店 で もみ られ た 。 「トイ ザ らス 」
の価 格 破 壊 の 宣伝 が 余 り に も強 す ぎ た た め 、そ の前 評 判 を も って 進 出前 に地 元 玩 具 店5店 の 内4店 が転 ・
廃 業 の意 思 決 定 を した と言 う。 しか し、 地 元 関 係 者 か らの イ ン タ ビ ュー に よ る と 「トイ ザ らス」 の業 績
内容 や 価 格 内容 は 前 評 判 ほ どで も な く、 コ ンサ ル テ ィ ン グセ ー ル ス に重 点 をお く地 元 玩 具 店 の戦 略 の奏
功 な どで 「トイザ らス の 影 響 は そ れ ほ ど ない 」 と言 わ れ て い る。
34)「 市 場 の 有 界 性 」 とは 、 市 場 の 境 界 が 明 確 に 区 分 され る程 度 の こ と を意 味 す る(田 村(1994))。
35)こ の 問 題 は 本 当 に 消 費 の 多 様 化 が 進 展 して い るの か 、 また そ の 環 境 変 化 が 製 品 の 多 品 種 化 を招 い て い
るの か とい う点 が 議 論 に な る。 前 者 に っ い て は 以 下 の 様 に 考 え て い る。 「情 報 化 の 時 代 ほ ど売 れ 筋 商 品
は 集 中 す る」 と い う セ ブ ンイ レブ ンで の 事 実(例
ネ ス』1994.9.5.も
え ば 『週 間 ダ イ ヤ モ ン ド』1993.6.19.や
『日経 ビ ジ
参 照 の こと)、 そ して 実 際 メ ー カ ー で も味 の 素 や カ ゴメ の よ うに 大 幅 な製 品 の 絞 り
込 み が 始 め。
られ て い る(こ の 点 に っ い て は 『日経 ビジ ネ ス 』1994.5.2.や
『プ レジ デ ン ト』1994.11も
参照 の こ と)こ とな どか ら、製 品 種 の 増 大 は 必ず しも 消費 者 に支 持 され て い な か った こ とが 示 唆 され る。
この事 実 は消 費 の多 様 化 の概 念 を再 考 させ る も の で あ る。 ま た そ う で あ るな らば 、 必 ず し も消 費 の 多 様
化 が製 品 種 の増 大 を引 き起 こ した こ と に は な らな い。 こ こ で は 、 多 品種 化 が 消 費 の 多様 化 とい う客 観 的
世 界 の も とで 因 果 的 に形 成 され た こ と よ り も、 む しろ メ ー カ ー と小 売 業 が相 互依 存 的 に 自 らが織 り な し
た 製 品 市 場 観 の 「場 」 で 形 成 され た こ と を強 調 してお きた い。
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Summary
Anaccumulationofexcellentachievementexistsonthestudiesofstructuralcharacteristics
andhabitualtradepracticesofJapanesedistributionsystem,andthestudiesofmarketing
channels.Thetasks
.stillremain,howeveronthestudiesofelucidatingfactorsofchangesin,
andrebuildingof,channelsunderrecentchangesofbusinessenvironment.
Thispaper,therefore,attemptstoanalyze,centeredoncaseanalysisfrom"businesssystem"
viewpoint,mainlyforthepurposeofderivingpracticalimplicationsonthisissue.
Theresultshowsseveraltheoreticalandpracticalsubjects,listedinthefollowingasthe
majorfindings.First,fosteringsocialincentive-basedinterestofchannelmembersis
significant.Second,changesinchannelsmayoccurwithinthemselveswithaninteraction
process,notonlyaffectedbyexternalenvironment.Thesefindingsimplyanewperspective,
boththeoreticallyandpractically,oncurrentchannelstudies.