人や環境にも配慮する-(PDF) 『真宗』2016年3月号掲載

阿弥陀堂防蟻・防腐工事
│ 人や環境にも配慮する │
阿弥陀堂御修復工事の終盤と
ぼう ぎ
なる阿弥陀堂床下のシロアリ被
ぼう ふ
害 や 木 材 腐 朽 菌 に 対 す る 防 蟻・
防 腐 工 事 を 行 い ま し た。目 の 届
きにくい床下の木部の大半にお
いて健全な状態が保たれていま
し た が、一 部、シ ロ ア リ に よ る
損傷が見られました。
従 来、建 築 物 に お け る シ ロ ア
リ防止や腐朽防止のための対策
と し て は、一 般 住 宅 か ら 国 宝 文
化財修理まで有機溶剤系の防腐
剤 を 用 い る の が 一 般 的 で あ り、
御 影 堂 御 修 復 に お い て も、そ の
他の防腐剤の性能を確認した上
剤 が 用 い ら れ ま し た。し か し な
あるため雨にあたらない限り効
﹁ホウ酸﹂を主原料とするもので
的にホウ酸を含むものを食べる
は機能障害をさけるために本能
器官の腎臓を持たない昆虫たち
木部が燃えにくくなる難燃の効
こ の 防 蟻・防 腐 工 事 は さ ら に
で 、 従 来 型 の 有 機 溶 剤 系 の 防腐
が ら、そ れ ら は 薬 効 期 間 が 比 較
果 は 半 永 久 的 で、再 施 工 も 不 要
ことはありません。したがって、
腐において建物の長期保全性が
関 し て は、あ ら た め て 防 蟻・防
今回の阿弥陀堂御修復工事に
料や小学校では理科の実験にも
さ な い 安 全 な 鉱 物 で、目 薬 の 原
れ ま す が、人 体 に は 影 響 を 及 ぼ
策 の﹁ホ ウ 酸 団 子﹂が 思 い 出 さ
ホ ウ 酸 と い え ば、ゴ キ ブ リ 対
は、自然界の生き物と伝統木造
くようになり ま す 。 ホ ウ 酸 処 理
の落ち葉や枝を食べて生きてい
を 食 べ る こ と は な く な り、野 外
昆虫が柱や板などの木造建築物
ホウ酸が浸透することによって
寄与することが期待されます。
阿弥陀堂全体の長期保全性にも
り、床 下 部 の 保 全 の み な ら ず、
果も副次的に得られることもあ
をつくるものといえます。
建築物が共存するための境界線
的 短 く、定 期 的 な 保 守 が 必 要 で
となる点で画期的でした。
期待できるより良い防腐剤を探
使 用 さ れ て い ま す 。 ま た 、 排泄
ていました。
あることが課題として挙げられ
現在の阿弥陀堂の様子
し て い た と こ ろ、こ れ ま で の 有
機 溶 剤 系 と 異 な る、無 機 質 の ホ
ウ素系木材保存剤があることが
分 か り、そ れ が 従 来 の 溶 剤 の 課
題を解消するものであることが
判 明 し ま し た。こ の た め、京 都
府の文化財保護課や御修復の技
術 専 門 員 の 先 生 方 の 確 認 を 得 て、
阿弥陀堂でこの新たな溶剤を用
いることとなりました。
この溶剤は有機溶剤系と比較
して日本国内での実績がなく新
しいものでしたが、天然鉱物の
溶剤を噴射する作業の様子
阿弥陀堂の床下部
御
修
復
の
あ
ゆ
み
シロアリ被害箇所
56
2016年
(平成28年)3 月
真 宗
真 宗
57 2016年(平成28年)3 月