◆会員企業紹介号 ㈲ヒカリ扇(兵庫県) 明石だこを使った 新たな味を発信! 漬物から水産珍味へ――兵庫県明石市でブランドダコ「明石だこ」を使った水産加工品 を手がける㈲ヒカリ扇は、汎用(はんよう)性の高い明石だこの可能性をさらに引き出し、新 たな珍味商品としてさまざまなアイテムを展開する。製造現場ではコミュニケーションを重 視し、 「 一子相伝」だった加工技術の継承をよりシステマティックな仕組みで整え、気持ちを 込めた商品作りを進める。明石だこのように力強く新たな挑戦を続ける同社の取組みにつ いて小川大二代表取締役社長に聞いた。 スタートは漬物製造 先企業の協力で再開したが、平成13年(2001年) に現在の兵庫県明石市に移転した。 ㈲ヒカリ扇は、昭和60年(1985年)に神戸市東灘 漬 物 で は 、関 西・北 陸 地 方 を 中 心 に 、大 手 区で創業した。当初は漬物製造を行っていたが、10 C V S に 供 給 。刺 身と同 様 のカット加 工 を するこ 年後の阪神・淡路大震災で工場が被災。その後取引 とで、店 頭で 手 にとった 際 の 見 せ 方 にもこだ わ り。関 西 圏では 1日あたり3 , 0 0 0 パックを 生 産・ 出荷していた。 その後、重点強化分野を水産加工にシフトし、 平成20年(2008年)に明石だこを主原料にした 生 珍 味 商 材 の 製 造 に着 手し、平 成 2 6 年( 2 0 1 4 年)には海外への輸出も開始した。 現在はインターネット上に販売サイト 「明石扇」 を設置し、全国発送も手がけている。 明石の「地の利」を生かした タコ珍味 漬物技術と見せる技術を融合 明 石 市は、古 来タコとの馴 染 み が 深 い 土 地 柄 近い商品作りを心がけている」 だ。約2000年以上前にイイダコをとるためのたこ 同社のラインアップの中で特に人気が高いの つぼが発見されており、卵やだしなどを溶いた生 が、野沢菜と明石だこを合わせた「明石だこと野 地でタコを包み、丸くふんわりと焼いた「明石焼き 沢菜わさび和え」だ。ワサビの辛味成分であるアリ (玉子焼き)」は江戸時代から食べられていたとも ルイソチオシアネートはタコや野沢菜との相性が 「漬物の良さに珍味を合わせて、よりおかずに 言われる。現在、明石焼きの店舗は市内に約70軒 抜群で、食感の良さも好評を得ている。 あると言われる。また、かつて明石港と淡路島を 漬物から水産、珍味への事業シフトは、一見す 結んでいたフェリーも「たこフェリー」 として親しま ると大きな業態転換のように思われるが、 「アイテ れていたほどだ。 ムも含めてスムーズに移行することができた」と 兵 庫 県は北 海 道に次ぎ、タコ水 揚 げ 量は全 国 小川社長は振り返る。 第2位の2,637tで(「平成26年漁業・養殖業生 漬 物も珍 味も、基 幹を成すのは塩 漬 けの技 術 産統計」より)、中でもマダコの水揚げ量は日本一 だ。そのため設備をガラリと返る必要がなかった。 で、毎年約1,000tを誇る。 そこにCVSへの供給で培った「見せる技術」も加 「明石だこ」は明石沖で水揚げされるマダコ。明石 わり、明石だことキムチ、塩辛、タラチャンジャな 海峡で育ったマダコは、速い潮の流れに踏ん張るこ ど、彩り鮮やかな目を引く商品をそろえている。 とで足が太く短くなり、陸でも立って歩くほどの力強 さだ。 「 明石のタコは立って歩く と言われるほど筋 肉質」 (小川社長) で、良すぎるくらいの歯ごたえにな る。 また、明石の海は餌が豊富で身質も良い。 「仲間と一緒に ご飯を食べるのも仕事」 現在、日本は海外からタコ類を年間5万1,000t 昨今、惣菜を始め食品業界では人手不足・人材 輸入しており (「平成27年度水産白書」より)、国内 不足の課題は続いている。さらに人材の定着や技 で流 通するタコを原 材 料とした珍 味 類は外 国 産 術の向上など、製造現場への定着には各企業が がほとんどだ。そうした中で、ブランド種である明 取り組んでいる。 石だこをメーンにした珍味は珍しい。 小 川 社 長は「自分たちはパート社 員 主 体の会 「もともと、明石は京都に行商が赴くほど水産資 社」 と位置づけ、現場でのコミュニケーションの活 源が豊かだが、加工に特化した企業はあまり見ら 性化が重要であると考える。 れなかった」 と小川社長は語る。同社は漬物で磨 「製造の現場では、一つの作業自体の速さ・比 いた加工技術、そして「良く見せる」技術を生かし 重は変わらない。重要なのはある作業から別の作 て、タコ珍味商品の展開を始めた。 業へ移る間の時間」 そこで小川社長が重視するのが、作業以外の場 現在の漬物・珍味は和食での展開になるが、洋風 面での効率的なコミュニケーションだ。 「ご飯を一 メニュー の 拡 充 を 目 指し、明 石 だこを 使ったア 緒に食べることも仕事のうち」 と語るように、作業 ヒージョや パスタソースなどの 開 発を進めてい に関わらない場面でお互いを知ることが、スムー る。オードブルへの活用も提案し、和風と洋風をつ ズで効率的な製造現場を実現する。現在同社で なぐ新たな食べ方提案も進行中だ。 働くパ ート社 員 には 幼 い 子どもを持 つ 母 親も多 9.5兆円を超える惣菜市場の波の中で、同社は く、作業チーム内では比較的自由にシフトを組む 明石だこのようにしっかりと脚を張り、 さまざまな挑 ことができるが、それもそれぞれの家庭環境など 戦を続けていく。 を作業以外で知ることで可能になっている。 製造に関する技術も「一子相伝」のように職人 的な継承が根強い業界ではあるが、よりシステマ ティックに、新しく入ってくる社員でもすぐに取り 組めるような仕組み作りにも取り組んでいる。 チャネルとアイテム幅の拡大へ 小川社長が今後の最重要課題として、ネットサ イトの拡充によるB to C分野へのチャネル拡大を 掲げる。 「明石だこは汎用性の高い食材」でもあること から、機能性を推すアプローチも視野に入れる。 大手スポーツジムチェーンでは、筋力アップのト レーニングに有効なタンパク源として、タコ・イカ を勧めるという。健康面での訴求も十分可能性が ある。 また、アイテムの幅を広げることにも取り組む。 ㈲ヒカリ扇 本社所在地:兵庫県明石市藤江字三ツ池2029番地1 (明石市公設地方卸売市場内16号) 代 表 者:代表取締役社長 小川 大二 電 話:078-926-6117 事業内容:高品質海産加工品製造販売(一般量販店、 業務用商材、インターネット販売等) ホームページ:「明石扇」 http://www.hikari-ohgi.co.jp/
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