News Release 平 成 28年 6月 15日 財務省北陸財務局 平成27年度の地方公共団体に対する 財務状況等の把握結果について 北陸財務局では、公的資金である財政融資資金の貸し手としての立場から、借り手 である地方公共団体や地方公営企業の債務償還能力や資金繰り状況、資金の使用状況 や事業の成果等の実態を確認しています。また、社会構造の変化が財政運営や経営に どのような影響があるのか(内在するリスク)、どのような財政運営や経営が望まれ るのかといった点にも着目して分析を行い、健全な財政運営や経営により、将来にわ たり安定的・継続的な住民サービスの提供が行われるよう、具体的なアドバイスなど を行っています。 平成27年度は、北陸3県の市町村のうち11市町の財務状況と地方公営企業24 事業(下水道、病院)の経営状況を調査、分析し、アドバイスを行いました。 ※平成26年度は10市町の財務状況及び地方公営企業21事業を実施。 【参考】 財政融資とは、国債の一種である財投債の発行により調達された資金等を活用し、政策的に必要な 分野へ資金を供給するため、地方公共団体などに対して長期・固定・低利で行われる融資です。 ○地方公共団体の4つの財務指標(平成26年度決算) 財務指標 実質債務月収倍率(月) …ローンが給与の何倍か。 【実質債務/(行政経常収入/12)】 債務償還可能年数(年) 【実質債務/行政経常収支】 …ローンを返済するのに 何年かかるか。 積立金等月収倍率(月) …預貯金が給与の何倍か。 【積立金等/(行政経常収入/12)】 行政経常収支率 (%) 【行政経常収支/行政経常収入】 …ローンの返済に回せる お金はどのくらいか。 北陸3県 (51市町村) 全国 (全市町村) 16.0月 11.4月 9.2年 7.7年 3.8月 4.3月 14.3% 12.2% ○4つの財務指標と財務上の問題の関係 問題 債務高水準 積立低水準 収支低水準 水準 ①実質債務月収倍率24ヶ月以上 ②実質債務月収倍率18ヶ月以上かつ債務償還可能年数15年以上 ①積立金等月収倍率1ヶ月未満 ②積立金等月収倍率3ヶ月未満かつ行政経常収支率10%未満 ①行政経常収支率0%以下 ②行政経常収支率10%未満かつ債務償還可能年数15年以上 【お問い合わせ先】 北陸財務局 理財部融資課 手持、辻 ℡ 076-292-7857 北陸3県の市町村の財務状況 資料1 ~ 財務指標から見た団体の特徴 ~ 地域の課題 ■ 北陸3県の市町村は、比較的債務が高い水準にある。 【実質債務月収倍率(月)】 月収の何ヶ月分の 債務があるか? 債務 月収 人口減少による 下水道や病院などの 税収減、高齢化に伴う 公営企業の多くは料金 社会保障費の増大 (注)実質債務=地方債現在高+有利子負債相当額-積立金等 行政経常収入…税収、交付税、国(県)支出金など 収入で費用を賄えず、 実質的な赤字状態 財源が限られた中で、 類似施設の重複など、 公共施設の維持管理費 や今後の更新費用が 人口減少対策や 地方創生の取組みを どのように進めていくか ◎ 新幹線沿線団体の債務水準の動向 ➢ 平成27年3月開業済み停車駅を有する団体の債務は、高い水準で推移。 ➢ 沿線団体を中心に、新幹線開業・延伸効果を高める観点からも、活発な投資 が継続。 大きな負担 ➢ 過剰な投資は将来的なリスク要因になるものの、ニーズを捉えた適切な投資 により、新幹線効果の持続や、収入増加に繋がることが期待される。 【北陸3県の財政融資資金貸付残高(県含む)】 ☞ 今後 想定されるリスク ➢ 合併団体については、普通交付税の合併算定替の段階的縮減による収入減から、厳しい財政状況。 平成26年度末 20,075億円 ➢ 今後延伸予定の沿線自治体については、関連事業の本格化に伴い、地方債残高と償還額の増加が懸念。 石川県 11市8町 7,234億円 福井県 9市8町 5,030億円 ⇒ 債務償還能力や資金繰りの悪化 ➢ 開業・延伸効果の持続性によっては、地域全体への影響度合いが変化。 富山県 10市4町1村 7,810億円 ➢ 少子高齢化・人口減少が止まらない中にあって、地域における各団体の位置付け、方向性を明確にできず、 地域社会の安定的・継続的な行政サービスが維持できなくなるおそれ。 団体に内在するリスクを明らかにし、健全な財政運営に向けたアドバイス! 財務状況把握における主な事例 事例① ・ 大型事業により、地方債発行額・残高が増加。 ・ 合併後も、類似の公共施設を重複して保有。 ☞ 大型事業が財政に与える影響は?公共施設の再編は進んでいるか。 事例③ 資料2 ・ 財政健全化政策により、施策に充てる財源が乏しい。 ・ 立地上の弱みから、交流人口が少ない。 ☞ 実施すべき施策は絞られているか? 施策の効果はどうか。 【内在リスク】 【内在リスク】 ➢ 今後、地方債現在高の更なる増加と行政経常収支の悪化の見込 ⇒地方債の償還を行政収支で賄えないおそれ。 ➢ 近年の大型事業により、地方債現在高が増加に転じている。 ➢人口減少対策に充てる財源が乏しく、他市町との差別化が困難。 ➢ 廃止施設の解体撤去費、存続施設の定期的な維持更新費用の 負担が大きい。 ➢ 事業や施策の評価制度が構築されていない。 ◎ 旧市町村間の垣根を越え、公共施設・サービスの在り方について広 く住民と議論を行い、統廃合を円滑かつ積極的に進める必要がある。 ◎ 特徴を活かしたPRや広域連携など、弱みを強みに変える特色のあ る施策の実施と、事業の評価、住民ニーズへの対応が必要。 ・ 人口減少が他市町に比較して著しく進行している過疎団体。 ・ 様々な施策をいち早く取り組むものの、他団体から追随さ れ優位性が薄れる傾向。 ☞ 人口減少の財政面への影響は?行政サービス水準の維持は可能か。 事例② 事例④ ・ 各種交付金の減少に伴い、行政経常収入は減少傾向。 ・ 北陸新幹線延伸を契機とした観光振興が期待される。 ☞ 収入の減少を前提とした財政上の対応は?観光産業が補えるのか? 【内在リスク】 【内在リスク】 ➢ 人口減少に伴う過疎団体の増加等により、有利な財源の活用が 今後十分に行えなくなるおそれ。 ➢ 公共施設が多いことから維持管理費や物件費等が過大。 ➢ 社会保障費の増大に伴う財政の悪化、行政・医療・福祉サービス 水準の低下が生じるおそれ。 ◎ 新たな財源の活用を図りつつ、地域ブランドのPRを強化し、中長期 的な視点での行政サービス・業務の在り方を見直していくことが必要。 ➢ 魅力的な観光資源はあるものの、ブランド力に乏しく、新幹線延 伸効果の享受が限定的となるおそれ。 ◎ 抜本的な規模・範囲での支出削減を図り、単独ではなく地域のリー ダーとして広域連携による活性化・PRに努めることが期待される。 公営企業の経営状況における主な事例 下水道事例① ・一般会計からの繰入金の減額等により厳しい資金繰り ・管渠整備に当たっては投資採算性に留意 【経営上の問題点】 ➢一般会計の財源不足から繰入金が減額予定、基金の取崩しで対応。 ➢未整備地区全域を整備する方針。今後整備する区域は、世帯数が 少ない非効率な区域であり、厳しい資金繰りが長期化するおそれ。 ◎整備後の料金水準や一般会計の費用負担の在り方等を十分に分析・ 検討の上、投資採算性の観点に立った建設投資が必要。 下水道事例② ・料金水準が高いことから使用料の引き上げは困難 ・収益確保のため未接続世帯の解消が課題 病院事例① 資料3 ・国からの交付金が減額予定 ・地域医療推進による人材確保が課題 【経営上の問題点】 ➢ 交付金を財源とした一般会計からの補助金が減額となり、収益 面に影響を与えるおそれ。 ➢ 医師等が不足する中、地域医療の推進には更なる人材が必要。 ◎ 経営計画に掲げた経営改革を着実に進めるとともに、更なる人材確保 に向けて、臨床研修医の確保・定着に向けた環境づくりが必要。 病院事例② ・過疎地域で人口減少が急速に進行 ・人口動態等を踏まえた収支計画策定が課題 【経営上の問題点】 ➢未接続世帯への戸別訪問により、未接続理由の把握など実態調査 を実施しているが、接続を検討すると回答した世帯に対しフォロー アップ(再訪問等)が未実施。 【経営上の問題点】 ➢ 収支計画において、平成27年度以降、一律に同一金額が計上さ れるなど数値目標の検討が不十分。 ➢ 常勤医師不在の一部診療科では、数年で診療収入が半減。 ◎未接続世帯の解消のため、調査結果を活用した実効性ある啓発活動 が必要。 ◎収支計画策定にあたっては、将来見込みを十分検討し数値目標を設 定するとともに、医師の安定確保に向けた継続的な取組みが必要。 下水道事例③ ・一般会計からの繰入金に依存した経営 ・独立採算の原則を踏まえた料金改定の検討が必要 病院事例③ ・施設老朽化に伴う大規模整備により企業債残高が増加 ・償還財源の確保のため早期の黒字化が重要 【経営上の問題点】 ➢多額の企業債償還金が経営を圧迫しており、一般会計からの繰入 金に依存した厳しい経営状態。 ➢人口減少や節水意識の向上により料金収入が減少する見込み。 【経営上の問題点】 ➢ 今後、病床数減少による医業収益の減収に加えて、大規模整備 に伴う減価償却費の発生による医業費用の増加により、当面、 経常赤字が継続する見込み。 ◎料金改定の検討に当たっては独立採算の原則を踏まえた上で、一般 会計との間の適切な費用負担の在り方に留意。 ◎新病院改革プランには、早期の単年度黒字実現のため、数値目標 及び具体的取組みを掲げるとしており、その着実な実施が必要。
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