Fish Letter(フィッシュレター) 第11回 全国水産加工業協同組合連合会 代表理事会長 中山 嘉昭 ~最後の晩餐~ ◇あなたは人生最後の日、何を食べたいですか? こんな質問をされたら、なんと答えるだろうか。ネットで調べると、同じよう な質問をしているサイトが多くある。そして、そのほとんどで同じ結果が出てい る。 「第1位 寿司」!! 「若い人は魚より肉が好きだ」ということは、今や常識となっている。しかし、 若者は魚が嫌いなわけではない。事実、多くの人が最後の晩餐に寿司を選んでい るのだ。美味しい魚を出す飲食店には予約がたくさん入り、回転寿司店には行列 ができる。子供が寿司を美味しそうに頬張っている姿は業界の者として安心する 光景だし、子供も魚が好きなのだと実感できる。さらに、魚が健康に良いという 事実は、親も学校の栄養士も知っている。 今、世界もその魚の魅力に気が付いている。和食が世界に広がると同時に、急 速に魚食も普及していった。それにもかかわらず、日本では魚離れが進んでいる 現状がある。 理由は肉よりも調理に手間がかかり、値段も高く感じるからだ。不景気などの 影響により年収300万円時代とされて久しい今、共働きの家庭がさらに増えて いる。仕事から帰ってきて、座る間もなく夕飯の支度。他にもやることは山積み。 手間のかからない肉料理が家庭に増えるのも頷ける。 そこで、水産加工食品の出番である。手間がかからず、すぐに食卓に出せる。 子供の成長を考えれば、魚と肉をバランスよく食べさせたいものだ。水産加工 食品の利用により、仕事帰りの疲れた親でも、子供の健康を気遣うことができ る。さらに高齢化社会を迎えている我が国では、認知症予防という観点からも、 水産加工食品が一助になる可能性もあるのだ。 ◇水産加工多種多品目の世界 世界にはおよそ28,000種もの魚が生息し、日本近海にもその内約4,200種 が生息しているとされる。このうち、どの程度の数の魚が食用として利用でき るかはわからないが、日本人が市場や量販店などで購入し日常的に食している 魚種はたった30~40種だという。冷凍技術や加工技術が進歩したこの時代、 いわゆる未利用魚を使った美味しい加工品の開発はもはや避けては通れない。 実際に当連合会で毎年開催される品質審査会では300を超える新商品のうち、 未利用魚を含む新魚種での開発商品も少なくない。スーパーで売ってなくても ネット通販で見つかるかもしれない、まずは興味を持ってほしい。 魚の可能性はまだまだ未知数だ。日本という、魚食文化のある島国に生まれ たのだから、数十種類の魚の味しか知らずにいるのはもったいない。 我々には、更なる努力をして多くの味を安心・安全・手軽に提供する責任が ある。 「あなたは人生最後の日、何を食べたいですか?」 大切な思い出と共によみがえる一品が、魚料理であってほしいと願う。 (2016年6月7日掲載) ※コラムの内容は執筆者個人の意見を表すものであり、水産庁や 「魚の国のしあわせ」プロジェクトの見解を示すものではありません。 ※本コンテンツの無断転載等はご遠慮願います。
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