[25]乳がんと検査について

けんさの豆知識
[25]乳がんと検査について
2006 年 4 月発行
2010 年 12 月改訂
急増する乳がん
日本では女性のがん罹患率第1位が乳がんです。年間約 45,000 人が乳がんにかかって
いて、これは日本女性の25人に1人の割合です。また30歳~64歳の女性の死亡原
因第1位も乳がんです。そして年間約 11,000 人が亡くなられています。
早期発見が重要
乳がんを早期に発見することで10年生存率が高くなります。
ステージ0
ステージⅠ
ステージⅡ
10 年生存率
95.1%
89.1%
非浸潤がん、乳管や小葉の中にとどまった状態
直径2cm以下、リンパ節転移なし
直径2cm以下、リンパ節転移あり
78.6%
又は直径2~5cm
ステージⅢa 直径5cm以下、リンパ節転移ありしかもリンパ節が癒
着した周囲の臓器に固定している状態
58.7%
又は直径5cm以上
ステージⅢb しこりが肋骨や胸筋に固定しているか、皮膚にしこりが
顔を出したり皮膚が崩れたりむくんでいる状態
52.0%
又は鎖骨下の上下・わきの下リンパ節転移あり
ステージⅣ
骨、肺、肝臓、脳などの臓器に転移している
25.5%
日本乳癌学会「全国乳がん患者登録調査報告第27号」2000 年
早期発見のためには
月に1回の自己検診と年に1回の画像診断による検診が推奨されています
乳腺疾患の診断・検査
[①問診・視診・触診]
乳房の変形・乳頭および乳輪の異常・乳汁
分泌の有無・皮膚のひきつれなどがないか
を確認します。さらに実際に触って、しこ
りの有無を調べます。また両乳房だけでな
くリンパ節のしこりの有無についても調べ
ます。
[②マンモグラフィー・超音波]
それぞれ特徴があり両者が必要な場合、片
方だけで診断できる場合もあります。マン
モグラフィーは、レントゲン撮影です。乳
房を2枚の板で挟んで固定し撮影します。
小さなしこりや早期乳がんのサインである
石灰化(がんの一部が壊死してそこにカル
シウムが沈着した状態)を写し出すことが
できます。しかし、若年者や乳腺症の方な
どは乳腺の濃度が濃厚であるために十分な
評価ができない場合があります。超音波検
査はゼリーを局所につけてプローブ(探触
子)を乳房に直接のせ超音波を出して乳房の断面図を画面に写し出します。痛みや、被
曝を伴うことなく詳細な乳腺の構造を写し出し観察できます。特に大変小さなしこりに
ついてはむしろ超音波検査の方がよく検出される傾向にありますが石灰化はマンモグ
ラフィーには及びません。
[③穿刺吸引細胞診・針生検/④切除生検]
しこりに細い注射針を刺して細胞を吸いとって、がん細胞かどうかを調べます。さら
に多くの情報を得るために太い針を刺して、しこりの一部の組織を採取することもあり
ます(針生検)。これらにより最終診断となります。
乳腺疾患と超音波検査
乳腺疾患には良性のものと悪性のものがあります。ここでは代表的な疾患について典
型的な超音波画像と合わせ、説明していきます。
[正常乳房]
乳房は皮膚、乳腺、脂肪組織、結
合組織からなり、それらの中には血
管、リンパ管、神経が存在する。成
人女性では、乳腺は15~20個の
乳腺葉からなり、さらにこれらは多
数の小葉にわかれる。各小葉に1本
ずつみられる導管を乳管とよび、乳
頭に開口する。乳腺はクーパー靭帯
(結合組織)によってテント上に吊り
上げられた形をとる。加齢とともに、特に閉経後の女性の乳房では乳腺組織は退縮・減
少し、脂肪組織が増量する。
[良性疾患]
①乳腺症
女性ホルモン(エトスロゲン)の過剰により生じる現象で、30歳後半~50歳くら
いまでの女性に多い病気。その症状は、両側ともなることが多く、痛みや張り感、小さ
な粒状のしこりを感じる。しこりを触れるものの約半数が乳腺症と言われている。痛み
の弱いうちは特に治療は必要ないが、痛みが強い場合はホルモン剤や痛み止めが処方さ
れる。超音波画像では乳腺層が豹紋状(豹柄)に見える。しかし、超音波画像で豹紋状
に見えただけでは乳腺症と診断されない。
②のう胞
乳管の拡張によるものが大部分であり、内容物は軽度黄色がかった透明なものから、
褐色の混濁したものまでさまざま。しばしば多発する。経過観察のポイントは数の増減
と大きさの変化、内容物の観察。触知できるものは表面平滑で可動性を有する腫瘤とし
て触れる。超音波画像では円形又は楕円形ときに分葉状で境界明瞭、辺縁平滑、内部エ
コーを認めない(黒く見える)。
③線維腺腫
20歳~30歳代の若い女性に最も多く見られる、良性の腫瘤で痛みはなく、クリ
クリ動く硬いしこりが特徴。また、線維腺腫に似ているが急速に増大する葉状腫瘍とい
うものがあり、悪性化する可能性があるため手術で除去する必要がある。超音波画像で
は円形又は楕円形、辺縁平滑、内部は均一で充実性である。
[悪性疾患]
●乳がん
乳腺に発生する悪性腫瘍。硬いしこり、乳頭からの分泌物、皮膚のひきつれ・変形乳
頭の陥没などの症状がみられる。その他に、しこりは作らず乳頭が赤くなるタイプ(パ
ジェット病)もある。まれに男性もかかることがある。乳がんにはさまざまなタイプが
あるので今回の超音波画像は乳頭腺管癌を記載した。形は不整、境界不明瞭、内部不均
一、しばしば石灰化を認める。