Ⅳ構造(20.金属材料) ①重要事項の解説 「20.金属材料」で2回以上繰り返し出題のある重要項目(H8~H27)は、下記の通りである。 (1)鋼材の応力度・ひずみ度 ※過去に選択肢問題として14回出題有 ・下図は、鋼材に引張力が生じた場合の応力度とひずみ度の関係を示したものである。 d点の応力度は引張強さ b点は降伏点 e点は破断点 c点の応力度は下降伏点 a点は比例限 ・「降伏点/引張強さ」を降伏比という(a/d=降伏比)。 ・降伏比が小さいことは、a降伏からd引張強さまで達する余裕が大きく、塑性変形性能(靱性)が高いことを示す。 ⇒降伏比の小さい鋼材を用いた鉄骨部材は、塑性変形能力が大きいので、耐震性能が高い。 ・降伏点240N/mm2、引張強さ420N/mm2である鋼材の降伏比は、240/420=0.57である。 ・鋼材の応力度とひずみ度の関係は、弾性限度を過ぎて最初の降伏点は上降伏点であり、その後、下降伏点に至る。 (2)建築構造用圧延鋼材(SN材) ※過去に選択肢問題として12回出題有 ・SN490B(板厚12mm以上)は、引張強さの下限値が490N/mm2である。 ・SN490BとSN490C材は、「降伏点又は耐力」の下限値だけでなく、上限値も規定されている。 ・SN490BとSN490C材は、溶接性が保証されている。 ・SN490C材は、板厚方向に対する引張力に対する性能が確保されている。 ⇒板厚12mm以上のSN490B材は、降伏点の下限値だけでなく上限値も規定されている。 ⇒SS材及びSM材は、降伏点の下限値は規定されているが、上限値は規定されていない。 ⇒建築構造用圧延鋼材SN400Bは、降伏後の変形能力と溶接性が保証された鋼材である。 (3)ステンレス鋼 ※過去に選択肢問題として11回出題有 ・ステンレス鋼SUS304の「応力度-ひずみ度曲線」には、明確な降伏点がない。 ・ステンレス鋼材SUS304Aは、降伏点が明確でないので、その基準強度は、0.1%オフセット耐力を採用している。 ・降伏比とヤング係数は、普通鋼であるSS400材より小さいが、線膨張係数は大きい。 ・摩擦面に特殊な加工を施すことによって、高力ボルト摩擦接合を用いることができる。 ・他のステンレス鋼に比べて、構造骨組とするために不可欠な溶接性に優れている。 ・建築構造用ステンレス鋼材に定めるSUS304Aの基準強度は、板厚が40mm以下のS N400B と同じである。 (4)シャルピー衝撃値 ※過去に選択肢問題として8回出題有 ・鋼材は、シャルピー衝撃値が大きくなると、脆性破壊を起こし難くなる。 ・炭素鋼のシャルピー衝撃試験で、ある温度以下になると吸収エネルギーが急激に低下し、脆性破壊を起こしやすい。 ・シャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが大きい鋼材を使用することは、溶接部の脆性的破壊を防ぐのに有利である。 ・建築構造用圧延鋼材(SN材)のB、Cの鋼種には、シャルピー吸収エネルギーの規定値があるが、A種にはない。 ・炭素鋼は、硫黄の含有量が少ないほど、シャルピー吸収エネルギー及び板厚方向の絞り値は大きくなる。 (5)炭素含有量 ※過去に選択肢問題として5回出題有 ・鋼の製造において、炭素を増やすと、引張強さは増すが、粘り強さは低下する。 ・鋼材は、炭素含有量が多くなるほど、破断に至るまでの伸びが小さくなる。 ・建築構造用TMCP鋼は、炭素当量が低減されているので、溶接性が向上している。 ・鋼材に含まれる炭素量が増加すると、鋼材の強度・硬度は増加するが、靱性・溶接性は低下する。 (6)ヤング係数 ※過去に選択肢問題として5回出題有 ・建築構造用ステンレス鋼(SUS 304)のヤング係数は、アルミニウム合金に比ベて大きい。 ・アルミニウムのヤング係数は、一般構造用圧延鋼材の1/3程度である。 ・ステンレス鋼材SUS304Aのヤング係数はSN400Bより小さいが、基準強度は板厚が40mm以下のSN400Bと同じである。 ・鋼材のヤング係数及びせん断弾性係数は、常温で、それぞれ2.05×105N/mm2、0.79×105N/mm2程度である。 (7)圧延鋼材 ※過去に選択肢問題として4回出題有 ・同じ鋼塊から圧延された鋼材の降伏点は、板厚の薄いものより板厚の厚いもののほうが低くなる。 (8)焼入れ焼戻し ※過去に選択肢問題として3回出題有 ・焼入れされた鋼材は、強度・硬度は増大するが、靭性は低下する。 ・調質鋼は、製造工程において焼入れ焼戻しの熱処理を行った鋼材である。 (9)リンと硫黄 ※過去に選択肢問題として2回出題有 ・鋼材に含まれる化学成分におけるP(リン)やS(硫黄)は、鋼材の靱性に悪影響を与える。
© Copyright 2024 ExpyDoc