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論文内容要旨
熱中症重症度スコアと予後の関係
ICU と CCU
38 巻
2号
411-417 頁
2014 年
外科系
救急医学専攻
神田
潤
【背景】
熱中症重症度分類では、軽度意識障害のみの患者と多臓器不全を呈した
超重症患者を、Ⅲ度として同様に分類しており、重症熱中症患者をさらに
精密に分類する必要性があると思われる。重症熱中症患者をさらに精密に
分類する基準として、中枢神経障害、肝障害、腎障害、凝固障害の程度に
応じた新たな評価法を熱中症重症度スコア(以下重症度スコア)と定義し
た。
【方法】
2006 年(529 例)、2008 年(913 例)、2010 年(1785 例)に日本救急医学
会が実施した Heatstroke STUDY のデータ(合計 3223 例)を利用して、重
症度スコアと予後(生存・死亡、後遺症の有無)との関連について、以下
の 2 点を検討した。第一に、重症度スコアの各スコアの予後良好と死亡・
後遺症の分布については、分割表にまとめ、調整済み残差を用いたχ2 乗
検定を用いて統計学的に解析した。第二には、重症度スコアの各スコアの
生存分析については、Kaplan-Meier 法を用いて、Log Rank 検定、Bleslow
検定、Tarone-Ware 検定を行い、生存関数として作図した。
【結果】
重症度スコアの各スコアの予後良好と死亡・後遺症の分布については、
3 点で約 40%、
4 点と 5 点で約 75%、
6 点でほぼ全例で予後が悪化しており、
統計学的には重症度スコア 3 点以上で死亡・後遺症が有意に増えていた。
重症度スコアの各スコアの生存分析については、重症度スコアの増加に伴
い死亡率が増加する傾向にあり、特に 4 点以上から死亡例が有意に増加す
ることが示された。
【考察】
従来の熱中症重症度分類でⅢ度と分類されていた重症熱中症は、本研究
における重症度スコア 1 点以上に該当している。本検討での解析結果より、
重症度スコア 4 点以上を重症と定義すれば、Ⅲ度を比較的重症(1-3 点)
と超重症(4-6 点)に分類することができる。後者に該当した重症熱中症
患者について迅速な予後予測が可能となるため、熱中症重症度分類より重
症度スコアの方が、重症熱中症患者の予後を鋭敏に反映している。Ⅲ度に
該当する重症患者の中でも、重症度スコアにより超重症(4-6 点)と迅速
に判断できれば、一般病院の救急外来や診療所から、救命救急センターや
集中治療室への移動を行い、迅速な高度救命処置の導入が可能になると期
待される。また、熱中症の重症度を的確に定義することで、重症度に応じ
た各種治療や管理についての臨床研究に重症度スコアが有用となる可能
性がある。
【結語】日本救急医学会が 2006 年、2008 年、
2010 年に実施した Heatstroke
STUDY 合計 3223 例を用いて、熱中症重症度スコアと予後の関係について
比較検討した。重症度スコアの上昇とともに予後が有意に悪化しており、
特に 4 点以上で悪化する傾向を認めた。今後、重症度スコアが重症熱中症
の迅速な診療や臨床研究に有用となる可能性が示唆された。