2016年法科大学院全国統一適性試験 第2回 講評

2016年法科大学院全国統一適性試験
第2回 講評
2016 年 6 月 12 日
LEC 専任講師 永野康次
1.試験全体について
(1)総説
今回の試験については,比較的オーソドックスな問題が中心となりました。特に第
1部で,過去問を解いていれば解きやすい問題が多く見られ,奇をてらったような
出題は見られませんでした。そのため,事前準備を十分に行っていた受験生と、そ
うでない受験生とで大きな差が生じたと思われます。なお,第1回試験と比べた難
易度としては第1部がほぼ同様,第2部が難化,第3部がやや易化となっています。
繰り返しになりますが,第1部では過去問で出題されていた問題とほぼ同じ出題も
目立ちましたので,そうした平易な問題を取りこぼさないようにすることが今回の
試験のポイントといえます。
(2)出題内容
前回と同様,1部~3部のすべてにおいて,従来の過去問の傾向が維持されました。
また、各部を通じて、奇をてらうような出題はなく,基本に忠実な問題がほとんど
を占めます。前回と同様,正統派の出題が、そのままの形でブラッシュアップされ
たようなものといえます。
第1部はこれまでの過去問さえ解いていれば容易に正解を導ける問題が多くみら
れました。前回とは異なり,形式論理と資料解釈のウエイトが重く,考えさせるよ
うな問題は見られませんでした。事前準備が極めて容易な問題だったといえますの
で,過去問を精査した受験生とそうでない受験生とで差が生じやすかったと思われ
ます。また、第2部については、第1回に比べて考える問題が多く,単純作業だけ
で解答がでる問題は大きく減少しました。ただ,各大問の前半はそれほど時間をか
けずとも解けるものとなっていますので,セオリー通り,すべての大問について,
前半部分だけは必ず正答することが必要だったといえます。なお,第3部について
は,前回とほぼ同様の傾向で,難易度がやや下がったものとなります。全体的に読
みやすい問題文,かつ解きやすい小問が多く,特にミスを誘うような出題も見られ
なかったため、解きやすさを感じた受験生も多かったでしょう。
(3)難易度・傾向等について
第1部:比較的平易・基礎的な問題が多く見られました。形式論理の知識を応用す
ることで容易に解ける問題(主に問題3,5,11,15)や、資料解釈についての理
解が利用できる問題(主に問題2,6,17,20)が例年通り出題されました。また,
典型的な論理関係の問題(主に問題8,22)の出題も見られました。内容としては
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いずれも基礎的なもので,過去問演習を行なっていればほぼ全問正解できたと
いえます。
第2部:2010 年の日弁連型と近しい出題です。特別な着眼点や解法は何ら要求さ
れてはいませんが,基本的な考える力が問われ,解きなれない受験生にとっては難
問と感じられたと思います。そういった意味で,多くの受験生が時間不足に陥った
と予想されます。
時間管理のため,
「各大問 10 分」と決めて解答にあたることが最善の解法といえま
す。講義などで時間管理を習得していた受験生であれば,最低限度クリアすべき点
数は得られたといえます。
第3部:従来の日弁連型とほぼ同じ出題です。問題文の量・傾向ともにそう大きな
変化はありませんでした。ただ,問題2については,設問文が非常に長いため,じ
っくりと読んでしまった受験生は間違いなく時間不足に陥ったと思われます。
(4)小括
第1部~第3部までを通して,
「過去問で問われたことを身につけているか否か」が,
重要な要素となった内容でした。また,特に時間管理の重要性が増したといえます。
2.各部の内容について
(1)第1部:論理的判断力を測る問題(40 分)
①出題形式
大問数:24 問
小問数:24
②全体の傾向
第1回試験と,大問・小問数ともに同じです。この出題数はもはや定着したといえ
ます。また,傾向としても,従来どおりの,資料解釈を知っていれば解きやすい問
題(主に問題2,6,17,20)
,形式論理の影響が強い問題(主に問題3,5,11,
15)も見られました。
なお,全体の傾向ですが,前回同様,2010 年度の問題 16 や,2008 年度の問題 15
のような,比較的長い文章を読ませる問題も見られたものの,全体の出題傾向とし
ては,基本的な論理力を問うものが中心となりました。また,各問題ごとの難易度
の差が縮小し,時間管理がやりやすくなったのも,今回の特徴です。
客観的な難易度としては,前回の試験よりやや難化したものの,過去問の焼き直し
のような問題も見られたため,対策を行った受験生は容易に解けたといえます。そ
の意味で,それほど平均点に差が生じないと考えられます。なお,問題2は,これ
までの過去問でほとんど同じ問題が繰り返し出題されていますので,絶対に間違え
てはならないものです。
③特徴的な問題
問題2:これまでの過去問で繰り返しほとんど同じ問題が出ていますので,絶対に
間違えてはならないものです。
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問題5:形式論理の問題ですが,非常に難易度が低いものとなっています。解法マ
スター編の講義を受講しただけでも容易に解けます。
問題7:与えられたルールに当てはめて答えを導く基本的な問題です。過去の大学
入試センターでも同様の問題が出題されたことがありました。LECの講義テキス
トにも掲載されていますので,解いたことのある方は容易に正解できたと思われま
す。
問題 14:解くのにやや時間のかかるパズル型の問題です。過去問での慣れによって
時間を短縮できます。
問題 22:論理関係を端的に問う基礎的な問題です。これもほとんど同じ問題が例年
出題されています。
(2)第2部
分析的判断力を測る問題(40 分)
①出題形式
大問数:4
小問数:24
②全体の傾向
問題数などの出題形式について,ここ数年の本試験と同様です。各部小問 24 とい
うのはもはや定着しています。難易度については,前回の第1回試験より難化した
ものとなっており,時間不足に陥った受験生が多かったと思われます。傾向として
は,実施ある程度解答方法を工夫するタイプの問題が中心となりました。また,簡
単な計算を要する出題が見られたのも特徴的です。基礎的なメモや図の書き方,論
理操作の方法はもちろん,正確に作業する能力が必要だったといえます。特に,問
題3,4については細かい計算を要する関係で,他の問題よりも時間がかかります
ので,多くの受験生が途中で試験時間終了となったのではないでしょうか。ただし,
問題1については,過去問でよく見るタイプの問題ですので,事前準備により短時
間で正解可能です。ここでいかに時間を節約するかがポイントとなります。
③特徴的な問題
問題1については,今回の4問中,最も作業量が少なく,論理的思考だけで解ける
問題となっています。ここでいかに時間を短縮できるかがポイントといえます。
(3)第3部
長文読解力を測る問題(40 分)
①出題形式
大問数:4問
小問数:24 問
②全体の傾向
大問数,小問数ともに第1回試験と同じです。また,内容としても「問題文をじっ
くり読んでいると絶対に時間不足になる」
「解きやすい小問と解きにくい小問が混
在している」など,これまでとほぼ同様です。難易度としては,比較的素直が問題
が増え,ひねりを加えたり考えさせたりする出題はそう多くありませんでした。
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過去問の検討により,十分高得点がねらえる分野といえるでしょう。
問題文の内容は,問題4がやや抽象的で読みにくい文章ですが,その他は読みやす
いものとなっており,読解自体にはそれほど苦労しなかったと思われます。ただ,
問題2については,設問文が長く,解答に時間がかかるものとなっており,ここで
無駄な時間を使わないことが重要でした。解答にあたっては,設問文を先に確認す
るか,問題文を先に読む場合でも,要点を抑えて「どこに何が書かれていたか」や
「文章の大まかな流れ」を確認する程度にとどめて読む必要があります。
なお,問題3は,解答にあたって,参照個所の指定もなく,今回の4問のなかでは
最も時間がかかったのではないでしょうか。
③特徴的な問題
問題4については,問題文の内容を理解するのにやや時間がかかります。ただ,設
問を見ると,それほど難易度は高くないため,最初に問題文を読み,それに必要な
情報を設問文から抽出することがいかに非効率的かを教えてくれる問題といえま
す。
(4)第4部
表現力を測る問題(40 分)
①出題形式
大問数:1問のみ
②傾向
第1回目とは異なり,従来型と同様,非常に基礎的な小論文試験となりました。A
案とB案の長短を踏まえたうえで,自説の結論と理由,反対の見解への配慮・反論
を説得的に論じればよいこととなります。
3.総括
各部ごとに難化・易化はありましたが,全体としては第1回試験とそう変わらない
平均点になることが予想されます。なお,これで適性試験も終わりましたので,今
後は,小論文対策や,法律科目対策に尽力してください。
また,ステートメントについても,例年ぎりぎりになってから書いて失敗する受験
生が多いので,早めに書くことが必要です。
以上
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