2軸載荷に対応した低負荷耐震補強機構の開発

2軸載荷に対応した低負荷耐震補強機構の開発
背景と目的: 補強部周辺の構造部材や建物使用者への負荷を最低限に抑えながら耐震性を高めることを目的として、特に鋼骨組の脆弱箇所で
ある梁下フランジの局所変形を制限する低負荷耐震補強機構と名付けた補強機構を提案している。しかしながら、本機構の要素実験では大変形
時においてエネルギー消費部が柱に対して鉛直に滑ることで、履歴性状に若干のスリップ挙動が確認されている。また、現在の接合法では、1構
面方向にしか本機構が取り付けられず、任意の方向からの入力地震動に対して耐震補強することが難しい。そこで本研究では、柱への接合力を
向上させ、尚且つ水平2軸方向の地震荷重に対して抵抗する新しい接合法を提案し、面外方向の変形が提案機構に対して与える影響を検証する。
研究方法: 提案機構の2軸載荷時の挙動を検証するために、準静的載荷実験および振動台実験を実施する。準静的載荷実験では2つの油圧式
ジャッキを用いて漸増載荷し、振動台実験では正弦波を入力することで基本挙動を調べる。
ボルト圧着を用いた接合法
20
梁
15
Force (kN)
2軸ピン
スペーサー
ボルト接合部
中央連結棒
ピン
引張鋼棒
ピン接合部
引張鋼棒
曲げ鋼板
角型鋼管
y
0
-5
-15
-4
柱
-2
-1
0
1
2
3
4
準静的載荷実験荷重-変形関係
z
y
x
20
振動台実験 (1/2 縮尺)
スペーサー
Plastic hinge
Mp
ボルト
𝛳𝑎
𝛳 𝑎 Ka
Mp
a
Mp
K
b
𝛳𝑏
Mp
p
曲げ鋼板
ねじ切り穴
10
Mp
Ka
Tension rod
Fy
角型
鋼管
15
Column
Lateral load
Force (kN)
ナット
A断面図
-3
Beam-column rotation (%)
x
ボルト圧着を用いた接合法の概形
高力ボルト
Unidirectional loading
Bidirectional loading
-20
中央柱
曲げ鋼板
5
-10
A断面図
中央固定材
Design strength
10
𝛳𝑏
b
𝛳𝑏
𝛳𝑏
M
1 1
Strength: Fp  bpt p2 yp    
a b
1 
 1
Stiffness: k p  2Ebpt p3   3  3 
b 
a
p
Fy
5
0
-5
-10
K
-15
b
-20
p
Lateral load
Static unidirectional…
Dynamic bidirectional…
-4
-3
-2
-1
0
1
2
3
4
Beam-column rotation (%)
準静的載荷実験と振動台実験の
荷重-変形関係比較
エネルギー消費の模式図
主な成果: 柱とエネルギー消費部の新しい接合法により、大変形時の鉛直方向の滑りを防ぐことに成功した。これにより、スリップ挙動のない安
定した履歴挙動を実現した。さらに、2軸方向への拡張を可能にした。準静的2軸載荷実験において、1軸および2軸載荷で得られたx軸方向とy軸
方向の履歴ループが良好な対応を示すことを確認した。本機構が面外方向の変形の影響を受けずに、2方向入力に対しても適切に挙動すること
を実証した。振動台実験では動的載荷であっても衝撃力は見られず、本機構が上手く挙動することを確認した。