経済学で考える 1 分業

夫婦でパン屋を始めたとき:分業の利益
経済学で考える
1 分業
• パン作りを好きな夫婦が脱サラしてパン屋を始めました。
• いざ始めてみると、パンを作る以外に事務仕事も必要なことがわか
りました。
• 事務仕事はパンの生産量に関係なく、毎日24単位あります。
• また、2人とも1日8時間ずつ働くものとします。
• このとき、ご主人も奥さんもパン作りが好きなので、好きでない事務
の仕事を平等に分担する、「苦労を分け合って同じ量の仕事をする」
という「分業」は、良いアイディアといえるでしょうか。
吉川卓也
事務の仕事を平等に負担した場合のパンの
生産量
• 1時間でできる仕事量を次にように仮定して、このことを考えてみま
す。
ご主人
奥さん
パンの生産量
90個
30個
パンの生産量
事務処理の量
ご主人 540個(=90個×6時間) 12単位(=6単位×2時間)
奥さん 120個(30個×4時間)
12単位(=3単位×4時間)
計 660個
24単位
事務処理の量
6単位
3単位
• 1日24単位必要な事務仕事を平等に12単位ずつすると、上の表のよう
に、660個のパンを生産できます。
• この例のように、パン作りも事務処理もどちらもご主人が得意なこと
を「ご主人に絶対優位がある」といいます。
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経済学で分業を考えると:機会費用
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1時間でできる仕事量で考える
• 1時間当たりの仕事量:ご主人の場合
• 事務処理業務をするとその時間パンが作れなくなります。
• そういう意味で、このパン屋にとって、時間は大切なものです(希少
性があるといいます)。
ご主人
• 大切な時間を最大限有効に使うにはどうしたら良いか考えてみま
しょう。
• そのために、経済学では機会費用という考え方を使います。
パンの生産量
90個
事務処理の量
6単位
• 主人1時間事務仕事をしたら、事務仕事が6単位できる代わりにパンを90
個作る機会がなくなります。
→事務処理を1単位するたびに、パン15個を作る機会が失われます。
→主人の事務処理1単位当たりの機会費用は、パン15個分であるといいま
す。
• 機会費用とは、「あることをするためにあきらめなければならないも
の」。
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1単位の事務仕事で失うパンの量=機会費
用
1時間でできる仕事量
• どちらが事務の仕事を引き受けた方が良いでしょうか。
• ご主人が引き受けると、事務仕事1単位ごとに15個のパンが犠牲
になります。
• 奥さんが引き受けると、事務仕事1単位ごとに10個のパンが犠牲に
なります。
→
• 事務仕事1単位の機会費用は、ご主人にとってはパン15個、奥さん
にとってはパン10個ということです。
• つまり、事務仕事を引き受けることに伴う機会費用はご主人の方が
大きいことになります。
• 1時間当たりの仕事量:奥さんの場合
奥さん
パンの生産量
30個
事務処理の量
3単位
• 奥さんが1時間事務の仕事をしたら、事務仕事が3単位できる代わりにパ
ンを10個作る機会がなくなります。
→事務処理を1単位するたびに、パン10個を作る機会が失われます。
→奥さんの事務処理1単位当たりの機会費用は、パン10個分であるといい
ます。
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比較優位:経済学でいう「得意」とは
比較優位の原則と交換からの利益
• 経済学の考え方を使うと、「分業を行うとき、その仕事に関してより小さい
機会費用をもつ方がその仕事を引き受けた方が良い」ことがわかります。
「比較優位の原則」
• 比較優位を持つ仕事を引き受けるという原則に従って分業すること。
→結果として、全体としての成果を大きくすることにつながります。
• この考え方では、ご主人より奥さんが事務の仕事をした方がよい、つまり、
事務仕事に「向いている」といえます。
→奥さんは事務の仕事に「比較優位を持つ」といいます。
• 日常的な意味での 「得意 、 不得意」とは、絶対優位と絶対劣位のこと。
• 分業を考える際の 「得意 VS 不得意」とは、比較優位と比較劣位のこと。
• パン屋さんの夫婦は、比較優位の原則に従った分業をおこなえば、
その結果、実際に生産されるパンの数量が増えることになります。
• 比較優位・比較劣位を判断する基準は、機会費用の大小で決めたらいい
ということになります。
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機会費用の考え方によるパン屋の分業
ご主人がパンを作り、奥さんが事務仕事をおこなった場合
パンの生産量
事務処理の量
ご主人 720個(=90個×8時間) 0単位(=6単位×0時間)
奥さん 0個(30個×0時間)
24単位(=3単位×8時間)
計 720個
24単位
参考文献:中谷武・中村保編著『1からの経済学』、碩学舎、2010 年。
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