いきいき教育地域人材活用事業活用事例

いきいき教育地域人材活用事業活用事例
山梨市立笛川中学校
1 はじめに
本校は,山梨市北部,旧牧丘町及び三富村を学区としている。長野県や埼玉県と県境を接し,秩父
多摩甲斐国立公園に属する山々に抱かれた自然豊かな地域にある。昭和43年に学区内の4中学校統
合により創立された。
本年度の生徒数は137名であり,校訓「立志勤学」
,学校教育目標「自ら学び,しなやかな心をも
った,たくましい生徒の育成」のもとのびのびと
学校生活を送っている。
従来この地域では巨峰を中心とする果樹栽培や
養蚕・林業・観光業等が盛んであったが,現在は
市内や近隣の市町村等へ通勤する住民が多く,そ
れらの産業に専門的に従事する者は減少している。
また,近年人口流失や少子化・高齢化が進み,
校舎遠景
来年度は学区内の4小学校が統合を控えている。
【秩父多摩甲斐国立公園】
(環境省HPより)
秩父多摩甲斐国立公園は、埼玉、東京、山梨、長野の1都3県にまたがる、素朴で美しい自然に
恵まれた公園です。雲取山から甲武信ヶ岳、金峰山へと連なる奥秩父の山々を中心とするこの公園
は、荒川、多摩川、笛吹川(富士川)
、千曲川(信濃川)などの源流域となっています。
複雑な地形のために刻々と移り変わる稜線の風景、幽遠で清涼な渓谷。これらに森林植生のよさ
が加わり、新緑と紅葉があざやかな美を競う景観は、日本を代表する風景の1つです。
2 講師名及び活用教科等
(1)講師
雨宮 巧(あめみや たくみ)氏
市議会議員。長年少年野球の監督,消防団長や山岳救助隊長,森林セラピー等を勤め,地域活
性化のリーダー及び青少年の育成者として優れた指導性を発揮している。
澤登 早苗(さわのぼり さなえ)氏
本校PTA副会長。大学教授を務めるかたわら農業に従事し,ブドウの無農薬栽培に携わっ
ている。環境問題や生徒の育成及び学校教育推進について高い見識を持っている。
(2)活用領域 総合的な学習の時間(1学年 38名)
(3)経過等
本校では,1学年の総合的な学習の時間の中で地域学習を取り入れている。
本地域では,前述のとおり過疎化や生活様式の変化等により地域の伝統や産業・文化等の継承が
危ぶまれる状況となってきている。このことについて,体験活動を交えながら先人の歩みを知り,
地域を愛する心を養う取り組みをさらに進めることが重要だと考えた。そこで本事業を活用して,
地域の歴史や産業,自然や環境問題について高い見識を持つ地域の方からお話を聞くことにした。
3 活動内容
【地域学習のための学習会】計4時間
○第1回 7月6日(月) 5・6校時 講師:雨宮 巧 氏
「牧丘・三富の生活と自然について」
◇地勢
*金峰山・国師岳・甲武信岳・北奥千丈岳・西沢渓谷・東沢渓谷・乾徳山・乙女高原・
大弛峠・笛吹川・鼓川・琴川等
◇生活
*牧丘……こんにゃく栽培から巨峰生産へ
*三富……養蚕と林業
*昭和初期前後の生活概要・食事等
◇地域にかかわった人物
*ヤマトタケル伝説・安田義定・畠山重忠・
夢窓国師(夢窓疎石)・田部重治
◇森林セラピー
*西沢渓谷 H19年3月認定……マイナスイオンとフィトンチッド効果
○第2回 11月16日(月) 5・6校時 講師:澤登 早苗 氏
「身近なところから考える環境問題」
◇身近な野菜について考えてみよう(野菜クイズ)
◇人と自然,私たちの食と自然,農業について考えてみよう
123456*ワークショップ(食と農と環境をつなぐ有機
1農業)
123456*ノーベル賞受賞大村さんの言葉から
*田舎暮らしを望む人の増加(田園回帰)
123456*帰る場があることの幸せ
123456*有機農業を通じた国際協力
*畑から食卓まで,都市(東京)と農村(山梨)
をつなげる──わたしのルーツは牧丘
◎人が住んでいるからこそ,人の手が入っているからこそ守られてきた美しい景観,美しい
環境と資源(水・食・空気・エネルギー源など)
4 指導のねらい
地域に住む身近な方を講師に,歴史や文化,産業や自然等についての話を聞き,郷土についての認
識を深め,郷土を大切にする心を育てる。また,現在の自分たちの生活や環境問題等についての関連
を図りながら暮らしを見つめ直すきっかけとする。
5 関連学習
この事業とは別に,1学年では地域学習の一環として農業体験学習(ブドウの袋かけ実習体験)を
行っている。そうした学習との関連を図りながら,さらに効果が深まるよう配慮した。
【農業体験学習】
○日
時 7月14日(火) 9:00~15:00
○内容・目的 生徒が広く地域の産業・生活等を学ぶ機会として,学区内の農園・農場
(4カ所)に依頼しブドウの袋かけ実習体験を行う。
※グループごとに農家の指導を受けながら実習を行う。
6 本事業を活用しての成果と課題
生徒たちは,まず自分たちの地域に,このように優れた考
え方や生き方を実践している方々がいることに感銘を受け
た様子であった。さらに今まで気付かなかった郷土のよさや
他地域等とのつながりを改めて知ることができ,大変貴重な
体験であった。
また,学校としても,この事業の活用により地域の方を招
いてお話を伺ったり指導を仰いだりしたことで,予算面等で
の保障が確保された。
地域人材を発掘したり,外部講師として招いたりすること
については,教員側に負担がかかる面はあるが,そのこと自
体を通して地域との連携が生まれ,学校教育活動に対する関
心を高めることができると考える。本校としても,さらなる
人材の発掘や活用内容の改善を重ね,生徒たちにとってより
教育効果が上がる方策を検討していきたい。
7 まとめ
教育基本法第2条では,教育の目的の一つとして伝統と文化の尊重,我が国と郷土を愛する態度の
育成を掲げている。この地域に限らず,かつて子供たちは,家の手伝いや祭り等の行事を通して地域
の方々とふれあい,そのことを通して郷土の生活になじみながら文化や伝統を継承していった。また,
身近な仲間とともに野山に出かけ,自然にふれながら郷土を愛する心を育んでいった。
近年の生活様式の変化や価値観の多様化,少子化等によって,地域の結び付きが弱まり,子供たち
の遊びや交流も大きくその形を変えている。その影響で,子供たちの郷土の伝統文化や自然に対する
関心や愛着心が薄れてきているのは否めない。
こうした状況を学校だけの取組によって変えていく
のは現実的に難しい。そのためには,地域ぐるみで子
供を育む視点が必要となる。
「新やまなしの教育振興プ
ラン」の基本方針には,
「家庭・地域・学校の連携」がう
たわれている。
学校としては,
積極的に地域に働きかけ,
理解と協力を仰ぎながら現状を少しでも改善していく義
務があると考える。これからますますグローバル化が進
む社会の中で,個人の心の原点となるのは郷土である。本校の取り組みはささやかなものであり,こ
れからまだまだ改善すべき点も多い。しかし,こうした実践の積み重ねが,子供たちの中に郷土への
愛着心の種をまき,やがてそれが芽生えて大きく育っていくことにつながれば幸いである。