③災害対策緊急事業の特色について

災害対策緊急事業の特色
平成28年5月
国土交通省 国土政策局
広域地方政策課 調整室
災害対策等緊急事業推進費とは
自然災害により被災した地域、又は重大な交通事故が発生した箇所等にお
いて、再度災害の防止対策(災害対策)や 事故の再発防止対策 (公共交通
安全対策)等を迅速に実施し、住民及び利用者の安全・安心の確保に資する
ための制度です。
予算:平成28年度 148.13億円(国費ベース)
実施主体: 国(直轄事業)、都道府県・市区町村等(補助事業)
災害対策
特徴1:災害復旧事業では対応しきれない場合の対策が可能です。(※)
① 原形復旧に加え、公
共土木施設の防災機
能の強化・向上を行う
ケース
② 対象とする公共土木
施設に直接的な被害
はないが、対策を行う
ケース
③ 他地域の被害を契機
として、災害防止対策
を未被災地で行うケー
ス
事例①:海岸事業
(北海道)
事例②:河川事業
(長野県)
事例③:道路事業
(岐阜県)
被災時
【施設被害あり】
越水
被害発生箇所
越水・浸水したが
施設に損傷なし
冠水高さ
【施設被害なし】
【施設被害なし】
推進費による対策
被害が発生していない箇所
【施設被害あり】
河道拡幅
推進費で
嵩上げ
護
岸
道路情報提供装置の設置
推進費で
嵩上げ
+
災害復旧事業費で原
形復旧
対策後断面
災害対策
特徴2:幅広い事業分野(直轄及び補助)に配分することが可能です。
国土交通省 (都市、河川、下水道、道路、住宅、鉄道、港湾、
海岸、航空、航路標識)
農林水産省 (農業農村、林野、水産基盤)
厚生労働省 (水道)
経済産業省 (工業用水道)
経済産業省所管事業の事例
水産庁所管事業の事例
被害状況
対策後
施行状況
被災前
川底
工業用水道管(土中埋設)
被災時
対策後
根固め袋設置
洪水によって洗掘
工業用水道管の流出の危険性
土砂投入
工業用水道管
<被害>
冬季風浪により堤防が倒壊
し、背後集落に高波が押し
寄せ死傷者や家屋損壊が
発生
<対策>
堤防の嵩上げや集落沿
いの副堤の設置により、
高波による被害の再発を
防止
<被害>
台風時の豪雨により、川
底に埋設された工業用水
道管が洗掘を受け、一時
取水停止
工業用水道管
<対策>
洗掘防止対策として、管
の埋設部に根固め袋を
設置し、工業用水道の
安定供給を確保
公共交通安全対策
特徴3:公共交通の安全確保を図る対策が可能です。
【車がフェンスを突き破って空港内に侵入】
空港整備事業の事例
フェンスのメッシュ化・鋼管杭設置等
対策イメージ
航路標識の事例
レーダー処理システム
護衛艦衝突後状況
<被害>
関門海峡で護衛
艦とコンテナ船
が衝突し、負傷
者6名を出すとと
もに約5時間航
行禁止
<対策>
管制塔のレーダ
ー処理システム
を改善し、管制
機能の強化によ
り衝突事故の再
発を防止
その他
特徴4:年度途中の予算配分(原則 年3回)が可能です。
◎平成28年度の配分スケジュール(案)
次年度の予算措置を
募集期間(予定)
区 分
配分時期(予定) 待たずに事業が実施
可能です。
4月1日 ~ 5月9日
6月下旬
第1回
第2回
5月10日~7月29日
9月中旬
第3回
8月上旬~10月上旬
11月中旬
※ 原則年3回の配分を予定
していますが、熊本地震への
柔軟な対応のため、今後変更
する可能性があります。
特徴5:年度内の予算執行が基本ですが、明許繰越も可能です。
本推進費の国庫補助
率・国庫負担率は、
それぞれの対象事業
で定められている補
助率・負担率と同じ
です。
地方財政措置につい
ても、各対象事業の
扱いと同じです。
【参考】補助率・負担率の例(近年配分した主な事業)
補助率・負担率(内地)
補助
事
業
分
野
1/2
河川(河川改修事業)
道路(道路更新防災等対策事業)
港湾(港湾改修事業)
農業農村(農業農村整備事業)
林野(治山事業)
2/3
河川(河川改修事業)
港湾(港湾改修事業)
直轄
10/10
道路(道路更新防災等対策事業(修繕)※)
海上保安庁(航路標識整備事業)
推進費配分の流れ
①
自
然
災
害
・
事
故
の
発
生
②推進費の
要求
各
省
の
事
業
担
当
部
局
事
業
計
画
の
調
整
各
省
の国
事土
業政
担策
当局
部
局
財
務
省
④閣議
閣
議
決
定
※特別会計に
係る
事業予算の
場合
※
事
業
計
画
書
の
作
成
国
土
政
策
局
※
※
事
業
主
体
(
地
方
公
共
団
体
等
)
③協議
《平成28年度予算版》
実
施
計
画
の
協
議
⑤ 推進費
の配分
国
土
政
策
局
各
省
の
事
業
担
当
部
局
事
業
主
体
(
地
方
公
共
団
体
等
)
⑥
対
策
の
実
施
採択事例紹介
原形復旧に加え施設の
防災機能強化・向上が可能
事例①
凡
例
赤
推進費施行箇所(当年度施行)
緑
災害復旧・関連(当年度施行)
黄
次年度以降の実施予定
黒
施行完了箇所
施行区間①
② はん濫状況
A-A断面図
約30m
市立小学校
河道掘削工 H.W.L
H=5m
護岸工
推進費施行区間① L=940m
河道掘削工 V=14,000m3
護岸工 A=5,260m2
堤防法崩
堤防決壊
堤防決壊
H27.9.12PM撮影
A
相平橋
災害復旧・関連
L=220m
大橋
上大橋
八間堀川
③ 堤防決壊状況
災害復旧
L=26m
常総市
A
市立大生小学校
凡例
推進費施行区間②
浸水実績
堤防決壊箇所
下妻市
L=700m
新石下
推進費施行区間①
④
L=940m
H27.9.16AM撮影
③
④ 浸水状況
②
①
平 町
B-B断面図
推進費施行区間② L=700m
河道掘削工 V=22,000m3
築堤工 V=19,000m3 橋梁工 N=1基
排水樋門工 N=1基
排水樋管
八間堀川 B
施行区間②
市道橋
(仲の塚橋)
B
H27.9.11撮影
築堤工
H=2m
市道橋
(橋梁工)
約30m
H.W.L
市道橋
河道掘削工
築堤工
H=2.3m
H27.9.12AM撮影
原形復旧に加え施設の
防災機能強化・向上が可能
事例②
【平面図】
①被災状況(H27.6.24)
表面除去工 A=223m2
モルタル吹付工 A=223m2
至 芦川支所
(起点側)
③
A断面
②
①
②法面亀裂状況(H27.6.24)
【断面図】
A断面
表土除去
落石防止網
モルタル吹付
18m
至 市川三郷町
(終点側)
凡
例
赤
推進費施行箇所(当年度施行)
緑
災害復旧・関連(当年度施行)
12m
③落石発生源痕跡状況(H27.6.24)
公共土木施設に直接の被害が
なくても対策が可能
事例③
凡
例
赤
推進費施行箇所(当年度施行)
緑
災害復旧(当年度施行)
黄
次年度以降の実施予定
溢水箇所
築堤
約14m
6m
▽H27.9洪水痕跡水位
約3.2m
前河原地区浸水状況(左岸32.8K付近)
約1.7m
用地費
マエガワラ
前河原地区 標準断面図
約17m
6m
築堤
若宮戸地区 浸水状況
(左岸24.75K付近)
▽H27.9洪水痕跡水位
約5.7m
約4.2m
用地費
ワカミヤド
若宮戸地区 標準断面図
溢水箇所
事例④
他地域の被災を契機に
未被災地の対策が可能
岐阜県管理道路における道路情報提供装置の設置・改良位置図
一般国道:N=3箇所
道路情報提供装置 設置 N=1箇所(2基) 改良 N=2箇所(4基)
県道:N=19箇所
道路情報提供装置 設置 N=6箇所(12基) 改良 N=13箇所(26基)
市道50号線アンダーパス部
被害状況写真
凡
赤
例
推進費施行箇所
(当年度施行)
至 国道41号
至 犬山
冠水状況
写真方向
市道50号線アンダーパス部
市道50号線アンダーパス部
至 可児市街
被害現場上空写真
道路情報提供装置
冠水高さ
脛永万石線大垣市新開町(設置)
(設置例)
武並土岐多治見線 多治見市池田町(改良)
被害現場冠水状況写真
他省庁が所管する事業も対象
事例⑤
排水路冠水状況
(宅地道路及び農地)
【平面図】
③
【標準断面図 東6線中間排水路】
トラフ
(単位:mm)
宅地3戸
東5線排水路
被災状況①
平面図④
排水路工※事業計画区間(施行区間)と
被災した範囲の図を記載する
(L=1.1km、柵渠工)
排水路冠水状況
(農地及び宅地)
冠水範囲
(農地約20ha、
宅地3戸、町道一部)
排水路工
(L=1.1km、トラフ)
【標準断面図 東5線排水路】
柵渠工
(単位:mm)
1560
被災状況②
凡
887
958
H.W.L
赤
1500
例
推進費施行箇所(当年度施工)
H27.6.3撮影
H27.6.3撮影
公共交通の安全確保を図る
対策が可能
事例⑥
沿岸域情報提供システム提供情報の拡充イメージ
インターネット配信情報
メール配信情報
メール配信
インターネット配信
灯台等気象
現況をメール
配信情報項
目へ追加
気象警報 ・注意報 津波警報
海上工事
竜巻に関する
注意情報等の追加
ライブカメラ
気象現況
出港、操業、帰港の
判断に有効活用
竜巻注意情報 雷注意報
海難の発生
凡
赤
航路標識の
消灯事故
例
推進費施行箇所
(当年度施行)
不採択事例紹介
主な不採択理由
(補助事業配分実績:384件採択、9件不採択)
1.被害と対策の関係(4件)
⇒自然災害による被害と、推進費で実施する対策につい
て直接的な関係が認められない。
2.過年度災害(2件)
⇒申請時期が遅れた為、緊急性が認められない。
3.他地域の被災を契機に申請(1件)
4.災害要件の不一致(1件)
⇒その他の異常な自然現象で、認められない。
5.災害復旧事業とすべきもの(1件)
※上記理由の場合でも採択された案件はあります。
被害と
対策の関係
(4件)
凡
⇒自然災害による被害と、推進
費で実施する対策について直
接的な関係が認められない。
例
赤
推進費要求箇所(当年度施行)
緑
災害復旧(当年度施行)
推進費実施区間 L=4,400m
ポンプ室の地上化
4000
250
2000
250
500
7000
浸水箇所
破堤箇所
24000
2000
掘削工、築堤工、護岸工、
附帯工、測量設計費、用地費
250
2000
250
4000
2000
500
発電機ダクト
搬入開口
操作・受電盤
φ450
1000
冠水警報装
置(回転灯)
ポンプ
室
流入管高
▽21.730
通行遮断施設
豪雨により道路冠水
浸水対策として、警報装置・遮断機
の設置は再度災害防止に資する事
業と認められない。
台風により堤防決壊
再度災害防止のために、掘削・築堤及び護岸
の整備を計画したが、被災規模に対して過大
な計画であり、必要最小限の事業規模としか
認められない。
⇒申請時期が遅れた理由に
蓋然性が認められない。
過年度災害
(2件)
認められる例:申請年に入って、自然災害には該当しなかったが、当該箇所に再度被害があった。
:申請年に入って、何らかの事象が発生し、想定以上に当該施設が災害に弱い(河川水位
が想定以上に上昇する等)ことが判明した。 など
凡
例
推進費要求箇所(当年度施行)
赤
事業計画区間
区間
ェッド
鋼製シ
災害復旧(当年度施行)
緑
区間
ッド
シェ
PC
NO.
21
NO.2
0
NO.19
NO
.2
2
3
.2
NO
4
.2
NO
5
.2
NO
ク
ッ
ロ
ブ
⑧
6
.2
NO
0
36
.0
10
5+
.2
NO
袋
詰
360
.8m
=94
)L
ク
ッ
ロ
ブ
固
5m
根
7.
工 波
13
岸 消
L=
護 +
区
工
工
3
第
石
玉
.2
NO
只
見
川
事業計画区間 L=520m
スノーシェッド補強工 L=29.0m(2ブロック分)
消波根固め工 L=451.8m
川
見
只
29
O.
.0
10
4+
.2
NO
(
.3
NO
7m
6.
19
L=
)
ク
ッ
ロ
ブ
3m
固
.
4
根
21
波
L=
消
+
区
工
工
石
1
玉
第
詰
袋
(
工
岸
護
0m
L=100.
第2工区
NO.19
m
L=80.0
護岸工
7
.2
NO
ク
ッ
ロ
ク
ク
NO.18
ク
ッ
ロ
ブ
⑦
8
.2
NO
ロ
ブ
⑨
ク
ッ
ロ
ブ
ク
ッ
ク
ッ
ロ
as
NO.18
as
ク
ッ
ク
ッ
ロ
ク
ッ
ロ
ブ
①
NO.17
ブ
⑥
ロ
ブ
⑩
14
NO.
0
00
0.
+1
.4
NO
.5
NO
ブ
③
ッ
ロ
ブ
NO.16
13
NO.
.7
NO
.6
NO
④
as
ブ
②
⑤
ッ
ロ
ブ
国道252号
as
⑪
1
.1
NO
.9
NO
.8
NO
m
14
L= )
工 6本
修 、
補 工
区 カー
工 ドアン
1
第 ゙ラウン
(ク
5
NO.1
4
NO.1
2
.1
NO
as
0
.1
NO
m
15
L= )
工 6本
修 、
補 カー工
3m 工区 ゙アン
13
4 ト
L=
第 ゙ラウン
ク
)
(
3m
0.
=
Δ
(
工
ト
フ
シ
断
横
路
道
0
.7
+5
.3
NO
0
.3
+3
.4
NO
0
4.8
30+
NO.
50
7.
1+
.3
NO
平成23年7月発災。平成24年5月申請。
緊急性があるのであれば、平成23年に
申請すべきである。
橋台工、橋脚工
橋梁上部工、道路改良工
旧橋撤去、用地補償費
SJ72
平成25年7月発災。平成26年5月申請。
緊急性があるのであれば、平成25年に
申請すべきである。
他地域の被災を ⇒他地域の被災と推進費で実施
契機に申請 する対策について、関係性が認
(1件)
められない。
凡
例
赤
推進費要求箇所(当年度施行)
青
当初実施箇所(当年度施行)
黄
次年度以降の実施予定
被災地区
約16km
他地域の被災を契機に、被災
の可能性のある防波堤を緊急に
整備する事を計画したが、被害
の原因と対策を行う緊急性につ
いて認められない。
推進費要求
地区
推進費の活用により
緊急に整備する
防波堤
推進費の活用により
安全性確保を図る防波堤(B)
施行断面図
災害要件の
不一致(1件)
⇒その他の異常な自然現象につ
いて、申請したが認めらない。
当該地域において、凍上災害(その他異常な
自然現象により発生した災害)として申請を行っ
たが、災害復旧事業の凍上災害要件を満足せ
ず不採択。(当該地域は凍上災害の採択基準が
満たされず。)
制度の特徴と近年の配分事例(まとめ)
事例①②③④
1)災害復旧事業では対応できない場合に対応可能
(P.7~P.10)
災害対策等緊急事業推進費
災害復旧事業費
・原形復旧が基本
・公共土木施設の被害 ※
※災害復旧事業と同時申請であれ
ば、原形復旧に加え改良復旧が可能
(一定の要件あり)
海岸事業(北海道)
【施設被害あり
】
【施設被害なし】
[2]公共土木施設に
直接の被害がなく
ても対策が可能
【事例③】
[1]原形復旧に加
え施設の防災機能
強化・向上が可能
【事例①②】
道路事業(岐阜県)
河川事業(長野県)
推進費で
嵩上げ
推進費で
嵩上げ
災害復旧
事業費で
原形復旧
被災時
越水
越水・浸水したが
施設に損傷なし
推進費による対策
河道拡幅
【施設被害なし】【施設被害あり】
対策後断面
北海道えりも町のえりも港で、被災した護岸の原形復旧に
加え、嵩上げを実施(H23)
[4]災害復旧事業の対象に位
置付けのない施設の原形復旧
を行うことも可能
【海上保安庁所管事業など】
[3]他地域の被災
を契機に未被災地
の対策が可能
【事例④】
護
岸
上田市の矢出沢
川で、堤防の被
害・損傷はなか
ったが越水し、
浸水被害が発生
したため、河道
拡幅等を実施
(H22)
航路標識整備事業(新潟県)
既設灯台
冠水高さ
移設
対策状況
被災状況
地震に伴い、椎谷鼻灯台の敷地が崩落し施設が損壊。
直ちに被災した灯台を隣接する安定地盤に移設し、航行
船舶の安全を確保(H20)
岐阜県可児市で、道路のアンダーパス部が冠水。
これを受けて岐阜市等被災のない他のアンダーパ
ス部に道路情報提供装置を設置(H22)
事例⑤
2)他省庁が所管する事業も対象
(P.11)
農業農村整備事業(茨城県)
・国土交通省事業
(都市、河川、下水道、道路、住宅、
鉄道、港湾、海岸、航空、航路標識)
・他省庁事業
農林水産省 (農業農村、林野、水産基盤)
厚生労働省 (上水道)
経済産業省 (工業用水道)
【施設被害あり】
取水
ポンプ
震災により損傷した農業用
送水管の原形復旧に加え、
未被災区間の送水管の改修
を実施
(H23:農水省所管事業)
被災状況
送水管
【施設被害なし】
事例⑥
3)災害対策の他、公共交通の安全確保を図る対策が可能
空港整備事業(東京都 他)
・重大な交通事故が発生した箇所等において
事故の再発防止対策を実施
対策後
(P.12)
対策イメージ
神戸空港で、
車がフェンス
を突き破って
進入
対策工イメージ
神戸空港に車が侵
入したことを契機に、
他の14空港で侵入
防止フェンスを設置
(H18:東京国際空港
他13空港)