骨太の方針 2016 とニッポン一億総活躍プラン

2016 年 6 月 6 日
経済レポート
けいざい早わかり(2016 年度第 3 号)
骨太の方針 2016 とニッポン一億総活躍プラン
調査部 主任研究員 中田 一良
【目次】
Q1.骨太の方針 2016 のポイントは何ですか?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p.2
Q2.GDP600 兆円の実現に向けてどのような政策が実施されるのですか?・・・・・・・・p.3
Q3.「ニッポン一億総活躍プラン」とはどのようなものですか?・・・・・・・・・・・・p.4
Q4.社会保障を充実させるための財源はどうなっていますか?・・・・・・・・・・・・・・・・・p.5
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Q 1 . 骨 太 の 方 針 2 01 6 の ポ イ ン ト は 何 で す か ?

2015 年 9 月 に 安 倍 首 相 は 、 ア ベ ノ ミ ク ス は 第 2 ス テ ー ジ に 入 っ た と し 、 そ れ ま で の
三 本 の 矢 「 大 胆 な 金 融 政 策 」、「 機 動 的 な 財 政 政 策 」、「 民 間 投 資 を 喚 起 す る 成 長 戦 略 」
に か わ る「 新・三 本 の 矢 」を 打 ち 出 し ま し た 。第 一 の 矢 は「 希 望 を 生 み 出 す 強 い 経 済 」、
第 二 の 矢 は「 夢 を つ む ぐ 子 育 て 支 援 」、第 三 の 矢 は「 安 心 に つ な が る 社 会 保 障 」で す 。
こ れ ら を 推 進 し て い く こ と に よ り 、そ れ ぞ れ「 G D P 6 0 0 兆 円 」、
「 希 望 出 生 率 1 . 8 」、
「介
護 離 職 ゼ ロ 」 の 実 現 を 目 指 し て い ま す 。 骨 太 の 方 針 2 0 1 6 で は 、「 新 ・ 三 本 の 矢 」 を 一
体 的 に 推 進 す る こ と に よ り 、「 成 長 と 分 配 の 好 循 環 」 の 実 現 を 目 指 し て い ま す 。

「新・三本の矢」が打ち出された背景には次のような考え方があります。日本では、
少 子 高 齢 化 が 進 展 し て お り 、国 立 社 会 保 障・人 口 問 題 研 究 所「 日 本 の 将 来 推 計 人 口( 平
成 2 4 年 1 月 推 計 )」に よ る と 、日 本 の 人 口 は 2 0 5 0 年 に は 9 7 0 8 万 人 と 1 億 人 を 下 回 る
見 通 し で す 。人 口 の 減 少 に よ り 、今 後 、国 内 需 要 の 伸 び を 期 待 す る こ と は 難 し く な り
ま す 。そ の う え 、少 子 高 齢 化 の 進 展 に よ り 、労 働 力 人 口 の 減 少 が 続 く た め 、人 手 が 不
足 し 、経 済 成 長 が 抑 制 さ れ る 可 能 性 が 高 く な る と 考 え ら れ ま す 。こ の よ う な 人 口 動 態
の見通しの下、人々の将来に対する見方は悲観的なものとなってしまいます。

安 倍 政 権 は 、こ う し た 状 況 を 変 え る に は 、国 民 一 人 一 人 が 活 躍 で き る 社 会 を つ く る こ
と が 重 要 で あ る と し て い ま す 。そ し て 、そ の た め の 課 題 と し て 、結 婚 ・ 子 育 て の 希 望
を 実 現 し づ ら い 状 況 と 、介 護 と 仕 事 を 両 立 し づ ら い 状 況 を 克 服 す る こ と を 挙 げ て い ま
す。

合 計 特 殊 出 生 率 は 近 年 緩 や か な 上 昇 傾 向 に あ る と は い え 、2 0 1 5 年 時 点 で 1 . 4 6 に と ど
ま っ て い ま す 。こ れ に 対 し て 、結 婚 し て 子 ど も を 持 ち た い と 考 え る 人 の 希 望 が か な っ
た 場 合 の 出 生 率 と さ れ る「 希 望 出 生 率 」は 1 . 8 で あ り 、現 状 は 希 望 通 り に 子 ど も を 持
つことができていない状況であると言うことができます。

子 育 て 支 援 な ど を 充 実 さ せ 、希 望 通 り に 子 ど も を 持 つ こ と が で き る よ う に な れ ば 、合
計 特 殊 出 生 率 が 上 昇 し 、人 口 減 少 の ペ ー ス は 緩 や か に な り ま す 。ま た 、子 育 て 支 援 の
充 実 は 、子 育 て に 専 念 し て い た 女 性 が 社 会 で 活 躍 す る 可 能 性 が 広 が る こ と に も つ な が
る で し ょ う 。介 護 サ ー ビ ス の 基 盤 が 整 備 さ れ れ ば 、介 護 の た め に 離 職 を せ ざ る を 得 な
い人が仕事を続けることができるようになります。

第 二 の 矢「 夢 を つ む ぐ 子 育 て 支 援 」、第 三 の 矢「 安 心 に つ な が る 社 会 保 障 」の 推 進 は 、
労 働 供 給 の 減 少 を 緩 和 さ せ る こ と に な り 、第 一 の 矢「 希 望 を 生 み 出 す 強 い 経 済 」の 実
現 へ つ な が り ま す 。 ま た 、「 希 望 を 生 み 出 す 強 い 経 済 」 が 実 現 す れ ば 、 税 収 が 増 加 し
て 、「 夢 を つ む ぐ 子 育 て 支 援 」 や 「 安 心 に つ な が る 社 会 保 障 」 を 推 進 す る た め の 財 源
を 確 保 し や す く な り ま す 。こ れ が「 成 長 と 分 配 の 好 循 環 」と さ れ る も の で す 。国 民 一
人 一 人 が 活 躍 で き る 社 会 を つ く る こ と を 目 標 に 、「 ニ ッ ポ ン 一 億 総 活 躍 プ ラ ン 」 が 策
定 さ れ て お り 、 そ の 内 容 は 、 骨 太 の 方 針 2016 に も 反 映 さ れ て い ま す 。 以 上 の よ う な
安倍政権の経済政策の関係をまとめたのが図表1です。
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図 表 1 .「 新 ・ 三 本 の 矢 」 と 骨 太 の 方 針 2 0 1 6
骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)2016
成長戦略(日本再興戦略
2016)・規制改革
ニッポン一億総活躍プラン
<第一の矢>
希望を生み出す
強い経済
<第二の矢>
夢をつむぐ
子育て支援
(目標)
GDP600兆円
(目標)
希望出生率1.8
<第三の矢>
安心につながる
社会保障
(目標)
介護離職ゼロ
(出所)経済財政諮問会議「経済財政運営と改革の基本方針2016∼600兆円経済への道筋∼」をもとに作成
Q 2 . G D P 60 0 兆 円 の 実 現 に 向 け て ど の よ う な 政 策 が 実 施 さ れ る の で す か ?

日 本 の 名 目 G D P は 、1 9 9 7 年 度 の 5 2 1 . 3 兆 円 が ピ ー ク で あ り 、そ の 後 は 2 0 0 7 年 度 に か
け て 変 動 は あ る も の の 、 横 ば い 圏 で 推 移 し て い た と 言 え ま す 。 2008 年 度 、 2009 年 度
に は リ ー マ ン ・ シ ョ ッ ク の 影 響 に よ り 減 少 し た も の の 、 そ の 後 は 持 ち 直 し て 2015 年
度 に は 5 0 0 . 3 兆 円 と な っ て い ま す 。安 倍 政 権 が 目 指 す 3 % の 名 目 成 長 率 が 実 現 で き れ
ば 、 2 0 2 1 年 度 に は 6 0 0 兆 円 に 近 づ く こ と に な り ま す ( 図 表 2 )。 も っ と も 、 今 後 、 労
働 供 給 が 減 少 し て い く と 見 込 ま れ る 中 で 、6 0 0 兆 円 を 実 現 す る た め に は 、 生 産 性 を 上
昇させることが不可欠です。
図表2.日本の名目GDPの推移
650
(兆円)
毎年3%成長が続いた場合
600
550
500
450
400
350
300
250
200
1980
1985
1990
1995
2000
2005
2010
2015
(出所)内閣府「平成17年基準支出系列簡易遡及」、「四半期別GDP統計」より作成

2020
(年度)
骨 太 の 方 針 2016 で は 、 生 産 性 の 向 上 を 目 指 し て 、 生 産 性 革 命 に 向 け た 取 り 組 み を 加
速 さ せ る と し て い ま す 。 そ の た め 、 た え と ば 、 IoT、 ビ ッ グ デ ー タ 、 人 工 知 能 に 関 す
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る 研 究 開 発 投 資 を 推 進 し 、2 0 2 0 年 ま で に 官 民 合 わ せ た 研 究 開 発 投 資 の 対 G D P 比 を 4 %
以 上 と し 、こ の う ち 政 府 の 研 究 開 発 投 資 は 、対 GDP 比 1% に す る こ と を 目 指 し て い ま
す。

こ の ほ か 、 成 長 戦 略 で あ る 「 日 本 再 興 戦 略 2016」 に 取 り 組 む と し て い ま す 。 日 本 再
興 戦 略 で は 、 生 産 性 革 命 を 実 現 す る 規 制 ・ 制 度 改 革 や 、 GDP600 兆 円 に 向 け た 「 官 民
戦 略 プ ロ ジ ェ ク ト 10」 な ど が 掲 げ ら れ て い ま す 。 こ の プ ロ ジ ェ ク ト の 中 に は 、 IoT、
ビ ッ グ デ ー タ 、人 工 知 能 ・ ロ ボ ッ ト と い っ た 第 4 次 産 業 革 命 の 実 現 、GDP の 7 割 を 占
め る サ ー ビ ス 産 業 の 生 産 性 向 上 、訪 日 外 国 人 旅 行 者 数 を 2 0 2 0 年 に 4 0 0 0 万 人 、訪 日 外
国 人 旅 行 消 費 額 を 2020 年 に 8 兆 円 と す る 目 標 に 向 け て 、 観 光 の 基 幹 産 業 化 ( 観 光 立
国 の 実 現 ) な ど が 含 ま れ て い ま す ( 図 表 3 )。
図 表 3 . 官 民 戦 略 プ ロ ジ ェ ク ト 10
新たな有望成長市場の創出
ローカルアベノミクスの深化
国内消費マインドの喚起
・ 第4次産業革命の実現
・ 世界最先端の健康立国へ
・ 環境エネルギー制約の克服と投資拡大
・ スポーツの成長産業化
・ 既存住宅流通・リフォーム市場の活性化
・ サービス産業の生産性向上
・ 中堅・中小企業・小規模事業者の革新
・ 攻めの農林水産業の展開と輸出力の強化
・ 観光立国の実現
・ 官民連携による消費マインド喚起策等
(出所)日本経済再生本部「日本再興戦略2016」をもとに作成
Q 3 .「 ニ ッ ポ ン 一 億 総 活 躍 プ ラ ン 」 と は ど の よ う な も の で す か ?

一億総活躍社会とは、
「 女 性 も 男 性 も 、お 年 寄 り も 若 者 も 、一 度 失 敗 を 経 験 し た 人 も 、
障 害 や 難 病 の あ る 人 も 、家 庭 で 、職 場 で 、地 域 で 、誰 も が 活 躍 で き る 全 員 参 加 型 の 社
会 」と さ れ て い ま す 。こ う し た 社 会 の 実 現 に 向 け て 、働 き 方 改 革 に 取 り 組 む こ と と な
っ て い ま す ( 図 表 4 )。

日 本 の 労 働 者 の 約 4 割 は 非 正 規 雇 用 で あ り 、パ ー ト タ イ ム 労 働 者 の 賃 金 は 正 規 労 働 者
と 比 べ る と 4 割 低 い 状 況 で す 。こ の よ う な 賃 金 格 差 は 、欧 州 で は 2 割 で あ り 、日 本 は
大 き い と 言 え ま す 。安 倍 政 権 は 、こ う し た 状 況 を 改 善 す る た め に 、雇 用 形 態 に か か わ
ら ず 、同 一 の 労 働 に 対 し て は 同 一 の 賃 金 を 支 給 す る「 同 一 労 働 同 一 賃 金 」の 実 現 に 向
け て 、ど の よ う な 待 遇 差 が 不 合 理 で あ る か と い う ガ イ ド ラ イ ン を 策 定 す る と し て い ま
す 。 ま た 、 最 低 賃 金 を 引 き 上 げ て い き 、 全 国 加 重 平 均 で 1000 円 に す る こ と を 目 指 す
としています。

こ の ほ か 、 長 時 間 労 働 は 、「 仕 事 と 子 育 て な ど の 家 庭 生 活 の 両 立 を 困 難 に し 、 少 子 化
の 原 因 や 、女 性 の キ ャ リ ア 形 成 を 阻 む 要 因 、男 性 の 家 庭 参 画 を 阻 む 原 因 と な っ て い る 」
こ と か ら 、 長 時 間 労 働 の 是 正 を 進 め る 方 針 で す 。 さ ら に は 、 高 齢 者 の 7 割 近 く が 65
歳 を 超 え て も 働 き た い と い う 希 望 を 持 っ て い る こ と を 踏 ま え 、高 齢 者 の 就 労 促 進 に 向
け て 、6 5 歳 以 降 の 継 続 雇 用 延 長 や 6 5 歳 ま で の 定 年 延 長 を 行 う 企 業 に 対 す る 支 援 な ど
を実施していく方針です。
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
「 希 望 出 生 率 1.8」 の 実 現 に 向 け て は 、 保 育 の 受 け 皿 を 整 備 す る こ と が 必 要 で あ り 、
保 育 人 材 を 確 保 す る こ と が 不 可 欠 で す 。こ の た め 、保 育 士 の 月 給 を 2% 引 き 上 げ る と
と も に 、保 育 士 と し て の 技 能 ・ 経 験 を 積 ん だ 職 員 に つ い て は 、全 産 業 平 均 の 女 性 労 働
者 と の 賃 金 格 差( 4 万 円 程 度 )を 解 消 す べ く 、追 加 的 な 処 遇 改 善 を 行 う と し て い ま す 。
こ う し た こ と に よ り 、9 万 人 の 保 育 人 材 を 確 保 し 、 待 機 児 童 解 消 を 実 現 す る と し て い
ます。

こ の ほ か 、共 働 き 家 庭 な ど が 抱 え る「 小 1 の 壁 」と い っ た 問 題 に 対 応 す る た め 、2 0 1 9
年 度 末 ま で に 放 課 後 児 童 ク ラ ブ で 30 万 人 の 追 加 的 な 受 け 皿 整 備 を 進 め る と し て い ま
す 。ま た 、家 庭 の 経 済 事 情 に 関 係 な く 、希 望 す れ ば 誰 で も 大 学 な ど に 進 学 で き る よ う 、
奨学金制度の充実を図るとされています。

「 介 護 離 職 ゼ ロ 」の 実 現 に 向 け て 、鍵 を 握 る の は 人 材 の 確 保 で す 。高 齢 化 の 進 展 を 背
景 に 介 護 サ ー ビ ス へ の 需 要 の 増 加 が 続 く 一 方 、介 護 人 材 の 賃 金 は 他 の 産 業 と 比 べ る と
低 い こ と な ど か ら 、人 手 不 足 の 状 況 が 続 い て い ま す 。こ の た め 、人 材 の 確 保 に 向 け て 、
2017 年 度 か ら キ ャ リ ア ア ッ プ の 仕 組 み を 構 築 し 、 月 額 平 均 1 万 円 相 当 の 改 善 を 行 う
ほ か 、多 様 な 介 護 人 材 の 確 保 に 向 け て 、離 職 し た 介 護 職 員 が 再 び 介 護 職 に 就 く 場 合 の
20 万 円 の 再 就 職 準 備 貸 付 制 度 な ど の さ ら な る 充 実 や 、 高 齢 人 材 の 活 用 を 図 る と し て
い ま す 。 こ う し た 取 り 組 み に よ り 、2 5 万 人 の 介 護 人 材 を 確 保 す る こ と を 目 指 し ま す 。

保 育 、介 護 と も に 処 遇 改 善 を 通 じ て 、必 要 な 人 材 を 確 保 し よ う と し て い ま す が 、非 製
造業を中心に人手不足感が強い中、実際に人材を確保できるかが課題となります。
図表4.ニッポン一億総活躍プランの概要
○非正規雇用者の待遇改善
・同一労働同一賃金の実現に向けた非正規雇用者の賃金改善
○最低賃金の引き上げ
・最低賃金を年3%引き上げ、全国加重平均で1000円となることを目指す
○高齢者雇用の促進
・働く希望を持つ高齢者の雇用の促進
○長時間労働の是正
・時間外労働規制の在り方について再検討の開始
○子育て支援の充実
・保育の受け皿確保、保育士確保に向けた待遇改善も含めた総合的な取組の推進
○奨学金制度の充実
・大学生等向けの給付型奨学金の創設に向けて検討
○介護支援の充実
・介護の受け皿確保、介護人材確保に向けた待遇改善も含めた総合的な取組の推進
(出所)一億総活躍国民会議「ニッポン一億総活躍プラン」をもとに作成
Q4.社会保障を充実させるための財源はどうなっていますか?

社 会 保 障 を 充 実 さ せ る 政 策 に 対 し て 、安 定 財 源 を 確 保 す る こ と は 、財 政 赤 字 を 拡 大 さ
せ な い と い う 点 だ け で な く 、政 策 の 持 続 性 と い う 点 で も 重 要 と 考 え ら れ ま す 。安 定 的
な 財 源 の 裏 付 け が な い 政 策 は 、財 源 の 確 保 が 難 し く な っ た 時 点 で 、政 策 の 規 模 が 縮 小
される可能性があるからです。
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
ニッポン一億総活躍プランに盛り込まれた、保育人材、介護人材の報酬の改善には
2 0 0 0 億 円 の 財 源 が 必 要 と み ら れ て い る よ う で す 。骨 太 の 方 針 2 0 1 6 で は 、子 育 て 支 援・
家 族 支 援 等 の 充 実 と い っ た 歳 出 の 増 加 を 伴 う 政 策 に つ い て は 、適 切 な 安 定 財 源 を 確 保
するとしていますが、具体的な財源が明記されているわけではありません。

安 倍 首 相 は 、議 長 と し て と り ま と め た 伊 勢 志 摩 サ ミ ッ ト の 首 脳 宣 言 の 中 の 、世 界 経 済
の 危 機 を 回 避 す る た め に 財 政 政 策 を 機 動 的 に 実 施 す る と い う 方 針 に 基 づ き 、消 費 税 率
の 1 0 % へ の 引 き 上 げ 時 期 を 2 0 1 7 年 4 月 か ら 2 0 1 9 年 1 0 月 に 延 期 す る こ と 、今 年 秋 に
「 総 合 的 か つ 大 胆 な 経 済 対 策 」 を 実 施 す る こ と を 表 明 し ま し た 。 消 費 税 率 の 10% へ
の 引 き 上 げ は 、 安 倍 首 相 の 判 断 に よ っ て 2015 年 10 月 か ら 2017 年 4 月 に 延 期 さ れ て
いましたので、当初の予定からは 4 年延期されることになります。

消 費 税 率 引 き 上 げ に よ る 増 収 分 は 、低 所 得 の 年 金 受 給 者 へ の 年 6 万 円 の 福 祉 的 給 付 金
の 支 給 な ど 、社 会 保 障 の 安 定 や 充 実 に 使 わ れ る こ と に な っ て い ま し た 。し か し 、消 費
税 率 の 引 き 上 げ 時 期 の 延 期 に よ り 、そ の た め の 財 源 を 確 保 す る こ と が で き な く な り ま
す。

骨 太 の 方 針 2 0 1 6 で は 、 財 政 健 全 化 に 関 し て 、2 0 2 0 年 度 ま で に 国 と 地 方 の 基 礎 的 財 政
収 支 を 黒 字 化 さ せ る 目 標 が 引 き 続 き 掲 げ ら れ て い ま す が 、内 閣 府「 中 長 期 の 経 済 財 政
に 関 す る 試 算 」( 2 0 1 6 年 1 月 ) に よ る と 、 達 成 は 難 し い 状 況 で す ( 図 表 5 )。 消 費 税
率 の 引 き 上 げ の 延 期 が 表 明 さ れ た 中 、安 定 的 な 財 源 を 確 保 で き な い ま ま 、社 会 保 障 を
充 実 さ せ る 政 策 を 実 施 し よ う と す れ ば 、他 の 政 策 経 費 を 削 減 し な い か ぎ り 、財 政 赤 字
が 拡 大 す る 可 能 性 が 高 く な り ま す 。消 費 税 率 引 き 上 げ に よ る 増 収 を 財 源 に 実 施 す る 予
定 だ っ た 社 会 保 障 の 充 実 の た め の 政 策 の 実 施 時 期 を は じ め 、歳 出 、歳 入 の 見 通 し を 再
検討したうえで、財政健全化に向けた道筋を明らかにする必要があると考えられま
す。
図表5.国と地方の基礎的財政収支についての内閣府の試算
(兆円)
2
(黒字化)
0
-2
①ベースラインケース:中長期的な実質経済成長率は1%弱
-4
②経済再生ケース:中長期的な実質経済成長率は2%以上
6.5兆円
-6
-8
5.9兆円
-10
-12
(12.4兆円)
-14
-16
-18
(16.6兆円)
2015
2016
2017
2018
2019
2020
(年度)
(注)復旧・復興対策の経費及び財源の金額を除いたベースで、消費税率は2017年4月に10%に
引き上げることを前提としたもの
(出所)内閣府「中長期の経済財政に関する試算」(2016年1月21日)をもとに作成
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− ご利 用 に際 して −

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を保 証 するものではありません。

また、本 資 料 は、執 筆 者 の見 解 に基 づき作 成 されたものであり、当 社 の統 一 的 な見 解 を示 すものではありま
せん。

本 資 料 に基 づくお客 様 の決 定 、行 為 、及 びその結 果 について、当 社 は一 切 の責 任 を負 いません。ご利 用 に
あたっては、お客 様 ご自 身 でご判 断 くださいますようお願 い申 し上 げます。

本 資 料 は、著 作 物 であり、著 作 権 法 に基 づき保 護 されています。著 作 権 法 の定 めに従 い、引 用 する際 は、
必 ず出 所 :三 菱 UFJリサーチ&コンサルティングと明 記 してください。

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