(特別管理事項-怠るな-8)大板ガラス・カガミ貼りの設計・施工上の注意 改装前は店舗出入り口前のピロティとして自由歩行できた通路部分に、店舗を増床して喫茶 室とするため、大判ガラスの壁面としたところ、 夕刻、にわか雨を避けるため、うつむき加減に小走りで信号を渡って来た通行人が、改装間 もない喫茶室の大板透明ガラスに衝突して負傷した。 (通行人は歩行通路と思い込み、以前の習慣から走り込んだと思われる。) 透明ガラスは暗い方から明るい方を見ると一層、透明度が増してその存在が判別し難くなる ので、大板ガラスの使用にはその存在を明らかにする配慮が必要である。 ガラスを用いた開口部の「安全設計指針」(財)日本建築防災協会の規定によると、 1.安全なガラスの選定 合わせガラスの使用:丈夫な中間膜が破片の飛散を防ぐ。 2.衝突防止設計 ガラス開口部の面外方向に沿った両側各60cm の範囲に立ち入れないような建築 的な措置を講じる。 ガラスへの衝突を有効に防止しえる面格子、手摺り等を設置する。 3.備考 ガラスに文字、図形、目印を付けて視覚による衝突防止策は一般に確実な効果が期 待し難く、単独では安全設計と言えない。安全ガラスの選定や建築的措置の付加的 に講じるものであること。 45 又、前記の大判ガラスへの衝突と類似した事故で、ミラー貼り柱面への衝突事故も発生している。 大型店舗を改装した際に、昇りエスカレーター終着点付近の柱型をミラー貼り仕上げとしたとこ ろ、来館者が柱型の存在に気付かず(空間と錯覚して)、衝突した。 ミラーは周辺部の映り込みが通行人の目に入るので、使用する位置や角度によっては錯覚を起こ して、ミラーの存在に気付かず、空間と誤認して衝突する危険性がある。 また、外壁にステンレスの鏡面仕上げ等の反射する材料を使用する際にも、反射光が思わぬ方向 や距離まで届くので、近隣からのクレームにならぬよう慎重な検討が必要となる。この危険予知 は設計段階での重要事項となる。 1. 錯覚事故の防止 ■エスカレーター前のミラー貼柱に、買い物客が衝突。 ■夜間、通行人が外壁に貼ったミラーに道路の照明が映り、 あ たかも道があるような錯覚を起し、自転車で衝突。 2. 日光の反射等、近隣への迷惑防止 鏡面仕上げの外壁モニュメントが周辺の住居内へ反射してクレームが発 生、モニュメントを撤去させられた。 46 [※ガラスの熱割れ対策] 大判ガラスの設計施工上の注意のひとつに、ガラスへのシート(フィルム)貼りに 伴う「ガラスの熱割れの発生」がある。 最近の事例でもショールームの改装において店舗内側より工事用に目隠しシートを貼っ ていた際、日射によってシートを貼っている側と貼っていない側の膨張率の差などからガ ラスの熱割れのが発生し、対象となったガラスが国内でも有数の大判ガラスであったため、 ガラス交換が多額となり、納期も相当な日数を要すという大きな問題となった。 この事例以外でも、商業施設でのバックヤードとなるガラス面に、目隠し用にシート貼 りを行った際に、熱を吸収するタイプを使用したため、膨張・熱割れが発生するなど過去 数件発生している。外部サッシュのガラスの場合、交換が大変困難となる。ガラスにシー ト(フィルム)を貼る際は、各シートメーカーに使用部位、機能(何のために貼るものか) を確認し、事前の熱割れに対する検討を依頼して選定を行う事。 各メーカーにて、使用部位や用途、方位などの情報を基に、熱割れ検討を行ってもらえ るので、メーカー担当者へ連絡し検討依頼を行う事。 熱割れ計算フォームの[例] 住友スリーエム (事前登録が必要です。) http://www.mmm.co.jp/cmd/scotchtint/professional/calculation/index.html 47
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