Title 巻頭言 : 看護を大学で学ぶということ Author(s)

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巻頭言 : 看護を大学で学ぶということ
石本, 章子
大阪大学看護学雑誌. 5(1) P.1-P.1
1999-03
Text Version publisher
URL
http://hdl.handle.net/11094/56723
DOI
Rights
Osaka University
大 阪 大 学 看 護 学 雑 誌VoL5Nol(1999)
巻
頭
言
看 護 を 大 学 で 学 ぶ と い う こ と
LEARNINGNURSINGATUNIVERSITY
昭 和27年
に 日本 で 最 初 の看 護 系大 学 が 設 立 さ れ て以 来、 多 くの看 護 教 育 従事 者 が そ の 増 設 に努 力 を重 ね た
に もか か わ らず 、 平 成4年 まで の設 立 は 学 部 で も わず か に10校
大 学 設 立 の気 運 は急 速 に高 ま り、 平 成11年
に過 ぎ な か っ た。 そ れ が 平 成4年 か ら看 護 系
度 中 に は、 学 部 だ け で も100校
に迫 ろ う と して い る。
今 回 の変 革 は、 自 らの努 力 で勝 ち取 っ た結 果 とは 言 い難 い た め に 、将 来 展 望 が 明確 で な か った り、看 護 教 員
の確 保 に多 大 な エ ネ ルギ ー を消 耗 す るな どの本 末 転 倒 も起 こ りかね な いが 、最 終学 歴 が 専 修 学 校 の た め修 士 課
程 へ の進 学 は お ろ か大 学へ の編 入 学 の道 さ え 閉 ざ され て い た 看 護 婦 に とっ て は朗 報 で あ る。 さ らに、専修 学 校
卒 業 生 の大 学 編 入学 制度 が 開 かれ る な ど、看 護 婦 に よ り高 度 な学 習 の場 が 提 供 され た の は嬉 しい こ とで あ る。
第 二 次 大 戦 後 、 米 国 の 占領 政 策 下 で看 護 制度 が検 討 され た とき、 高等 女 学 校 卒 業 を入 学 資 格 と し、将 来 は大
学 に発 展 させ る 展望 を もっ た教 育 制度 が 提 示 さ れ た が、 日本 の現 状 に合 わ な い との こ とで 現 在 の制度 が 発 足 し
た といわ れ る。 そ れ か ら50年
に して よ うや く看 護 婦 の た め の大 学 教 育 が 緒 につ い た 訳 で 、 実 に永 い歴 史 で あ
っ た。
看 護 を大 学 で 学 ぶ こ との 第 一 の 利点 はや は り学 歴 で あ ろ う。一 般 社会 の 高学 歴 化 の 中 で、看 護 を選 択 す る者
の ご く少 数 に しか 大 学 進学 の機 会 が与 え られ な か っ た。 そ の た め、 向学 心 に燃 え た看 護 婦 は 、専 修 学校 卒 業 と
い う学 歴 にあ る種 の 負 い 目 を以 て、 学 位 や修 士 取 得 にエ ネ ル ギ ー を 費や さね ば な らな か った 。 しか し、 看護 系
大 学 の増 加 に よ る学 歴 取得 によ っ て看 護 婦 は、 よ うや く専 門 職 に伍 す る た め の必 要 条 件 を備 え た と いえ よ う。
次 に大 学 で 学 ぶ こ と 自体 の意 味 が 大 き い。12世
紀 後 半 にイ タ リアの ボ ロ ーニ ャに 世 界 最 初 の 大学 が 出現 し
た とき、 勉 学 へ の情 熱 に燃 えて い た学 生 の 「
学 ぶ こ と」 へ の 渇 望 が 、教 師 の 「
教 え る こ と」 へ の情 熱 を は る か
に凌 駕 して いた ので 、学 生 が 大 学 を支 配 して 教 師 を従 属 させ 、 教 師 は 「
栄 誉 あ る従 属 」 に甘 ん じて い た とい わ
れ る。現 在 の学 生 にそ のよ うな 情 熱 が あ るか は 別 と して 、看 護 学 を 目指 す 学 生 た ち は 、単 な るモ ラ トリア ム で
は な く 目的 を以 て選 択 して い る。 そ の よ う な学 生 が 、 大 学 の環 境 とフ ィ ロ ソ フ ィ ー の元 で、 「
看 護 学 」 を学 ぶ
こ との意 味 は 、 近 い将 来 看 護 の 世 界 に還 元 さ れ る もの と期 待 して い る。
21世 紀 は 女性 の 時代 で あ る と いわ れ る。ス イ ス で 女 性 大 統 領 が 誕 生 し、米 国 で もそ の可 能 性 が ある と聞 く。
変 貌す る 医 療 環 境 に あ って 、女 性 が 大 多 数 を 占 め る看 護 婦 に も従 来 とは異 な った 重 要 な 役 割 が 期 待 され る こ と
にな ろ う。そ の よ う な 中で 、一 部 の選 ば れ た 人 た ちが 男 性 と伍 して い くだ けで は な く、 自然 体 で 医 療社 会 の重
要 な位 置 を 占 め る こ とが で き る看 護 婦 が 増 え て 初 め て 、看 護 を大 学 で学 ぶ こと の意 義 が 明 らか にな る で あ ろ う。
平 成11年1月
大 阪大 学 医学 部 保 健 学 科
看 護 学 専 攻 主任
一1一
石
本
章
子