Title 被災した乳幼児の心理的ケアニーズの分析

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被災した乳幼児の心理的ケアニーズの分析
鎌田, 佳奈美; 鈴木, 敦子; 楢木野, 裕美; 鈴木, 泰子
大阪大学看護学雑誌. 4(1) P.27-P.34
1998-03
Text Version publisher
URL
http://hdl.handle.net/11094/56835
DOI
Rights
Osaka University
幽
大 阪 大 学 看護 学 雑 誌VoL4No.1(1998)
被 災 した乳 幼 児 の心 理 的 ケ アニ ー ズ の分 析
鎌
田 佳奈美*・鈴
木 敦
子*・楢木野
裕
美**・鈴
木
泰
子*
ANALYSIS OF MENTAL HEALTH CARE NEEDS FOR INFANTS AND PRESCHOOL CHILDREN AFTER THE HANSIN-AWAJI EARTHQUAKE Kanami
Kamata,
Atsuko
Suzuki,
Hiromi
Naragino,
Yasuko
Suzuki
Abstract
The purpose
devastating
sufferers
of this study
Hanshin
area after
complains
reconstruction
in
earthquake.
relation
to
the
term, from 370 nurses
observed
2. Infants
a higher frequency
showed
sequent
problems
Mental
sequent
was answered
was based
phases,
of mental
observed
as
who took care of the
of the questionaire
early,
The results
six after the
confusion,
regarding
recovery,
and
are as are as follows:
problems.
problems
immediately
by 948 nurses
on the answers
designated
aged under
than did toddlers.
after the earthquake
and continuing
throughout
any
damage
to the mental
confusion,
higher
aged under
and preschool
with the mother
of mothe's
responce
care should be performed
in children
: infants
by consulting
as 'recognition
significantly
mental
care during
recovery,
and reconstruction
term
term.
designated
showed
In conclusion,
response
care was performed
care
toddlers,
Keywords
Analysis
had some kinds of mental
were
showed
than early
5. The mental
mental
Questionaire
care for children
term after the earthquake.
4. All of children
rather
of mental
who took care of children.
1. 30.2% children
3. The mental
the necessity
area after the earthquake.
in Hanshin
mental
is to identify
for infants
and
infants
'playing
and toddlers.
together'
for
and characteristic
of
than did others.
under the recognition
six experienceing
children,
complains'
of conventionally
mental
the devastating
health
要
of the severity
earthquake.
care needs, earthquake,
nursing
care
旨
阪 神 大 震 災 で 被 災 した乳 児 の心 理 的 ケ ア ニ ー ズ を 明 らか に す る た め 、救 援 活 動 を行 っ た看 護 職 を対 象 に質 問 紙
を作 成 し回答 を得 た。 こ の うち子 ど もに か か わ りの あ っ た370人
の 回答 を発 達 段 階 別 お よび 、震 災 後 の 各 時 期 に
お け る症 状 の特 徴 を み た 。
1.か
か わ りの あ っ た乳 児 ・幼 児 の30.2%に
何 らか の 精神 的 症状 が み られ た。
2.精
神 的症 状 は 、乳 児 と幼 児 で比 較 す る と乳 児 の方 が 有 意 に 多 か っ た 。
3.精 神 的症 状 は 、「震 災 直 後 」 か ら30~40%程
度 認 め ら れ、 「混 乱 期」 「脱 混 乱 期 」 「復 興 期 」 を通 してそ の
数 に 変化 は み られ な か っ た 。
*大 阪大学 医学 部保健学科**大
阪府立看護大学
_27_
大 阪大 学 看 護学 雑 誌Vo1.4No.1(1998)
4.乳 児 ・幼児 と もに、 「
混 乱 期 」 「脱 混 乱 期 」 「復 興 期」 に比 べ 、 「震 災 直 後 」 の精 神 的 ケ ア の効 果 は有 意 に低
か った 。
5.乳 児 ・
幼 児 に 対 す るケ ア は、母 親 を通 して の もの が 多 く、「母 親 の 訴 えを よ く聴 く」 ケ ア は他 の ケ ア に比 べ
有 意 に効 果 が あ っ た。 そ れ に加 え 、幼 児 へ は 「
一 緒 に遊 ぶ」 ケ ア が効 果 的 で あ っ た。
本 研 究 か ら、 被 災 した乳 児 ・
幼 児 の精 神 的影 響 は幼 い ほ ど大 き く、 そ の発 達 段 階や 回復 過 程 に よ っ て子 ど もの
ケ ア ニ ー ズ に違 い が あ る た め、 そ れ らを 十分 理解 した上 で ケ ア に あ た る必 要 性 が 示 唆 され た。
キ ー ワ ー ド:乳
児 ・幼 児 、 心 理 的 ケ ア ニ ー ズ 、 震 災 、 看 護 ケ ア
ら救 援 活 動 に派 遣 さ れ た看 護 職 、 お よ び大 阪 府 看 護協 会
は じめ に
を 通 じ ボ ラ ン テ ィア と して活 動 した 看 護 職 全 員 で あ る 。
未 曽 有 の 被 害 を 及 ぼ した 阪神 ・淡 路 大 震 災 か ら3年 が
子 ど も にみ られ た精 神 的症 状 とお こ な っ た ケ ア に つ い て
経 過 し よ う と して い る。 そ の規 模 の 大 き さ に、 多 くの大
は 該 当 す る もの す べ て を 選 択 し、 か か わ っ た子 ど もの 数
人 た ち が恐 怖 と不 安 に直 面 し余 裕 を失 っ た 。 一 方 、「しか
を記 入 して も らっ た。 ケ ア の 効 果 は、 ケ ア直 後 の子 ど も
し子 ど も は元 気 」 と も一 部 の新 聞 で は報 じ られ て い た。
や 母 親 の反 応 か ら看 護 者 自身 が 判 断 した もの で あ り、 子
しか し、 子 ど もは状 況 の 異 様 さや 親 の 反 応 に鋭 い感 受 性
ど もが 複 数 の場 合 は 総 合 的 に評価 して も らった 。
を もっ て お り、震 災 か ら受 け た影 響 は非 常 に大 きか っ た
は ず で あ る。 事 実 、 震 災 か ら2年 以 上 を経 過 した現 在 に
∬
結
果
お い て も、 以 前 に は み られ な か っ た 症 状 を示 す 子 ど もは
多 いi)0子 ど も は幼 けれ ば幼 い ほ ど母 親 に ケ ア を 委 ね な け
1.対
れ ば な らな い 。 しか し、 今 回 の よ う に 母 親 が 恐 怖 体 験
対 象 の 属 性 は 表1に
に直 面 す る こ と は 、 彼 ら 自 身 が よい ケ ア 提 供 者 と は な
(51.9%)、
りえ ず 、 子 ど もは 想 像 以 上 に心 的 外 傷 後 ス ト レス 障 害
(post-traumaticstressdisorder,以
下PTSDを
象 の 属 性
示 し た 。 職 種 は 看 護 婦 が192人
保 健 婦 が153人(41.3%)で
、両 者 で そ の ほ
と ん ど を 占 め て い た 。看 護 婦 の う ち小 児 看 護 の 経 験 の あ
略 す)に
る も の は100人(27.0%)に
過 ぎ なか っ た 。救 援 活 動 の
陥 りや す い こ とが 指 摘 され て い る2)。そ の た め 、被 災 した
場 所 は 、 西 宮 市147人(33.9%)が
子 ど もは早 期 か ら の適 切 な ケ ア を必 要 と して い るが 、 乳
戸 市 中 央 区127人(29.3%)神
戸 市 灘 区80人(18.4%)
幼 児 は幼 す ぎ るの で 現 実 を認 識 で きな い と考 え られ て お
が 中 心 で 、 こ れ ら で 全 体 の8割
を占めた。活動時期 を、
り、 乳 幼 児 に お け る震 災 の 心 身 へ の影 響 や ケ ア に 関 す る
震 災 直 後(平
研 究 は ほ とん どな され て い な い3)。また 、救 護 活 動 に参 加
後 」、 同 年1月25日
した多 くの看 護者 も戸 惑 い を感 じて い た4)-6)。
1日 ~2月29日
本 研 究 の 目 的 は、 被 災 した乳 幼 児 の ケ ア ニ ー ズ を明 ら
月半 を4期
間 後 を 「震 災 直
を 「混 乱 期 」、 同 年2月
を 「脱 混 乱 期 」、 同 年3月1日
に分 け、 各 時 期 毎
は 、1日
の み が208人(56.0%)で
と345人(92.9%)で
2.子
~4月30
に わ け た。 活 動 の 中 心 を担 っ た の
「復 興 期 」 は 保 健 婦99人(..・%)で
の精 神 的症 状 の 特 徴 も あ わせ て検 討 した 。
1研
~1月31日
ら1週
は 、 「震 災 直 後 」 は 看 護 婦37人(71,1%)で
症 状 の特 徴 と彼 らが 受 け た ケ ア とそ の 効 果 を分 析 した。
また 、震 災 直 後 か らの3カ
成7年1月17日)か
日 を 「復 興 期 」 の4期
か に す る こ と で あ る 。Fその た め、 発 達 段 階 に よ る精 神 的
最 も多 く、 次 い で 神
あったが、
あ った 。 活 動 日数
、2日 、3日
を加 え る
、計1508人
の子 ども
あ った 。
ども の心 の 状 況
究方法
看 護 者 は 乳 児523人
、幼 児985人
とか か わ っ て い た。 そ の な か で 精 神 的症 状 を示 し て い た
阪神 大 震 災 の救 援 活 動 に お い て 子 ど も とか か わ っ た看
の 結果 を分 析 した 。 被 災 した 乳 児 ・幼 児 の心
の は456人(30.2%)で
、 乳 児 は188人(35.9%)、
の状 態 お よ び 精神 的 ケ ア とそ の 効 果 に 関す る調 査 を 震 災
で は268人(27.2%)で
、 両 者 の 間 に はP〈o.00iで
の 約7カ
差 意 が あ っ た(表2)。
護婦370人
月後 に質 問 紙 に よ りお こ な っ た。 調 査 対 象 は大
阪 府 下 の47病
幼児
有
時 期 別 にみ る と、 「
震 災 直 後」 に
精 神 的 症 状 を 示 し て い た 子 ど も が 最 も 多 く、 時 期 の 経 過
院、29大 阪 府 保 健 所 、13市 町 村 保 健 所 か
一28一
大 阪 大 学 看 護 学 雑 誌Vo1.4N(Ll(1998)
表1対
象の属 性
(%)
職種
N=370
活動 場所
看護婦
192(51.9)
西宮 市
147(33.9)
保 健婦
153(41.3)
神 戸 市 中央 区
127(29.3)
助産 婦
17(4.6)
神戸 市東 灘 区
80(18.4)
そ の他
8(2.2)
芦屋市
34(7.8)
神 戸 市長 田 区
13(3.2)
神 戸 市須 磨 区
9(3.0)
な し270(73.0)
豊 中市
8(1.8)
ユ年 未 満35(9.5)
宝塚 市
7(3.7)
そ の他
16(1.6)
小 児 看 護 経 験 年 数N=370
1~3年
未 満20(5.4)
3~5年
末 満13(35)
D
5年 以 上32(8.6)
D
活 動 時期 と職種
職 種/活
動 時 期
震 災 直 後N=52混
乱 期N=62脱
混 乱 期.,復
興 期N=148
看 護 婦
37(71.1)
38(61.3)
103(56.0)
43(29.1)
保 健 婦
ユ4(26.9)
16(25.8)
69(37.5)
99(66.9)
そ の他
1(2.0)
8(12.9)
12(6.5)
6(4.0)
表2発
達段階 と時期別精神 的症状数
(%)
合計
復興期
乳 児N=80幼
児N=138
乳 児N=62幼
児N=158
乳 児N=181幼
児N=353乳
児N=200児N=336
乳 児N=523幼
児N=985
精 神症 状 を
呈 した人数
33(41.3)43(31.2)
24(38.7)42(26.6)
53(29.3)97(27.5)
78(39.0)86(25.6)'
188(35.9)268(27.2)**'
***p<0
.001*p<0.05
と と も に 減 少 傾 向 で あ っ た 。 し か し、 乳 児 は 、 「震 災 直
の発 達段 階 に戻 る こ と を い う。 乳 児 の症 状 で 最 も多 か っ
後 」 の41.3%か
た の は 、表3に 示 す よ うに 「泣 き止 ま な い」 「物 音 で 起 き
ら 「脱 混 乱 期 」 は29.3%と
が 、 「復 興 期 」 に 再 び39.0%と
減 少 して い た
増 加 の 傾 向 を示 して い た 。
る」「お び え る」「噛 み つ く」の 過覚 醒 の症 状 が84人(16.0
乳 児 と幼 児 を 比 較 す る と 、 ど の 時 期 に お い て も精 神 的
%)で
症 状 を 示 し て い た の は 乳 児 に 多 く、 特 に
て も笑 わ な い」 な ど狭 窄 の症 状 が73人(14.6%)で
P<0.05で
た 。 また 、31人(6.2%)に
有 意 差 が み られ た 。
子 ど も が 示 し た 精 神 的 症 状 を 、Hermanの
hyperarousal」
の3カ
「復 興 期 」 で は
「侵 入 一intrusion」
、次 い で 「ミル ク を飲 まな い」 「無 表 情 」 「あ や し
「過 覚 醒 一
「狭 窄 一constriction」
テ ゴ リ ー7)に 「退 行 現 象 」 を加 え4分
あっ
退 行 現 象 が み られ た が 、 乳
児 で は侵 入 に該 当 す る症 状 を 明確 に 得 るの が 困 難 な た め
不 明 と して 対 処 した。 ど の症 状 も発現 時 期 で 有 意 な差 は
類 し、 そ の 特
徴 をみ た。 過 覚 醒 症 状 と は常 に 危 険 に備 え神 経 が 高 ぶ っ
なか った 。
一 方 、幼 児 の 症 状 は表4に 示 した よ う に、 最 も多 か っ
て い る状 態 、 侵 入 症 状 とは何 の 誘 因 もな し に外 傷 体 験 が
た の は 「親 に ま とわ りつ く」「過 度 の甘 え」 な どの退 行 現
意 識 に 表 れ 再 体 験 す る こ と、 狭 窄 症 状 と は無 力 と な り無
象 で100人(10.2%)で
あ った 。 次 い で 「物 音 で起 き る」
「暗 や み を 怖 が る」 「
癇 癪 を起 こす 」 の 過 覚 醒 の 症 状85
感 覚 反 応 を 反映 した もの をい う。 ま た、 退 行 現 象 は以 前
_29_
大 阪 大 学看 護 学雑 誌Vo1.4No.1(1998)
表3時
期 による乳 児の精神 的症状
(/)
症状/時 期
震 災 直 後N=80混
過
泣 き 止 ま な い、 物 音 で 起 き る
覚
お び え る、 噛 みつ く16(20.0)
乱 期N=62脱
混 乱 期N=181復
興 期N=200合
計N=523
11(17.7)21(11.6)36(18.0)84(16.0)
醒 、
侵
.h
狭
ミル ク を 飲 ま な い 、 無 表 情
窄
あ や して も笑 わ な い10(12.5)
9(14.5)23(12.7)31(15.5)73(14.6)
.勳 二.う.と.レ1ない 謡..物に 触 れ な い
退
行
7(8.8)
母 親 に しが み つ く
4(6.5)
表4時
症状/時 期
9(5.0)11(5.5)31(6.2)
期によ る幼児の精 神的症状
震 災 直 後N=138混
乱 期N=158脱
混 乱 期N=353復
興 期N=336合
計N=985
過 物 音で起 き る、暗や みを怖 が る
覚 癇癪 を起 こす
醒
11(8.0)
12(7.6)
28(7.9)
34(10.1)
85(8.6)
4(2.9)
3(1.9)
5(1.4)
2(0.6)
14(1.4)
14(10.1)
12(7.6)
23(6.5)
20(6.0)
69(7.0)
15(9.5)
41(11.6)30(8.9)
侵 常 同行 動
入
狭 食 行動 の変 調 、無 口 ・無表 情
窄 遊 ぼ う と しな い
退 親 にま とわ りつ く、 過度 の甘 え
14(10.1)
行 夜 尿 をす る よ うにな る
表5時
100(10.2)
期 と症 状による発達段階 での比較
(%)
震災直後
乳 児N=80幼
過覚 醒
侵入
混 乱期
児N=138
乳 児N=62幼
11(17.7)
16(20.0)11(8.0)**
0
04(2.9)
脱 混乱期
児N=158
乳 児N=181幼
児N=353
復興 期
乳 児N=200幼
合計
児N=336
乳 児N=523幼
児N=985
12(7.6)拿
21(11.6)
28(7.9)
36(18.0)34(10.1)
84(ユ6。8)85(8.6)掌*象
3(1.9)
0
5('1.4)
02(0.6)
014(1.4)
31(15.5)20(6.0)***
73(14.6)69(7.0)桑
11(5.5)30(8.9)
31(6.2)100(10.2)*零
狭窄
工0(12.5)14(10.1)
9(14.5)
12(7.6)
23(12.7)
23(6.5)`
退行
7(8.8)14(10.1)
4(6.5)
15(9.5)
9(5.0)
41(11.6)
卓卑
xxxPく0 .001索*Pく0.01零P〈0.05
人(8.6%)、
「食 行 動 の 変 調 」 「無 口 ・無 表 情 」 な ど狭 窄
の症 状69人(7.0%)、
14人(1.4%)で
(50.6%)の
侵 入 の症 状 と して 「常 同 行 動 」が
計948人
に 対 し、 直 接 ま た は 母 親 を 通 し て
精 神 的 ケ ア が な さ れ た 。 乳 児 に お こ な わ れ た ケ ア を 表6
あ っ た 。 い ず れ の 症 状 も 「震 災 直 後 」
に 示 し た 。 最 も多 か っ た の は 「母 親 の 訴 え を聴 く」83人
か らみ られ て い た 。 表5に 乳 児 と幼 児 の症 状 の比 較 を示
(15.9%)で
、 次 い で 「母 親 を 励 ま す 」69人(13.2%)で
した 。 どの 時 期 に お い て も過 覚 醒 症 状 と狭 窄 症 状 は乳 児
あ っ た 。 そ の 他 と して は 「
母 親 にケ ア方 法 を 説 明 す る」
に多 く、全 体 で 有 意 差 が あ っ た(P<o.00i)。
53人(10.1%)、
厂母 親 の 疲 労 を 軽 減 す る 」36人(6.9%)、
「症 状 の 原 因 を 母 親 に 話 す 」28人(5.4%)と
3.子
どもへの心のケ ア
乳 児523人
中450人(86.0%)、
て の ケ ア が 中 心 で 全 体 の6割
幼 児985人
中498人
母 親 を通 し
近 くを 占 め て い た 。 直 接 子
ど も に 対 す る ケ ア は 、「子 ど も に 言 葉 を か け る 」58人(11.1
一30一
大阪大学看護学雑誌Vo1.4No.1(..;)
%)が
最 も 多 く、 「子 ど も に タ ッ チ ン グ 」45人(&6%)は
で あ っ た 。 表7に
示 す よ う に 、 幼 児 へ の ケ ア も6割
、 「子 ど も の 言 う こ と を 聴 く」63人(6.4%)、
以上
遊 ぶ 」53人(5
が 母 親 を通 して の ケ アで あ っ た。 子 ど もに な され た ケ ア
表6乳
.4%)な
どが 中 心 で あ っ た。 時 期 に よる
ケ ア の 特 徴 は 、 乳 児 ・幼 児 の い ず れ に も み ら れ な か っ た 。
児 へ の 精 神 的 ケア と時 期
MA(%)
精神 的ケア/時 期
震 災 直 後N筥80混
乱 期N=62
脱 混 乱 期N=181復
興 期N=200合
計N=523
母親の訴えをよ く聴 く
13(16.3)
14(22.6)
26(14.4)
30(15.0)
83(15.9)
母親を励ます
11(13.8)
8(12,9)
22<i2.z>
28(14.0)
69(13.2)
子 どもに言葉をかけ る
7(8.8)
io(i6.i>
20(11.0)
21(10.5)
ss<ii.i)
母 にケア方法を説明す る
7(8.8)
9<i4s)
18(9.9)
19(9.5)
53(10.1)
子 どもにタッチ ング
5(6.3)
8(12.9)
15(8.3)
17(8.5)
45(8.6)
母親の疲労を軽減す る
5(6.3)
5(8.1)
12(6.6)
14(7.0)
36(6.9)
子どもの発語 に応答す る
3(3.8)
5(8.1)
ii<6.i)
14(7.0)
33(6.3)
声の調子 を変え話す
4(5.0)
s<s.i>
9<s.o>
13(6.5)
31(5.9)
症状 の原 因を母 に話す
5(6.3)
6(9.7)
8(4.4)
9(4.5)
28(5.4)
他機 関へ連絡 ・鍛送す る
4(5.0)
3(4.8)
4(2.2)
3(1.5)
14(2.7)
64(80.0)
73(117.7)
小計
表7幼
145(80.1)
168(84.0)
450(86.0)
児 へ の精 神 的 ケ ア と時 期
MA(%)
精神的ケア/時 期
震 災 直後N=138混
乱 期N=158脱
混 乱 期N=353復
興 期N=336合
計N=985
母親 の訴 え を よ く聴 く14(10.1)
14(8.9)
30(8.5)
36(10.7)
94(9.5)
母 親 を励 ます12(8.7)
10(6.3)
25(7.1)
28(8.3)
75(7.6)
子 ど もの言 うこ とを聴 く8(5.8)
11(7.0)
25(7.1)
19(5,7)
63(6.4)
母 親 にケ ア 方 法 を 説 明す る11(8.0)
10(6.3)
z2<6.z>
17(5.1)
60(6.1)
9(5.7)
zo<sa>
18(5.3)
53(5.4)
症 状 を 母 親 に説 明 す る8(9.8)
フ(4,4)
13(3.7)
19(5.7)
47(4.8)
母 親 の疲 労 の 軽 減7(S.1)
3(1.9)
12(3.4)
15(4.2)
37(3.8)
子 ど もの 言 う こ とを 認 め る6(4.3)
5(3.2)
11(3.1)
11(3.3)
33(3.4)
問題 行 動 に と らわ れ な い5(3.6)
3(1.9)
2(0.6)
8(2.4)
18(1.8)
他 機 関へ 連 絡 ・鍛 送5(3.6)
2(1.3)
4(1.1)
7(2.1)
18(1.8)
一 緒 に遊 ぶ6(4
小計
.3)
82(59.4)
「一 緒 に
74(46.8)
一31一
164(46S)
178(53.0)
498(50.6)
大 阪 大 学 看 護 学 雑 誌Vo1.4No.1(1998)
表8乳
児 へ の 精 神 的 ケ ア と効 果
tvta(%)
精 神 的 ケ ア/効
果
母 親 の 訴 え を よ く聴 く
効 果 あ り
効 果 な し
合 計
零79(95.2)4(4.8)83(100)
母 親 を 励 ま す62(89.9)7(to.i)69(ioo)
子 ど も に 言 葉 を か け る43(74.1)is(25.9)58(100)
母 に ケ ア 方 法 を 説 明 す る 宰49(92.5)4(8.5)53(100)
子 ど も に タ ッ チ ン グ36(80.0)9(20.0)45(ioo)
母 親 の 疲 労 を 軽 減 す る28(77.8)8(22.2)36(100)
子 ど も の 発 語 に 応 答 す る28(84.8)5(IS.2)33(100)
声 の 調 子 を 変 え 話 す24(77.4)7(22.6)31(100)
症 状 の 原 因 を 母 に 話 す25(89.3)3(10.7)28(100)
他 機 関 へ連 絡
・搬 送 す る11(78,6)3(21.4)14(ioo)
寒P<o
表9幼
.os
児 へ の 精 神 的 ケ ア と効 果
MA(%)
精 神 的 ケ ア/効
果
効果あ り
効果な し
母 親 の 訴 え を よ く 聴 く料92(97.9)2(2.1)94(ioo)
母 親 を 励 ま す70(93.3)5(6.7)75(重00)
子 ど もの 言 う こ と を 聴 く50(79.4)13(21.6)63{ioo)
母 親 に ケ ア 方 法 を 説 明 穿 る50(83.3)10(16.7)60(100)
一 緒 に 遊 ぶ49(92
・5)4(7'5)53(ioo)
症 状 の 原 因 を 母 親 に 話 す40(85.1)7(14.9)47(100)
母 親 の 疲 労 の 軽 減30(81.重)7(is.9)37(iOO)
子 ど も の 言 う こ と を 認 め る28(84.8)6(童52)33(100)
問 題 行 動 に と ら わ れ な い*12(66.7)6(33.3)18(100)
他 機 関へ 連 絡
・搬 送13(722)5(27.8)18(100)
聯P<0
-32一
.01窯P<O.05
合計
大 阪 大 学 看 護 学 雑 誌Vol.4No.1(1998)
表10時
期 に よ るケ ア 効 果
(%)
震災直後
効果 あ り
混 乱期
効果な し
効果 あ り
効果な し
脱混 乱期
効果 あり
復興期
効 果な し
効果あ り
有 意差検定
効果な し
乳児
42(65.6)22(34.4)
68(93.2)5(6.8)
115(79.3)30(20.7)
160(95.2)8(4.8)
震 く 混 、 復ttf震
幼児
47(57.3)35(42.7)
69(93.2)5(6.8)
148(90.2)16(9.8)
169(95.0)9(5.0)
震 く混、脱 、復 牌 零
<.spく0
く 脱 掌 脱 く 混 、 復 ・s
.001**Pく0.01牢Pく0.05
精 神 的 ケ ア は 乳 児 ・幼 児 の い ず れ も よ い 効 果 を あ げ て い
る。 また 、Kolkが 指 摘 す る よ うに 、子 ど もは、Identity
た(表8、9)。
が 確 立 され て い な い し、 対 処 行 動 の レパ ー トリ ー も限 ら
な か で も 、 「母 親 の 訴 え を よ く聴 く」 が 乳
児 ・幼 児 と も に 他 の ケ ア に 比 べ 有 意 に 効 果 が あ っ た(P
れ て い るた め 、 トラ ウ マ の 影響 を受 け る リス クが 非常 に
<0.05)。
高 い の で あ るis)。
ま た 、 子 ど もへ の ケ ア で 効 果 的 で あ っ た の は 、
この よ う な状 態 の子 ど も に対 し、 多 くの看 護 者 は 「母
幼 児 に 対 す る 「一 緒 に 遊 ぶ 」 こ と で あ っ た 。 逆 に 、 あ ま
り効 果 が な か っ た の は 、 乳 児 へ の
「タ ッ
親 の 訴 え を聴 き」、 「母 親 を励 ま し」、 「母 親 に ケ ア 方 法 を
チ ン グ 」 と 、幼 児 へ の 「問 題 行 動 に と ら わ れ な い 」で あ っ
説 明 」 をお こ な っ た。 こ れ らの ケ ア に よ って 母 親 自身 の
た 。 ケ ア 効 果 を 時 期 別 で み て み る と(表10)、
心 の 癒 しの過 程 を促 せ た こ と は、母 親 へ の ケ ア効 果 に 示
児 ともに
「言 葉 か け 」 や
乳 児 ・幼
「
混 乱 期 」 か ら 「復 興 期 」 に 比 べ 、 「震 災 直 後 」
の ケ ア 効 果 が 有 意 に 低 か っ た(P<0.05~0.001)。
され て い る。 一 般 に、 震 災 に お け るス トレス は、 個 人 的
な危 機 と は異 な り、 環 境 そ の もの が 混 乱 す る こ とに よっ
て 大 き な 危 機 を も た ら す と い わ れ て い る17)。子 ど も に
皿
考
と っ て最 も身 近 な環 境 で あ り、 安 定 基 地 で あ る母 親 の た
察
だ な ら ぬ 情 動 を子 ど も は敏 感 に キ ャ ッ チ し、 危 機 に 陥
る18)。幼 い 子 ど もほ ど母 親 に依 存 して い る存 在 で あ る し、
震 災 後 の 子 ど もの 精 神 的影 響 は、 よ うや く最 近 に な っ
て 研 究 が な され て きた。 しか し、子 ど ものPTSD症
状は
特 に、 乳 児 は母 親 との 問 で 基 本 的信 頼 感 を構 築 して い る
い まだ不 明 確 で 、 こ れ ま で の調 査 結 果 で も そ の 出現 率 は
途 上 で もあ る。 そ の た め 、 多 くの看 護 者 が お こ な っ た 母
5~74%と
親 へ のサ ポー トは間接 的 に子 ど もの 援 助 につ なが った19)
か な り幅 を みせ て い る8}。本 調 査 は、 子 ど も
の症 状 の 経 過 を継 続 して み た も ので は な く、 あ く まで も
と思 われ る。
一 時 点 で の 子 ど もの 状 況 で あ る た め 、 こ れ ら の症 状 を
PTSDと
看 護 者 が母 親へ 適切 なケ ア を提 供 して い た に もか か わ
判 断 す る こ とに は 限 界 が あ る。 だ が、 震 災 直 後
か ら3カ 月 半 に わ た っ て被 災 した 子 ど もの30.2%に
らず 、 「震 災 直 後 」 は精 神 的 ケ ア の 効 果 はみ られ て い な
みら
か っ た。 トラ ウ マ か らの 回 復 に は段 階 が あ っ て 、 そ れ ぞ
れ た精 神 的 症 状 は 、子 ど もの 心 の状 況 を 反 映 して い る 。
れ に応 じた ケ ア が 必 要 で あ る。 そ の 回復 過 程 の 第1段 階
は安 全 の確 立 、第2に 想 起(外 傷 体 験 の再 構 成)で あ る2D)。
「震 災 直 後 」 か ら過 覚 醒 症状 ・狭 窄 症 状 と もに多 くみ ら
れ て お り、 特 に、 幼 児 に比 べ 乳 児 が 示 した精 神 的症 状 数
大 人 に比 べ 神 経 の興 奮 性 の 強 い乳 児 や 幼 児 は 、 「震 災 直
は 多 く、 震 災 後3カ 月 を経 過 した 「復 興 期 」 に お い て も
後 」 の 度 重 な る余 震 に、 覚 醒 状 態 を 強 め不 安 を 高 め た で
「震 災 直 後 」 や 「混 乱 期 」 と変 化 が な か っ た 。 精神 的 症
あ ろ う。 この よ う な状 態 か ら信 頼 して よい と安全 感 を感
状 の発 症 時 期 は数 週 間か ら1カ 月 で あ り9).1°)、
まず 過 覚 醒
じ させ る こ とが 最 も優 先 さ れ る べ き こ とで あ った 。 そ れ
症 状 が 強 く出 て 、 徐 々 に狭 窄 症 状 が 明確 に な って い く と
は 身 体 そ の もの の 安 全 で あ っ た り、 安 全 な 場 の 確 保 で
い わ れ て い る'2)一'4)。
しか し、 今 回、 乳 児 で はい ず れ の 症
あ っ た り、 対 人 関係 に お け る安 全 感 で あ る2')。しか し、
状 も 「震 災 直 後 」 か ら多 く認 め られ て お り、 幼 け れ ば幼
今 回 の震 災 で は、 ラ イ フ ライツ の 寸 断 ・住 居 の 崩 壊 ・長
い 子 ど もほ ど心 の 状 態 は深 刻 で あ る こ とが 考 え られ た 。
引 く余 震 ・イ ン フ ルエ ンザ の 蔓 延 な ど、 子 ど も た ち の基
子 ど もは 、 地 震 とい う事 態 を科 学 的 ・客 観 的 に認 識 す る
本 的 欲 求 を満 たす こ と も ま ま な ら ない 状 態 で あ り、 物 理
こ と、 そ の 経 過 を予 測 す る こ とが 困 難 で あ る た め、 地 震
的 に安 全 の確 立 が 非 常 に 難 しか っ た。 この こ とが 「震 災
そ の もの に よ る恐 怖 が大 きか っ た の はい う ま で もな い 。
直 後 」 の ケ ア効 果 に反 映 した とか ん が え られ る。
そ れ に加 え、 子 ど もは親 が恐 怖 に戸 惑 う姿 を み る こ とで
安 全 感 を確 立 して きた 第2段 階 に は、 大 人 は他 者 と体
「強 い 大 人 の喪 失 」15}とい っ た 二 重 の 恐 怖 を経 験 して い
験 を話 しあ い 「外 傷 体 験 と再 構 成 」 す る こ とで 心 の傷 を
一33一
大 阪 大 学 看 護 学 雑 誌VoL4No,1(1998)
癒 して い くこ とが で き る。 そ れ に ひ きか え乳 児 は 、 言 語
た 。 今 後 は さ らに、 ケ ア の 効 果 を継 続 的 かつ 客 観 的 に測
機 能 を獲 得 して い ない た め 大 人 の よ う に心 の 内面 を表 出
定 し、 子 ど もの ケ ア ニ ー ズ を もっ と明 確 に して い く必 要
す る こ とが で き ない 。 同様 に幼 児 も言 語 機 能 が 十 分 で あ
が あ る。
る と は い え な い が 、 多 くの 幼 児 にお こ な わ れ た 「一 緒 に
本 研 究 に ご協 力 くだ さ い ま した 救 援 活 動 を さ れ た看 護 職 の 皆
遊 ぶ 」 ケ ア は 、 非 言 語 的 に子 ど もの 心 の 内面 を 表 出 させ
様 に深 く感 謝 致 し ます 。
る こ とに役 立 ち 、 言 語 機 能 の 未 熟 な幼 児 の ニ ー ズ に則 し
て い た ケ ア で あ っ た とい え る。 一 方 、乳 児 に対 し て 「言
葉 を か け」 や 「タ ッチ ング 」 とい っ た ケ ア に対 す る反 応
は悪 か っ た。 乳 児 は 、7カ 月 ~11カ
【引 用 文 献 】
月 にか け恐 怖 心 が 強
1)阪
神 大 震 災 一 子 ど も の ス ト レ ス な お 深 刻 一,読
21日
くな り、 人 見 知 りや 場 所 見 知 りをす る よ うに な る。 この
2)西
時 期 の子 ど も に対 す る 直接 的 な ケ ア は か え っ て 逆 効 果 で
売 新 聞8月
朝 干唖,1997.
澤
哲:災
害 と 子 ど も の ト ラ ウ マ,思
春 期 学,14(3),
222-227,1996.
あ っ た 。 この よ う な ケ ア 提 供 者 の子 ど もの 発 達段 階 に 関
3)前
掲2)
す る知 識不 足 が 、 子 ど も の不 安 を一 層 強 め た と もい え る。
4)鈴
木 敦 子,楢
木 野 裕 美,鎌
田 佳 奈 美,他:被
災 した 子 ど も
に 対 す る 心 の ケ ア へ の 看 護 職 の か か わ り に 関 す る 研 究,研
「復 興 期 」 に お け る乳 児 の 症 状 の増 加 は 、 この こ とや ス
究 報 告 書,1997,
トレス の 対 処 行 動 の レパ ー トリー の 少 な さが 影 響 して い
5)南
裕 子 編:阪
神 大 震 災 そ の と き看 護 は,日
本看護協 会出
神 ・淡 路 大 震 災 西 宮 看 護 ボ ラ ン テ ィ ア:私
ので きる こ と
版 会,1995.
る と考 え られ る が 、 日頃 か ら健 診 な どで 乳 児 と接 触 の多
6)阪
い 保 健 婦 が 「復 興 期 」 に多 く活 動 した こ とで 、 子 ど もの
あ り ま せ ん か 水 く み で も,兵
み え に くい 症 状 を観 察 で きて い た と も推 察 され る。
7)J.L.Herman(中
井 久 夫 訳):心
8)前
掲2)
9)日
本 小 児 精 神 医 学 研 究 会 編:災
術 が 必 要 で あ る こ とが 示 唆 され た 。
害 時 の メ ン タ ル ヘ ル ス ー兵
庫 県 南 部 地 震 に お け る小 児 メ ン タル ヘ ル スへ の対 応 マ ニ ュ
ア ル を 中 心 と し て 一,日
10)中
科 医 た ち 一,み
11)山
崎 晃 資,加
ル ヘ ル ス,精
被 災 した乳 幼 児 の心 理 的 ケ ア ニ ー ズ を 明 らか にす るた
12)前
め、 彼 らの精 神 的 症 状 の 特 徴 と そ の発 現 時 期 お よ び彼 ら
本 精 神 医 学 研 究 会,1995.
井 久 夫 編:1995年1月
お わ りに
・神 戸 一 「阪 神 大 震 災 」 下 の 精 神
す ず 書 房,東
藤 由 起 子,吉
京,1995.
田 友 子:災
害 と子 ど も の メ ン タ
神 療 法,22(1),3-14,1996.
掲9)
13)奥
山 真 紀 子:災 害 時 の 児 童 精 神 保 健 活 動,精
に対 す る ケ ア 内容 を分 析 し、 以 下 の よ うな結 果 を得 た。
神 療 法,22(1),
50-57>1996.
14)植
1.「 震 災 直 後 」か ら3カ 月半 の 間 に 、な ん らか の精 神 的
木 雅 治:震
災 後 の1年
を 振 り 返 っ て,児
保 健 に 関 わ る 調 査 か ら,震
症 状 を示 して いた 乳 児 ・幼 児 は30.2%で
的 外 傷 と 回 復,み す ず 書 房,東
京,1996.
子 ど も は幼 けれ ば幼 い ほ ど心 の状 態 が み えに くい た め 、
子 ど もの ケ ア に対 して は 、 ケ ア 提 供 者 の 専 門 的知 識 や技
庫 県 保 険 医 協 会,1996
あ っ た。 発
童,生
徒 の精神
災後 の
「心 の ケ ア 」 に 関 す る 教
本 道 隆:北
海 道 南 西 沖 地 震 を体 験
職 員 研 修 会 資 料,1996.
達段 階 で 精 神 的 症 状 の 数 を 比 較 す る と、 乳 児 の 方が
15)藤
森 和 美,藤
森 立 男,山
し た 子 ど も の 精 神 健 康,精
幼児 に比 べ 有 意 に多 か った 。
神 療 法,22(1),30-40,1996.
16)VanDerKolk,B.A.:Psychologicaltrauma,Washington,
2.過
覚 醒 症 状 、侵 入 症 状 、狭 窄 症 状 、退 行 現象 い ず れ の
DC.AmericanPsychiatricPress,1987.
症 状 も発 現 時 期 に よる 特 徴 は な く、 こ れ らの 精 神 的
症 状 は 「震 災 直 後 」 か ら30~40%程
17)林
度 認 め られた 。
18)渡
3.乳 児 ・幼 児 と もに 、 「混 乱 期 」 「脱 混 乱 期 」 「復 興 期 」
に比 べ 、 「
震 災 直 後 」の 精 神 的 ケ アの 効 果 は有 意 に低
春 男:心
的 ダ メ ー ジ の メ カ ニ ズ ム と そ の 対 応,こ
の 科 学,65,日
辺 久 子:母
ころ
本 評 論 社,27-33,1996.
子 臨 床 の 現 在,こ
こ ろ の 科 学,66,日
本 評論
社,16-21,1997.
19)Suger,M.:Childreninadisaster,Anoverview,Child
PsychiatryandHumanDevelopment.19.3:163‐179,1989.
か っ た。
4.乳 児 ・幼 児 に対 す る ケ ア は、両 者 と も母 親 を通 してお
こな っ た もの が 多 く、「母 親 の 訴 え を よ く聴 く」は他
の ケ ア に 比 べ 非常 に効 果 的 で あ っ た。 また 、 幼 児 に
対 して は 「一 緒 に遊 ぶ」 ケ ア が 効 果 的 で あ った 。
今 回 の 震 災 の影 響 は幼 児 よ り乳 児 に強 か っ た 。 また 、
被 災 した 子 ど もの ケ ア に対 して は、 発 達 段 階や 回復 過 程
に よ り必 要 と して い る ケ ア に 違 い が あ る こ とが 示 唆 され
一34一
20)前
掲7)
21)ボ
ウ ル ビ ィ ー:心
の 安 定 基 地,医
歯 薬 出 版,東
京,1996.